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ダイオキシン関西ネット/第33号 2001/1/6
発行:止めよう!ダイオキシン汚染・関西ネットワーク/代表
中南 元
<10.25労働省・厚生省交渉の概要>
ネット側:16名(関西=山崎、桑垣、能勢の八木さん、秋元さん、関東12=所沢、神奈川県労働職業病センター
労働省側:亀井・有賀氏(化学物質調査課)、樋口・粟村氏(監督課)、伊藤氏(補償課)
厚生省側:室石氏(環境整備課)
紹介議員:中川智子、出席議員:大谷(民主)、大幡議員秘書(共産)
*今回の交渉は関東ネットが設定。例によって時間不足だったが以下に概要を報告する。
体面的には「労働者の汚染原因は究明され、その上で出された『緊急対策』による解体自粛要請解除は誤りではない」「第一義的に業者責任、次に施設組合の監督責任」「解体業者の選定などに関して政府に責任はない」「消却労働者安全対策の再検討の必要なし」「外へ漏れないように作業していた」等々の政府側回答。厚生省は、気にはなっているようであるが、表面的には労働者だけの問題で他人事といった態度の受け答えに感じられた。
<一般廃棄物焼却施設の解体など予定状況について>
全国の一般廃棄物焼却施設の当面の解体などの予定について各都道府県に紹介した結果、下記の通りである。
解体中 | 解体停止中 | 解体予定 | 合計 | |||
一部解体 | 全部解体 | 一部解体 | 全部解体 | 一部解体 | 全部解体 | 558 |
37 | 7 | 18 | 7 | 360 | 129 |
H12.8末
- 一部解体:改修のため、排ガス処理設備などを解体する場合
- 全部解体:焼却施設全体を解体する場合
- 解体予定期間はおおむね平成12年度から平成13年度のもの
<市町村(一部事務組合も含む)が設置する一般廃棄物の焼却施設の休・廃止状況>
廃止数 | 休止数 | 施設数(*) | |
平成8年度 | 77 | 100 | 1872 |
平成9年度 | 114 | 78 | 1843 |
(*):各年度末現在
<産業廃棄物焼却施設の休・廃止状況>
H9.12.1 | H9.12.2〜H10.11.30 | H10.12.1 | |||
併用中 | 新規併用 | 計 | 廃止 | 休止中 | 稼働中 |
5.757 | 129 | 5.886 | 1.393 | 653 | 3.840 |
【資料】労働省が2000年9月14日に発表した調査結果の一つ
表 廃棄物焼却施設作業上の作業環境測定結果
施設No. | 単位測定場所 | 測定場所 | 気中総粉じん | 気中ダイオキシン | ||||||||
幾何平均mg/m3 | 幾何標準偏差 | 最小mg/m3 | 最大mg/m3 | 管理区分 | 幾何平均pg−TEQ/m3 | 幾何標準偏差 | 最小pg−TEQ/m3 | 最大pg−TEQ/m3 | 管理区分 | |||
1101 | 1 | 電気集塵機周辺2階 | 0.24 | 1.64 | 0.14 | 0.62 | I | 1.20 | 1.64 | 0.69 | 3.07 | II |
2 | 焼却炉1階 | 0.25 | 1.63 | 0.13 | 0.66 | I | 0.72 | 1.63 | 0.38 | 1.91 | II | |
1102 | 1 | 焼却炉地下 | 0.14 | 1.56 | 0.07 | 0.25 | I | 0.64 | 1.56 | 0.33 | 1.17 | I |
2 | 焼却炉3階 | 0.20 | 1.56 | 0.07 | 0.25 | I | 0.01 | 1.27 | 0.97 | 0.01 | I | |
1103 | 1 | ごみ焼却処理施設1階 | 0.09 | 1.26 | 0.07 | 0.12 | I | 0.07 | 1.26 | 0.06 | 0.10 | I |
2 | ごみ焼却処理施設地下 | 00.05 | 1.27 | 0.04 | 0.07 | I | 0.01 | 1.27 | 0.01 以下 |
0.01 | I | |
1104 | 1 | 旋回流形流動床式ごみ処理施設1階 | 0.14 | 2.25 | 0.06 | 0.36 | I | 3.64 | 2.25 | 1.56 | 9.34 | III |
2 | 旋回流形流動床式ごみ処理施設2階 | 0.27 | 2.64 | 0.09 | 1.52 | I | 2.73 | 2.61 | 0.91 | 15.41 | III | |
1105 | 1 | 地下1階、灰コンベア− | 0.10 | 1.27 | 0.06 | 0.15 | I | 0.24 | 1.27 | 0.15 | 0.37 | I |
2 | 飛灰汚泥脱水気質 | 0.19 | 1.47 | 0.11 | 0.25 | I | 0.18 | 1.47 | 0.10 | 0.24 | I | |
1106 | 1 | 焼却棟炉前ホール | 0.13 | 1.79 | 0.06 | 0.32 | I | 0.92 | 1.79 | 0.41 | 2.18 | II |
2 | 焼却棟炉前2階 | 0.30 | 1.26 | 0.23 | 0.38 | I | 1.97 | 1.26 | 1.53 | 2.60 | III | |
1107 | 1 | 1階灰コンベア− | 0.06 | 1.11 | 0.05 | 0.07 | I | 0.06 | 1.11 | 0.05 | 0.07 | I |
2 | 焼却炉7階 | 0.05 | 1.14 | 0.05 | 0.07 | I | 0.02 | 1.14 | 0.01 | 0.02 | I | |
1108 | 1 | 灰出し設備区域 | 0.23 | 3.04 | 0.04 | 1.08 | I | 68.12 | 3.04 | 11.64 | 314.39 | III |
2 | 焼却設備区域 | 0.08 | 1.69 | 0.04 | 0.22 | I | 0.63 | 1.69 | 0.33 | 1.80 | II | |
1109 | 1 | 灰、不燃物コンベア−周辺1階 | 0.10 | 1.59 | 0.04 | 0.24 | I | 0.54 | 1.59 | 0.21 | 1.27 | I |
2 | 造粒機(灰固化設備) | 0.12 | 4.12 | 0.02 | 1.52 | I | 0.57 | 4.12 | 0.10 | 7.24 | II | |
1110 | 1 | ごみ処理施設炉室集塵機周辺 作業場 |
0.04 | 1.53 | 0.02 | 0.07 | I | 0.49 | 1.53 | 0.28 | 0.96 | I |
2 | ばいじん処理施設4階飛灰処理作業場 | 0.14 | 2.91 | 0.06 | 0.70 | I | 0.32 | 2.91 | 0.14 | 1.62 | II | |
1111 | 1 | 灰出し室地下1階 | 0.13 | 1.72 | 0.06 | 0.26 | I | 2.81 | 1.72 | 1.34 | 5.82 | III |
2 | 炉内圧力調整機付近3階 | 0.04 | 1.69 | 0.02 | 0.08 | I | 0.21 | 1.69 | 0.11 | 0.43 | I | |
1112 | 1 | 焼却炉1階 | 0.15 | 2.80 | 0.04 | 0.54 | I | 0.07 | 2.80 | 0.02 | 0.23 | I |
2 | 焼却炉地下 | 1.07 | 2.84 | 0.11 | 2.31 | II | 1.35 | 2.84 | 0.14 | 2.93 | III |
(注:労働省が決めた作業環境の管理濃度は2.5pg−TEQ/m3)
最近、福岡県大牟田市にある三井化学社の工場敷地に接する大牟田川において、水質などの高度のダイオキシン汚染が発見されました。県の報告書などによって、この事件を詳しく見てみたいと思います。
環境庁が1999年に行った公共用水域の全国調査の中で、有明海の一地点において環境基準の1pg−TEQ/1を越える2.4pg−TEQ/1の汚染が発見されました。海域において環境基準を超える水質の汚染が見られるのはめったにないことです。そこで、環境庁や福岡県によって有明海13地点、流入河川の河口7地点において調査が行われましたが、有明海の1地点で1.1pg−TEQ/1が検出された以外は、すべて基準以下でした。しかし工場敷地に隣接する大牟田川中流域では、1.6〜350pg−TEQ/1という高濃度汚染が検出されました。最高値が検出された地点では、3面張りのコンクリートの護岸の継ぎ目の目地から、油玉がにじみ出していて、それを分析したところ、390.000pg−TEQ/1のダイオキシン類が検出されました。そこで継ぎ目の緊急補修工事が行われた結果、水中濃度はたとえば以前の350から1.2へ、79から3.3pg−TEQ/1へと大幅に低下しました。このことと汚染の地理的分布から考えて、水質汚染の主な原因は油玉の滲出であり、またそれは三井化学大牟田工場に由来することは明らかです。では、工場のどの行程あるいは製品が関係しているのでしょうか。県は油玉が多量(数値は不明)の塩化ベンゼン類を含んでいたことから、塩化ベンゼン類が関係する行程とジクロルベンゼン製造工程を中心に立ち入り検査を実施しました。このときに採取されたオルトジクロルベンゼンODCBの粗製品から総計67000pg−TEQ/gのダイオキシン類が検出されました。その内訳はPCDFsが62000で大部分を占め、次いでCo−PCBが4900、PCCDsは11pg−TEQ/gで最も少なくなっていました。油玉の分析では、OCDBとは異なって、大量の(6200pg−TEQ/g)PCCDsが検出されました。このことは塩化ベンゼン製造工程以外の汚染源も無視できないことを示しています。事実、工場はCNP,PCP,2.4.5−T、PCNBのようなダイオキシンの発生源となる製品も造っていました。ダイオキシン九州ネットワークは、ダイオキシン類対策特別措置法の「土壌汚染対策地域」に素手薄、汚染の除去に取り組むよう要求していますが、県は工場の事業に従事するもの以外のものは立ち入ることができない場所だから、指定はできないと回答しています。ODCBはベンゼンの塩素化によってパラジクロルベンゼンPDCBと共に生じます。ODCBじゃくみ取り式便所のウジ退治の薬剤として、ネオミケゾールの名で商品化されています。またPDCBは衣料用防虫剤あるいはトイレの防臭剤として多用されています。これら市販品にはダイオキシン類は含まれていないでしょうか。調査が必要だと思います。さらに大牟田市内の環境、特に大気や地下水の汚染が懸念されます。ダイオキシン類だけでなく、ODCBやPDCBも含めてです。PDCBは動物実験で腎臓や肝臓にガンを誘発することが知られています。厚生省は室内空気汚染のガイドラインとして0.04ppm、水道水質の監視項目として0.3ppmを設定しています。九州ネットワークは調査を県に要求しています。大牟田の大気はベンゼンによって、基準をはるかに越えるほどに汚染されています。
厚生省は11月28日、1999年度のトータル・ダイエット・スタディ(食品からのダイオキシン1日摂取量調査など)の調査結果を発表した。関西A地区と関東A地区が、耐用一日摂取量4pg−TEQ/kg体重/日を越えた。しかし報告は、2000年度の速報値が、それぞれ2.07pg、1.80pgであること、関西A地区の調査資料に用いた魚介類が通常摂取が少ないと思われる食品をサンプリングしていたことを挙げて、「平均的な食生活をしている日本人のダイオキシン摂取量の推計値はTDIを下回っており、食品衛生上問題がないと考える。」と結論している。わたしたちはトータル・ダイエット・スタディそのものに疑問があるが、これまでもバラツキを考えるとTDIを越えている地域や人があること、正しいTDIは1ピコ未満であることを指摘して、ダイオキシン規制は排出量だけでなく、直接の摂取量についても行う必要があることを主張し、そのために魚介類などに食品基準の設定を要求してきた。今回の調査結果を放置せず、改めて魚介類などの食品基準の設定を要求していこう。
=参考資料=
6月11日、RDF反対交流集会を港区民センターで開いた。準備不足であったが地元と全国各地から約60名が
結集した。
別処さんの基調報告は、ホームページ<http://www.kcn.ne.jp>に掲載されている全国のRDF施設の実状に関する
4ページにわたる表をもとに、RDFの具体的な矛盾を丁寧に紹介されるものであった。関西ネットからの基調報告は、
循環基本法、新エネルギー、JIS化の検討をテコにしたRDF推進の最近の特徴を報告するものを山崎が行った。
昼食中に、火災やトラブル続きの御殿場・小山のRDF施設、東京杉並のごみ中継所付近で起こっている被害(いわゆる
杉並病)のビデオ上映を行った。
まず、あらかじめお願いしていた各地の代表の報告を受けた。順不同で紹介するとRDF発電所問題を抱えるところから
は、宇都宮の長谷川さん、福山の内海さんの報告があった。RDF製造施設問題を抱えるところからは松原の福岡さん
上野(三重)の清水さんの報告があった。都合で参加できなかった日生町(岡山)の福島さん、市川町の赤松さんからの
メッセージが紹介された。
次いで、会場に来ておられた各地の代表として、綾部(京都)、宍粟郡、大牟田からの報告を受けた。大牟田のグリーン
コープ代表は質問状にたいする推進側のそれぞれの回答など膨大な資料をもとに、休養で欠席された中村さんに変わ
って熱心に報告された。
別処さんが推進側の計画を示す資料として紹介されたものを討論の素材として以下に紹介します。
『資料』:少し前に日本産業機械工業会がまとめた「2010年の都市ごみ RDF 製造と有効利用可能性の地域バランス」
という資料の中の将来見通しの数字(単位は1000トン/年)
地域 | 発電利用予測 | 進行中の処理量 | ※考えられる発電所数 |
北海道 | 415 | ||
東北 | 403 | ||
関東 | 47 | 35(鹿島) | 1 |
北陸 | 243 | 56(志賀) | 4 |
東海 | 529 | 70(桑名) | 7 |
関西 | 0 | 0 | |
中国 | 376 | 137(福山) | 3 |
九州 | 418 | 110(大牟田) | 4 |
※:いま計画中のRDF発電所と同規模のものが各地域に2010年までにできるとすれば総数いくらになるかを別処さんが
試算したもの。
私たちは、今年1月から施工された「ダイオキシン法」に代表される日本のダイオキシン対策は、排出量及び環境基準、その元にある耐容一日摂取量がきわめて不十分であり、かつ摂取量を直接削減する食品対策が完全に欠落していると
考えています。それとともに、ごみの焼却の仕方だけで対応している現在の対策は、基本方向が間違っており、脱焼却、
脱塩素の方向に転換すべきであると考えています。
ところが、国民的議論もなく慌ただしく去る5月24日に強行制定された循環型社会形成推進基本法は、条文および委員会質疑で政府が示した考え方によると、ゴミ焼却の廃熱を利用することを熱回収として「循環的利用」の一つに位置づけ、ごみ固形燃料(RDF)化を「再生利用」として「循環的利用」の中でも熱回収より上位に位置づけています。これは、深刻なダイオキシン汚染の主原因である焼却主義をさらに助長する口実を与える謝った評価であり、とうてい許すことはできません。
RDFはごみ固形燃料といわれますが、可燃ゴミを固め、石灰を加えて乾燥させたごみ固形化物です。御殿場・小山RDF施設の火災・トラブルでわかるように、作る技術は全く信頼性のないものです。作るときにダイオキシン、その他有害物質を出すし、燃やすときにも、ごみ焼却と変わらない量のダイオキシンを出します。それどころか、発熱量を高めるために、どんどんプラスチックをゴミに出せるようになります。それでも作ったRDFの熱量は低質の石灰程度(3000kcal/kg)に過ぎません。利用先の確保が難しく、結局埋め立て処分されたり、先日岩手県で発覚したように不法投棄されている場合も多いと思われます。また、燃料だからといって、燃やすところがダイオキシン規制を受けない場合も多く、ダイオキシンをばらまくことになります。こういうものに金をかけることは、全く社会的な無駄以外の何者でもありません。
問題ばかりのRDF化にもかかわらず、厚生省によるゴミ処理の広域化の手段あるいは広域化できないときの選択肢と位置づけられ、推進されています。施設内にRDF焼却炉を敷設すれば、小規模でもそれを含めて補助金がつけられる矛盾が表面化しています。利用先確保の窮余の一策として推進されつつあるRDF発電は、福岡県(大牟田市)、石川県(志賀町)、富山県の例における試算では、いずれRDF処理費を取らないと試算がとれないという結果が出ています。
RDF化は通産省主導の新エネルギーの中の一つにもあげられ、ごみ発電とともに財政的支援をつけて推進されています。宣伝活動を強めて、RDF化の問題点を広く知らせましょう。RDF推進に反対している各地のグループと連携を強めることはもちろん、脱焼却・脱酸素、サーマルリサイクル反対、ダイオキシン排出ゼロ、ダイオキシン摂取量削減を求める運動との広い連帯を追求して、RDF推進にストップをかけましょう。
2000年6月11日 RDF反対交流集会参加者一同
5月28日横浜市内で「廃棄物処分場問題 全国交流集会」が行われ参加者は100人以上にのぼりました。
神奈川県では、荏原製作所のダイオキシン垂れ流し事件、米軍厚木基地近くのダイオキシン排煙問題、藤沢市、横浜市
の川でのダイオキシン検出など、多くのダイオキシン関連の事件がありました。今年、全国集会が神奈川で行われたことは非常にタイムリーだったと言えるでしょう。
開会の挨拶、神奈川県の報告、基調報告に続き、各地からの報告がありました。三重県海山町や和歌山県橋本市など、関西からの報告も多く半数近くを占めました。また、ごみの原料の切り札とされているRDF施設が汚染源でしかないことが訴えられました。
午後からは環境総合研究所の青山貞一さんから特別講演があり、測定したデータをめぐる政府の対応やマスコミの取り上げ方の問題を具体的に指摘されていました。
特に松葉からのダイオキシンデータは、大気中での測定に対して安定したデータ得られることから、汚染の実態に迫れる有効な方法であることを強調されていました。自治体の行う大気中の調査では、偶然性が大きく、一度測定して低いデータが得られると安心してしまうなど、対策を遅らせる原因となっています。
最後に津川敬さんのコーディネートでパネルディスカッションが行われました。テーマは「廃棄物行政の改革へ」ということで、特に規制の手が及ばない産業廃棄物対策が限界を超えていることなどが明らかになりました。集会の特別アピールでは、企業内焼却や最終処分場からのダイオキシン流出が取り上げられ、高度な技術でダイオキシンを押さえ込むことが不可能であることを訴え、ごみ焼却自体をやめないといけないことをアピールし、しめくくりとしました。
(桑垣 豊)
地球温暖化防止キャンペーン 一斉の声(いっせのせ) COP6(11月、ハーグ)へ向けキャンペーン開始 京都議定書を温暖化防止にとって意味あるものにすることができるかどうか、最後の決定を行うCOP6(気候変動枠組条約第6回締約国会議)にむけて、世界の環境NGOが協力してClimate Voise というホームページを開き、世界中から |
ダイオキシン関西ネット/第29号 2000/4/3
発行:止めよう!ダイオキシン汚染・関西ネットワーク/代表
中南 元
第3回ダイオキシン学習会 「ダイオキシン法で汚染がなくなるか? 子どもは大丈夫か?」 |
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ダイオキシン法施行、TDI4ピコ、環境基準、ばいじん処理基準、排水基準などが制定さ
れた現在、宮田さんの話しを聞き、いろいろ質問して、ダイオキシンの毒性、食品・母乳
からの摂取量、ダイオキシン対策の現状を評価し、今後の方向を探る。
=ごみ固形燃料(RDF)反対交流集会=
***RDFはリサイクルの嘘をあばく。
ダイオキシン、環境ホルモンをばらまくもの****基調報告
- 日時:6/11(日) 午前11時〜午後5時
- 場所:港区民センター
各地の報告(大阪の松原市、三重県の上野市その他、兵庫県の宍粟郡、市川町、
広島県の福山市など関西グループの他、関東、九州、中部の各ダイ
オキシンネット及び関係グループ)
質疑・討論とアピール・決議(パンフ、ブックレット作成へ努力中)
約束時間までの間、敷地内外の施設周辺を歩いて見たら、方向によってはやはり臭いがした。施設の外側を一巡すると、側壁の方々に小さいヒサシのようなものがあり、そこから外気を吸収しているようで、最上部に排気しているらしいとことがあった。案内・説明には、管理者が終始熱心に当たった。ビデオを使った説明を受けた後、施設内を案内された。施設は気密状態ではなく、まさにスカスカ状態である。最上部はコースに入っていないので上がれず、質問しても排気口については口を濁された(すぐ裏に急な山があり、登って確認することもできなかった)。成形工程で装置の開口部を覗いたりして働いている職員も見たし、作られたRDFが500kg入りの大きな袋に入れられて20筒ほど置いてあるところで、臭いもかいだ。そこには、よくちびるという成型器の心臓部も置いてあり、研磨しても3回までで、長く持たないことを聞いた。またコンベアを止まらせる原因のテープや、ばいじんをキレート剤で処理したものなども置いてあった。中央制御室では作ったRDFを燃やして熱源にしている焼却炉のことを職員が誇らしげに説明した。
施設内を見学した後、いろいろ質問に答えて貰った。収拾している1日20トンの可燃ごみから10トンのRDFを作り、そのうち4トンを燃やして施設の熱源に利用し、残る6トンを県が紹介した石膏ボードメーカーに燃料としてトン1000円で売却しているという。このRDF「焼却炉」は、1日8時間運転の流動床式で、1日100トン以上の全連続炉というごみ焼却炉の補助金要件を満たしてないのに、RDF施設の一環と言うことで、これを含めて施設全体に1/4の補助が付いているという。開いた口がふさがらない矛盾である。大型化・広域化を財政的に押しつけるためこの補助金要件を早期に撤廃させる必要性をあらためて痛感した。なお、熱源は、灯油だけなら1ヶ月3000リットル要るが、RDFの燃焼熱を使っているから灯油は900トン弱だという。
この「焼却炉」のうしろには、(消石灰+活性炭)の噴霧と(サイクロン+バグフィルター)の集塵機、さらに活性炭吸着塔が付けられており、排ガスのダイオキシン濃度は、煙突で0.034 ng/立方メートルだというから低い排ガス濃度は、RDFにしたためではなく、排ガス処理が手厚いためであることがよくわかる。また、ばいじんダイオキシン濃度は最後まで教えて貰えなかった。7%ほどできる灰(ばいじんのこと?)はトン1万1000円で業者(三重中央)に委託して上野に埋め立て処分しているという。
もう一つ印象的だったのは、現在、6割のRDFを引き取って貰っている石膏ボードメーカーが買値の半減を要求しており、将来も買って貰えるか不安があり、三重県が推進しているRDF発電所にトン4000円(予定)を払って出す候補にも名乗りを上げているという。RDF推進側の泣きどころになっている利用先の無さをRDF発電所建設で解消する強引な施策、その一環として動き出している三重県のRDF発電所建設計画に、遅まきながらストップをかける力を作っていけないか、真剣な検討が要請されていることを感じた。
ダイオキシン類対策特別措置法の1月15日施行に伴い、環境庁・厚生省は都道府県と政令指定都市に対し、ばいじん等に対するダイオキシン規制の具体的な方法について通知していた。そこには、既設の特別施設に対する2002年11月30日までの猶予のほかに、重大な抜け道が含まれていた。ここで、「ばいじん等」とは、ばいじん(=集塵灰、飛灰)、燃え殻(=焼却灰、主灰、燃滓)、排ガス洗浄施設汚泥、およびこれらの廃棄物を処分するために処理したもののことである。
私たちは、集塵灰だけを、しかも重金属の有害性だけから特別管理廃棄物に指定している誤りを指摘し、ダイオキシンの毒性の視点を加え、焼却灰も合わせて指定するような改訂を一貫して要求してきた。しかし、今回のダイオキシン法制定では、ダイオキシンの視点は加えられたが全く欺瞞的であり、焼却灰を全て特別管理廃棄物に加えるのではなく、300 ng/g以上という高濃度のダイオキシンを含む場合に限られた。
それに加えて今回の通知の中で、煤塵などをセメント固化、薬剤処理(キレート剤で処理)、あるいは酸抽出した場合は、厚生省令に定めるダイオキシン含有量基準3000 ng/gを適用しないことにしたのである。これらの処理は、重金属を抜きだしにくくしたり、あるいは重金属を抜き出す処理であり、ダイオキシンとは関係ないのである。3000 ng/g以上のダイオキシンを含んだ煤塵などでも、セメント固化、薬剤処理あるいは酸抽出すれば、その処理物を最終処分して良いというのであり、この処理をしない場合は、溶融固化とか脱塩素処理してダイオキシンを分解して3000 ng/g以下に減らしなさい、ということになる。通達の早急な撤回が必要ではないか。
ダイオキシンの水質規制を検討する際、ダイオキシンは水に溶けにくいと言う誤った評価がよく引用された。溶けにくいというのは、純粋な水に対するもので、洗剤・石鹸のような界面活性剤などが共存している実際の水に対する溶解度はもっと大きいのである。それを若干気にして、今回の通達の中で、ばいじん等を埋め立て処分するときには、油など海面活性作用を有するものがばいじん等と接して埋め立てることのないように留意するように、と書かれている。しかし、それを担保する何の保障もない。また、ダイオキシンが水で運ばれるのは、溶けた状態だけでなく、細かい懸濁物に付着した形のときもあるが、そのことに対する検討・対策は、もっといい加減である。
ダイオキシン関西ネット 桑垣 豊
今年3月9日、東京の日比谷公会堂で、市民団体が塩ビ工業環境協会を招いてシンポジムを開きました。主催は、日本消費者連盟に事務局を置く「NO!塩ビキャンペーン」です。
市民側のパネリストと塩ビ業界側のパネリストで、お互いの主張をぶつけ合うというものです。司会の野田さんがうまく運んだので、お互いの主張はかなり出し切れたと思います。今までは、言いたいことの半分も言えないシンポジウムが多かったことから考えるとその意味で成果はあったと思います。
塩ビ業界からは、塩ビ工業環境協会の専務理事 佐々木修一氏、同協会環境委員渉外部会長 原田浩氏の2人。市民側からは、大阪大学の植村振作氏とダイオキシン関東ネットの藤原寿和氏の2人がパネリストになりました。
主張は相変わらず平行線をたどりましたが両者が揃うのは初めてなので、市民側、業界側それぞれで、相手の主張を初めて聞く人が多かったと思います。
参加した私が最も気になったのは、業界側の聞き手はどう感じたかということです。植村先生が、業界が行った実験で、食塩添加でダイオキシンが発生したのは、ダイオキシンが発生するように意図的に活性白土を入れていたという説明をしました。それを塩ビ産業の社員は、どう受けとめたのか。日頃洗脳されいてい、気にならないのか、会社のいうことに不安を感じたのか。特に若い世代の社員は、企業戦士というタイプが少ないと思うので期待したいのですが、判断力が未熟なので気になります。
日比谷公会堂は平日にも関わらず満員でした(1200名)。その多くは、業界の動員でしょう。それでも私は業界への影響を期待したいと思います。
最後に、塩ビ工業環境協会の原田氏が「減らすのは塩ビではなくてダイオキシン」というスライドを出しました。これはあんまり手前みそで、業界の人間もしらけるのではと思いましたがシナリオ通りに拍手が起こりました。
両者の主張した内容は今までどおりで皆さんもご存じなので触れません。でも、塩ビ業界がまだ、塩ビは塩素の重さの比率が多いので石油の節約になるとか、木材のかわりなので森林保護というのを聞いてブラックユーモアだと思うのは、私だけでしょうか。
塩ビ業界があまりに手前みその主張を続けていては、自分の置かれた立場を正確に見ることができなくて、長期的にはマイナスにしかならないと思いました。
ダイオキシン関西ネット/第28号 2000/1/28
発行:止めよう!ダイオキシン汚染・関西ネットワーク/代表
中南 元
1月15日ダイオキシン法が施行される
昨年7月16日に公示された「ダイオキシン類対策特別措置法」は、大気・水質・土壌の環境基準はじめ諸基準についての環境庁の中央審議会、厚生省の生活環境審議会から答申を受け、政省令の制定をすませた上で、予定通り1月15日に施行された。
各答申(案)は、意見募集にかけられた(関西ネットも関東ネットも意見書を出した。)が、全く形式的な物で何の修正もなくそのままの内容で本答申となった。
昨年6月に4ピコというTDIが政治的に決められ、特に摂取量1ピコ未満をめざすことが放棄されたことは、その後環境基準、ばいじん処理基準、排水基準の決められ方や、能勢の1000pg/g以上の土壌だけを問題にする政府の対応をみると、『望ましい環境のための基準ではなく、現状容認が目的の基準である』ことが一層明らかになった。
これを許さず、食品基準を設定して摂取量そのものを低減すると共に排出ゼロをめざした抜本的方策へ前進する方向をねばり強く追求しよう。
*4/23 第4回ダイオキシン学習会(講師:宮田秀明さん)* =場所、時間とも未定= ダイオキシン法施行、TDI4ピコ、環境基準、ばいじん処理基準、排水基準などが制定され た今日時点に立って、ダイオキシンの毒性、食品・母乳などからの摂取量、ダイオキシン 対策の現状を評価し、今後の方向を探る。 *5月頃 RDF製造とRDF発電に反対する集会(予定) =場所、時間とも未定= |
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ダイオキシン学習会報告(講師自身による)
第1回「新TDI4ピコの意味を問う」(9/24)、第2回「行き場のないプラスチックリサイクル−2000年容器包装法プラ容器回収実施を前に」(11/28)の報告を講師自身にお願いしました。第1回は「環境監視」に書かれたものを転載させていただきました。<<中南元氏の公演報告>>
第1回では、中南さんの講演を聞いた上で、新TDIの4pg/kg/日がどのように決まったか、ダイオキシンの毒性をWHOがTDIを1から4ピコと改訂したときの考え方とどう違うのか、試算すると私たちの体内負荷量が乳児期から2,3歳まで8ng/kg/日(TDI4ピコの相当する体内負荷量)を超えている、等々が議論されました。
第2回では別処さんの豊富な資料・情報に基づく主公演、桑垣さんのサブ報告を聞いた上で、プラスチック問題の行き場のなさ、その解決の方向の一つが拡大生産者責任にあること、ごみ固形化(RDF)の欺瞞・犯罪性、容器包装リサイクル法のザルさ加減などで活発な質疑が行われました。
ダイオキシンの新TDIについて
中南 元
1.はじめに
去る6月21日、環境庁中央環境審議会環境保健部会と厚生省生活環境審議会・
食品衛生調査会との合同による、ダイオキシン類のTDI見直しのための検討会
(以下では単に検討会と称する)は、当面の許容一日摂取量(TDI)を4pg/kg
体重/日(以下単位が記されていない場合はこれに同じ)とすることを決定しまし
た。
続いて関係閣僚会議は25日、ダイオキシンのTDIについて、同じように決
定しました。今後はこのTDIを基本として、土壌、大気などの基準が決めら
れ、あるいはごみ焼却場その他の発生源に対する対策が決定されることになりま
す。そこで新しく決められたTDIの意味について考えてみたいと思います。
これまでは厚生省が設置したリスクアセスメントに関する研究班によって19
96年に提示されたTDIとして、10が用いられてきました。この従来のTD
Iにおいては、ダイオキシンの毒性のうち、環境ホルモンとしての側面は無視さ
れてきました。特にアカゲザルで観察された子宮内膜症の増大を示すデータは、
投与量と病気の発生程度との関係も示されており、また人に近い動物である猿で
実験されたものであるのに、それが無視されてTDIの決定に生かされなかった
ことは問題であると指摘されてきました。
今回の検討会の決定は、WHO欧州事務局が国際化学物質安全性計画 (IPC
S )と合同で開いた専門家会合が、昨年5月頃にTDIを従来の10に変えて1
〜4とすることを提案したことを受けて行われたものです。その中身はどんなも
のでしょうか。ここで詳しく考えてみましょう。
2.体内負荷量
検討会やWHOの専門家会合による今回の決定の中には、従来のTDIやAD
Iの決定の仕方とは大いに異なるところがあります。これまでは長期の慢性毒性
試験によって、それ以下ならば何の影響も見られない最大の一日あたりの投与量
(最大無作用量、NOAEL )を求め、これに直接適当な安全率を掛けて、TD
IあるいはADIが求められてきました。
しかしダイオキシン類のように代謝・分解され難く、蓄積性で、しかも動物種
によって体内における半減期に大きな差のあるものでは、同じ摂取量でも、体内
に蓄積される量 (体内負荷量 )に大きな差が生じる可能性があります。そして毒
性が発現するか否かは血中濃度などによって決まると考えられていますが、それ
はまた体内負荷量によって決まります。ダイオキシン類の場合同じ負荷量に達す
る摂取量は、げっ歯類はヒトの100倍〜200倍多いとされています。
従来はダイオキシンのまんっ性毒性・発ガン性試験におけるNOAEL(1 ng
/kg体重/日)を基礎とし、これに100倍の安全率を掛けて、TDIが決めら
れました。今回はより微量で毒性影響が現れる環境ホルモンとしての側面を基礎
としてTDIが決められましたが、その場合、NOAELが求められているデー
タが少ないことから最小毒性量 (LOAEL )を基礎とし、これに対応する実験
動物の負荷量を求め、ヒトにおいても同じ負荷量がLOAELであるとし、それ
に対応するヒトの摂取量を求め、これに10倍の安全率を掛けてTDIが求めら
れました摂取量そのものでもなく、体内負荷量が動物とヒトとで等しいときに同
じ影響が現れるとした点が新しいところです。また負荷量を用いることによっ
て。一回投与の試験も微量長期摂取の影響に移し替えて考えることができるよう
になりました。
3.TDI設定の基礎となった動物実験データ
WHOの専門家会議は、最も強く現れる胎児・乳児に対する影響や生殖上の影
響について表1のようにまとめています。そして毒性が現れる宰相の負荷量 (A)
から求められる摂取量 (B )に10倍の安全率を掛けて、1〜4をTDIとしています。
<表1>WHOによるTDI選定の基礎となった毒性データ
NO. 文 献 毒 性 影 響 LOAELでの母体内負荷量
ng/kg体重(A )に対する摂取量(B)
pg/kg体重/日1 Grayら、1997a ラット、雄児の精子数減少 28 14 2 Gehrs等、1997b、1998 児の免疫制御 50 25 3 Grayら、1997a 雌児の生殖器異常の増大 73 37 4 Schantz、Bowman、1989 サル、学習行動テスト成績低下 42 21 5 Rierら サル、子宮内膜症 42 21
ここでは、たとえば児動物の精子形成に与える影響として最も少ない量で効果
が認められたデータのみが考慮されています。これに対してわが国の検討会の報
告では、評価指標、試験項目あるいは試験実施期間によって影響が認められる最
小量が大幅に異なることを挙げて、「影響を発現させる最低の体内負荷量は特定
の試験による数値を採用するよりも、関連のある複数の試験結果の総合評価によ
り決められるべき」としています。
いうところの「総合評価」なるものがどのように行われるのか不明ですが、結
局腰だめ的に決めるほかないと思われます。図2はわが国の検討会が体内負荷量
と毒性影響のいろいろなデータをまとめたものですが、これから「総合評価」の
結果、TDIの算定根拠とする体内負荷量は概ね 86ng/kg とするのが適当と判
断された結果、TDIは4と決められました。
WHOの方がより安全側に立っていると言えますが、それはWHOが、究極の
目標はヒトの摂取量を1以下に低減させることであると明言していることにも現
れています。わが国の検討会の報告には、このような文言は見当たりません。
とにかく当面ののTDIは4と設定されました。とりあえずは魚介類をたくさ
ん食べる人やごみ焼却場周辺住民のように、このTDIを超える可能性のある人
も安心できるように、現在の主要な発生源であるゴミ焼却場の対策を急がねばな
りません。その事が魚介類の汚染を低減することにもなり、WHOの究極の目標
を達成する近道でもあると思います。
さらに、政府は差し当たり食品の基準は設定しないとする一方、大気や土壌の
基準をとりあえず作る方針だと伝えられています。これは順序が逆だと思いま
す。TDIが決められたらそのTDIが実現されるように最初にとるべきステッ
プは、ダイオキシン類の主な摂取源である食品の基準を決めることとでなければ
なりません。大気や土壌の基準は、私たちが食べるものが食品の基準以下になる
ようにするために必要な基準として設定されるものであり、先に大気や土壌の基
準を決めるのは順序が逆であり、いったい何を目標にしてそれらの基準を決める
つもりなのか理解に苦しみます。
4.乳児の問題
本年8月2日つけで厚生省児童家庭局母子保健課は昨1998年度における母
乳の汚染状況の調査結果を発表しました。。それによると、全国21地域の平均
で、母乳中のダイオキシン類 (PCDDs+PCDFs )が12.2、コプラナー
PCBが10.0、合計22.2pgTEQ/g脂肪となっています。乳児は体重1kg
当たりで1日に約4.5gの脂肪を母乳から摂取するとされていますから、乳児
の母乳からのダイオキシン類やコプラナーPCBの摂取量は、合計で99.9
pgTEQ/kg体重/日になり、新TDIに対して約25倍になります。
このように、TDIをはるかに超える量を乳児が取り込んでいても大丈夫なの
かという疑問は、誰しもが持つと思います。検討会はこれには直接答えていませ
んが、関連することとして、(1)TDIは生涯にわたって連日摂取し続けた場合
の影響を指標として算出された値であり、したがって一時的に摂取量がTDIを
多少超過することがあったとしても、長期間での平均摂取量がTDI以内なら
ば、健康を損なうものではない、 (2)ダイオキシンの毒性試験において最も感受
性が高いと考えられる胎児期における曝露による影響を指標としたものであるこ
と、の2点を強調しています。
従来からの一般的な慢性毒性試験は、普通ゲッ歯類の一生涯をかけて行われて
きましたが、試験は離乳後の若い動物を用いて始められました。ということは、
感受性が最も高いと考えられる胎児・乳児における影響は、はじめから無視され
てきたことを意味します。しかし今回のTDI決定においては、これまでのやり
方と違って上記(2)の主張は確かに成り立つと思います。
たとえば、TDI決定の基礎となった雄児の生殖や雌児の生殖器の形態異常に
関する研究においては、妊娠中の母親にダイオキシンを一回投与し、児動物は誕
生後はその母乳で育てられ、離乳後はダイオキシンを特に加えてない普通の餌で
育てられました。すなわち児動物がダイオキシンを摂取したのは母親のおなかの
中にいるときに胎盤を介してと、授乳によってとの二つだけです。そのような児
動物に対する影響の有無を基礎としてTDIが決められました。すなわち胎児・
乳児期における曝露による影響を指標としてTDIが決められたわけで、(2)の
主張の通りです。したがって親動物の摂取量がTDIを超えなければ児動物が親
から受け取るダイオキシン類の量がTDIよりはるかに多くても、いちおう安全
と考えることができます。
なんだか矛盾した話のようですが、矛盾の原因は胎児・乳児期における摂取量
そのものによってTDIを規定するのではなく、胎児・乳児の摂取量を間接的に
決定する親動物の摂取量によって規定したことにあります。
この点をさらに詳しく考えてみましょう。たとえば人の場合ダイオキシン類の
摂取量がTDIに等しい4 pgTEQ/kg体重/日とすれば、平衡状態における体内
負荷量は8 pgTEQ/kg体重、体重50kg、脂肪含有量を20%とし、体内のダイオキ
シン類は全て脂肪中に蓄積しているとすると、脂肪中のダイオキシン類の濃度は
40 pgTEQ/g脂肪、上述のように乳児は体重1kg当たり1日に4.5gの脂肪を
母乳から摂取するとされていますから、乳児のダイオキシン類の摂取量は180
pgTEQ/kg体重/日で、母親のそれの45倍になります。ラットの場合、親動物
の体内負荷量が上の計算例と同じく8 ng/kg体重とすればそれはLOAELの
約1/10であい、その母乳によって育てられるラットの児のダイオキシンの摂
取量は解りませんが、それが児動物にとって影響のない量であることは実験によ
り確認されています。そして親における体内負荷量が人とラットで同じレベルの
場合、胎児・乳児の摂取量も両者で同程度だといえるならば、ヒトでも一応安全
と言えるでしょう。
しかし母ラットの体内負荷量の児動物の母乳からの摂取量との関係を示すよう
な資料はないように思います。
つまり親ラットの体内負荷量がヒトとラットと同じレベルの場合、胎児・乳児
の摂取量も両者で同程度といえるかどうか、必ずしも明らかではありません。と
すれば、ラットで安全が確認されていても、ヒトでも安全といえるかどうか、本
当のところはわからないと思います。
胎児・乳児への影響を指標としたTDIが、胎児乳児の摂取量として、二つの
値で規定されたらより完全だと思います。さらに胎児・乳児への影響について資
料があるのは生殖、免疫、甲状腺機能などに限られています。それも必ずしも十
分とは言えないと思います。上記の機能だけでなくもっと多岐にわたる影響があ
るかも知れません。したがって実際のダイオキシンの摂取量を、成人について
も、乳児についても、もっと減らす必要があるのは言うまでもないことです。
第2回「行き場のないプラスチックリサイクル−2000年容器包装法プラ容器回収実施を前に」
現代はプラスチック・エイジ。世界の粗鋼生産量は約7億トンで、体積では0.9億立方米。一方、プラスチックの減量になるナフサの生産重量から平均比重を1として体積を求めると約1.3億立方米。プラスチックの体積がすでに鉄の体積を抜いている。「鉄器時代」が終わって、「プラ器時代」に突入したのは1970年代らしい。
プラスチックは捨てるとどれほどのゴミになるか。日本列島で1年間に捨てられるプラゴミは1200万トンで、プ
ラスチック国内消費量1200万トンにほぼ匹敵する。長期に使う分があっても長い目で見ると結局は作った分だけ捨てていることになる。その処理方法は、焼却が5割、埋め立てが4割、再生が1割という割合。種類別で見ると、ポリエチレン(PE)22%、ポリプロピレン(PP)19%、塩ビ(PVC)17%、ポリスチレン(PS)15%、PET5%となる。
プラスチックの再生は困難
いま産業界が、さかんに循環型社会とか循環型経済とか言いはじめている。循環型をとなえる以上、大量のプラスチックについても再生利用できなければ自己矛盾に陥 る。もしも、ありあまる製品がわずかのエネルギーで再生利用できるのであれば、結 構な話ではある。しかし、1割が再生にまわるという現状の数字は産廃のプラスチックに関するもので、一廃(一般廃棄物)のプラスチックはほとんど再生利用されていない。かろうじてPETが少し再生利用されている程度だ。
再生が困難な理由は何か。
塩ビの再生一つを例としてとりあげてみよう。再生メーカーに見学に行くと、塩ビの切れ端に一つ一つ圧搾空気をかけて異物を取り除いている。それほど再生は不純物 を嫌う。ほんのわずかの不純物でも混じると、たとえば気泡が生じたり、亀裂が生じたりして商品にならないという。したがって、一般家庭のプラスチックゴミ再生は、不純物を完全に除去できる条件がないと非情にむずかしい。ポリエチレンの再生を手がけるメーカーが奈良県宇陀郡にあるので、見学に行って みた。ここもやはり産廃を原料としている。再生100%のポリ袋を作っていて、生産は好調だという。ただ、一般家庭ゴミから再生するのは今後の課題と話していた。
天理市では、発砲ポリスチレンのトレー類を分別して、棒状に加熱・固化し、業者に引き渡している。この業者は固化棒を香港に運び、中国大陸でビデオテープの筐体などに再生利用しているという。 ただ、本当に採算がとれているのかどうか、いささか疑問がある。こうして集めた産廃ポリスチレンを中国で捨てているという話しがあるからだ。この話しが事実かどうか確認するのは困難だが、うまくいっているとは思えない。
油化もうまくユカない
再生がだめなら油化がある。最終的に燃やすのだから、不純物に対してあまり神経質になることもない。ところがユカがうまく言っている例は非常に少ない。大阪市淀川区に「ジオメイク」という油化を手がける企業があるというので尋ねてみると、次のような話しだった。
油化は一昨年の秋にやめた。決定的な理由は、塩化ビニールが分解して塩素が発生し、配管にピンホールを開けることだ。装置を順調に運転しているときはいいが、装置を止めるとどうしても塩素が発生してしまう。いったんピンホールがあくと使いものにならない。できるだけ痛まないよう配管に特殊合金を使っているので取り替えるだけで5000万円かかる。数度の交換にとうとうたまりかねて、装置全体を撤去した。この技術を提供してい
た「日本理化学研究所」は倒産し、債権者会議にかかっている。
この「ジオメイク」以外にも新潟市や立川市で油化を手がけているが、立川では昨 年から油化を断念し、完全に止めたという。ただ、例外的に東芝の実験プラントがう まく稼働していて、塩ビを15%程度含んでいても操業
可能だという。
RDFは減容ごみだ
家庭や事業所のゴミを乾燥圧縮するRDFの施設が全国に20近く出現しているRDFが英語で意味するのは、ゴミ由来燃料。しかしー。
煙が出ない、ダイオキシンが減らせる、輸送が簡単、保存が可能と、ばら色の夢を売りこまれて導入してみたが、実体は欠陥だらけで、手がけた職員の顔色が青ざめる結果となっている。ある最終処分場の職員は、RDFは「減容ごみ」で、燃料ではな いといい、RDFを埋め立てていることを認めた。
80年代末、世界中でダイオキシン対策が進む中、日本ではまともな対策が行われなかったが、対策技術の開発が裏ですすんでいた。クレヨン状のRDFもその一環だった。本格スタートは91年、廃棄物処理法の大改正が行われた年。川崎製鉄、伊藤 忠商事、川崎重工業などが中心となって、日本リサイクルマネジメント社(RMJ)を設立し、奈良県榛原町でRDF製造を始めたのが始まり。 この陣容と時期から見て、背後に大きな意思が隠れていたのは間違いない。日本で もダイオキシン問題が表面化したとき受け皿がいる。高度な対策を小さな自治体に強要できない。ベンチャーが開発したRDFをやろう。ーおおよそはこんな狙いだっただろう。 ダイオキシン削減対策の中間報告が出る前、96年2月にRDJは資本金を2億円 から8億円に増資している。RMJの動きは日本のゴミ対策と常に連動していた。処理困難なプラスチックを分別せずにすむ点が推進者たちにとって魅力だった。RDFは当初から「プラスチック隠し」の技術だったようで、滋賀県湖東町では、分別 していたプラスチックごみをRDF化に伴って一緒に出すよう変更している。
富山県福光町・大分県津久見市を皮切りにRDF施設が次々と建設された。作ったRDFは売れなかった。製造コストの割に中身が粗末だったからだ。輸送費を入れると、今は大幅な逆有償になっている。ごみそのものだか
ら、燃やすには排ガス対策が必要だ。引き取るのはほとんどセメント会社と製紙会社だけ。余剰のRDFは処分
場に捨てるほか無い。
中部地方の地方紙記者が取材の過程で、これは燃料になるのではないかと尋ねたのに対して、富山県福光町の施設職員は、「ここは固形燃料化施設ではなく固形化施設なんです」と臆面もなく答えたという。
走り出した未熟技術を止められない
もう一つ大きな問題は工程にあった。RMJ方式では乾燥工程の温度が600度になるため、様々の分解生
成物がでる、製造施設内の空気を巨大な換気扇を使って排出している場所では、その外で無数のハエ死んでいる。昆虫の死骸が化学物質の深刻な影響を雄弁に物語ってくれているわけだ。厚生省は製造過程のダイオキシン濃度を近く発表するとしている。人の健康を問題にするなら、化学物質の総合調査をやるべきだろう。第二の杉並病が出る可能性だってあるのだから。
工程に問題があり、全然売れないという状況なので、RDFの受け皿としてRDF発電所が構想された。大牟田・宇都宮・石川県志賀町・桑名などで計画が出ている。桑名の計画には、調査費が認められた。まだ実働施設はない。大変なコスト高になるから売電が一苦労だ。しかも、ごみを多量に出さなければ発電所が存続できない。ごみの徹底減量など、言われている「循環型社会」の理念とは完全に対立するが、「サーマル(熱)リサイクル」という言葉で矛盾を糊塗している。燃やしてエネルギー回収するのもリサイクルという苦しい言いわけだ。
RDF製造にはRMJ方式以外にJ−カトレル方式があり、乾燥方式が異なる。J−カトレル方式最大の御殿場・小山の施設で、一年以上に渡って大混乱が起きた。操業開始直後に装置の致命的な欠陥が明らかになり、一年がかりで改修した。そのとたん、火災が発生したり機械の一部が破損し、コンベヤが止まる事態になっている。
そのほか、最新の施設でもトラブル続きだ。以前、奈良県榛原町の施設では、ストッキングが装置に巻き付いて困っていた。これは解決済みと言われてきたが、同じ事が起こっている。RDFは何が入るか分からないごみの世界に対応できる技術になりえなかった。
RMJは99年の春、1億円に減資し、メンテナンス会社になった。未熟な技術の見切り発車が失敗であったことを認めたわけだ。しかし補助金などの制度が動き出していて、もう止められない、と言うのが担当官長の本音だろう。河口堰と同じで、振り回される自治体こそいい迷惑である。
退廃するごみ処理技術と進む環境差別
RDF技術の現状はどうなっているか。これを確認するため、三重県海山町の施設に行ってみた。ここでは1日の固形化量10トンのうち、4トンのRDFを大きな流動床炉を使って燃やしている。もちろん排ガス処理装置をこてこてに付けている。RDFの乾燥熱源にするためだが、それだったら、ごみを単純に燃やせばいい話しで、RDFにして、その隣で燃やしてと、複雑なことをする理由はどこにも見当たらない。
ごみ処理は、プラントメーカーに奉仕するものでしかなくなった。このようなものに税金をつぎ込んでいるのが実情だ。
三重県上野市でRDF製造施設の計画が進んでいる。この計画は、二つの産廃処分場に挟まれた位置にあ
る。ごみ施設が二つでも三つでも同じだろうと、上野市は地元説明会も開かずに都市計画を決めてしまった。さ
すがに三重県の北川知事は、これをすんなり承認することが出来ないでいる。
ごみ施設が集中する地域や職員の専門知識が希薄な自治体を狙って、高価なプラントを押しつける差別構造が全国に広がりつつある。このような動きは「環境差別」と呼ぶにふさわしい。
産業界は現在のシステムを死守する
こうした一連の動きの底に流れているものは「生産者責任隠し」だ。
かつて1991年に廃棄物処理法が大改正されたとき、厚生省の担当者は、改正案の第3条に「生産者責任」を明示する文言を入れるよう準備していた。改正案の条文は「処理が困難な廃棄物となった場合にはその回収などを行わなければならない。」となっていた。ところがあらゆる省庁からの大反撃に会い、撤回せざるをえなかった経過がある。ちょうどその頃からヨーロッパではEPR(拡大生産者責任)の制度が取り上げられ始め、現実の法としても少しずつ成立し始めていた。1994年になると、OECD(経済協力開発機構)でこのEPRに関する議論が正式に始まった。すでに第2段階の議論まで終わり、今年2000年の夏には第3段階の最終報告が出ることになっている。
昨年の暮れから日本でも「循環社会法」の議論が出はじめ、法案が準備されつつある。しかし、その内容はほとんど完全な世論対策になるらしい。つまり実質内容は何もなく、細部については全て政令にゆだね、抽象的な内容の条文を並べるものになるようだ。文言として、そこに生産者責任が盛り込まれているように見えるが、大骨までないだろう。
「生産者責任」を法律に盛り込むことをだれが恐れているのか。もちろん産業界である。もしも本当に「拡大生産者責任」の制度を盛り込むと、それは現在の生産体制を根本的に変えるものになる。これまで戦後50年以上にわたって築き上げてきた日本の生産システムを根本的に変更することは、産業界が絶対に受け入れられない条件なのだろう。
それは生産システムだけでなく、日本を支えているあらゆるシステムの変更を含む。自分たちの存在基盤そのものが揺らぐことを、産業界=財界が許すはずはない。
プラスチックの生産は、プラスチック・エイジの呼び名でもわかるように、現代社会の大きな流れで、この基盤を掘り崩すことを政財界・官界は非常に恐れている。しかし、世界の体制はEPR(拡大生産者責任)の制度確立に向かって進みつつある。日本がこれに逆らい続けると、やがて墓穴をほる事になるだろう。いや、現状のごみ処理を見る限り、もう大きな墓穴を掘りつつあるのだという気がする。
ことしは、容リ法(容器包装リサイクル法)による「紙」と「その他プラスチック」の分別処理が始まる。これによってごみ問題が解決するのではなく、大混乱の始まりになるだろう。容リ法も生産者責任隠しをもくろむ典型的な世論対策法である。具体的な条項はどう考えてみても大混乱をまねくものにしかならない。
ごみ問題の終わりの始まりの年、それが日本の2000年であるかも知れない。
容器リサイクル法とRDF/ ダイオキシン関西ネット:桑垣 豊
1.容器包装リサイクル法とは
容器包装法は、2段階で実施することになっています。1997年4月に第1段階を実施し、金属缶、紙パック、
PETボトルとガラス瓶だけです。空き缶や牛乳パックはお金を出して引き取ってくれるので、対象になりません
でした。
2000年4月から第2段階を実施します。プラスチックと紙のすべての包装材が対象になります。そこで、大半
がリサイクルできないプラスチック容器が問題になるのです。
2.共通の問題
この3年間で明らかになったこの制度の問題は、以下の点です。
しかしその手直しをしないまま、多くの容器包装を回収しようとしています。細かい実行計画や実務的な詰めが
甘いので大きく混乱するでしょう。たとえば排出量を記録するには事務量が多すぎます。量の把握が必要な大手流
通などが、納入もとの中小企業に紙やプラスチックの種類ごとに出荷量のデーターを要求することになりそうです。
3.プラスチックの問題点
プラスチックは技術的にリサイクルが難しいので、集まりすぎた分をどう処理するかが問題です。通産省は、サーマ
ルリサイクルをリサイクルの一種として認めることにしたので、RDF(ごみの固形燃料か)に注目が集まっています。
しかし、RDFの実体はごみの固形化にすぎず、日本各地で行き場を失った「RDF=ごみ」がさまよっています。
もともとプラスチックは、リサイクルできないものが多いのです。原因は、添加物が入っている、複合材料である、リ
サイクル品の質が低く使い道がない、などです。トレイとペットボトルは、これらをくぐり抜けた珍しい例です。ですから、
4月から雑多なプラスチックを回収しても、新しくリサイクルできるのは、トレイなどの発泡スチロールとポリプロピレン、
ポリスチレンぐらいだと言います。
それと、多くのプラスチックリサイクルでは、塩ビ製品の混入が致命的で、色が付いたり劣化が起こり、1万分の1の
混入に押さえるための多大なコストがかかっています。しかし、厚生省はリサイクルできるプラスチックとは表示するが、
プラスチックの種類は表示しないでいいと主張しています。
そのほか、プラスチックはかさ高いので自治体の回収コストが膨大になる、塩ビの添加物フタル酸エステルのように
リサイクル過程での環境ホルモン汚染の危険性がある、など問題が山積みです。
<ダイオキシン関西ネット 第28号(00.1.)>
COP3 2周年記念 気候ネットワーク
「市民が進める温暖化防止’99」
***'99.12/11・12両日 京都池坊学園で催された***
1月30日(日)14時〜16時30分 苅田土地改良記念館(☆御堂筋線 我孫子3出口 東へ5分) お話:小倉 正さん(気候ネットワーク常任理事) 参加費(600円) |
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