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厚生委員会

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1993/04/20

 

西山登紀子君 そういう厚生大臣の御決意を踏まえまして、国民の中で大きな問題になっておりますMMRの予防接種についてお伺いをいたします。
 既に、国会ではこのMMRの問題は繰り返し論議がされておりますが、九一年の六月に保健医療局の結核・感染症対策室長通知で、今後、定期的にMMRの接種者数及び無菌性髄膜炎の発生状況をモニタリングすることにしました。その調査結果の内容が九二年の四月に出ておりますが、その結果について厚生省はどのように評価をしていらっしゃいますか、お伺いいたします。
政府委員(谷修一君)
 平成元年四月から平成三年十二月までのMMRワクチンの接種後の無菌性髄膜炎の発生率は、約千人に一人という割合だと承知をしております。これは前回の報告時と比較するとやや高くなっておりますが、公衆衛生審議会の専門部会での御意見としては、おたふく風邪にかかった場合の、いわゆる自然感染によって起こる無菌性髄膜炎の発生率と比較するとかなり低いというような御意見もございました。
 いずれにしても、私どもは、このMMRワクチンの接種につきましては、この副反応の問題について十分に保護者に説明をし、保護者の希望した場合にこのワクチンを接種するというようなことで指導をしているところでございます。
西山登紀子君
 厚生省のこの副反応に対する通達というのは、八九年九月の段階では十万から二十万人に一人、それから十月には数千人から三万人に一人、九一年六月には千二百人に一人というように変わってきまして、そして先ほど御報告がありましたように九二年の四月には千人に一人、こういうふうに非常に厳しい結果が出てきているわけです。
 ところが、実際はもっと厳しいというふうに私は思います。京都の資料ですけれども、八九年の四月から九二年九月末の間にMMRの被接種者数は三万七千八百九十三人でしたが、そのうち無菌性髄膜炎の発生者は四十六名です。八百二十四人に一人の割合なんですね。そのうち占部株を含む統一株は約九割使用されておりますけれども、それだけを取り出しますと七百四十二人に一人の割合で無菌性髄膜炎は出ている、こういう資料を払いただきました。
 そして、その資料を見まして私が思いましたことは、被害の実際というのは数が多いというだけではないと思ったわけです。京都の例だと、接種をして二、三週間で発症しているわけですが、発熱、嘔吐、けいれんがあらわれます。そして、その子供たちの年齢は一歳過ぎの子供が非常に多いということなんですね。一歳半、一歳七カ月、一歳八カ月、こういうふうに、はしか予防をしようというふうな子供ですからそういう年齢の子供が多くて、その子供たちが約二週間程度前後して入院をしていらっしゃいます。中には一カ月も入院をしている子供がいる。私も十カ月の子供と一緒に入院したことがあるんですが、それはもうもちろん母子入院ということになります。大変なことです。そして、全国で今二名の重篤な心身障害を持つ被害児が出ているということをお聞きいたしました。
 この間の国会答弁では、MMRが中央薬事審議会に承認申請されたときの臨床試験は千件行われたけれども、軽微な発熱、発疹が中心で無菌性髄膜炎はなかったと答弁がされています。しかし、実際は無菌性髄膜炎の反応が多発しておりますし、また、その症状も決して軽くないというふうに私は思います。国会答弁とは随分と違う結果が出ているわけです。
 そこで、厚生省にお伺いしたいんですけれども、このような状態の中で四年がたったわけですが、当初十万から二十万人に一人というふうな発表が千人に一人というふうな発表に変わってきた、こういうふうに発表をされると国民は大変な不信感を持つのではないかと思うのですね。特にMMR、とりわけ占部株ワクチンを含む統一株を安全であるとして承認をしてきた、積極的活用を進めてきた、このことについての強い疑念を生み出したばかりではなく、予防接種一般に対する信頼性、国民の信頼をいたく傷つけたのではないかと思うわけです。
 それで二点お伺いいたしますが、厚生省は、統一株MMRを承認申請したときのデータの信頼性や審議会の評価、それが今でも十分に信頼に値するものとお考えでしょうか。またもう一つ、接種後のこういう副反応の多発、その症状を見て、この統一株は今でも政府が推奨できる、信頼に足る有効なものとお考えでしょうか。二点お伺いいたします。
政府委員(市川和孝君)
 ただいまの第一点目でございますけれども、MMRワクチンの承認に当たりましては、先生のお話にございましたように、申請者から安定性の試験だとかそれから毒性の試験のほか臨床試験データというものを提出させまして、これをもとに中央薬事審議会で御審議をいただきましたわけでございます。もちろん、実際にこうした臨床データをおつくりになっておられる専門のお医者さんといいましょうか、そういう方々から十分に御観察をいただいた上でこうしたデータをつくっているわけでございますので、データそのものにつきまして私どもは信頼性が欠けるというようなことは考えておりませんでございます。
 それともう一点、副反応の関係でございますが、当時観察されました副反応は、お話しございましたように発熱あるいは発疹というようなものを主としておりまして、無菌性髄膜炎というような報告はございませんでした。
 一般的に、治験におきましては症例を多くすれば副作用もより精密に検出されるということにはなるわけでございますけれども、治験という性格からその対象症例数についてはおのずと制約も出てくるわけでございまして、ある程度限られた範囲のデータからできるだけ多くの情報を得まして、それをもとに判断を行うということが通常求められるわけでございます。したがいまして、発生頻度の少ない副作用につきましては、承認前に行われます治験ではすべてを把握するということは必ずしも容易でないという事情にあることを御理解賜りたいと思うのでございます。もちろん、それだけに承認後の安全性の調査ということは非常に重要でございまして、私ども、こういった点を充実するために、特に医療機関あるいは医療関係者の御協力を得まして副作用のモニター制度の徹底といいますか、そういった点については今後とも努力をしてまいりたいと考えているわけでございます。
 それから、現在使われているMMRワクチンにつきましては、これは公衆衛生審議会の伝染病予防部会の方で御評価をいただいているわけでございまして、先ほど保健医療局長の方から答弁申し上げましたような状況であるというふうに考えております。
政府委員(谷修一君)
 ただいま市川審議官の方から御答弁がございましたが、若干補足をさせていただきたいと思います。
 先生おっしゃいましたMMRワクチンについては、一回の接種によって三種類の病気についての免疫が与えられるというようなことから、接種を受けられる方のいろんな負担の軽減が図られるというようなことがあるわけでございます。ただ、MMRワクチンそのものにつきましては、先ほどもお話し申しましたようにモニタリングを現在しておりまして、その統一株を今後どのように判断するのか、あるいは平成三年十月から導入されておりますいわゆる自社株というものの副反応の発生状況、そういうようなことについてモニタリングをして、その結果をひとつ専門部会で御審議をいただきたいというふうに考えておりますので、私どもとしてはその検討結果をいただいた上で判断をしていきたいというふうに考えております。西山登紀子君 いろいろ御説明いただきましたけれども、やはり私は納得ができません。そのデータは問題はなかったとおっしゃるけれども、じゃ、問題がないワクチンからどうしてそのような副作用が多発するのか、原因は何であったのかというふうなことはやはりお答えがいただけないわけです。それから、私がお伺いしているのは、自社株ではなくて、当初からの統一株について今でも政府が推奨できる有効なものと思っているのかというふうにお聞きしておりますので、やはりもっと国民に率直であってほしいと思います。また、真剣に受けとめていただきたいというふうに思いますが、時間がありませんから次の質問に移ります。
 副反応が起きた場合の救済制度なんですが、この医薬品副作用被害救済・研究振興基金の給付件数を見てみますと、全国で八九年度は二百八十三件、九〇年度は四百四十五件、九一年度が三百九十件なんですが、そのうちMMRを含む生物学的製剤では二件、二十二件、三十四件という低い状況です。また公的救済制度では、京都の例を出しますと、無菌性髄膜炎の発症が四十六人ですが、そのうちの申請者は二十二件、認定は十七件という状況なんです。
 MMRの副反応に対します救済制度が十分活用されていないのではないかというふうに思うんですけれども、この救済制度をもっときちっと知らせていく必要があるのではないでしょうか。例えば、母子手帳に公的救済制度、それから基金の制度があるということなども示すなどして改善を図る必要があるのではないでしょうか。被害が多いということはそれはいけないわけですけれども、しかし万が一のそういう被害を救済する制度の普及、そのことについても改善を図る必要がないかということでお伺いいたします。

政府委員(谷修一君) MMRワクチンの副反応につきましては、実施主体であります市町村長を通じて、実施の際あるいは接種の際に、接種を担当する医師から保護者に対して十分そういうことを説明してもらいたいということはかねてからお願いをしているところでございます。また、予防接種の被害救済制度は、既に昭和五十一年からの制度でございますけれども、従来から市町村を通じましてその周知に努めてきているつもりでございます。ただ、必ずしも十分周知がされていないというようなこともあろうかと思いますので、私どもとしては、いろんな積極的な周知の方法ということについては考えていきたいというふうに思っております。

西山登紀子君 厚生大臣にお聞きしたいんですが、九二年三月号の「小児科臨床」という専門誌の中で、国立予防衛生研究所の所長の経験者でもあります大谷明さんが、MMR統一株は「一日も早くより安全なワクチンヘの切り替えを願うのは当然である。」、こういうふうに言っていらっしゃいます。そしてまた、「従来の統計資料にこだわらぬ客観的、科学的な調査が必要である。」とも言っていらっしゃるわけです。さらに日本小児科学会でも、当時は千二百人に一人ということだったわけですけれども、この副反応は好ましいものではなくて早急な改善の努力が積極的に行われるようにということで、厚生大臣への要望書も出しておられます。
 母親も医師もより安全なワクチンの接種を願っているわけですけれども、厚生省はこういう国民の要望にどのようにおこたえになるおつもりか、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
国務大臣(丹羽雄哉君)
 MMRワクチンにつきましては、御指摘のとおり、さらに安全で有効なワクチンを生み出すことが大変急務である、このようにまず認識をいたしております。このため現在、より安全なMMRワクチンが選択できるよう、厚生省の改良ワクチン研究班などにおいて、ワクチンの専門家などの協力を得まして副反応発現の情報分析などの研究を進めております。
 また、接種方法につきましては、ま疹ワクチンの経皮接種時には、ま疹ワクチン単独の接種を原則とし、MMRワクチンについては、病気の実態やワクチンの副作用について十分に説明をした上で保護者の希望があった場合には接種することにいたしております。
 いずれにいたしましても、このMMRワクチンについては、国のワクチンについての対応といたしましては、これらの研究などをもとにいたしまして、国民の皆さん方が一層安心して予防接種が受けられるようワクチンの改良などに努力してまいりたいと思っております。
西山登紀子君
 最後にですが、実は私のところに、現在問題になっておりますMMR統一株に使われておりますおたふくの占部株ワクチンの単味ワクチンを四歳のときに使用しまして、重度のてんかんとそれから知能障害、そういう後遺症になって今基金の給付を受けているお子さんの親御さんからも御相談があったわけですけれども、このMMRワクチンに限らずどんな予防接種も安全で親も子供もお医者さんも安心して使うことができる、そういうワクチンの有効性や接種の方法についても十分国民が納得できるものであってほしいと思っているわけですが、最後に、一番最初の質問と重なると思いますけれども、もう一度大臣の御決意をお伺いいたします。
国務大臣(丹羽雄哉君) 予防接種の実施に当たりましては、先生の御指摘のとおり、副反応被害ができる限り発生しないように、現場の予診の徹底や予防接種による副反応の情報提供などを積極的に行っていくことが極めて重要である、このようにまず考えております。
 今後の予防接種制度の見直しに当たりましても、このような観点から、予防接種に関する情報提供の方法についても幅広く検討をしてまいりたいと思っております。また、新医薬品の承認審議過程についても、今後国民の皆さん方の理解を得るためにも概要を取りまとめ、内外に公表していくことといたしております。
粟森喬君 まず、今回の法律の改正に当たりまして、厚生省の考え方を幾つかお尋ねをしたいと思います。