久保田塾
トップページ








 

   

2007年都内中学入試・興味深い問題 (算数)

(都内の難関校では面白い現象がありました。)
( 問題はそれほどでもないですが、「面白い現象」自体の紹介です。)
(2007年2月3日更新)

桜蔭中  開成中  麻布中  雙葉中 女子学院中


桜蔭中
 AさんとBさんが池のまわりでゲームをします。
Aさんは池を右まわりでまわります。歩いて1周するのに12分かかります。
Bさんは池を左まわりでまわります。Aさんの歩く速さはBさんの歩く速さの5/4倍です。
 2人は同じ地点から同時に歩き始め、出会うとじゃんけんをし、勝ち負けを決めます。
勝った人はそのまま歩き、負けた人はそこからうさぎとびをします。うさぎとびの速さは歩く速さの3/4倍です。
じゃんけんにかかる時間は考えないものとします。

(1) 2人が初めて出会うのは歩き始めてから何分後ですか。

(2) 2人が2回目に出会うのは、1回目に出会ってから何分後と何分後の場合がありますか。


解き方

速さの問題としては中級レベルです。
桜蔭の問題とは思えないほど素直な問題です。
まるで女子学院に出てきそうな問題です。

こうした問題では、与えられた数字に合わせて
計算しやすい数を自分で決めてしまえば楽ですね。
私は初め、Aさんの分速とBさんの分速をそれぞれ〔5〕と〔4〕にして解こうとしたのですが
うさぎとびの速さは3/4になるとあったのでそれぞれ4倍して
Aさんの分速を〔20〕、Bさんの分速を〔16〕とすることにしました。
こうすると全て整数になるので計算がしやすいです。
1周の距離は、Aさんが12分で進む距離、すなわち〔240〕です。
式は〔20〕×12=〔240〕

(1) ここまで決めてしまえば、これはごく初級の旅人算です。
〔240〕÷(〔20〕+〔16〕)=6と2/3分

答え 6と2/3(分)



(2) 次はうさぎとびの速さを求めてしまえば良いですね。
Aさんが負けたときは、〔20〕×(3/4)=〔15〕
Bさんが負けたときは、〔16〕×(3/4)=〔12〕

ですから、まずAさんが負けたときは
〔240〕÷(〔15〕+〔16〕)=7と23/31(分)

Bさんが負けたときは
〔240〕÷(〔20〕+〔12〕)=7.5(分)

答え 7と23/31(分)  7.5(分)

次は開成に行きます。
昨年同様、今年も桜蔭と開成で似たような問題が出ていました。
実は、後で分かりますが、麻布でも雙葉でも同じような問題が出たのです。
それが今年の「面白い現象」の正体です。


開成中
 一定の速さで一つの円周をまわる3つの点A、B、Cがあります。AとBは同じ向きに、CはA、Bとは反対の向きに進みます。
3つの点A、B、Cが同じ地点から1時ちょうどに出発しました。AとCは1時2分に、BとCは1時7分に、出発後初めて出会いました。
 また、Aは1時2分30秒に初めて元の地点に戻りました。

(1) Bが初めて元の地点に戻る時刻を求めなさい。

(2) AがBに初めて追いつく時刻を求めなさい。

(3) A、B、Cが初めて正三角形の3つの頂点となる時刻を求めなさい。


解き方

(1) 桜蔭と同様、与えられた数字を元に、自分で距離を決めてしまいましょう。
2.5分、2分、7分の最小公倍数を1周の距離とします。
小数の入った数の最小公倍数は、何倍かして整数にして求めてから後で割れば良いですね。
と言うことで、最小公倍数〔70〕を1周の距離と決めます。

すると、
Aの分速=〔70〕÷2.5=〔28〕
Aの分速+Cの分速=〔70〕÷2=〔35〕
よって
Cの分速=〔35〕−〔28〕=〔7〕

また
Bの分速+Cの分速=〔70〕÷7=〔10〕
よって
Bの分速=〔10〕−〔7〕=〔3〕

以上から
〔70〕÷〔3〕=23と1/3(分)

答え 1時23分20秒


(2) これまた、初級の旅人算となってしまいました。
〔70〕÷(〔28〕−〔3〕)=2と4/5(分)

答え 1時2分48秒

(3) これはちょっとやっかいですね。
正三角形の3つの頂点となることを聞かれているので、1周の距離を〔70〕から
70と3の最小公倍数である【210】に変えましょう。
当然ながら、
Aの分速=〔28〕×3=【84】
Bの分速=〔3〕×3=【9】
Cの分速=〔7〕×3=【21】
とするのを忘れないように。

で、次に、1周の距離【210】を3等分する距離=【70】なので
逆方向に進む遅い2点BとCとの距離が【70】になるとき
【140】になるときの、AとBの位置関係を調べ
ちょうど正三角形になる時刻を求めていけばよいですね。

まず、BとCとが【70】離れる時間を求めます。
【70】÷(【9】+【21】)=2と1/3(分)
このときのAとBとの距離を求めます。
(【84】−【9】)×2と1/3=【175】
よって、正三角形ではない。

次は
【140】÷(【9】+【21】)=4と2/3(分)
このときのAとBとの距離を求めます。
(【84】−【9】)×4と2/3=【350】
【350】÷【210】=1・・・【140】
この結果、Bから見て、反対方向に【140】(1周の2/3)ずつ離れた所にAとCがいると分かるので
正三角形の3つの頂点になっています。

答え 1時4分40秒
   

次は麻布の問題です。


麻布中
 ある池の周りをA君とB君は同じ方向に、C君は逆方向に、それぞれ一定の速さで回ります。A君はB君を15分ごとに追いこし、B君はC君と2分ごとに出会います。B君が7分かかって走る距離をC君を8分で走ります。このとき、A君とC君の速さの比を求めなさい。


解き方

これは設定がシンプルですから、比だけで解いてしまいましょう。
Bの分速を【8】、Cの分速を【7】とします。
また
(Aの分速−Bの分速):(Bの分速+Cの分速)=2:15
つまり
(Aの分速−【8】):(【8】+【7】)=2:15
なんて親切な設定でしょう。
ここから
Aの分速=【10】と求まります。

答え 10:7

次は雙葉の問題です。



雙葉中

 兄と妹は池の周りをA地点から同時に反対方向にまわり始めました。兄は自転車で、妹は犬をだいて歩きました。途中で犬は妹から離れて走り出し、その1分後に兄と犬が出会いました。出会った場所は、兄が1周の3/5進んだB地点です。
 兄の自転車の速さ、妹の歩く速さ、犬の走る速さの比は4:2:5です。兄がB地点についたのは、出発してから何分何秒後ですか。


解き方

これも比で解きます。
距離の比で考えていきましょう。
妹が犬を放すまでに進んだ兄と妹の距離の比
兄:妹=2:1
その後、B地点までの、兄と犬が進んだ距離の比
兄:犬=4:5

比の基準が違いますから
上の比を【2】と【1】
下の比を〔4〕と〔5〕
と表します。
すると、次の式ができます。
(【2】+〔4〕):(【1】+〔5〕)=3:2
この後の処理は線分図を使ってもできますが、
表記が楽なので、比例式の処理で解きます。

内項の積=外項の積を使って
【3】+〔15〕=【4】+〔8〕
整理して
〔7〕=【1】

つまり
兄が始めに進んだ距離【2】は
〔14〕と表せます。
兄が1分で進んだ距離が〔4〕です。
出発してからB地点までに兄が進んだ距離は
〔14〕+〔4〕=〔18〕ですから
1分×(18/4)=4.5(分)

答え 4分30秒後

どうでしょう、これだけ似た問題が同じ年に出題されたのは面白い現象だと思いませんか。
また、速さの問題ではありませんが、次の問題も解くための発想の仕方はほとんど同じです。
難関校も、基本を確実に身につけた子供を選びたがってきたということでしょうか。



女子学院中
 お楽しみ会の係になりました。予算の金額で、ジュースはちょうど90本買うことができます。サンドイッチならばちょうど36個、ケーキならばちょうど40個買うことができます。ジュース1本とサンドイッチ1個とケーキ1個を1組にして1人分にすると、予算内で全員分を買うことができ、お金は360円余ります。人数がもう1人多いと、予算では足りません。

(1) お楽しみ会の人数は何人ですか。

(2) 予算はいくらですか。


解き方

(1) 90と36と40の最小公倍数の360を使います。
これを全体の予算とおきます。
つまり
全体の予算=〔360〕です。
すると
ジュースの単価=〔4〕
サンドイッチの単価=〔10〕
ケーキの単価=〔9〕
となります。
1人分は〔4〕+〔10〕+〔9〕=〔23〕
〔360〕÷〔23〕=15・・・〔15〕
以上より、人数は15人と分かります。

答え 15人

(2) 余りの〔15〕が実際には360円ですから
360円÷〔15〕×〔360〕=8640円

答え 8640円

以上、簡単に、今年の入試問題を解説しました。
これからの学習のヒントにしてください。




◎当塾の指導方針は、とにかく分かりやすくと言うことです。それが個別指導の価値です。

◎また、様々な別解のストックもあります。お子さんに合う解法が示せると思います。

◎集団塾のフォローの場合は、なるべく集団塾で習ってきたやり方を生かすようにしますが、
場合によっては、こんな方法もあるよという形で、別解を指導することもあります。
(ただし、あくまでお子さんの力を伸ばすのが目的ですから、混乱させるようなことがないよう万全の配慮をします。)