さて、酸っぱい食品の代表といえば梅干し。梅が身体によいことは昔からよく知られており、お弁当に、風邪気味のときに、あるいは疲れたときに梅干しは欠かせない食品でした。梅の食べ方としては、やはり梅干しや梅酒が代表的ですが、もっと梅の成分を濃縮してとることのできる方法が梅肉エキスです。一般的にはあまり知られていませんが、和歌山などの梅の産地では、伝統的に家庭常備薬としてどの家庭でも作られてきました。
梅肉エキスは新鮮な青梅の果汁を煮詰め、真っ黒になるまで濃縮して作られます。青梅1kgから20g程度しか作れず、それだけに有効成分は梅干しの数十倍。胃腸薬、整腸剤、風邪気味や疲労時の滋養強壮剤、あるいは飲み過ぎ、食あたり、伝染病にもよく効くとされています。
梅肉エキスも梅干しと同様、有機酸を含み、疲労回復に効果がありますが、これに加えて「ムメフラール」という特殊な成分を含んでいます。ムメフラールは、生梅の果汁に含まれる糖質が酸と熱で変化し、クエン酸と結合してできたものと考えられていて、生の梅や梅肉エキス以外の梅加工品には含まれません。
ムメフラールは、農林水産省食品総合研究所(和歌山県海南市)の菊池祐二博士らのグループにより発見され、血流改善効果のあることが確認されました。血液の流れがよくなると、細胞の新陳代謝がスムーズになり、疲労回復や老化防止に役立ち、冷え性や肩こりも改善されます。また、動脈硬化や高血圧、脳梗塞や心筋梗塞の予防に大きく関わります。
昔から「梅はその日の難のがれ」といわれてきました。その科学的な裏付けがムメフラールのもつ「生体調整機能」であったのです。