GWの北ア 剱岳・小窓尾根−チンネ−早月尾根

 

日程:2008年5月1日夜行〜5日 三泊四日

同行:Ju9cho氏(おやぢれんじゃぁ隊 "Heaven Site")

色字下線部分をクリックすると写真が表示されます。


毎度高齢、・・いや恒例となった「おやぢれんじゃぁ隊」のGW合宿だが、今回は前年に続いてまたまた「ツルギ」。

前回の八ツ峰からさらにステップアップを図って、今回は西面のバリエーション小窓尾根〜早月尾根。さらに条件が良ければその間にチンネ登攀という贅沢なプランとした。

しかしながら、メンバーは休みの日程や仕事の都合、さらには身体の故障とまちまちあり、最終的には勝手知ったるju9cho氏と二人きり。

フツーのクライミングなら問題ないが、合宿と呼ぶには少々寂しい展開となった。

 

計画の方は、立案者の私がボンヤリしていたせいで、暦どおりの休みに合わせた現地までのアプローチは電車、バスとも既に満杯。

そこで一日早い日程に変更したのだが、結果的にはこれが幸いし、天気はバッチリ。誠にラッキーで快適な四日間を満喫した。

運も実力のうち?

 

前日(5/1夜)

 

東京駅でju9cho氏と落ち合い、深夜高速バスで富山まで。

数年前から頻尿気味の私は車内トイレの無いバスにいささかヒヤヒヤしたが、何とか問題なく現地までクリア。(ホッ・・)

富山に着く直前、北陸道のとあるサービス・エリアからは、朝陽の下、剱のギザギザの稜線がシルエットとなって浮かび、我々を迎えてくれた。

おー、やっぱ剱は迫力あるなぁ。

 

 

一日目(5/2) 天候:快晴

馬場島7:20−白萩川堰堤(取入口)−タカノスワリ(白萩川ゴルジュ)−小窓尾根取付(「雷岩」付近)10:15〜50−小窓尾根末端台地12:35−1,614mピーク−2,121mピーク15:20(幕営)

 

 朝早い富山駅から富山地方電鉄に乗って上市まで。そこからタクシーで馬場島へ入る。

 それにしても富山地電は哀愁の色濃いというか昭和レトロの匂いがプンプン。その懐かしい雰囲気に「鉄ちゃん」でもないのに思わず車両や駅舎などの写真を撮ってしまった。

 さて、馬場島だが私にとっては大学一年の春合宿以来だから実に三十年振り。

 その頃は途中の「伊折」までバスがあって、そこから雪深い道を重いキスリングを背負って馬場島まで二往復した思い出がある。(今、思い出しても暗い青春・・)

 行きのTAXIで地元の新聞を見て、このGW前半に小窓尾根で遭難事故があったことを知る。

 

 馬場島に着くと、これから小窓尾根へ入ろうとしているのは他に2パーティー。

 いずれも男性ばかりの三人組で話し言葉は関西系。若手グループは大学山岳部系?、中年組は老舗の山岳会といった感じ。

 今回のような体力系のバリエーションでは、荷物の分担などを考えると二人より三人の方が何かと有利で少々羨ましい。

  ちなみに直前に計った私のザックは、今回かなり切り詰めたにも関わらず20kgオーバー。ここ数年のGW山行と較べても一日長いだけあって少々重い。

 最近のKY言葉で言うところの「SS(正直しんどい)」というのが、本音である。

 

 右手の立山川を分け、左側、白萩川左岸の道を彼らの後を付いていく。

 この冬の日本海側はドカ雪だったので、残雪豊富かなと思っていたが、予想以上に解けるのが早く、むしろ例年より雪は少なめとか。

 そうこうしているうちに、白萩川に架かる橋を渡り、右岸へ。そのまま川に沿っていくと、「取入口」と呼ばれる堰堤に突き当たる。

 小奇麗な馬場島荘 最初の難関「取入口堰堤」

 ネットの記録などでは、GWの小窓尾根の関門はまずここから始まる白萩川の渡渉。

 事前の現地情報では、「何とか飛び石伝いに行けそう」とのことだったが、今見るととても靴を履いたまま渡るのは不可能。

 先行の中年三人組が堰堤に近づき左端から突破を試みるが、結局無理だったようで、すごすごと引き返してくる。

 うーん、さっそく困った。

 

 結局、我々は、比較的底が浅く、流れの穏やかそうな所を選んで渡渉を開始。

 ズボンの裾を捲くっただけでは濡れてしまうので、私はパンツ一丁になり、さらにザックが重たいのでロープと靴を先送りするため二便に分けて川を横断するが、素足に雪解け水の冷たさは筆舌に尽くし難い。

 「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ、くぅーっ!・・」

 およそイイ年をした社会人とは思えない呻き声を出し(^^;)、必死に痺れた足の冷たさに耐えるのみ。

  

 要領の良いju9cho氏は、沢登り用のネオプレーン・ソックスを持ってきていて、これがなかなか快適だったようだ。

 若手三人組はやはり違う箇所をパンツ一丁になり渡渉。

 彼らはなかなかの慎重派で、一人がまず空身で渡ってフィックスを張り、後から一人ずつ渡っていた。

 中年三人組はどこかに消えてしまったが、後で聞いたところによると下流にだいぶ戻って靴を履いたまま対岸に移動したとのこと。

 

 とりあえず堰堤を越え、そこからすぐに川は右へ蛇行する。

 ここでまた渡渉が出てくるが、何とか残っているスノーブリッジを見つけ、左岸から右岸へ。

 さらにもう一回、今度はかなり先細りとなった泥交じりのスノーブリッジを渡って再び左岸へ。

 この辺りが「タカノスワタリ」と呼ばれるゴルジュ帯だが、GWの小窓尾根、最初の核心はこれらの渡渉をどうクリアするかであろう。

 白萩川のゴルジュ帯「タカノスワリ」 不安定なスノー・ブリッジが続く。

しばらく行くと右手から池ノ谷が出合い、そこから左へ少し上がると小窓尾根の取付となる「雷岩」。

沢筋の右手にあってボルダリングできそうな岩というのが目印だったが、やや高い位置にあり、ちょっとわかりにくい。

一応、周辺の木に赤テープなどが残されている。

ここから右手の斜面をずり上がって小窓尾根の末端に取り付くのだが、かなりの急斜面。

なるべく楽な所を、と周辺を偵察するが、他にいい所もなし。

結局、若手三人組が少し上がった所で残置のトラロープを発見。

ここで間違いないだろうと、彼らの後を追って急斜面に取り付く。

 

仲間のNiizawa氏情報によると「以前行った北鎌沢の登りよりキツイと思います!(^^)v」とのことだったが、小窓末端尾根までの高低差はそれほどでなく、残雪の登り易い所をうまく選んでいけばそれほどキツくはなかった。

 小窓尾根の取付「雷岩」付近 小窓尾根下部は比較的緩やか

尾根の末端台地からは1,614m、1,990m、2,121mと三つのピークを残雪の斜面を、右手の剱を見ながらただダラダラと登っていくだけ。

それでも相方のju9cho氏はあの北鎌沢の悪夢が蘇ったのか、途中のピークの休憩時には、しばらくその場で「真っ白な灰となった矢吹ジョー」と化していた。

テントは三つのピークとも数張り可能。

2,121mまで上がると剱の稜線が結構間近に見え、「ん?何だ、小窓尾根ってもしかして楽勝?」と思わせるが、それが大いなる錯覚だと翌日思い知る。

 

結局、2,121mにテントを張ったのは、若手組と我々の二組。中年三人組はもう一段下に張ったようだ。

我々はすぐにテントに入ってまったりしたが、若手組は血が騒ぐのかこの先の急な雪壁に早くも今日のうちにフィックスを張っておきたいらしく「ビレイ解除ーっ!」とか賑やかにやっていた。

この日は風がまったく無く、怖いぐらいに静かで穏やかな夜だった。

 

 

二日目(5/3) 天候:快晴

 出発6:30−ニードル脇−ドーム11:25−ピラミッド−馬の背リッジ−マッチ箱14:55−三ノ窓17:00

 

朝起きて、少し離れた所で小用を足していると、ちょうど赤谷尾根の「大窓」がオレンジ色に染まっていた。

剱周辺では「大窓」、「小窓」、「三ノ窓」などとキレットやコルのことを「窓」と呼び、最初ワケがわからなかったが、こうしてそこから陽が射し始めるのを見て初めてその意味がよくわかる。なるほど光は窓から射すもの。うまいこといったものだ。

 

 そそくさと朝食を済ませ、テントを撤収、若手組に少し遅れて出発する。

 テン場から一段下がってすぐ目の前に立ち塞がるのが、本日最初の難関、雪壁だ。

 斜度は70度ぐらい?高さは50mロープほぼいっぱいといったところか。

 まぁ、ここで滑り落ちてもたぶん下で止まるだろうし、雪がある程度固ければピッケルとアイゼンでサクサク行けてしまうが、今日の所は朝から軟雪でグズグズ。

 踏むそばからステップが崩れて、少々登りにくい。

 初日のテン場、2,121mピーク 70度近い雪壁を行く。

 若手組が昨日のうちに自ら張ったフィックスを伝って突破した後、今度は私が自分のロープを引きずって取り付く。

 ステップを崩さないよう慎重に抜けて、左上の潅木でビレー。ju9cho氏を迎える。

 そのままツルベでju9cho氏が雪の急斜面を上がる。

しばらくは何が出てくるかわからないし、ロープを出したり、しまったりも面倒なのでコンテ交じりに上がっていく。

 ブッシュ混じりの雪の登りがしばらく続くが、先行者のトレースがまったく無く、視界が悪い条件下での初見だとちょっとルーファイが難しいかも。

 

少し行くと視界が開け、前方に「ニードル」と呼ばれる顕著な岩峰、そしてそれに続く「ドーム」の丸っこい姿が現れる。

 「ニードル」はなかなか立派な岩峰だが、このルートでは直接取り付くことはなく、右裾の池ノ谷側をトラバースすることになる。

 恐竜の背のような簡単な岩のリッジを行き、ニードルの右側に出ると、ニードルとドームの間にさらにちょっとした岩峰があるのに気が付く。

 トラバースの最後はドームとのコルへの下りで、軽く斜め懸垂を強いられる。

 ここで後続の中年三人組に追いつかれ、先に行ってもらうことに。

 小窓尾根のアクセント「ニードル」と「ドーム」 ニードル・トラバースの最後は懸垂

 彼らは「いやー、ワレワレおじさんだから」と謙遜する割にはスピードがあり、要領の良さはさすが山岳会といった感じ。

 懸垂支点では、半ば腐った残置スリングをさっさと切り取り、自分たちの信頼できるスリング、カラビナであっという間にセットし直してしまった。

 たしかに安全に越したことはないが、懸垂一回のために高価な環付きカラビナまで残していくなんて・・・関東のクライマーはまずもったいなくてそんなことしないんじゃないだろうかと感心する。

 太い安心できるスリングを提供してくれたので、我々が懸垂する際は、切り捨てた古いスリングはゴミとして回収。

さらに環付きビナも回収し、後で彼らに返すことで感謝の意を表した。

 (後で思ったが、彼らはもしかしたらルート整備も兼ねてカラビナまで残そうとしたのかも知れず、そう考えると我々は余計なことをしてしまったかとちょっと反省。)

 

懸垂後はコルからすぐさまドームへの急な雪稜が続く。

ドームの頂上からは視界が開け、特に右手の池ノ谷側、剱尾根の景観が素晴らしい。

ドームを下りきったコルで、中年三人組が小休止に入ったので、我々が再び前へ。

 

ここからちょっとした岩場の登りだが、先行若手組はロープを出さずに行ったようだし、いざとなったら腐りかけのトラロープもぶら下がっているしで、気安く取り付く。が、実はここがちょっとヤバかった。

 ロープを結ぶことなく、まずju9cho氏が取り付くが、何と中間部のちょうどホールドにしたい岩が浮いているとのこと。

 「・・・う〜ん。ここはちょっとフンギリがつかない。」

 しばらく逡巡し、ボヤくju9cho氏に下から声を掛けるが、結局「・・まぁ、自分で何とかしましょう。」と言って、思い切り良くクリア。

 続いて私だが、さて登ろうと思って何気に脇を見ると雪の斜面にグローブが落ちているのを発見。

 あれっ、ju9choさん、落として行っちゃったかなと思って拾いに行くと、何とピッケルも一緒に付いていた。

 誰かの落し物らしいので、私がそのまま回収して持ち帰ることにする。

 

さて、例の浮石のホールドの箇所だが、たしかにこれはちょいと微妙。

少し力を入れるとそのまま岩と一緒に転落する可能性大だ。

 仕方ないので、私はさらに内側のカニのハサミっぽい所を無理やり抜けることにしたが、グラつく岩に触れてはいけないのでちょい神経を使った。

 その様子を見ていた中年三人組は慎重にロープを出すことにした模様。

 アルパインなので浮石も条件の一つだが、あそこの岩は今後のパーティーには細心の注意を払ってもらうしかない。

 小窓尾根中間部のすっきりした雪稜 主稜線も近づいてきた。

 続くピラミッド・ピーク(?)は、右側斜面を急な這松登り。

 結構急なので、「ロープはどーする?」とフォローのju9cho氏から声が掛かるが、ここで出しても這松に引っ掛かって流れが悪いし、何より枝や根でホールドは豊富なので遮二無二上がる。

 そこを上がると、ちょっとすっきりしたスノー・リッジ。

 

さらにマッチ箱と呼ばれる岩場へ行く手前に「馬ノ背リッジ」がある。

 ここは他のネットの記録などで「三角木馬に跨る感じ」とか書いてあり、岩登りというよりは「綱渡り」といった感覚。

 余程のバランス達人ならトットットッと歩いて行けるだろうが、両脇はすっぱり切れているし、重荷背負ってアイゼン履いてじゃ、まず四つん這いで慎重に行った方がいいだろう。

 ロープを付けてまず私が通過。

 さらに急な雪壁を登り、小窓尾根の技術的な核心部はこれにて終了。

 

極端に難しい所は無かったが、それは今日のように、天候も良く先行者のトレースがバッチリあっての話。

 それなりにルーファイを要求され、雪や浮石などの処理で手抜きをすると手痛いしっぺ返しをくらいそう。

 さらにこの先、三ノ窓へはまだまだ大きな二つの雪のピークの登りがあって長丁場。

 昨日は意外と楽勝などと呑気に構えていたが、フタを開けてみればちょっと荒削りな北鎌といった印象で、なかなかシンドイ。

小窓尾根上部、最後の一息 三ノ窓へ向けて懸垂下降

 強い五月の陽射しの中、体力の無い中年二人組はヘロヘロになって雪稜のアップダウンをこなしていく。

 最後、三ノ窓へは懸垂1ピッチで、本日の行動は終了。はぁ〜、疲れました・・・。

 

三ノ窓はチンネの岩壁を間近に望み、東に後立山の峰々、そして西に富山の街と日本海を望め、絶好のテン場。

 この日は夕方になって東から吹き抜ける風が強く、すぐ隣に張ってあったテントのフライが激しくバタつき、うるさいのがちょっと難点であった。

 

 

三日目(5/4) 天候:快晴

 三ノ窓テン場出発7:00−チンネ左稜線取付7:15−「T5」12:15−チンネの頭14:20−テン場16:00

 

朝、起きると風は昨夜以来ちょいと強めだが、またまたドピーカンの快晴。

 我々二人、そんなに日頃の行い良かったっけ?(^^;)

  周りのテントが次々と撤収する中、我々は少し風の納まるのを待って、待望のチンネへ。

 私は過去に二回行って、一回目は他パーティーの事故により断念、二回目は左下カンテは登ったものの上部は天候の崩れで断念と、成果を残していない。

 昨日までと違い、今日はテントを三ノ窓に張ったまま。ザックは行動食とロープ、そしてガチャ類のみなので荷物が軽いっ!(喜)

 三ノ窓からチンネは目と鼻の先。

 今回目指すは左稜線。チンネの中でも一番人気のルートである。

 三ノ窓からチンネ取付へ 雪に埋もれた「左稜線」取付

 取付へは三ノ窓雪渓の雪の斜面をトラバースして20分もかからずに到着。

 さてチンネだが、この季節、本来のアルパインならアイゼンをガリガリ言わせて登るのが本筋だろうが、「なんちゃってアルパイン・クライミング」を旨とするおやぢれんじゃあ隊は今回、姑息にもフラット・ソールをザックと底に忍ばせてある。(^^;)

 まぁ、これだけ岩が乾いていればフラット・ソールの方が快適で気持ちいいし、岩を不必要にアイゼンでガリガリやる必要もない。

 何よりその方が「地球に優しい」でしょうと、アイゼンで登る実力の無さを自分たちの都合のいいよう大義名分化する辺りが自分でもどうかと思うが、バカボンのパパならずとも、これでイイのだ。(^^)v

 以下、奇数ピッチは私、偶数ピッチはju9cho氏リード。

 

1ピッチ目 15m 凹角 V級−

 取付は急なベルクシュルンド。

 最初のピッチは、出だしが不安定な雪のため靴を履き替えるわけにいかず、アイゼンを履いたまま登る。

 特に難しいわけではないが、朝一番でまだ身体が硬く、ちょいと緊張する。

 一段上のテラスでピッチを切る。

 雪が上のテラスを埋め尽くしているので、ピッケルで雪掻きしてスペースを少々拡大。

 

2ピッチ目 25m フェース V

 ここから靴をフラット・ソールに履き替える。

 セルフはきちんと取っているものの狭いテラスで靴を落とさないよう履き替えるのがなかなか厳しい。

 こんな所で靴orアイゼンを落として三ノ窓雪渓を転がっていったら目も当てられないもんね(^^;)

  最初、テラスから赤い残置スリングのある右手のフェースに行こうとしたが、けっこう傾斜が立っている。

 ふとju9cho氏が左のフェースを見たらこちらにも残置ハーケンあり。傾斜も多少緩いようだ。

 で、左を行く。

 ホールドばっちりで快適。ロープの流れが悪いようなので短めにピッチを切る。

 

3ピッチ目 40m 凹角フェース〜バンド〜ルンゼ V+

 とにかくホールド豊富なので、自然と腕が上に伸びワシワシ登っていけるが、後のことを考えてなるべく足で登ることにする。

 途中、浮石の多い雪の残るバンドに到着。それを避けるようにして、少し右手にトラバース。

 這松の所を縫い、さらに正規ルートは右の小ガリーを行くようだが、雪が埋まっているため敢えて正面のボルダーちっくな凹角(インドア・ボルダーで瞬間六級レベル?)を思い切りよく越える。

 ピナクルの下に出るが、これ以上延ばすとロープが屈折して動けなくなるので、中途半端な所でピッチを切る。

 支点がないので自分でハーケンを打ち、さらに近くの大岩に長いスリングでセルフを取る。

 この辺りで男女ペアが同ルートを後続してきていることが判明。

 ビレーのために打ったハーケンはきちんと回収しておきました。

3ピッチ目のフェース 岩と雪の殿堂

4ピッチ目 45m 斜上バンド〜ギャップ〜フェース V+

 ピナクル下の斜上バンドをジグザグに上がり、ピナクル脇の狭いギャップに出る。

 雪が詰まっているのでそれを跨ぐようにして、すぐ目の前が意外と立ったフェースとなる。

 ここもホールド豊富で快適なクライミングが楽しめる。

 

5ピッチ目 40m 水平のリッジ T級

 雪がたっぷり残った歩きのリッジ。

 ju9cho氏は上部で雪が出てきたら再び冬靴&アイゼンに履き替えるつもりだったらしいが、私はまったくそのつもりはなく、雪の中をズボスボとフラット・ソールで踏み込んでいく。

 春の陽気は暖かく、まったく冷たくはない。

 次のピッチの基点となる所、這松の枝でビレー。

 

6ピッチ目 40m フェース V

 リッジ左寄りからやや中央へ向けロープを伸ばす。陽が当たり、気持ちのいいフェース。

 ju9cho氏をビレーしていると、後続パーティーがちょっと揉めている?ような声が聞こえてきた。

 

7ピッチ目 40m 凹角フェース V

 ここもホールド豊富で快適なピッチ。ザラザラした花崗岩のフリクションは最高で、ちょっと雑に登ってもまったく落ちる気がしない。

 ただ、さすが本チャンだけに、岩が堅いと定評のある剱でも浮石がけっこうあり、そこだけは神経を使う。

 

8ピッチ目 50m ゴツゴツしたリッジ V+

小さいピナクルが連続するピッチ。それを一つ一つ越していくアトラクション的面白さ。

一ヶ所、小ギャップを跨いで越える所があり、急速に思い出した。あっ、このピッチ、前に一回登ったことあるぞ。

正面に威圧的な形でチンネのリッジが見えてくる。なるほど、ここから見る形はたしかに写真で見る本場アルプスのドライ・チンネにそっくりだ。

 

9ピッチ目 35m リッジ〜小ハング?〜フェース X

いよいよ核心ピッチ。

手前のT5と呼ばれるテラスで一休み。いやー、それにしてもこのリッジ、久々に見るけどこんなに立ってましたっけ?

ju9cho氏がよほどリードしたいと言い張ったらさっさと譲ったのだが、「いや〜、順番ですから」とニヤニヤするのみ。 

ま、しょーがない。やりますか。

 

小ハングと呼ばれている核心部は、間近に下から見るとハングなのかわからない程度。その昔はA1だったが、今はフリーで越えるのがほぼ一般的とか。

で、取り付くが、出だしの右端のリッジが思いのほか立っていて、ちょっと緊張。

ホールドは豊富だが、今までと違ってやや縦ホールド気味なので、身体を振って腕をなるべく横に伸ばすようにして登るのがコツか。

核心手前で一回レストし、次の様子を伺う。岩の形を見ると、残置スリングの掛かっている箇所はやはりレイバックかなとイメージを組み立てる。

で、取り付くと全然ハングっぽくなく、まず手前にいいガバが見つかる。これを左手で取る、いや右手の方が掛かりがいいぞ。

そのままステミングの要領で両足を上げていき、伸び上がった所で左手クロスで上の横クラックを取りに行く。後は重心移動の右足ハイステップではいクリア!

さらにフェースを登って古いハーケンが三本固め打ちしてある所でピッチを切る。

 チンネの核心部「鼻」を越える。 核心部フォローのju9cho氏

 このピッチは小ハングだけでなく、出だしの立ったリッジを含めてようやくX級といった感じ。

 フォローのju9cho氏も「むしろ出だしのリッジの方がパンプしそうになった。」と言っていた。

 

10ピッチ目 35m  リッジ〜クラック V+

  さらに鶏冠のてっぺんに向かってロープを伸ばす。この辺り、高度感が素晴らしい。おぉーい、三ノ窓の皆さん、こっち見てー(^^)v

 

11ピッチ目 30m  ナイフエッジ V

細い鶏冠のような所を掴んで右側を伝っていく。ここも高度感最高!

ビレーして、フォローのju9cho氏の方を振り返ると、そう、あの廣川健太郎氏の「チャレンジ!アルパイン・クライミング」の裏表紙の写真そのまんま。

このタイミングを見計らったかのようなju9cho氏の撮影要求に「はいはい、わかりました。」とばかりにシャッターを縦横と数回切る。

偶然ながらもフォトジェニックなおいしいピッチはフォローに回って被写体となる。ju9cho氏の策略にまたしてもハマってしまった。(^^;)

 

12ピッチ目 60m?  易しいナイフエッジ V-〜U

もう最後のピッチ。左手に三ノ窓の頭が見える。

易しいエッジをどんどんロープを伸ばす。

「・・もうロープいっぱいだよー!」

ju9「・・10m、コンテで上がってきて〜!」

ちょい足りなかったが、ま、普通に歩ける程度なのでいいでしょう。

チンネの頭でガッチリ握手。いやー、天気も良く気分は最高でした!

  青い空、白い雪・・・昔の「マイルドセブン」の広告みたいに爽やか過ぎるこのひと時。

途中、靴を履き替えたり、写真をバシバシ撮りまくったりで、いつものように標準タイム超過だが、まぁいいでしょう。(^^;)

 チンネ、ラストのナイフエッジ 本日の三ノ窓は満員御礼

 下りは三ノ窓の頭とのコルへちょこっと下り、右手の池ノ谷ガリーの方を覗くと、懸垂支点が雪に埋もれておらず、すぐ見つかる。ラッキー!

 そのまま浮石の多いガリーを懸垂2ピッチで池ノ谷ガリーに合流。

 トットと下って三ノ窓のテン場に帰着する。

 

 本日の三ノ窓は小窓尾根、赤谷尾根から続々と上がってきていて満員御礼。

 我々がガチャを外して、チンネを見上げながら感想を述べていると隣の三○山岳会?の方々からお声が掛かる。

 「もしかして、おたくら、左稜線?」

  我々「はぁ、あんまり乾いてたんで、フラットソールで行っちゃいました〜。(^^;)」

 なんて会話をしていると、向こうの一人が隣で寝そべっているオジサンを指差して

 「このオジサン、厳冬期。今は酔っ払っちゃってこんなだけどね。」と笑いながら紹介する。

 ほー、そりゃ凄い。ウチらには絶対真似できないなぁと感心すると、そのオジサン決して驕ることなく「でもそちら小窓尾根からケイゾクでしょ、いやいやそれはご立派!」と親指を突き立てGooのサイン。

 いやー、こういう粋なオジサン、好きだなぁ。

 

 この日は夕方遅くなっても続々と三ノ窓に多くのパーティーが上がってきた。

 昨日と違って風の無い静かな夜で、さぁ今日はぐっすり眠れるぞと思ったが、どうやら私のマットはパンクしてしまったようで、夜中に腰や背中が冷たくて・・・。

 はぁ〜、やれやれ。

 

 

四日目(5/5) 天候:曇り(時々陽射し&小雨)

 出発5:40−池ノ谷乗越6:10〜30−剱岳頂上7:30〜55−早月小屋10:10−馬場島13:20

 

いよいよ今日は最終日。

 予報でそろそろ天気は下り坂。朝のうち、ここ三ノ窓も一時ガスったりしたので、場合によっては最短距離を即下山とも考えたが、大きな崩れはないようなので当初の予定通り、剱の山頂経由で早月尾根へ。

 

テントを撤収して、「池ノ谷ガリー」の急な雪壁を登る。

池ノ谷乗越まで小一時間かかると思っていたが、約30分で到達。

しかし、朝のお勤めをしたばかりなのに私は、

1 昨日のエアマットのパンクから来る腰の冷え

2 今回、行動食としたプルーンの食べ過ぎ

により少々腹が下り気味・・。

    さらに加えて「3 相変わらず重たいザック」という三重苦を背負いながら、剱の頂上を目指す。

 剣本峰への急な登り あちらに見えるのが毎度の剣岳

 剱への道は昨年のGW以来、もはや勝手知ったる道で、特に大きな問題はない。

 主稜線から見る八ツ峰は、昨年よりは若干雪が少なめか。六峰の上に小さくオレンジ色のテントが見える。 

 いくつかのアップダウンを繰り返し、剱の頂上へ。

 いやー、一年振りにまたまた来てしまいました。

 

 曇り空だが、360度の展望。陽が照って霞んでいない分、今回の方が富山湾がクッキリ見える。

 祠は深い雪の下で、傍らに置いてあった「剱岳」と書かれたまな板状の看板を掲げて記念撮影。

 そろそろ雲行きが怪しくなってきたので、それほど長居せず、そそくさと下山開始する。

 周りの他パーティーもほとんどが早月尾根下山ということで、同尾根初めての我々も心強い。

 上部は若干の鎖場と岩の出たリッジが連続するが、特に困難な所は無し。

 早月尾根上部の下降 途中、こんな岩場を通過する。 すれ違ったガイド連れ行列パーティー

3分の1ほど下った辺りで急なガレの箇所が出てくるが、すぐ前を歩いていた石川県やら山梨県の男女混成四人組パーティーが、懸垂のため自分たちのロープを「使ってください。」と申し出てくれた。

いやー、ありがたいことです。

 

 そこを降りて、しばらく行くと早月小屋。

 小休止していると、先ほどの四人組の方たちが「あのー、もしかして・・・」と我々の名前を言うではないか。

 まさにネットの威力。HPを開いていると、狭い山の世界ではこうして見ず知らずの人たちに声を掛けてもらうことがたまにあるが、いやはや嬉しいやら恥ずかしいやら・・。

 「後でHPで、イイ人たちだった、と書いといてください。」と笑っていたが、ロープを借りたから言うわけじゃないが、ホントいい人たちでした(^^)v。

 この場を借りて御礼申し上げます。

 

 そこからもズンズン下る。

 もはや気持ちは下界の温泉とビールのみ。

 (オンセン、ビール、オンセン、ビール・・・・)と心の中で念仏を唱えながら下る。

  大きな杉の木のある「早月1,600m地点」 迷いやすい松尾平

 早月尾根からしばらく下った下半分は雪がさらにグズグズになってきたため、ダンゴ雪になってどうしょーもない。

 ツボ足になってドンドン下る。

 

 途中、松尾平と呼ばれる雪原がちょいと迷いやすいが、木の枝に付けられた疎らな赤テープを辿って尾根通しへ。

 さすがに「日本三大急登」の一つと呼ばれるだけあって、馬場島荘が下方に見えてからもなかなか着かない。

 最後は半ばヨレヨレになって馬場島到着。

 四日間、お疲れさま〜!

  馬場島荘で風呂に入ってサッパリした後、ビールと山菜ウドンでようやく人心地つき、雨に煙る小窓尾根に別れを告げた。

 

 

 p.s.小窓尾根は、剱岳西面のバリエーション・ルートとして隣の赤谷尾根と共に人気ルート。

   今回が初めてだったが、連日の好天と先行パーティーのトレースに特にルート・ファインディングに迷う必要もなく、比較的快調に抜けることができた。

   ルート全体の構成、雰囲気は、何となく槍の北鎌っぽいと感じたのは私だけだろうか。

   ところで、今回小窓尾根の途中で拾ったピッケルはネット仲間・Tさんの同僚の方の物と、後で判明。

   誠に残念ながら、今回、持ち主の方は事故に遭われてしまったが、品物はお返しすることができた。

   単なる偶然かもしれないが、何かの縁がこうした結びつきを産んだような気がしてならない。

  合掌


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