初夏の奥秩父

瑞牆山カンマンボロン「鎌形ハング・ルート」

 

日程:2008年7月6日(日) 前夜発日帰り

天候:晴れ一時小雨

同行:ju9cho氏(おやぢれんじゃぁ隊。"Heaven Site")

行程:中央高速須玉SA(車内泊)5:30−植樹祭広場駐車場6:30−カンマンボロン取付7:00〜40−頂上13:00〜30−取付14:30−駐車場

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七月三連休に予定している某・本チャンルートに向け、久々に人工登攀の練習。

今回登るのは瑞牆山カンマンボロンの「鎌形ハング・ルート」。

瑞牆の岩場では、昨年秋の大ヤスリ岩「ハイピークルート」に続いて二度目となる。

ちなみに「カンマンボロン」とは大日如来の意味(?)で、この巨大で特異な岩峰のどこかに昔の修験者が刻んだ梵字があるという。

ルートとしては、オーソドックスなW級、A1ということで気楽に取り付いたが、思ったよりも辛めで、その分なかなか充実したトレーニングとなった。

 

 前夜、いつものように京王線の某駅でju9cho氏をピックアップし、その夜は中央高速・須玉SAで車中泊。

 梅雨の最中で蒸し暑く、かといって窓を開けていると虫が入ってくるわ、大型車のアイドリングはうるさいわで、あまり良く眠れず。

 瑞牆山方面へ向かう場合、車中泊はやはり植樹祭広場か、その手前の塩川ダム・サイトが静かで良さそうである。

 

 植樹祭広場からほんの少し離れた駐車スペースに車を停め、森の中の小道を歩き始める。

 予報では午前中は晴れだが、午後から雷雨ということで、さっさと片付けてしまおうと歩くスピードも早くなる。

 

 相変わらずやや不明瞭なアプローチだが、昨秋来たばかりだったので特に迷うこともなく、出発してから30分ちょっとでカンマンボロンの基部に到着。

 踏跡を辿って最初に着いた基部のすぐ目の前にもボルトラインが確認できるが、事前にネットで確認したところでは、目指す「鎌形ハング・ルート」の取付は一段下がった所からハーケン2本で始まるのが正解らしい。

 位置としては、頭上に圧倒的に聳える大ハングの真下からほんの少し左に寄った地点である。

 

 フリークライミング全盛の昨今、人工主体のルートはマイナーなのか、本日のカンマンボロンは貸切状態。

 アブミをはじめガチャ類を身につけ、準備を整える。

 核心となるハング越えは4ピッチ目なので、人工が巧いju9cho氏に敬意を表し(?)、私が奇数ピッチ、ju9cho氏には偶数ピッチをお願いする。

(でも結局、途中で順番が代わってしまうのだが・・)

 ここが取付ですね。 

1〜2ピッチ目  フェース〜コーナー 40m A1

 まずは私がリード。

 出だしの左手、一本目のハーケンがやや遠い。

 右側の木を使って壁に取り付くこともできるが、何とか使わずにバランスで一段上がり、そのままA0使って右手のハンガー・ボルトに最初のクリップ。

 後は単調なアブミの架け替えで垂壁を上がっていく

 

 ピンはリング・ボルトが主体。黒く錆びついてはいるが、それほど老化しておらず、まぁ安心して使える。

 さらに要所要所には最近整備されたのか、まだ新しいハンガー・ボルトも打たれている。

 20m上がった所で最初の小テラスに着くが、下でビレイしているju9cho氏から「ロープ、まだまだあるよー。」と声が掛かり、もう1ピッチそのまま左手ピナクルのコーナー沿いにロープを延ばす。

 アブミ上段に上がると次のボルトがちょうどいい位置に打たれていて、全てのピンにランナーをとっていてはヌンチャクが足りなくなってしまうので、適当に間引きしながら高度を稼ぐ。

 久々のアブミだが、特に不安を感じることもなく、我ながら順調。

 1〜2P目の終了点で、ju9cho氏を迎える。 3P目。頭上に鎌形ハング。

3ピッチ目 フェース 20m A1

  ju9cho氏リード。

 最初の二ピッチよりもさらに真っ直ぐキッチリと等間隔に打たれたボルト・ラダーの垂壁

 ボルトはリング3つにハンガー1つの割合で律儀に打たれていて、「どうぞ思う存分アブミの基本を練習してください!」と言わんばかりに整備されている。

 それでも最後、やや左手にある小テラスに上がる箇所がほんの少しばかりフリーが混じり、アブミの回収がやや困難。

 ju9cho氏は「アブミ、残して行くからーっ。」と言って上がってしまったので、フォローの私が後から回収。

 

 その点、私のアブミはオリジナルの"特別仕様"なので、多少無理な体勢からの回収もまるで楽。

 1970年代の幻の逸品「サレワのグリップフィフィ」にショック・コードを付けたもので、ほとんど反則スレスレの「チョンボ・ギア」。(←まぁ、どっちにしても人工ですから。)

  できれば、そのまま核心のハング越えをしてもらいたかったが、ハングを越えてからビレイ点までの距離がわからず、ju9cho氏は大事を取って短めにピッチを切る。

 ちょっとガスってきて、岩ツバメが上空をビュンビュン切り裂くように飛んでいる。

 

4ピッチ目 ハング 20m A1+

 私がリード。

 やや左手から鎌形ハングの下へ近づいていく。

 途中、ピンの感覚がやや遠く(途中、ハーケンの頭がつぶれていてランナー掛けられず)、ちょこっとフリーが混ざる。

4P目。ハングへ向かう私。 鎌形ハング。張り出しは1〜2m。

 そして、いよいよ核心のハング。途端に岩がボロくなる。

 ハング下は水晶のような岩の結晶が浮き出て、アブミを架けた右側のハーケンもグラグラ動いちゃっている。・・・う〜ん、これはちょっとヤバイかも?(冷汗)

 次の支点はまだまだ上で、やや大きめサイズのキャメもしくは小さいエイリアンがあれば、何とか手前の岩の隙間にブチ込めるが、とりあえず今の手持ちはキャメの#0.5のみ。サイズの合うクラックがなかなか見つからない。

落ちたら一発で崩壊しそうな、いかにもボロい岩の隙間をようやく一つ見つけ、気休め程度にカムを咬ませる。はたして効いてくれるのか。

フレークをアンダーで持って思い切って立ち込むと、次のハング上の支点にアブミのフックが届いた。

すぐに上のアブミに乗り移り、レストの姿勢を取ってから今度は右に思い切り身体を振って、やや遠い次のボルトへ。

さらに上へ伸び上がってルーフを越えると、しっかり整備されたビレイ点に到着した。

  

続いてju9cho氏。

ゆっくりと確実なアブミさばきで上がってくるが、ルーフ越えの箇所ではやはり次のボルトが遠く感じたらしく「・・・よく、あそこ届いたねぇ。」と感心している。

でもルーフの張り出しはせいぜい1〜1.5mで(すぐ右のダイレクトルートだと2m以上か?)、丹沢・広沢寺のA2に較べれば楽。

せいぜいA1+(?)といったところか。

ただ、後で下からju9cho氏が撮った写真を見せてもらったところ、私が登っている時にいつの間にか2本のロープが捩れて交差しており、登るには特に問題はなかったものの自分の出来としてはちょっと減点。

 ハングを抜けてきたju9cho氏。

5ピッチ目 フェース 20m A1

 ju9cho氏リード。

 ハングを越えると傾斜はいくらか緩くなった。

 再び雲が切れ、夏の陽射しが気持ちいい。

 特に問題ないフェースを人工で上がっていく。

  着いた所は、ロープをはずしてもまったく安心できるほど幅の広いバンド・テラス。

 5P目のフェースをリードするju9cho氏。

6ピッチ目 スラブ状フェース 20m A1、X

 私がリード。

 ここから上は、ルートが二つある。左側の凸スラブと右側の凹角コーナー

 右側の凹角コーナーの方が古いリング・ボルトが連打されていてどうやら正規ルートのよう。

 それに対して左の凸スラブは新しいハンガー・ボルト。

 どちらでも良いが、やはり支点が安心できるということで凸スラブへ。

 

 しかし、ここが実は隠れた核心。

 下から見てもよくわからなかったが、取り付いてみると二〜三手先の辺りからボルトの間隔がやたら遠い。

 これまでのピッチと違ってアブミの最上段に立ち込んでも次のボルトはまるで届かず。

 頑張ってボルトの頭に立ち込んでもまだ届かない。

 

 こんなのアリ?・・・で、所々のつなぎで微妙なフリーを強いられる。

 私が「うっ、遠いっ!」「・・マジかよ!」とボヤキ始めたのを見て、ju9cho氏は下から「敗退でもいいよーっ!」とロワーダウンを勧めるがそれも悔しい。(^^;)

  左のカンテも使い、ほんの1〜2ムーブだが体感で5.9〜10aぐらいのフェースを上がっていくが、上部へ行くにしたがって岩の表面が風化し、ホールドがボロボロで脆かったりする。

 4ピッチ目、核心と言われるハング越えより私はこちらの方がシビアだった。(まぁ、支点はしっかりしているので、その点は安心だが・・・。)

 とにかくボルト間隔が遠いので、ノーマルのカラビナ仕様のアブミを使っているju9cho氏には下のアブミ回収が大変だったようで、途中で「ぶら下がるよー!」なんて声が聞こえてきた。

 6P目終了点でビレーする私。

7ピッチ目 ルンゼ 20m W-〜V

 ju9cho氏リード。

 カンマンボロンのテッペンまで高さにしてあとほんの10m程度だが、目前にはボルトがまったく見当たらず、のっぺりしたドーム状のスラブが控えているだけ。

 ネットの記録では、しかたなくここを終了点とした例もあるが、左側に残置スリングが見えたのでju9cho氏に確認してもらったところ、ほんの少しのクライムダウンで上に至るルンゼに続いている様子。

 ルンゼはそれほど難しいことはないが、下部のチムニー状がやはりザラザラボロボロで滑りやすく、プロテクションが無いので、そこだけちょっとヤな感じ。

 ju9cho氏は、こういう泥臭い?アルパイン的なピッチは得意なようで、心強い。

 それでも、左側に回り込んで岩の隙間を上がっていくピッチなので、また途中木登りも入るので、ロープの流れが極端に悪くなってしまい、上の方でフゥフゥ言っていた。(^^;)

  桃尻スラブ(?)の上に抜けたju9cho氏。 カンマンボロンの頭にて。 

 そこを抜けると、最後は四つん這いで丸いスラブを駆け上がって終了。

 お疲れさんでした。

 

 頂上はミズガキ特有の奇岩が印象的で、ガウディが作った自然公園みたいな感じがしなくもない。

 終了点はそこそこ広いが、一応潅木にセルフビレーを取ったまま、行動食で小休止していると、隣の大面岩?にも1パーティー見える。

 それでも今日は百名山の登山客の声も聞こえず、実に静かだ。

 

 そうこうしているうちに、何とかもっていた天気も下り坂。

 辺りは再び灰色の雲が立ち込め、雷の音と共にポツポツ降り始めた。

奇岩が印象的なミズガキの風景 懸垂は短く切って5ピッチ。

 急いで登ってきたルートを懸垂下降。

 ハングの所は当然、空中懸垂となるが、各支点はハンガー・ボルトやチェーン、残置カラビナと完全に整備されていて、まったく心配なし。

 短めに切って五回の懸垂で取付へ帰り着く。

 

 幸い、雨と雷はすぐに去ってしまい、のんびり駐車場まで下っていく。

 帰りは増富鉱泉「津金楼」で黄土色のラジウム泉に浸かり、須玉IC近くの「牛スジ・ラーメン」で締め。

 下山は楽勝。あとは温泉へ。

p.s.「鎌形ハング・ルート」は概ね支点もバッチリで、人工の練習にうってつけ。

  リング・ボルトは黒ずんでいるが、リングが伸びきったり欠けたりしているのは無い。(2008年7月現在)

  4ピッチ目のハングはルーフ下の岩が脆く、支点がやや危うい。エイリアンか大きめのカムを持っているといくらか安心できる。

(ハーケンやボルトの打ち足しは岩がボロくて厳しいでしょう。)

  6ピッチ目、右側の凹角コーナーは、下部はリング・ボルト連打のようだが、抜け口で無くなるとか他の記録に有り。

  左側、凸スラブは新しいハンガー・ボルトばかりなので、ホントはフリーのルートなんでしょうか?よーわかりません(^^;)

  全体を通して、アプローチは楽、支点は安心で、楽しめるルートです。 


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