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栄養は食事から?
それともサプリメントから?
ほんの数年前まで、一部のスポーツ選手のものであったサプリメントが、最近はごく一般の人の間にも普及しています。私のところにもサプリメントに関するご質問も多く寄せられます。
本来、栄養は食事で摂るのが一番いいと、だれしも思います。でも忙しい現代において、毎日きちんと食事を摂るのはなかなか大変です。野菜を自分で調理したり、1日30品目食卓にのせたり、といった時間も手間もかけられない人は多いでしょう。個人の生活にあわせて、食事のあり方とそれを効果的に補う栄養補助食品の利用を考えるという柔軟性も必要かもしれません。

新しい健康食品

 栄養補助食品について考えるとき、必ず問題になるのが薬事法との関係です。薬事法で定められる医薬とは、それぞれ個別に動物実験や臨床試験を経て、その薬理作用や副作用、毒性などが厳しくテストされて初めて認可されるものです。アメリカでは気軽に買うことのできるビタミン剤なども、日本では錠剤の形や販売できる店に厳しい規制がありますし、ビタミン剤やいわゆる健康食品に「○○に効く」という効果を直接表示して販売することはできません。かならず「カルシウムは骨粗鬆症に効く」「この食品はカルシウムを含んでいます」という三段論法の表示になります。その規制がこの数年で緩和されてきたため、玉石混淆の「健康食品」「サプリメント」が市場にあふれることになりました。

 これを交通整理するために、厚生労働省は2001年4月1日から新しく「栄養機能食品」という分類をもうけました。「栄養機能食品」は、「保健機能食品制度」という新しい制度のなかで、従来からある「特定保健用食品(トクホ)」と並ぶカテゴリーになります。トクホは食品ごとに個別の審査を受けて機能が確認され、それをパッケージに表示できます。これに対し、「栄養機能食品」は、機能の確認された成分を一定量以上含んでいれば認められるもので、「高齢化、食生活の乱れ等により、通常の食生活を行うことが困難な場合等に不足しがちな栄養成分の補給・補完に資するもの」と定義されています。これらの食品は厳しい審査を経た後、(財)日本健康・栄養食品協会によって、JHFA認定マークの表示が認可されます。

 トクホやJHFA認定マークを手がかりに健康食品を選ぶというのも一つの方法です。

自然のなかに偶然生まれた「体によい食べ物」

人が食物として利用している動植物の多くは、おいしさと同時にいろいろな栄養素を備えています。どうして自然の中に「体にいい食べ物」があるのでしょう? そもそも人に食べてもらうために生まれてくる天然物などありませんし、まして自然が人の健康を考えて栄養素をつくってくれているはずもありません。人は自然の中に偶然存在するものの中に、食べておいしく、体によいものを見つけ、食べ物として利用してきたと言えます。あるものには栄養素というより特別な「薬効」をもつことが見いだされ、生薬として用いられてきたものもあります。

 最近、薬効とはちがって「健康を増進する」ような効果、つまり「生理活性作用」とも言える効果をもつ食品成分が次々見つかり、健康食ブームを生んでいます。たとえばお茶に抗癌作用があるとか、ブルーベリーが目に効くといったものです。たしかにお茶のカテキンやブルーベリーのアントシアンの効果は実験で確かめられています。でも、本来、自然はわざわざ人間のためにそのような成分をつくってくれたわけではないことを考えると、特定の食品だけに頼りすぎる食べ方は、たとえどんなに優れた成分を含んでいても期待されるほどの効果は得られないといえるでしょう。

サプリメントをとった方がいい人

最近、栄養学の先生に聞いた話で印象に残っているのは、「スポーツをする人は何々が不足しがちだから(たとえば、鉄とかビタミンB群)、何々を摂取したほうがいい」という考え方はちょっとおかしくて、というのはアスリートは運動量に応じて食べる量も多いから、結果的に摂取できる栄養素も増えているわけで、カロリーのみを増やすような食べ方をしてるのではない限り、特定の栄養素の不足を考える必要はない。むしろ、食が細い人や減量中など、絶対的に食べる量が少ない人がサプリメントなどによる栄養素の補給を考えるべきだ、ということです。

 なるほど!と納得すると同時に、やはりお腹が減ったら食べる、疲れたら休む、という自分の身体からのメッセージにこたえる生活が大事なのでは、と思いました。