わがアウトドア・カメラ遍歴 1

 今回は私が今まで山で使ってきたカメラにまつわる話を…。

 山へ登り始めた高校・大学の頃はあまり写真に興味もなく、ただガツガツ登るだけだった。しかし、そのうち一人で行く時などやはり記録として写真を残しておきたいと思うようになり、父親のカメラを何度か借りたりした。
 それはキャノンの「キャノネット」と呼ばれるレンジファインダー型のもので、絞り優先の簡易マニュアル機。たまに自分でも思いがけないほどカチッとした綺麗な写真が撮れたが、手動でピントを合わせるのが難しく、動きのある人物を撮る時など面倒で仕方がなかった。
 十月の連休の頃、谷川岳・幽ノ沢へ出かけた時、このカメラが入っていたザックを誤って岩場の途中から落としてしまったことがある。
 カールボーデンと呼ばれる下の岩場まで延々と二百メートル。どこまでも落ちていくザックを見て真っ青になってしまった。急いで岩場を駆け下り、ザックの元へ近づくとザック表面のナイロン生地がザックリ切れており、おそらくカメラもバラバラだろうと思って覚悟を決めた。
 ところが中を開けると、きちんとセーターにくるまっていて無傷。まるで自分の命が助かったかのようにホッとした。それ以来、岩登りの時にはあまりカメラを持たないようになってしまった。おかげで最もクライミング熱が盛んだった頃の写真がほとんどないので、今では少し後悔しているが。
 椎名誠氏率いる「イヤハヤ隊」のメンバー、山岳カメラマンの岡田昇氏などはかつて日本の岩場ルートのフォトガイドを出していたが、多少なりとも岩登りをかじった私としては、ああいった所できちんとした写真を撮れるなんて本当にスゴイ!と尊敬してしまう。

 二台目のカメラは、ヒマラヤへ行く直前に買ったリコーのFFという超コンパクト・カメラ。前部の蓋をパカッと開けると小さなレンズが飛び出すタイプ。厳しい条件化でも胸ポケットに入る大きさならジャマにならないだろうと思って選んだ。これはデザインも良く使い勝手も悪くなかったが、ちょっとした失敗もあった。その時の遠征では隊長のMさんが写真通で
「やはり、めったに行けない所へ行くのだから、ちょっと高くても綺麗なリバーサル(スライド用)フィルムを使った方が良い。」
と教えてもらい、町から山麓までは感度100、山に入ってからは感度64のリバーサルフィルムりを使い分けることにした。
 ところが、高度六千メートル近くになると思考能力もぼやけ、細かい操作などが極端に億劫になってしまう。結局、途中でカメラのフィルム感度設定を変えるのを忘れてしまい、せっかくの写真を露出オーバーにしてしまった。
 ちなみに他のメンバーたちはその時「オリンパスXA」や「フジHD−1」などを使っていた。特に「フジHD−1」は描写も良く、いかにもハードな山向きでいいカメラだと思う。TVであの岩崎元郎さんが持っていたのを見たような気もする。この流れを現在に残しているのがおそらくあの「コニカ現場監督」だろう。
 ところで私の「リコー」だが、インドの山麓の村でキャンプした夜に盗まれてしまった。今でも悔しくて、つい最近も山梨県の塩山駅前のカメラ店で中古の同モデルを見つけ、しばらくジッと見つめてしまった(笑)。一体、今はどこの誰が持っているのだろう。

 三台目はオリンパスのカプセルカメラ「XA」。胸ポケットに入るコンパクトさときめ細かい描写はとても優れていたが、フェザータッチのシャッター、小さなマニュァル操作レバーは冬山で厚い手袋をしているとちょっと不便であった。
 こうして、それまで小型マニュアル機を継続して使ってきたが、十年ほど前からさすがに咄嗟の時にオートフォーカス機が欲しくなり、四台目はオリンパスの「AF−1ツイン」というのを買った。35mm/75mmの二焦点切替、防露仕様だが、冬の八ヶ岳に行った時は、レンズカバーやシャッターが凍ってしまい、ウンともスンとも言わなくなってしまった。最近のAFコンパクトズームカメラは、操作は簡単でいいのだが、全て電池に頼ってしまうため、雨や寒さなどのつきまとうハードな条件下ではやはり厳しいようである。
 こうして私のアウトドアに適したカメラ探しはいまだに試行錯誤を繰り返しているのである。

2000.1.8〉

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