LUXMAN
LXA-OT1


LUXMANと音楽之友社の共同企画で生まれた、雑誌「stereo」2012年1月号付録のデジタルアンプLXA-OT1です。
雑誌の付録にデジタルアンプが付くなんて、凄い時代になったもんです。
しかもお値段は驚きの2800円!!
LUXMANというと、高価なモデルしか扱っていない印象が強かったのですが、やってくれますね!
LUXKIT世代としては嬉しい限りです。

事の発端はコレです。

発売の約2ヶ月前に音楽之友ホールで行われた自作スピーカーコンテストで展示されていたLXA-OT1を見つけてしまいました。。
こんな基板剥き出しのモノが展示されていれば、素通りするわけにもいかず・・・(^^;
LUXMANの方ともお話させて頂きましたが、製品化には価格面で相当苦労されたようです。
かなりマニアックな方で、プライベートではコイルも巻いておられるそうで。

「是非!予約して買って下さい!」と申しておられましたので、その日のうちに予約しておきました。




そして、届いたブツです。
アンプ基板の他にスイッチング方式のACアダプターと足とネジとカバーが付属しています。
アンプとして使うのに、ホントに最低限度の物しか入っていません。
それ以外は自分で好きなようにしましょうという事でしょうね。

一見、不親切に見えますが、最近はちょっとでも自分の思い通りに行かないと文句言う子供みたいな大人が増えたので、あえてこのように割り切った構成のほうが良いと思います。







箱から出して早速試聴です。
正直、最初はあまり期待していませんでした。まぁ話のネタにはなるかなと・・・そのくらいでした。
が、音を聴いてちょっと感動に近い感覚を覚えました。
ハイファイだとか高音質とかいうよりも、聴くのが楽しくなるアンプです。
空間表現も見事で、音楽がフワっと浮かび上がる感じはハイエンドを彷彿させます。

ううむ、困ったぞ(^^;







とりあえず、使ってみて気になった点のみ手を加えてみることにしました。
まず、ゲインが高くちょっとボリウムを動かすだけで大音量になってしまう点。
更にボリウムのギャングエラーと相まって小音量時の調整が難しいというのは私にとっては致命的。

そこでアンプのゲインを1段下げて(26dB→20dB)高品質で評判のVRに交換、ついでに電解コンデンサを安心の国産品に交換しました。

これで音質はそのままに扱い易いアンプにする事ができました。






小型のデジタルアンプといえば、このソニックインパクトが有名でしょうか。
ええ、私にとっても初めてのデジタルアンプでした。

この立ち上がりの速い音には驚いたもんです。まさにソニックなインパクト!!
バッテリー駆動の恩恵か、クリーンでパワフル。それまでのデジタルアンプに対するマイナスイメージを払拭させてくれた1台でした。

しかし、バッテリー切れや充電といった手間が仇となり出番が少なくなってしまいました。
入力端子がステレオミニプラグというのも気分を萎えさせた原因だったかもしれません。
どうやら私は「音がよい」というだけでは長期的に満足できないようです(^^;




これは秋月のUSB-DACアンプ基板です。
トライパスのデジタルアンプTA1011Bが付いててお値段何と700円!!
飛びついた人も多いのではないでしょうか。

ええ、もちろん私も飛びつきました(^^;









基板剥き出しのままでは勿体無いのでケースに入れました。
チャンデバ使ったりバイアンプにしたり遊べるように2枚使って左右独立4チャンネル仕様に!
トランスは大容量のトロイダルコア!
これでいつでも好きな時に手軽に使える・・・と思ったのですが・・・。

全然出番がありません。
せっかく苦労してケースに入れたのに、使う気にならんのです。







その気にならない理由として、やっぱりこのケースのデザインが・・・
ちゃんとしたカッコイイやつだとけっこう良いお値段なもんで・・・この手のなら安く済むので買いましたが・・・
これじゃぁなんだかわからないただの工作物。ガラクタです。
そんなわけで棚の奥に追いやられたまま出番はありませんでした。

結果として、安く済ませたものの、使わないモノを作ったわけですから高くついてしまった事になります。








そこで今回は大奮発してタカチのHYシリーズに組み込む事にしました。
お値段は、本体の3倍以上・・・(^^;
でもね、このくらいしないと「その気」にならないですし、安物ケースに入れて出番が無くなったら寂しいしですからね。

高価なケースですから、キチンと加工して「ハイエンド風」に仕上げますよ!












改造内容を決める


まず、これまでの自作アンプの失敗を生かして、市販品と遜色ない使い勝手の良いアンプにしたいので、AC電源内蔵とします。
電圧は付属ACアダプターと同じ12V。これ以上は必要ないと考えています。
でも電流容量はフルパワーでも余力のあるものにする事で更なる音質アップを狙います。

付属ACアダプターは、5W以上の出力になると保護回路が作動してシャットダウンしてしまいます。
ちょっと変わった自主規制?いやいやコストの影響というのがホントのところでしょう。
残念ながらこのようなリミッターはコスト以外にメリットは有りませんので、強力でクリーンなトランス電源に変更です。

アンプ基板に関しては基本的にノーマル状態で、改造は最小限に留めます。
良いアンプである事は確認できていますので、この良さを殺さないようにします。

基本的にノーマルですが、オペアンプへの電源供給はトランスから別巻線で独立した±2電源に変更します。
これは、フルパワー時にオペアンプの電源供給が不安定になるのを根本的に解決させて音質向上を狙うのと、ある程度の電圧をかけないと本領発揮しない5532系のオペアンプも余裕で使えるようにするためです。
電圧は5532系もしっかり使えて、AD8620のように±15Vでは壊れてしまう物でも安心して使えるようにするため、安全性を盛り込んで±12Vで行くことにしました。

電解コンデンサは国産品に無条件で交換します。
コストの影響でしょうか、嫌な感じのコンデンサが使われていますがちょっとねぇ・・・って思っているのは私だけではないと思います。
海外製コンデンサの爆発という怖い経験を2度もしているので、ここは譲れません!!
せっかくなので国産の音響用に交換します。

ま、だいたいこんなメニューで作業開始です!




まずは電源から。
幸い、先日突撃した秋月電子で電解コンデンサをガッツリ仕入れてきましたので、それをパラって使う事にしました。

50V2700uFが4個で100円・・・秋月さんのこのスピリットに感謝です!










同じく秋月で購入した基板に電解コンを付けられるだけ実装しました(^^;
ブリッジダイオードも秋月のSBDタイプ。初めて使います。
定電圧回路はLM350Tで12Vにに安定化。
放熱はシャーシに直接付ける事でヒートシンクを省略。

もう1枚の小さい基板はオペアンプ専用電源回路とアンプ電源の制御回路を組みます。
オペアンプ専用の±2電源回路は3端子REGで済ませました。







電源トランスは、以前スピーカー目的で入手したオンキョーのホームシアターシステムを潰した時の残骸が丁度良かったので2次側巻線を改造して使いました。
組み込み用の市販品より背が低いので、自作派には使いやすいです。

容量は不明ですが1次側ヒューズに2.5Aが使われていた事と、5ch+サブウーハーを駆動していたアンプに付いていた物ですから、今回のアンプにはかなりのオーバースペックである事は間違いないです。








アンプ基板は基本的にはノーマルでの使用を前提として、オペアンプを±2電源化するためにちょこっと手を加えるのみに留めます。

無闇に電圧を上げたり高額な部品オンパレードにするといった無駄な事はしませんよ。










アンプICの真下にくる部分に銅の支柱を付けました。













こうする事でICの熱を速やかにアルミシャーシへ伝え、放熱効果を高めるのが狙いです。

ま、効率の高いデジタルアンプですからここまでは必要ないかと思いますが、せっかくなので念のため(^^;











この調子でバンバン実装していきます。
アンプ基板のレイアウトにはかなり悩みましたが、後方のこの位置に決めました。
こうする事で入力ライン等の配線を短くする事ができるからです。

さて、ここでボリウムをどうするかという問題が出てきます。
配線を延長してフロントパネルまでボリウムを持ってくるのが一般的ですが、せっかくなので新たな試みに挑戦です。








ジャンクから取り外したボリウムやラジコンのドライブシャフト周りに使うカップリングを小細工してこんなのを作りました。
これで基板にボリウムを付けたままパネルからの操作が可能になります。
フタをしてしまえば見えませんが、作った本人にしかわからないハイエンドな自己満足です(^^;

ただねぇ、ちょっとガタがあるんですよねぇ・・・
見た目はハイエンドですが、操作フィールはやっぱりジャンク(^^;
ま、このあたりはユニバーサルシャフトに変更すれば解決できるはずですので、次回のお楽しみにということで。
ラジコン屋さんで旧モデルパーツのワゴン売りに期待して・・・!






付属のACアダプターで使用する際は問題にならないのですが、今回のように外部電源でAC100VをON/OFFするとポップノイズが豪快に出てしまいますので、その対策として遅延回路を追加しました。

電源ONでLM350Tが完全に立ち上がってからアンプをONにし、電源OFF時は瞬時にOFFにします。
こうする事でアンプ基板の改造を最小限に抑えています。っていうか一番ラクな方法です(^^;








一番大変なリアパネルの加工。
ACインレットの角穴はちょっと疲れますね。
いつもレイアウトで失敗するのですが、今回はセンス良くうまく出来たと思います(^^;











電源スイッチはオーディオに適した見栄えの良い物は高価なので、安物を使って仕上げました。
手間はかかりますが、価格は1/10以下で済みます。












実際にいろいろ配置してみると、スペース的にけっこう厳しくなりました。
やっぱりケースは大きいに越した事は無いかなと(^^;

シールドトランスでしたが、念のため鉛を巻いておきました。










実装完了!
けっこうギリギリでしたがなんとかなりました。

実はこのケース、別の凄いアンプキットに使う予定で仕入れておいたものでした。
それなのに・・・まさかこんな事になろうとは・・・!
ま、無事入りきって仕上がったのでヨシとしましょうか。








フタして完成です!
ついでにシールテープで軽く装飾(^^)
シンプルでキレイに出来たと思います。
センスの悪い私の自作機の中でもここまで出来の良いものは稀なケースです(^^;










ちょっと遊び心を盛り込んで・・・(^^;













リアパネルもキレイにレイアウトできたので、軽く装飾。













こちらにも遊び心を。















試聴

さっそくスピーカーを接続して試聴開始です。
こういったセッティング作業1つみても、裸のアンプとは比較にならないほどラクですし、取り扱いに気を使わなくて済むので、安心感が違いますね。

さて気になる音質ですが、基本的には電源しか変更していないので音は大きく変わらないはず・・・なのですが、ずいぶん変わってしまいました。
ノーマルの良かった点は残っていますが、全体的に1つ1つの音がよりしっかり出てくる印象です。
元々、丸い感じの音でしたが、それが適度に締まった感じになったようです。
低域の弾む感じはそのままに、フワっとでてくるパワー感がなんとも頼もしいです。
もちろん、フルパワーでシャットダウンなんて事もありません。

オペアンプは4558のままですが、このままメインとしてじっくり楽しんでいきたいと思います。





最後に・・・

雑誌付録のアンプで、こんな事になろうとは想定外でした(^^;
それにしてもLUXMAN、やってくれましたね。
ここは素直にありがとうです。

かなり厳しいコスト制限の中で生まれたLXA-OT1ですが、コストを抑えるだけならオペアンプを使ったプリアンプなんて必要無かったはずです。
デジタルアンプだけでも充分なゲインを持っていますし、ぶっちゃけオペアンプを使う事でS/N比が悪化しているのも事実。
でも、あえてコストアップ覚悟でプリアンプを載せてリリースしました。
この理由の真相はわかりませんが、これは買ってただ使うだけではなく自分の手で音の変化を楽しんでほしい、音作りという作業を楽しんでほしいというLUXMANからのメッセージであると私は受け止めています。

今回のように、苦労してケースに組み込む事でより愛着が沸き楽しく付き合えるようになるはずです。
オペアンプを交換して楽しむのを前提とした製品なんて、なかなか無いですからね、積極的に楽しまなきゃ損ですよ。

この記事を書いている時点では、発売から5日しか経過していないのでネットにも改造情報などが上がってきていませんが、これからどんどん面白いネタが出てくると思います。
それらを参考に自分に合った、気に入った音になるように手を加えて楽しめれば最高の1台になるはずです。
きっとLUXMANもそうして欲しいと思っているはずです。


オーディオに限った事ではありませんが、昔はモノを買うよりも作ったほうが安かったので、そこから自作の道に足を踏み入れた人も多かったものですが、最近では自作のほうが高くついてしまいます。
モノが溢れ、自作する人は激減し、その代わりに人の作ったモノをネットで批判する子供みたいな大人が増えました。
だいたいこういう子供は、ものづくりというものを知らない人です。
知らないから、意味不明なケチを付けられるのです。
まさに現代社会が生み出した「負の遺産」です。

自作する事でこういう人間にならずに済むというわけではありませんが、少なくとも自分の手でより深く触れる事でモノを見る目が変わってくるのは事実だと思います。
見る目が変われば見る世界も変わってきます。すると・・・今までよりもちょっとずつ面白くなってくるんですよ!
オーディオだって、もっともっと面白くなるはずです。
どうせやるなら、楽しまなくちゃですよ!

LXA-OT1は、そんな「楽しいオーディオ」への招待状なのかもしれません。
みなさんも、壊さない程度におもいっきりいじって楽しんでみて下さい。



P.S.
私は万一に備えもう1台追加購入しました。
お世話にならずに済んだのが幸い・・・(^^;