初夏の西丹沢 玄倉川小川谷廊下

 

日程:2008年6月1日(日) 日帰り

天候:晴れ時々曇り

同行:Ju9cho氏(おやぢれんじゃぁ隊 "Heaven Site")

行程: 玄倉林道分岐(駐車場所)9:00−小川谷出合10:00−終了地点13:30〜14:00−駐車場所15:30

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今シーズン最初の沢は、西丹沢人気のスポット「小川谷廊下」。

  当初、この週末は「外岩」の予定だったが直前まで雨がしつこく続き、これでは岩もお湿り状態だろうと、急遽、ju9cho氏の計画に乗ることにした。

雨上がりで増水が予想され、ju9cho氏も単独ではやや二の足を踏んでいたようだったが、最近のネットの記録を見ると、丹沢の他の沢と同様、ここも昔に較べて水量が減っているように思えたので、多少の増水があった方が面白そう。

私の場合、小川谷はこれまで単独で何回か足を運んだものの、いずれも出だし二つ目のチョックストーン滝で「渋滞待ち」に遭い、時間切れ敗退の憂き目にあっている。

沢で渋滞待ちなんて、人気のある小川谷ならではだが、そういった意味で今回は何度目かの正直、長年残っている宿題をサクッと片付けるつもりである。

 

 東名経由で、朝8時に小田急線新松田駅でju9cho氏をピックアップし、そのまま西丹沢方面へ。

 青空が広がり、西の方角には予想以上に残雪豊富な富士山が大きく見える。川では鮎釣り、そして雨上がりの緑が目に眩しい。

 以前は出合近くまで車でアプローチできたはずだが、今回はだいぶ手前、ユーシンとの分岐の所でチェーンによりゲート封鎖となっており、しかたなくその辺りの林道脇スペースに駐車。

 今回、私は下ろしたての沢靴(モンベル「サワートレッカー」。アウトレットの旧モデル)なので、足に慣らすため、ここから沢まで小一時間の林道歩きも沢靴で行くことにする。

 この一週間、深夜まで残業続きだったので、デスクワークでショボショボした目に周りの鮮やかな緑が目に沁みる。

 

 林道をしばらく行くと、やがて右側のスペースがちょっと開け、そのまま道が大きくU字型にカーブしようとする地点に着く。

 たしか、入渓はここだったはず。

 念のためちょっと先まで行き、目印となる「穴ノ平橋」まで見て間違いないことを確認し、そのまま右手の草付き斜面を沢へ降りていく。

 降りた地点の草陰で何やらゴソゴソ動いていると思ったら大きな鹿で、我々が現れたのに驚いて向こうも急いで斜面を駆け上がっていった。(熊じゃなくて良かった!)

 沢床からは右手に向かっていくつか堰堤を下降。左右いずれかに鉄梯子が設置してあるのでそれを使って降りていく。

 やはり本日は水量が多少多いようなので、ju9cho氏も途中でアプローチシューズから完全沢装備になり、さらに降りていくとちょっと開けた河原に出る。

 そのまま左にゴーロ状の沢筋を詰めていくと、小川谷出合だ。

  (以下、滝のナンバーは便宜上「丹沢の谷110ルート」山と渓谷社刊に対応)

 堰堤の梯子を降りて出合へ向かう。  

 まずは初っ端の滝(2m)。

 ju9cho氏から取り付き、水流右から越える。

 今日のように天気がいいと数パーティーは入っているかと思ったが、他に誰もいない。この先、マイ・ペースで楽しめそうだ。

 

 続いてF1、チョックストーン滝(5m)。

 昔は左右どちらも豊富な水量でどちらかというと左側を強いシャワーを浴びながら登るというのがセオリーだったようだが、今はけっこう右側の水量が少なく、時季によっては涸れていることもあるとか。

 とりあえずju9cho氏が左側をシャワー・クライムにかかろうとするが、やはり水勢が強く、厳しそう。

 まぁ最初から気負わず楽な方から行きましょう。

 ということで、私から右側を越える。残置スリングと立て掛けてある流木を使うが、滑りそうでちょっとヒヤヒヤした。

F1チョックストーンの左側 右から流木とスリングを使って越える。

 F2(5m)は水流左から簡単に越えられる。

 続く段状のF3(5m)も左から。水流通しに登ろうとしたが、水の勢いが強すぎて途中から左に逃げて越える。

 

 ちょっとしたナメの廊下が続き、少し行くとゴルジュとなる。

 滝に立て掛けてある流木を使って綱渡りのようにして渡ったり、釜にドップリ浸かったりして進む。

 この辺りから天気も少し曇り出し、少々身体が冷えてきた。

 

 F7ぐらいだろうか、途中で大きく深そうな釜と取り付くシマの無さそうな豪快な水量の滝があり、(ここはふつう行かないでしょう。)と二人ともまったく相談もせずにあっさり右から巻いてしまった滝があったが、後で調べるとここがなかなか面白そうとのこと。

 ただ、過去の記録では水流右に残置スリングがあったらしいが、今日見たところではスリングどころかハーケンもよく確認できなかった。

 右側の巻きも安定しているわけではなく、途中、トラバース用の残置ボルトなどに導かれて進む。

 このボルト、沢では珍しいペッツルのハンガー・ボルトで、ju9cho氏が言うには人気の沢でガイド山行も多いので、そのために整備されたのではないかとのこと。

 物凄い水量で中央突破は無理。 W−?の流木渡り

 ここを過ぎると、やがて前方に小川谷名物の「大岩」が現れる。この辺りがちょうど中間地点か。

 大岩は高さ10m、斜度50度(と言われている)滑り台状の岩。

 何も無いと相当苦労しそうだが、現時点では上から古臭い残置ロープが垂れ下がっているので、問題は無さそうだ。

 ・・・が、しかし!ここでおおいにハマってしまう。

 

 最初、私から残置ロープを頼りにゴボウで登ろうとしたが、沢靴のフェルト・ソールのフリクションがほとんど効かない!

 とにかくヌルヌルのツルツルで踏ん張りが効かず、すぐにバランスが崩れ左の岩陰に振られてしまい、敢え無く撃沈。

 「むっ、意外と難しいねぇ。」

 ロープがあるのになかなかすんなりと登ることができず、2〜3回やっているうちは笑ってごまかしていたが、そのうちだんだん頭に来て、やがてそれは焦りに変わっていった。

(ヤバイ、マジでここ越えられなかったら・・・。)

(まさか、こんなところで・・・敗退?)

 他の記録では「ロープがあったので簡単に越えられた」とか、また昔の本だと「助走をつけて駆け上がった」とか書いてあるが、現状を見ると何をかいわんやである。

 最後は意地になり、反動をつけて振り子トラバースの要領で安定した岩の中央に移り、そのまま慎重に岩のてっぺんに上がることができたが、まったく意外な障壁であった。

 

 続くju9cho氏は、どう越えるか上から高みの見物をさせてもらったが、最初少し戸惑ったもののロープを片手で掴んだまま回転レシーブのような独創的な?ムーブで這い上がってきた。

 こう説明すると何やらカッコイイが、全身のフリクションを最大限に使ったそのムーブを当の本人は「かっこわりぃ〜。」といたく卑下していた。

 沢では時期によって目に見えないミクロの苔が張り付いて非常に岩を滑りやすくするといった話を聞いたことがあるが、ホントこんなに滑るとは思わなかった。

 大岩を上がってくるju9cho氏 石棚手前のゴルジュ

この先、沢は右に曲がり、再びゴルジュとなる。

何となく、谷川・万太郎本谷の名所「オキドキョウ」をこじんまりとさせた雰囲気である。

淵にドップリ浸かりながら小滝をいくつか越えていく。

F8、F9は共にゴルジュの中にある釜を持つ7mほどの滝で、片方は右からフリーで、もう片方も右からこちらは残置を三本中継し、スリングでA0突破を強いられる。

 

やがて小川谷の主とも言えるF10「石棚」二段20mが現れる。

直登の場合、人工登攀となるらしいが、ほとんどの記録では左から巻いており、まぁここは無難に巻きがセオリーでしょうとアブミは車の中に置いてきていた。

たしかに間近で見る石棚は水流の左右ともツルツル。

残置ボルトの類も見えないし、特に上段はヒョングリの滝となっており、今日のところは瀑芯突破など有り得ないといった様相である。

 

 で、左の泥混じりの垂壁からの巻きだが、仲間のS師の記録では「立ってはいるが、ガバばっかりで簡単。V−」とのこと。

 そのまま安易に取り付こうとしたが、虫の知らせかju9cho氏が「せっかく持ってきたんだからロープ出そうか?」と言い出し、そうしたところ、これが正解。

 確かにガバだが、ほとんどのホールドが泥に隠れてしまって、岩がしっかりしているのかポロッと剥がれてしまうのか気が気ではない。

 一段上がってさらに上へ伸ばそうと思ったが、途中ランニングを取れる所は皆無。細い木の枝も根が浮いてしまっている。

 特に難しくはないが、すぐにでも手足のホールドがゴソッと剥がれていきそうな何となくヤバイ雰囲気である。

 う〜ん、どうしよっかな〜?

平静を装いながらもちょいビビリが入ったところで、ふと右手を見ると赤い太めの残置スリング発見!

 おおっ、助かった。ここにランニングを取り、そのまま右手へトラバース。そのまま石棚の落口に打ってある残置ボルトのビレー点に出てju9cho氏を迎える。

 後で考えると少しルート取りを誤ったようだが、もう少しでS師のV−というのに騙されるところだった。

 

 さらにゴルジュ内の淵は続く。

 本日は一緒じゃないが沢の師匠タケちゃんの「タケシイズム」を実践すべく、なるべく水流沿いを攻めるが、この時期の小川谷ではチト寒くて、途中でいいかげん身体が震えてきた。

開脚突破 F12最後のトイ状滝

 そして、いよいよ最後の滝、F12トイ状(5m)

 その向こうには、左半分が欠落した堰堤が苔むして、何やら古代遺跡のようでもある。

 普段、堰堤のような人工物は無粋で興醒めな対象でしかないが、どういうわけかこの堰堤は「遺跡」という表現がピッタリ来る。

 こんな山奥の谷筋に堰堤を作った人間の知恵と努力、そしてそれを嘲笑うかのように巨大な力で破壊してしまった自然の偉大さ。

 木漏れ陽を受け、緑に覆われ半ば自然に還りつつある佇まいは「世界遺産」ならぬ「丹沢遺産」といったところか。

 

 で、最後の滝である。

 まぁ、ここはキッチリ直登で締めておきたいということで、まずはju9cho氏から取り付く。

 高さも5m程度だし下も深い釜なので、ロープは出さない。

 まずは腰まで浸かって釜をへつっていく。滝は右壁に残置スリングがあるが、ju9cho氏はそこを経由せず、水流際のカンテを直登するルートを取るようだ。

 滝は正面から見るとほとんど垂直で手強そうに見えるが、ju9cho氏は釜から上がる所で多少戸惑っていたが、後はスルスルと登っていった。

 そのまま、上へすんなり抜けるかと見守っていたが、あと少しという所で動きが止まる。

 ん、どうしちゃったのかな。んー、あとちょっとなのに・・・。で、後ろから声を掛ける。

 私「・・・んー、お助け紐、出します?」

 ju9cho「・・・・・・お願いします。」

 

 というわけで左から急いで巻き上がって、落口から長めのスリングを垂らし、何とか無事に上がってきてもらった。

 私の方は、もう巻き上がっちゃったし、ju9cho氏もちょっと怖い思いをしたし、かつてあのS師も一回釜に落ちたって言うし、それに何か今日は釜にどっぷり浸かったせいで身体が冷えて寒いし(^^;)・・・と、頭の中は言い訳でいっぱい。

内心、ここはもう「割愛モード」になっていたのだが、ju9cho氏がすかさず「やるでしょ?」と言うので反射的に「・・ま、まぁ」と答えてしまった。

 結局、ロープとザックは落口に置いたまま、一人空身で右岸の巻き道をクライムダウンし、フリーで取り付いてみる。

 釜から上がる時がちょっと滑りやすかったが、ホールドは手足ともにあり、問題なし。

 ただ最後の二手ほどがちょっとホールド甘め。左手カチ、右手は甘いパーミングに神経を集中して足を上げ、最後はマントリング。

 ここで、岩を押さえていた手がズリッと1センチほど滑り、一瞬ゾワーと冷や汗をかいたが、何とか無事にクリア。あぶね〜(^^;)v

 

 ここを越えると、それまでのゴルジュから一気に明るい河原状となる。

 流れも平凡で穏やかなものとなり、辺りは小さな黄色い花が今を盛りと咲き乱れている。ちょっとした「バリー・オブ・フラワー(花の谷)」か。

 沢は稜線までまだまだ続くが、沢登りの対象となる「小川谷廊下」の遡行は実質上、ここで終了。(この先はただの河原歩きになるらしい。)

 少し先の堰堤の所で冷え切った身体を太陽で暖めながら昼食とする。

 

 下りは東沢乗越へ通じるやや不明瞭な道を出合方面へ戻る。

 他の記録では大した困難もなく、サラッと小一時間で戻れるように書いてあるが、道筋があまりはっきりせず、何度か迷う所があった。

 視界が悪い時や夜間など、歩き慣れていないとちょっと厳しいかもしれない。

 

  それでも実際大した時間はかからず元の林道に出ることができ、無事に終了。

 お疲れさまでした。・・・と言っても、体力的にはほとんど疲れが残らず、仕事疲れの身には実に良いリフレッシュとなった。

 

 

 小川谷廊下はかつて丹沢を登り始めた高校の頃は一種憧れの目標であったが、今こうしてそれなりの経験を経た上で行ってみると、気楽な真夏の日帰りレジャー・コースといった感じ。

 その気になれば半日で十分だし、丹沢を賑わせている蛭も今のところ出没してなさそうだし、一回は抑えておきたい所だ。


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