久保田塾
トップページ








 

   

2006年中学入試・興味深い問題 (算数)

(本年の入試の面白い問題を紹介します。) (2006年3月5日更新)

桜蔭中  開成中  函館ラサール中  那須高原海城中


桜蔭中
 9日間でマフラー、ぼうしを毛糸で編むことにしました。毛糸は足りなくならないように少し多めに買うことにしました。1玉400円の毛糸Aと1玉500円の毛糸Bの両方を買いました。代金はちょうど5000円でした。
 マフラーを1本編むのに毛糸Aではちょうど4玉必要で、毛糸Bではちょうど3玉必要です。ぼうしを1つ編むのに毛糸Aではちょうど3玉、毛糸Bではちょうど2玉必要です。
 毎日必ず毛糸A、毛糸Bのどちらか1玉分編み、9日後、編みかけのものはないように作っていきました。また、1つの作品は毛糸Aか毛糸Bのどちらか1種類の毛糸で編みました。
 次の問いに答えなさい。(1)(2)とも考えられる組を解答らんにすべて書きなさい。解答らんは全部使うとは限りません。

(1) 毛糸A、毛糸Bをそれぞれ何玉ずつ買いましたか。

(2) このときAで編んだマフラー、Bで編んだマフラー、Aで編んだぼうし、Bで編んだぼうしの個数はそれぞれ何個ずつですか。ただし、マフラーかぼうしのどちらかだけを編んでもよいこととします。


解き方

正直に言います。初めて読んだとき、すぐには何を言っているのかはっきりとはつかめませんでした。
やはり桜蔭ということで、こちらも構えてしまっていたのでしょうか。
段々意味が分かってきたとき、「エッ、そんな簡単なことを聞いてたの!?」と思ってしまいました。
だって、単純な足し算の問題だからです。

しいて言えば、いわゆる「いもづる算」というのになるのでしょうか。
桜蔭は「いもづる算」が好きです。2004年の3番もそうでした。
それに比べると、これは何て簡素な問題でしょう。でも問題全体は決して単純ではないですね。
考えさせるポイントは作ってあります。
私なんて、そもそも、問題の意味がすぐにはつかめなかったんですからね。(笑)

まず(1)から。
これは「いもづる算」の一番基本的な問題。
5000円÷500円=10玉(Bだけ買ったとした個数)
ところが両方買ったとあるから、これは駄目。
で、入れ替える。
500円と400円の最小公倍数は2000円だから
Bを4個減らせばAを5個増やせる。
だからまずA5玉B6玉が作れる。
Bはもう1回減らせるから
A10玉B2玉も作れる。
Bをこれ以上減らすことはできないので答えはこの2通り。

次に(2)
これがまさに単純な足し算の問題ですね。
マフラーとぼうしのそれぞれに毛糸が何玉いるかまとめておきましょう。

  毛糸A 毛糸B
マフラー 4玉 3玉
ぼうし 3玉 2玉

この他の条件もまとめておきましょう。
〔その1〕毎日必ずどちらか1玉分編む。
〔その2〕9日編む。編みかけはない。
〔その3〕一つの作品はどちらか1種類の毛糸で編む。

要は、2とか3とか4とかをうまく足して、ちょうど9になるようにしていけば良いということです。
そう、単純な足し算の問題なんです。

まず毛糸Aを10玉、毛糸Bを2玉買ったとき。
Aで作れるのは3か4。
Bで作れるのは2だけ。
すると次のような足し算が考えられます。
Bが2だけなので、Bから考えると楽ですね。

B2玉(ぼうし)+A3玉(ぼうし)+A4玉(マフラー)
Bを使うときはこれしか出来ない。
次にBを使わないときを考える。
A3玉(ぼうし)+A3玉(ぼうし)+A3玉(ぼうし)
これしか無理ですね。

次に毛糸Aを5玉、毛糸Bを6玉買ったとき。
Aで作れるのは3か4。
Bで作れるのは2か3。
今度はどれもありということですから、数の大きいAから考えていきます。
Aは3か4を1回しか作れませんね。だからAから考えるのです。(こういうところが大事!
まずA3のとき。Bは2+2+2か3+3しか作れません。
次にA4のとき。Bは2+3しか作れませんね。

どうです。こうして見ると何て簡素な問題なんでしょう。
ただし、思いつきでダラダラ書き出しても漏れがあるかないかが分かりません。
だから、今説明した手順をしっかりマスターしてください。
どういう時に、どちらから考えるのか。これが大事です。

「いもづる算」と言うか、こうした書き出し系の問題は、上位校では必須です。
今年は開成でも似た発想の問題が出ていました。
まずこの桜蔭の問題をしっかり理解し、開成の問題にも挑戦してみてください。
開成の1番です。
開成の1番もただの足し算の問題でした。

それではその開成の1番に進みましょう。


開成中
 100円玉を投げて、着地したときに表の面がが出たら○を、裏の面が出たら×を記録することにします。

100円玉を投げて、その裏表に応じて○か×を、右の図のようなマス目に、左から順に書き入れます。このとき、次の決まりにしたがって点数が得られます。
           

(決まり1)○1つにつき、2点を得る。
(決まり2)×1つにつき、1点を得る。
(決まり3)「×のすぐ右どなりに○がある」場所が1か所あるごとに、3点ずつ得る。

たとえば100円玉を6回投げて、順に表・裏・表・表・表・裏が出たとすると、右の図のような○×の配列ができます。このとき、○が4つ、×が2つあり、「×のすぐ右どなりに○がある」場所が1か所あるので、得点は
  2×4+1×2+3×1=13
で、13点となります。
×
×

(1) 解答らんに、得点が15点となるような○×の配列を、1つ書きなさい。

(2) 解答らんに、得点が11点となるような○×の配列を、すべて書き出しなさい。ただし、解答らんはすべて使うとは限りません。



解き方

どうです、さっきの桜蔭の問題と似ているでしょう。表面的には違う問題のように見えますが、やること、考え方はほとんど同じです。偶然とは言え、面白いですね。

(1) 3つある決まりのどの場合も必ず点が得られますから、ただ足し算するだけです。開成って、こんなに親切な学校になったんですね。(笑)
全部○でも2×6=12で、12点にしかなりませんから、15点にするには(決まり3)も必要です。
ここで足し算の登場です。
2の倍数(決まり1の点数)+1の倍数(決まり2の点数)+3の倍数(決まり3の点数)=15
です。
 ここで大事なのは、3点の個数は1点の個数以下ということです。これだけ守れば良いのですから、下のような表を作ってしまえば楽ですね。
(理由は分かりますよね。×がないと(決まり3)が使えませんからね。)

2点の個数
1点の個数
3点の個数
合計点数
合うかどうか
10+1+3=14
だめ
8+2+6=16
だめ
8+2+3=13
だめ
6+3+9=18
だめ
6+3+6=15
やった〜!

1つ書けば良いので、これ以上やる必要はありません。(ホッ)
つまり、○が3個、×が3個で、×○の並ぶ所が2か所あるような配列を書けば正解です。
×○×○○×
で良いですね。
他にも色々ありますが、どうすれば良いかのポイントは分かりましたね。
  (1)でここまでやっておけば(2)は楽勝です。
ただし、油断してはいけません。今度は「すべて書き出しなさい」ですからね。

(2) (1)と同じような表を作って考えれば良いのですが、(1)である程度わかってきているので、もうあたりを付けていけば良いですね。
 まず11点ですから、当然×が入ります。
 だから、まず×と○だけで何点ができるかを考えます。

2×5+1×1=11(あれ、いきなりピッタシカンカンです。(古い?))
2×4+1×2=10(そう、1つ入れ替えるたびに1点ずつ下がりますね)
 すると、11−3=8だから、なんだ2のA倍と1のB倍で8を作れば良いんだと分かります。
勿論A+B=6は忘れないように。
3回入れ替えれば良いので、2×2+1×4ですね。勿論答えは8になりますね。
 ついでですから11−6=5も考えておきましょう。
さらに3回入れ替えれば良いので、2×
あれ、もう入れ替えられませんでした。ということで、2つのケースしかないと分かりました。

はい、まとめます。
(ケースその1)2×5+1×1+3×0=11
(ケースその2)2×2+1×4+3×1=11

(ケースその1)は簡単です。
×が1つだけで、その右に○が来ないようにすれば良いのだから最後に×を置くしかありません。
と言うことで
○○○○○×
となります。

(ケースその2)は×○の場所を1か所にして×を4個入れれば良いので次のような配列になります。
赤くなっている所が(決まり3)の場所です。
ここでも、一定の決まりで書き出していきます。
極端なものを作って、徐々に変えていくということです。(ここ、すご〜く大事!
まず○を2つつなげてしまえば良いですね。
×○○×××
××○○××
×××○○×
××××○
次に先に1つ○を置いてしまうパターンを考えます。
×○×××
○××○××
○×××○×
○××××○

さあどうでしたか。
足し算だけでこんなにも色々な事が考えられるんですね。

他にも似たような書き出しの問題があちこちの学校で出ていました。
私が見た中では武蔵、栄東(東大選抜)など。
でも、桜蔭と開成のこの2問が一番すっきりしていました。
こうした問題に慣れるのに最適だと思います。
「解き方」をしっかり読んで自分でノートに実際に書き出していってみてください。
そうすると、こうした問題にどうアプローチしていけば良いのかが実感できるようになると思います。

さて次は「数の性質」です。
この分野も出題校が多いですね。


函館ラサール中(東京会場)
1から50までの50個の数字をつないで、大きな数
123456789101112・・・・・484950を作りました。この大きな数を9で割った時の余りはいくらですか。



解き方

ある数が9で割り切れるかどうかは、各位の数字を足して、それが9で割れるかで判断できるというのは知っていると思います。
なぜでしょうか。
例えば、ある4桁の数ABCD(A千B百C十D)というのがあったとします。
これはきちんと式で書くと、1000×A+100×B+10×C+Dという数です。
この式は次のように変形できます。
 999×A+A+99×B+B+9×C+C+D
=999×A+99×B+9×C+A+B+C+D
9×(111×A+11×B+1×C)A+B+C+D
上の式をみると、最初に与えられた数は9の倍数各位の数の和を足した形になっていると分かります。今は4桁の数を例にして説明しましたが、この変形は、もとの数が何桁だろうが同じように行うことができます。
だから、各位の数の和が9で割り切れれば、その数は必ず9で割り切れるのです。
すると、その和以外の部分は必ず9の倍数なのだから、その和の部分を9で割った余りがその数自体を9で割った余りと同じ数になるということも言えます。
ですから、この問題は、各位の数の和を求め、それを9で割った余りが答えとなるということになります。

では、問題の数の各位の数の和はどうやって求めるか。
1〜50までの各位の数を下のように分類していきます。
まず書き出してみます。
1,2,3,4,5,6,7,8,9,
10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,
20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,
30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,
40,41,42,43,44,45,46,47,48,49,
50
分類していきます。
@1桁の数 (1〜9)が1セット。
A2桁の数の一の位の数 (1〜9)が4セット。
B2桁の数の十の位の数 (1〜4)の各数10個ずつが1セットと5。
以上を足してみます。まず大ざっぱに書きます。
(1〜9)×(1+4)・・・・・@とAの合計
(1〜4)×10+5・・・・・B
きちんと式として計算していきましょう。
@とAの合計=(1+9)×9÷2×5=10×9÷2×5=25×9
B=(1+4)×4÷2×10+5=105
この2つの数の合計を9で割った数の余りが答えです。ところが、@とAの合計はすでに9の倍数ですから、Bの合計の105を9で割った余りが答えとなります。
ということで、105÷9=11・・・6ですから、答えは6です。

 

「数の性質」は大事な単元です。今年も各校で様々な出題がされるでしょう。
この解説をしっかり理解しておいてください。

次は「時計算」の多少変わった問題です。


那須高原海城中(東京会場)
 太郎君の家の時計が、電池が切れて止まってしまい、正しい時間がわからなくなりました。太郎君は新しい電池を入れ、時間を予想して、時計を11時50分に合わせて、すぐに家を出て公園に向かって歩き出しました。公園に着くと同時に、公園の柱時計が11時42分をさしているのを確認すると、すぐに引き返し、行きと同じ道を同じ速さで歩いて家に向かいました。家に着いてすぐに時計を見ると、12時16分をさしていました。
 公園の柱時計は正しく回っているものとして、次の問いに答えなさい。

(1) 家の時計を正しく合わせるためには、時計をさらに何分進ませるまたは遅らせる必要がありますか。

(2) 公園の柱時計が、11時49分をさしたとき、家の時計の長針と短針の間のせまい方の角は何度でしたか。



解き方

これは合っているかどうかというより、何分で正解できるかというレベルの問題かもしれません。

(1)公園までの往復には何分かかったか。
   12時16分−11時50分=26分
   だから、片道には13分かかった。
すると家を出るときの正しい時刻は何時だったか。
   11時42分−13分=11時29分
つまり、最初に11時50分に合わせた時、21分進ませすぎていた。
だから、答えは、「21分遅らせる」となります。

(2)家の時計は21分進んでいたのだから、公園の時計が11時49分の時、家の時計は何時を指しているか。
   11時49分+21分=12時10分
後はふつうの時計算の問題ですね。
詳しい解法は省略。
答えは55度です。

 

 

 


◎当塾の指導方針は、とにかく分かりやすくと言うことです。それが個別指導の価値です。

◎また、様々な別解のストックもあります。お子さんに合う解法が示せると思います。

◎集団塾のフォローの場合は、なるべく集団塾で習ってきたやり方を生かすようにしますが、
場合によっては、こんな方法もあるよという形で、別解を指導することもあります。
(ただし、あくまでお子さんの力を伸ばすのが目的ですから、混乱させるようなことがないよう万全の配慮をします。)