ヒマラヤの巨大ウンコ

私はどちらかというと胃腸が弱い方だと思う。最近はそうでもなくなったが、例えば環境が変わったりストレスが溜まったりすると、腹がゴロゴロして、どうにも調子が悪くなってしまう。山では大抵便秘気味で、合宿の時など3〜4日しないのは当たり前。一日一回快適に出るなんてまずないのが普通である。

ところが二十歳の春に、初めてヒマラヤ(インド・ガンゴトリ山群)へ出かけ、標高約四千メートルのベースキャンプで数日間を過ごした時はまるで様子が違った。
 とにかく、ウンコがよく出るのである。しかも太く、怖ろしく長いっ!それは「快便」というより、むしろ「怪便」というべきモノだった。朝、テントの中で目を覚ましシュラフから抜けだすと、コックのデベンダールからモーニング・チャイをもらう。安物の葉っぱたばこで一服すると氷河の片隅に掘った隊専用の穴ぼこトイレへ向かう。

大自然の中での排便行為ほど気持ちのイイものはない。見上げれば、頭上には六千m級の切り立った岩壁。その前を大きな鳥が悠然と飛んでいく。空と雲、そして白く輝く山…。氷河の粗々しい景観を眺めながら用を足す。大体、一本の直径が6〜7センチ、長さが約45センチといったところだろうか。それが二本、三本と立て続けに出るのである。(すみません、キタナイ話で…)

後からトイレに着た同行のMさんはテントに戻ってくるなり、「スゲェなぁ、あのウンコ!お前の?」と呆れた様子。そんなこと言われたって、本人だって驚いているのだ。ちなみに私は身長170センチ,体重58キロ。けっして大男ではない。

一体、これはどうしたわけなのだろう?自分なりに考えてみたが、

1 その頃は現地食のチャパティばかり食べていて、肉類をほとんど摂っていなかった。

2 氷河から流れる不純物の混ざっていない天然の水が身体に良い作用をした。

3 毎日の荷揚げと薄い空気の中で激しい呼吸を繰り返すことにより新陳代謝が促進され、異常に消化が良くなった。

4 ヒマラヤという下界から遮断された環境の中で、日頃のストレスから解放された。

 などが理由として考えられる。

たしかに、その後、上部キャンプに上がって食事がジフィーズなどの携帯食になってからは、便の状態は普通もしくは便秘気味になってしまったので、少なくともチャパティが巨大ウンコの素になっているという仮説は多少なりとも当たっているかもしれない。あの時以来、山でも町でもあのような巨大なモノは出したことがない。

もし、あの後、私の残したモノを後からどこかの国の登山隊が見たらどう思ったことだろう。もしかしたら、「これは絶対、雪男のモノに違いない!」なんて騒ぎになったりして…(笑)。

 1999.9.2〉

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