…再び、判決を前にして…

平成15年1月1日

MMR大阪訴訟原告 木下正美・佳代子

 

MMR訴訟原告の木下です。MMRワクチンによる被害発生そして提訴以来、この裁判に関心を持って戴き、MMRの問題に長らく粘り強く取り組んで下さった、支援者・関係者の皆様に、心からのお礼を申し上げます。

さて、MMR訴訟は昨年5月16日に結審し、11月28日に判決を迎えるはずでしたが、この間に阿部知子議員に国会に提出していただいた「質問主意書」の政府答弁が出て「接種開始すぐの死亡事故」などの新たな事実が明らかとなり、原告が申し入れしていた弁論再開が認められ、1月30日にもう1度口頭弁論が行われ即日結審し、判決が3月頃に言い渡される見込みとなりました。なぜ判決を延期させる必要があったのかその思いを述べます。

  私たち原告は、この裁判の当初から一貫して「国と私たち原告は同等の立場ではなく、国はMMRについての情報を独占していて、争っている原告の立証に必要な情報を何ら開示していない」と主張してきました。死亡や重篤な症例を含む被害実態の情報や、予防接種委員会等の各審議会の議事録や提出資料など、MMR接種における施策が適正に行われたかを語る情報が公開されていません。国はいつでもただ当時は適切な処置を取ってきたと主張するだけで、実際に国民にとっての利益を考え、どの様に有効性や被害の実態の調査をしその資料を予防接種行政にどう生かしてきたか、その根拠になった情報や資料を結審になっても、一切開示しませんでした。国が予防接種を受ける子供たちの健康と生命の事を真に考えて議論しているのなら、その議事録や資料は国民に公開し、国はこんなにも子供たちの事を考えているのだと主張すべきです。しかし国やワクチンメーカーの思惑通りに情報が開示されず、真実が隠されたまま判決が言い渡されることは、原告にとってもたくさんの被害に遭われた方にとっても許されない事であり、現在ただひとつの予防接種訴訟であるこのMMR薬害訴訟も、真実を公開させる事に意味がありました。「質問主意書」に対する政府答弁書や提出された資料に今までで隠されていた被害情報や国が「ない」と言っていた各種審議会の議事録や審議会に提出された資料がたくさん出てきました。自分の子供に対して行った予防接種について知る権利を奪い、すべての親に対して「知って当り前」の情報をうやむやにしていたわけです。ここでも情報を隠し、国民をだまして来た薬害発生の構図が明らかになりました。

再び判決を前にして、現在の気持ちをお話しします。私たちの他に重篤な被害を受けたり、無菌性髄膜炎などで入院をする羽目となった方達も、子供を健康に育てるためにきっと役所や育児雑誌などの情報を一生懸命勉強されて来た事でしょう。でも残念な事にほとんどの育児情報は「うつる病気の恐ろしさ」だけを強調し、病気から子供を守るために、すすんで予防接種を打ちましょうとただ勧めているだけです。MMRを接種して2日後息子・大輔が自分では呼吸も出来ない被害者となってから、子供の健康よりも自分達の利益を優先した育児情報の真実を知りました。MMRでなければならない必要はなく、麻疹やおたふく、風疹単独のワクチンに戻す事が充分に可能でした。それを企業の利益を優先する事なく適切に実行していれば、大部分の被害は防ぐ事が出来たのではないのでしょうか。被害情報を隠し都合のいい様に操作し、証人尋問の席では偽証までして、MMRを4年もの間漫然と打ち続けた事への国からの釈明を今度の弁論で聞いてみたいです。

我が家では息子の死亡の翌年に国からの「認定せず」の通知を受け、平成5年12月、提訴に踏み切りました。4年後の平成9年12月に不服申立てをしていた「審査請求」の結果が出て「行政上の認定」を受ける事が出来ましたが、それでもなお裁判の場で被告は因果関係を争い続けており、謝罪の言葉すらこれまで全くありません。また12月26日には、薬害被害者などの反対を押し切って成立させた独立行政法人問題で、薬害被害者が坂口厚生労働大臣と面会する機会があり、母親がちょうど冬休み中だった長女を連れて東京に行って来ました。そして直接話は出来ませんでしたが大臣との面会に同席させて戴く事ができ、大臣が私たち被害者の人たちと話をされる様子をこの目で見て、去る8月23日の薬害根絶デーの日にお届けした手紙は読んで戴けただろうか、そしてMMRをはじめとして予防接種問題についても深く知ってもらい、大臣はもとより、この問題を真剣に考えて下さる方が増えて行く事を望みました。

判決が延期になった事で「頑張って行くための時間」を与えてもらったような気が、今しています。我が家の事故から11年、提訴から9年が経過してしまいましたが、この問題を一緒に考えて下さる方が増え「おかしい事はおかしい」と言い続けて行けるように、自分たちとしても頑張って行き判決に臨もうと思います。国の権力や子供の命をなんとも考えないメーカーに踏みにじられ、負ける訳にはいきません。これまで支援して下さった皆様には、お願いや頼る事ばかりになり、申し分けない思いですが、今後共どうか一層のご支援をお願い申し上げます。