MEのダウンジャケット

「マウンテン・エキップメント」略して「M.E.」はイギリスの登山用品メーカー。良質なシュラフやダウンジャケットなどで知られている。

 

イギリスという国は世界で初めてアルパイン・クラブを作り、またエベレストの初登頂など、登山の世界では常に一歩先行く存在の国なのだが、なぜか山道具では「カリマー」のザック以外はあまり知られていないようである。

もうだいぶ前だが、私が大学生の頃、本来、厳冬期用の登山ウェアであるダウンジャケットが街着として爆発的に流行った時期があった。

その頃の一番人気は何と言ってもフランス・アノラルプ社のR・ドメゾンモデルで、「日焼けしたサーファーたちが冬はダウンジャケットの下に白のTシャツ一枚でキメるのがオシャレ」と雑誌「POPEYE」などで紹介されていたように思う。

そんなわけでダウンジャケットの地位が山やアウトドアとはまるで無関係なシティボーイの普段着として落ちてしまった(?)ため、私が山ヤの一人としてダウンジャケットを選ぶ際には彼らとは一線を画す必要があった。(別にそこまで決めつけるわけではないが…笑)

また、もう一つ古くからのブランドで「天山(テンシャン)」というのがあったが、こちらは中国産らしく値段は手頃で良いのだが、実用一点張りのデザインで今一つアカヌケなかったので躊躇していた。そんな時、突然現れたのがこの「マウンテン・エキップメント」社のダウン・ジャケットだった。

あのクリス・ボニントン率いる1970年代のイギリス・アンナプルナ南壁やエベレスト南西壁エクスペディションでも採用されたというのが、いかにもプロ仕様といった感じで、男心をそそられてしまう(笑)。

私の買った「アンナプルナ」というモデルは1980年頃、たしか3万8千円位だったと思う。

当時の私にとってその金額はかなりのもので、冬用のオーダー登山靴とほぼ同じ値段だったため、買う時はまさに清水の舞台から飛び降りるのに近い勇気が必要だった。しかし、ジャケットの裏側にはこちらの気持ちを見透かしたようにアンナプルナ南壁のイラスト入りタグなどが縫いつけてあり、私の心をくすぐるにはそれは十二分の効果だった。

あれから二十年近く経ち、だいぶヘタってきたものの、今でも冬の比較的高い山へ行く時だけはこのダウンジャケットをザックの中へ入れていく。街中や近場のキャンプではもったいなくてあまり着ないので、おそらく私の山道具の中でも一番の贅沢品だと思う。

 

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