メッセージはこうだ。(正解編)

では桜蔭から解いていこう。

2004年・桜蔭中[3番]】
あるお菓子屋さんでは1個120円のお菓子を売っています。6個入りは箱代が80円、
9個入りは箱代が100円です。このとき次の問いに答えなさい。
(1)6個入りと9個入りの菓子箱はそれぞれ何円ですか。
(2)6個入りと9個入りの菓子箱とばら売りを何個かずつ買ったところ全部で8780円になりました。
6個入り、9個入りの菓子箱とばら売りを、それぞれ何個ずつ買いましたか。
考えられるすべての場合を答えなさい。
ただし、ばら売りは20個以下とします。

(1)は簡単だ。
120×6+80=800円(6個入り)
120×9+100=1180円(9個入り)

(2)からはいわゆる「いもづる算」という奴だ。
「つるかめ算」の応用発展問題と考えられる。

6個入りの菓子箱をx個、9個入りの菓子箱をy個、ばら売りをz個買ったとする。
すると次の式が出来る。
800×x+1180×y+120×z=8780
この式に当てはまるxyzの組を見つけていけばよい。

まず左右とも20で割れるので
40×x+59×y+6×z=439
となる。(小学生でも、理解できるでしょ)

一番高い59円から考えていく。
439÷59=7・・・26
9個入りの菓子箱が7個買えて、26円残るということだ。
だが、26円余っても、それでは40円と6円のものをぴったりとは買えない。

この箱を1個減らすと、余りが59円増えるので、26+59=85円となる。
85円からもぴったり40と6のセットは作れない。
そもそも40も6も偶数だから、余りも偶数でないとぴったりとはいかない。(分かるかな?)

次の余りは85+59=144
これは何か作れるかもしれない。
144÷40=3・・・24
わーい、24は6の倍数だ〜。
ということで、
x=3 y=5 z=4(←24÷6)がまず答えとして出てきた。
40と6の最小公倍数は120だから、xを3減らせば、zが20増えて、またぴったりの組が出来るけれど
ばら売りは20個以下(即ちzは20以下)という条件があるから、これは答えには合わない。
そもそも、xも、もう3減らすことはできない。

さて、次の答えをさがそう。
さっきもちょっと言ったとおり、余りは偶数でないと合わないから
次の余りは144に59×2=118を足して、262
さっきと同じように考える。
262÷40=6・・・22
22は6の倍数でないからダメ。
で、22に40の倍数を足して、どこかで6の倍数が出来ないかを考える。
22+40=62 ダメ
22+80=102 いけた〜
(ついでに言っておくと、この102は、62+40で求めても良い。)

このように、59円の個数、即ちyにあたる数を一つ(あるいは二つ)ずつ減らしては、
余りで40と6とのセットが出来ないかを考えていく。

さて、次の余りは262に118を足して、380
さっきと同じような計算をしていく。
作業内容は同じなので、以下省略。

いずれにしろ、地道な計算と検証を繰り返していくわけだ。
こうした問題から、この学校、すなわち桜蔭がどんな子を求めているか
分かるような気がしませんか。
はっきりと、学校側のメッセージが聞えてくるような気がします。



一方の女子学院はどう解かせるのだろう。

2004年・女子学院中[5番]】
(1)222の約数を全部書くと、(                 )です。
(2)花子さんは、1個37円の商品Aと1個80円の商品Bと1個62円の商品Cを何個かずつ買いました。
値段の合計は22200円で、商品Bと商品Cの個数の比は3:4でした。
花子さんは、商品Aを(   )個、商品Bを(   )個、商品Cを(   )個買いました。

こちらも(1)は簡単だ。
順に素数で割っていく。
222÷2=111
111÷3=37
37が素数なのでこれ以上は割れない。
よって、約数は、1、2、3、6(=2×3)、37、74(=2×37)、111(=3×37)、222(=2×3×37)

では、これが(2)とどう結びついていくのか。
まず金額が22200円。どう考えても関連がありそう。
次に、商品Aの値段が37円。これも222の約数に入っている金額。

もう一度、整理しよう。
222の約数→1、2、3、6、37、74、111、222
22200円=37円×(  )+80円×(3の倍数個)+62円×(4の倍数個)

2つの条件を見ていれば、ポイントは37だと気付く。
でも、下の式には足し算が入っているから、単純な積の形にはできない。
さあ困った。
いや、困ることはない、単純な積の形を作れば良いのだ。
え、どうやって?

こうやって!

22200=37×( )+80×(37×3の倍数)+62×(37×4の倍数)
としてやれば良い。
そう、3や4の倍数なら何でも良いのだから、そこに37をかけてしまえば良い。

商品Aの個数をA個、商品Bの個数をB個、商品Cの個数をC個とすれば
B:C=3:4という条件があるので、これを(37×3):(37×4)と読み替えたのだ。
B=37×3k C=37×4kとする。(kを付けたのは、3の倍数とか4の倍数ということを見やすくするため)

さっきの式を次のように変形してみよう。
22200=37×A+80×37×3k+62×37×4k
ここで分配法則を使えば
22200=37×(A+80×3k+62×4k)
となる。
22200÷37=660なので
A+80×3k+62×4k=660
となる。
k=1としてみよう。
すると
A+240+248=660
となる。
このとき、A=112となり、条件に合いそうだ。
B=37×3=111
C=37×4=148
特に問題はなさそうだ。

一応、他の場合はないかチェックしよう。
k=2で計算してみると
A+480+496=660
となるので、これはおかしいと分かる。

だから、答えはさっきの場合だけと分かる。
そもそも、解答欄からして、答えは1セットしか求められていないから
37の扱い方が閃けば(ひらめけば)、もうそれで解けたも同然なのだ。

さあ、どうでしょう。
ちょっとしたことに気付けば、こんなに簡単に要領よく正解できてしまうということがお分かりいただけましたか。
ここから、女子学院がどんな子を求めているかが伝わってきますね。

一見似たような2つの問題だったが、
解き方はまるで違っていた。

そう、入試問題は、どんな子を欲しているか
それを明確に語っているのだ。

(2005年9月29日、久保田塾塾長・久保田實記)

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