■期限切れMMR統一株ワクチンを大量に使用した

 質問主意書に対する答弁書(9月10日)の別表1では、MMR統一株は平成4年から生産量ゼロとなっている。また、平成5426日の記者会見では、統一株は平成410月から使用されていない。既に出回っているものも平成49月で期限切れになると説明されていた(取材した記者のメモ−結核感染症課作成のプレス発表資料にメモされている)。一方、MMR研究班の調査と京都府から開示された情報によると、最後の生産である平成3年のMMRが有効期限切れになっているはずの平成410月から翌54月までに、たった3都府県で260人もの子どもに接種されている。そして無菌性髄膜炎発症例があり、また、死亡例や重篤な事例が潜んでいる可能性はゼロではない。しかし、この事実を隠さんばかりに、平成5427日の「当面接種見合わせ」発表の日、開催された公衆衛生審議会伝染病予防部会予防接種委員会に提出された集計資料(甲A88号証)は、平成49月までのデータで終わらせている。このデータ収集は平成310月、自社株導入時から3ヶ月ごとに報告を求めたモニタリング。平成5427日の委員会資料を作るに、平成410月以後のデータは実務的に集計不可能なのか疑わしい。意図的に統一株「有効期限切れ」の月、平成49月で切って、それ以後も流通し無菌性髄膜炎を発生させた統一株の存在を隠蔽したのではなかろうかという推論。下の表中には無菌性髄膜炎等の事実は確認すべきことがあるので記載しなかった。まもなく追加する予定(10.10)。京都府宇治市分10.30入手し下の表に追加。感染研に対しMMR統一株の最終有効期限がわかる資料の開示請求をした(10.29)。また、大阪府の資料も開示請求している。(11月5日 記)

9.10答弁書 別表1

 11月27日、国立感染症研究所で開示請求していた文書を閲覧した。
 ワクチン国家検定の『検定受理台帳』を確認したところ、統一株MMR(北里研究所、武田薬品、阪大微研会の3社で同じものが製造されていた)の最終検定は平成3(1991)年9月だった。厚生労働省の「生物製剤基準」では、検定合格日の1年後が有効期限とされている。
 これが遵守されていれば、上の表はすべてゼロになるはずだ。しかも3都府県だけで260人であるから全国調査すればどうなるのだろうか。
 しかし、パッケージに明示されているはずの有効期限であり、多くの医療機関がそれを無視して接種することがありうるのだろうか。
 

*参考 (96年6月にかいたもの-論座96-7の元原稿)

(前略)

  在庫処分の形跡
 さて、91年10月自社株導入以後の統一株の使用状況を研究班論文の集計(東京都と神奈川県)や、私と関係者が集めた一部自治体(京都府、神奈川県、静岡県)のモニタリング情報などからみると、使用量がしだいに減りつつも京都府などでは93年4月(接種見合わせ)に接種総数12人というように、最後まで使われていたことがわかる。そして無菌性髄膜炎を発生させていたことは当然のことである。3社が統一株の生産をいつ頃中止したかは未確認であるが、自社株導入の意見がまとめられた91年5月から遠くない時期に各社とも中止したと考えられる。当然のごとくいち早く自社株の生産を開始することになる。逆に、3社の生産体制を見極めながら、公衆衛生審議会の意見とりまとめや厚生省保健医療局の「導入通知」の日が決定されたとみる方が自然かもしれない。
 しかし、93年の1月から4月の間にも使われるということは、その1年前92年の同時期にまだ製造と予研による国家検定が行われていたことになる。生ワクチンであるMMRの有効期限が1年であることからいえることである。
 国家検定とは、生物製剤(ワクチンやあの血液製剤も同様)の品質管理のために予研によって行われるもので、「国家検定合格之証」のラベルが貼付されない限り市販できないことに決められている。
 ところで、92年12月9日NHKニュースモーニングワイドが「厚生省 MMRワクチンの『統一株』使用中止へ」と報道した。(91年10月自社株導入以後について)「しかし、『統一株』ワクチンについてはその後もおよそ千人に一人の割合で副作用が起きたことなどから製造が打ち切られ、最近は『統一株』ワクチンが全く使われなくなっています。このため厚生省の予防接種委員会は、これ以上使用を認める意味がなくなったとして、『統一株』ワクチンの使用を中止する方針を決めたものです。厚生省ではこれを受けて近く公衆衛生審議会に『統一株』ワクチンの使用中止を諮ることにしています。」という内容だった。
 以上のことから、次の3点の問題がみえてくる。
 予防接種委員会が使用中止を決めた時期には、モニタリング(前述)情報によると統一株の使用量はごくわずかになっている時期であり、この決定はあまりに遅すぎる決定で、在庫処分を待って為された決定といわれても反論できないものである。
 個々の接種医レベルで考えて、91年10月以後も統一株を使い続ける医師は、常識的な市民の目からして特に異状である。はしか単独の接種に切り替えることが自然な判断だというべきである。しかし打ち続けたということは、国が放置した故の「在庫処分だ」としかいいようがない。
 また、予研は髄液検査をやることで無菌性髄膜炎の絶えないことを最も承知しながら、92年4月までは明らかに検定で「合格之証」を貼り続けたのである。MMR導入時期尚早とみていた人物がいたにもかかわらずである。芝田進午(予研裁判の会代表)が本誌5月号(朝日新聞『論座』)に於いて、薬害エイズにおける予研責任を論証されたが、それと全く同質の問題である。HIVに汚染された血液製剤はアメリカ製だったが、このMMR・おたふくかぜワクチンは予研が開発に深く関わったワクチンである。少なくとも真実を知っている研究者の道義的責任が追究されるべきである。早すぎたMMR導入を学者的良心から阻止すべきだったし、早期にMMR接種中止を訴えるべきだった。
 先程来の予研関係者は、MMRが人体実験だったかの私の問いに、但し書き付きではあるが「結論からいえば一種の人体実験であったと考えます。」と回答し、厚生省の責任を指摘し、自らの責任については「私どもにはものを言う場がなかった」と語ったのである。本来的に医薬品特にワクチンは、「この種の人体実験」なしに開発・改良ができないとし、日本の薬事行政、「市販後調査」などのシステムが整備されていなかったことに問題をすり替えるのである。
 今後、予研との討論が必要である。

  無視された予防接種委員会の意見
 在庫処分後に「統一株使用中止」を決めた予防接種委員会の意見による保健医療局の通知が実は出されていないことが去る3月末(96年)厚生省への確認で判明した。担当者によると詳細は未確認だが、NHK報道に近い時期の公衆衛生審議会では、MMR自体の中止が議論になり、統一株使用中止の決定はなされず(委員会の意見は無視され)、「通知」を出さずに93年4月27日「当面接種見合わせ」に至ったと明言した。
 その最後の過ちが更に5ヶ月ほど統一株を放置させ、規模はまだ特定できないが被害を生んだのであった。

付記(96年9月7日)
 最近、新たな事実が発見された。93年6月18日に開催された、「薬害・医療被害をなくすための厚生省交渉団」第30回交渉において次のようなくだりが記述されている。

 「・・・。平成四年十月からは、統一株は使われておりませんが、・・・」
(出典:第三○回厚生省交渉観戦記、風間進『SSKSクロロキン会報79'93.11』)


(後略)