「自尊心の扱い方が難しくなってきた。
今時の子供は、生まれたときからプライドを尊重されている。
だんだんにプライドを培っていくわけじゃない。
だから、叱られたりすると、とんでもない侮辱を受けたと憤慨する。
自分のためを思って叱ってくれたんだ、というふうには頭が回らない」

マイケル・ルイス著(中山宥訳)
「コーチ」(ランダムハウス講談社)の言葉

映画「マネーボール」の原作者としてマイケル・ルイスの名を知った。
ところが彼の本来のフィールドは金融界だった。そもそも証券会社出身の人なのだ。
証券業界の内幕を著してベストセラー作家になったらしい。
ドキュメンタリー作家としての力量から、スポーツ物にも手を広げたらしいが、「マネーボール」自体も、お金を扱った点では金融物とつながるのかもしれない。

さて、その彼が、本当に書きたいテーマで本を書くとしたら何を選ぶ?
と問われて、自分の学生時代のコーチのことを書きたいと言って書いたのがこの本だ。
スポーツというくくりで「マネーボール」にもつながっている。

そのコーチは厳しい指導で有名だったが、生徒からは信頼され、卒業後も感謝され続けていた。
勿論ルイス自身も彼が大好きだ。
ところが、そのコーチについて、最近は悪い評判が立ち始めていると聞いて、いったいなぜかと調べていくという内容になっている。

昔のような厳しい指導ができなくなったのだと述べて、その根拠として上の言葉が出てくる。
私も同感だ。
時に厳しい言い方をすることもあるし、その真の意味を分かってくれる子も少なくないが、中には、私の態度を誤解してふくれてしまう子もいる。
最近はそうした子の扱いにも慣れてきたが、家庭教師を始めて間もない頃は、保護者の方からクレームをいただいたこともあった。

私は、子を思う気持ちが厳然としてこちらにあれば、どのようなもの言いをしても、最後は分かってもらえると、今は実感している。

アメリカで野球を教えるこのコーチにはまた別の難しさがあるから問題視されたままになってしまうのかもしれないが、子育ての今昔の違いについて分かりやすい言い方をしていると感じ印象に残った。

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