大股登山のススメ

少し前に「日本百名山よじ登り」(クレイグ・マクラクラン著、小学館文庫)という本を読んだ。

これは、あの有名な登山家、重広恒夫氏が120日ほどをかけて百名山踏破を果たした直後に、二人のニュージーランド人がわずか70日余りで達成してしまった有様をオモシロおかしく綴った登山珍道記である。

 

北海道から九州にまで散らばる百名山をわずか2ケ月半で登るため、彼らは時には一日に3つの山を片づけてしまったり、通行止めとなっている道路を車で強行突破したりと、実に破天荒な登山を繰り広げる。しかし、その成功の陰に彼らの日本人離れした(当たり前か)歩き方、特に歩幅の大きさが影響していると思う。

本の中にはいくつかの登山中のスナップ写真が掲載されているが、それらを見てもかなり大股で歩いているのがわかる。考えてみるとマラソンなどでも日本人はどちらかというとピッチ走法を得意としているのに対して、欧米人ランナーは実にダイナミックな走り方をしている。

また、日本の登山入門書などでも、バテないための歩き方として必ずといっていいほど「歩幅を小さく」と書いてある。しかし、かつては運動中に水を飲むとバテるから飲んではいけないなどと言われていたことが、現在ではまったく非常識となっているように、山登りでも本当に歩幅を小さくして歩く方が得策なのだろうか?

昔から欧米人と日本人の歩幅については背の高さを別にしてもかなりの差があることが指摘されていたが、この辺りはもっと研究してみる価値がありそうだ。

 

私は以前インドへ行った時、デリーで現役のシェルパと知り合った。彼はエベレストを始めとしていくつかの八千メートル峰、さらには当時世界で最も難しいと言われていたガウリサンカール峰などにも登頂した経験があるらしく、自分の登山ツアー事務所まで持っている。おそらく多くのシェルパの中でもそれなりの実力と経験の持ち主なのだろう。

その彼と私はたまたま暇だったので、2〜3日の間、デリーの街を散歩したりしたのだが、彼の普段の歩き方がスゴかった。とにかく歩幅が大股で、「ガシガシ!」といった形容がピッタリくるほど、どんどん先へ行ってしまうのである。まるで大きな鷲が足で獲物を掴むようなといった感じだろうか。普通の歩き方ではとてもついていけず、彼と歩く時は小走りで汗をかきながらといった有様だった。あの歩き方を見たら、誰だって「ああ、日本人はどうガンバッテみても、絶対にシェルパには勝てっこないな。」と思った次第である。

 

もし、あなたが山歩きのレベルアップを考えていたり、登山競走に出てみようと思っているようなら、ぜひ、普段の街での歩き方から、この「大股歩行」を試してみてはいかがでしょう。それなりの効果は絶対にあると思うのだが。

2000.5.3〉

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