2002年11月11日。良く晴れた晩秋の東京・水道橋。

次第に暗くなる夕暮れの中で、やがて巨大な東京ドームは白くライトアップされ、これから始まる一大イベントに向け静かに熱気をはらんでいるようであった。

 

「ポール・マッカートニー・コンサート"Driving JAPAN"」

今回、ポールが再び日本へ来ると聞いて、これは何があっても絶対に行かなければならないなと予感した。

今までの来日では、こんな気持ちにはならなかった。

まぁ、わざわざ高い金払って見に行かなくても。レコードやCDで十分じゃないか。

ポールももう還暦だし、昔のままでいるはずがない。ヘタに行ったらガッカリするかもしれないぞ。

そう思っていたのが、今回はなにが何でもという気持ちになっていた。

ジョンがいなくなり、ジョージもこの世を去った。ポールもこれが最後かも・・・。

ビートルズを実際にこの目で見、この耳で聞く最後のチャンス。そんな気がした。

実際、今回のコンサートはポール最後のワールドツアーになるだろうと言われ、ポールもそれを意識してか曲目もビートルズ・ナンバー中心のアンソロジー的構成のようだ。行くしかない!

 

午後7時開演だが、すでに開始時間はだいぶ遅れている。

席はアリーナの後方。ステージからはだいぶ離れているが真正面なのが救いだ。

そのうち、ようやくオープニングアクトが始まった。

青空に白い雲をイメージした巨大バルーン、大きな花びらのバルーン、そして巨大な提灯?のバルーンがステージの袖から順繰りに現れる。提灯にはなぜか「愛情」とか「平和」なん漢字で書いてある。

その後、何だか中国の演舞のような中近東の民族舞踏のようなダンス・パフォーマンスが繰り広げられ、

「うーん、これは一体何なんだ??」終いには「早くポールを出せ!」って感じでちょっとジレったかった。

それでも何とか終わってくれて、いきなりバァーン!とステージに大きなベースギターのシルエット。

うぉぉぉっ、ポールだ!回りが一気にいきり立つ。

「ユ・セイッ・イェス♪・・・」

Hello good-bye

第一声でいきなり頭がガーン!となる。

マジか!ポールだ!本物だ!

紫のジャケットに真っ赤なシャツ。カッコ良すぎ!

ビートルズを生で聴いているということが、今自分がここにいることが信じられなかった。

スゲェ!回りのみんなも一気にハイ・テンション。手拍子、声を合わせて踊っている。

「・・・グッバ゛・バ゛・バ・バ゛バ゛Woooオー・ノォー♪ユぅ・セイ・グッバイ、アナィ・セイ・ハロー♪・・・」

 

そして・・・ジャーンジャッジャッジャァーン!ジャーンジャッジャッジャァーン!

やばい!これは来るよ来るよ、来た来た来たぁーっ!

Jet!!!

「・・・WoooWoooWoooWooo・・・ジェェット!!!」

もう全員、拳を突き上げちゃってるよ。二曲目で早くも大コーフンの渦!

ドームが揺れちゃってる!スゴ過ぎるっ!

「・・・ジェェット!!!」

 

続いて、たたみかけるように

All my loving

「クロゥ・ジョー・ライ・・・♪」もう完全に60年代にタイムスリップ。

分割されたステージ上部のスクリーンにあの頃のモノクロ映像が映し出される。

いいのかよ、こんなに出し惜しみせずに次々と、って感じ。

ステージ上部のスクリーンに若かりし頃の4人のモノクロ映像。

隣のオバサンはもう跳びはねちゃっているし、涙ぬぐってる人もいる。

やばいよ、こっちまで泣けてきた。

 

「次の曲はシックスティーズ(60年代)に作ったんだけど・・・」と言って

Getting better

フツーこう来るか??レアだ。レア過ぎる!もう頭の中はサイケ!トリップ状態。

「サンキュー、トキオー。ミナサンハ、スバラシィー!」

ポールが日本語で呼び掛ける。

 

続いて

Coming up

ビートルズから離れてフッと息が抜け、ちょっと落ち着く。

 

「休みがもらえて雨の日にドライブしたんだけど、とても楽しかったよ。」と前振りした後、

Driving rain

 

アコースティックギターを肩にかけ、

「次の曲はナンタラカンタラで・・・(人種差別などの話に触れ)」最後に

日本語で「ジンケン・モンダーイ」と言い、

Blackbird

楽器はポールのギターのみ。何とも贅沢な弾き語り。

誰かが言ってた(パンフに書いてあったか?)

何だかポールの部屋に遊びに来たら、彼が即興で歌ってくれたって感じ。

まさにアコースティックの極み!シブい!

 

Every Night

We can work it out

この歌も好きだ。途中からテンポがワルツ調になるんだ。

 

You never give me your money 〜 Carry that weight

The fool on the hill

ビートルズのナンバーが続く。

この間、何度も持ってきたニコンの高倍率双眼鏡でステージを再確認。

当たり前だが、やっぱりポールだ!本物だ。口パクのそっくりさんじゃないぞ!

 

「目の前ではなかなか言えないことがある。でも、言うべきことはちゃんと言ったほうがいい。

相手がいなくしまってからでは遅いんだ・・・」とポールが語り始める。

会場が静まる。「次の曲は、親友ジョンに・・・。」と言って

Here today

(この曲も良かったが実はあまり知らなくて、できればそうIn my lifeなんか歌ってくれたら号泣してたかも?)

 

次はウクレレを持ち出した。このウクレレはジョージがくれたとかなんとか言っている。そして、

Something

もちろんポールならではアレンジ。

「こんな風にジョージに歌ったんだ。そしたらジョージは、そうじゃない、こう歌うんだと言って」

ハイテンポの明るいリズムで少しだけSomethingを歌い、笑った。

 

バンドのメンバーが再び戻り

Eleanor Rigby

またしても「アァーッ、ルカッォール・ロンリー・ピーポォ・・・」と手拍子、大合唱。

 

Here, there and everywhere

自分の予想ではたぶんこの曲をポールが歌い出したら涙を止められないだろうと思っていた。

実際、涙がにじんできてどうしようもなかったが、流すほどじゃなかった。

それほどポールはサラッと歌っている。

何列か前に外国人のカップル集団がいて、この曲に合わせて肩を組んで揺れているのを見て

ああ、こういうのいいなぁって思った。

 

Michelle

Band on the run

アコースティックが続いていただけに次第にまた熱を帯びてくる。

 

そして「チャカチャカチャカチャー、チャカチャカチャカチャー・・・♪」

Back in the USSR!

もうポール全開!みんな踊りまくり!

「バッカなユーエス!バッカなユーエス!バッカなユーエセセアール!」

中盤最大の盛り上がりはこの曲だった。もうアリーナ席大変!

 

「次の曲はリンダに。」と言って

My love

まぁ、これは絶対歌うだろうなと思っていた。

 

バンドのメンバーから「次の曲は60年代にポールが作ったんだけど、コンサートでやるのは初めて。

だから生で聞くのはみんなが最初のはずだよ。」と紹介があり

She's leaving home

家出する若者が増えないようイギリスのTV番組のエンディングで流れた曲。

もちろん生で聴くなんて超レア!

 

Can't buy me love

これも年輩者ノリノリ。もうみんなどんどん踊ってくれい!

 

Live and let die (映画「007死ぬのはヤツらだ!」のテーマね)

ポールが「リブレッ・・・ダァイ」と歌うとステージ両袖が大爆発というド派手演出。

曲が終わると「心臓に悪いよ。」と左胸を押さえてハァハァ言ってるポールがまた笑いを誘う。

 

そしてLet it be

またしても感動の波が心を揺さぶる。

ほんとにポールが歌っているんだ。マザー・メアリー!なるがままになれ!

 

Hey Jude

以前、TVのドキュメンタリーで日本のある幼稚園の卒園式でこの曲を流している場面があって、

「おっ、ここの園長やるなぁ。」と感心したことがある。

御存知、ポールがジョンの息子ジュリアンへメッセージを託した曲。

生きていればいろんなことがある。辛いこと悲しいこと・・・。でもくよくよするなよ。

言ってみれば、ポール版「明日があるさ」(笑)

ラストはみんなで大合唱。

歌い終わるとポールが日本語で「ミナサンハ、スバラシィーッ!」と誉めてくれる。

小・中・高と音楽の時間に誉めてもらったことなまるで無いのに。何とポールが誉めてくれたんだぜ(笑)

大きな「日の丸」持ち出して振り回しているポール。(オリンピックかい、ポール。でも最高!)

 

ラストにふさわしい曲だが、当然アンコールはあるんだろうなとまだまだ気を許すわけにはいかない。

ビートルズはアンコールをしなかったけど、という多少の不安はあったが・・・。

と思っていたら、再びポールが現れた。

 

The long and winding road

おお、こう来たか!回りがざわめく。

この曲にもやはり個人的な思い入れがある。

20才の時、憧れのヒマラヤの頂上に立った時、頭の中にイメージとしてこの曲があった。

どこまでも青い空。延々と連なる白き山々。足下に今まで自分が歩いてきた長く曲がりくねった道・・・。

この曲を聴くと、あの頃を思い出す。

 

Lady Madonna

これもポールのピアノが素晴らしい!

I saw her standing there

またしても年輩者ノリノリ。斜め前のおばさん、なりふり構わずツイストしちゃってます!

 

アンコールもこれで3曲。ああ、これでもう終わりかな。

時間もだいぶ押してるしと思ったら、再びポールがやってきて手を振る。

そしてアコースティックで

Yesterday

これまでの全ての曲は多かれ少なかれ観客の手拍子、合唱が加わっていた。

もちろん、最高の音響システムでそれはポール自身の歌声を遮ることなく、ライブならでは迫力と興奮を相まってけっして不快を感じるものではなかった。

しかし、このYesterdayが始まると、5万人の声が怖いぐらいにピタッと止んだ。

誰が指示したわけじゃない。静まり返ったドームにただポールの歌声だけが静かに響く・・・。

みんな、わかっているんだ。これが歴史的瞬間であることを。

身体が震えた。スゴイっ!

 

「もっと続けたいけど、残念ながら、そろそろ終わりの時間だ。みんなだって、もう帰らないといけないだろう?」

ポールが言う。

今日は月曜。明日も仕事だ。でもポールさえその気ならこのまま朝までだって聴きたいぜ。

「ワンッ、トゥッ、スリッ、フォーッ!・・・」

Sgt. Peppers lonely hearts club band (reprise)

うぉぉぉっ、泣けるぜ。事前情報でやってくれると思っていたが、まさか本当にやってくれるとは・・・。

そして、そのまんまラストは

The end.

スクリーンに巨大な夕陽の映像が映し出される。

ああ、本当に終わりだ。夢のような2時間半。最高だ!(退屈だったというヤツ、前に出てこい!)

 

実際、この長丁場。よくライブだと音が割れたり、曲のスピードに乗れていなかったり、回りの客がうるさかったりと何らかの不満が残りそうだが、ポールは音をはずすでもなく、声が涸れるでもなく最高のパフォーマンスを見せてくれた。

還暦という年齢を考えるとまさに驚異的。

たぶん自分にとってこれが最後の生「ビートルズ」。この時代に生まれ、そして間に合って良かったとつくづく思う。

「ポール・マッカートニー」という存在を確かに感じられた永遠の時に感謝!

 

[曲目]

Hello goodbye

Jet

All my loving

Getting better

Coming up

Let me roll it

Lonely road

Driving rain

Your loving frame

Blackbird

Every night

We can work it out

You never give me your money〜Carry that weight

The fool on the hill

Here today (for Jhon)

Something (for George)

Eleanor Rigby

Michelle

Here there and everywhere

Band on the run

Back in the U.S.S.R.

Maybe I'm amazed

Let 'em in

My Love (for Linda)

She's leaving home

Can't buy me love

Live and let die

Let it be

Hey Jude

 

(アンコール1)

The long and winding road

Lady Madonna

I saw her standing there

 

(アンコール2)

Yesterday

Sgt. Pepper's Lonely Heart's Club Band (Reprise) 〜The End

 

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