■読売新聞大阪版03.10.13

MMR接種訴訟 日英弁護団が提携 控訴審へ情報交換 因果関係立証へ/大阪
2003.10.13 大阪朝刊 949字 5段

 新三種混合(MMR)ワクチンの接種後に死亡するなどした子供三人の家族らが、国に損害賠償を求めた「MMR接種訴訟」の原告弁護団が、イギリスMMR訴訟の弁護チームと情報の交換などで提携し、因果関係の立証を進めることで合意した。英国では千人以上が製薬会社を提訴し、世界の先端医学情報を収集している。原告弁護団はMMRによる障害に関する新たな資料も入手し、「控訴審での大きな武器」と期待している。日本の裁判で、海外の弁護団との訴訟提携が実現するのは極めて異例。
 MMR接種訴訟は、三月の一審・大阪地裁判決が被害児二人について接種との因果関係を認め、国などに約一億六千八百五十万円の賠償を命じたが、敗訴した一家族と国が控訴し、七月から大阪高裁で控訴審の審理が行われている。
 原告弁護団によると、英国では一九九八年、被害者らが集団提訴。約五年間の訴訟準備期間を経て来春から実質審理が始まる。弁護士五人と医師ら計約三十人が弁護チームを結成し、英国南東部のノリッジ市に事務所を構えている。
 英国の被害は、日本の病状とは異なるものの、大阪地裁判決を知ったメンバーが、原告弁護団に立証内容を問い合わせたことをきっかけに、九月、日本側の四人が渡英し、訴訟提携が成立した。英国側は、約三千七百点に上る膨大な資料を集めており、日本側は判決文の英訳などを渡し、医学論文などの提供を受けた。
 原告弁護団は、この中で特にMMRワクチンの腸障害への影響に言及した論文に注目。一審で「死因はインフルエンザ」とされて敗訴した被害児の両親は「MMRワクチンに起因する腸障害によって免疫機能が低下した状態でインフルエンザに感染して死亡した」と主張しており、「因果関係が裏付けられる可能性がある」とみて検討を進める。英国側も、争点など先行訴訟の弁護団としてのアドバイスを期待しているという。
 渡英した原告弁護団の重村達郎弁護士は「情報量の違いに圧倒された。貴重な立証材料になりそうだ」と話している。

 <MMR接種>
 はしか、おたふく風邪、風疹(ふうしん)の混合ワクチンを一度に接種できるとして、旧厚生省が一九八九年に導入したが、無菌性髄膜炎などの副作用が多発し、九三年に中止。約百八十三万人が接種を受け、千六十五人が被害認定されている。