ドクターKuboの年金時事通信

禁・無断転載等

5-065号
2005年8月18日発行

年金論争 隠せぬ「痛み」
2005年8月13日 日経朝刊1面

与野党共同のスウェーデン年金改革の「成功体験にならうはずだった日本の合同会議は衆院解散のあおりで雲散霧消した」ことについて、「迷惑するのは国民だ。…社会保障政策をもてあそんでいる時間の余裕はない。」とする大林尚編集委員の論説である。
「年金制度をはじめとする社会保障制度改革に関する両院合同会議」は、2005年4月8日から7月29日まで8回実施され、「一定の意義はあった」と思われる。議事録もすべて公開されている(http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_kaigiroku.htm)。
中身を振り返ると、第1回(4月8日)は委員紹介だけだが、会長は与謝野馨氏(自民党)、会長代理は仙谷由人氏(民主党)で、両院の各党会派代表35名が参加している。
第2回(4月14日)では、各党代表者から基本的考え方が説明されている。民主党からは、岡田党首が説明されている。この回に限らず、与党は2004年年金改定を礼賛し、野党は攻撃するというパターンが続く。立場上仕方ないのだろうが、批判合戦部分は有益ではない。自営業者の所得把握や税方式の是非の問題がとりあげられている。
第3回(4月22日)では、年金一元化に対する各党の考え方の違いが論じられている。与党は、共済年金と厚生年金を被用者年金として一元化することを念頭に置いているが、民主党は国民年金を含む全公的年金の一元化を主張している。前者の被用者年金の一元化は、いずれにしても必要になるのだから、早急に実行できないものだろうか。
第4回(6月6日)では、与党側が現行制度を是とし、民主党の一元化案に対する問題提起を集中的に行ったきらいがある。対して、民主党側からは、抜本的な改革を検討しようというのでなければ意味がない、という反発が強く出てきている。
第5回(6月30日)では、「公的年金制度の必要性」についての議論が行われている。この必要性に関しては、各党間で大きな違いはないように思える。集約すれば、「長生きのリスクに備える国民連帯の仕組み」として必要ということになるだろう。意見が分かれるのは、「国民皆年金」の実質を確保する仕組みについての考え方であろう。
第6回(7月8日)では、「国民年金の位置付け」についての議論が行われている。ここで最も重要なのは、「(基礎年金の)負担の構造は、国民年金とその他の被用者年金とでは異なったままで放置されています」(民主党)という問題意識であろう。与党の一部から出てきている定額保険料の正当化の意見には、とても賛成できない。
第7回(7月22日)では、「国民皆年金の意義」についての議論が行われて、機会の保障(国民皆保険)か結果の保障(税方式の国民皆年金)かが論じられている。最後の第8回(7月29日)には、「国民年金と生活保護の関係」についての議論が行われている。
議事録を見ていると、やはり与野党合同の議論には価値があると思える。選挙が終わったら、是非、議論を再開して、日本の将来を論じ続けて欲しいものである。(以上)

年金数理人 久保 知行 (ご意見・ご質問は、kubonenkin@jcom.home.ne.jpまで)