制作者:KrK (Knuth for Kludge)
ゲームの攻略本が好きだ。やったことないし、今後やるつもりもないゲームの攻略本を何十冊も持っている。
この世には多くの学問がある。学問の領域はその対象によって分けられると言われるが、それらの目的は概して「世界を知る」事である。
中世ヨーロッパまで古代ギリシアの思想が残ったのは、それが世界のあらゆる現象を包括する学問だからである。そしてキリスト神学をアリストテレスの学を用いて統合的に説明したトマス・アクイナス『神学大全』にてスコラ学が大成される。そのスコラ学を象牙の塔であると批判した啓蒙思想の一派が行ったことも『エンサイクロペディア』という、やはり百科全書を著すことであった。
その後も『ブリタニカ』など「世界を記述する」努力は行われてきた。人海戦術を取り入れたウィキペディアもかなりの成果を挙げている。しかし、結局「すべて」を記述することは不可能である。
そこで記述内容を増やすのではなく、書くべき対象を絞らざるを得なくなる。現に対象を数学に絞ったブルバキの『数学原論』などの成果がある。しかしそれでは「世界を記述する」という目的は達せられない。
では、書くべき対象ではなく、世界自体を縮めたらどうであろうか。それがゲームの攻略本である。
一番判りやすいのはRPGの攻略本で、当該世界の町・物などがすべて記述されている。武器の強さなどは数値化され、一切の曖昧性がない。限りなく「完全なる書」に近い。少し質は落ちるが、格闘ゲームの攻略本も包括性が高い。その世界に存在するすべての格闘家、および必殺技が写真付きで紹介されている。
仮想世界の一部を描いた「物語」ではなく、仮想世界を丸投げしてくれるゲームだからこそ描ける「全体像」がそこにある。自分はそこに強く魅かれる。
「この世は一つの舞台装置。」William Shakespeare『お気に召すまま』