マンション建築問題の盲点

 全国的な容積率・建ぺい率の緩和に伴い、各地で既存の高さを上回る中高層マンション建 設が活発化している。事業者は、建築基準法スレスレの設計を行い、各地でトラブルとなっている。一級建築士が引いた図面は、法律上間違いないものとして、行政~弁護士まで疑いを持って検証しない事例が多くなっている。
 マンション建設に伴い、燃料タンクを地下に埋設するのが通例である。説明会などで、事業者側から埋設図面の交付を受ける。隣地所有者や関係者が、建築図面を事業者に求めた場合、事業者は近隣住民に交付しなければならない決まりとなっている。建物本体関連図面が重要な意味を持っている。
 建築基準法め一杯に設計している場合、当該地下タンク敷設を、隣地境界線から50cm前後、中には20cmとしている例もある。

 民法第237条【彊界線付近の穿掘の制限】
まるいち 井戸、用水溜、下水溜又ハ肥料溜ヲ穿ツニハ彊界線ヨリ二メートル以上池、地窖又ハ厠 坑ヲ穿ツニハ一メートル以上ノ距離ヲ存スルコトヲ要ス。

まるに 水桶ヲ埋メ又ハ溝渠ヲ穿ツニハ彊界線ヨリ其深サノ半以上ノ距離ヲ存スルコトヲ要ス但 一メートルヲ踰ユルコトヲ要ス。

 上記の例では、民法上、埋設タンク埋設位置は違法となる。建物本体が違法建築で建ってしまった場合、民事上では損害賠償請求が一般的で、建物本体を壊して違法状態前に戻す判決や命令が出ることは稀である。しかし、埋設タンクなどの付設物については、例え敷設後であっても、撤去改善命令の判 決が通例となっている。一方的な業者にはこれらの事例を伝え、応じない場合「裁判所へ調停申し立てします」「是正勧告が出るでしょう!」「裁判になれば此方が勝利します」と、相手方顧問弁護士の法律判断を促し、有利に交渉展開が可能となる。
 地下タンクの形状変更や埋設位置の変更は、事業者側に相応の負担を強いる結果となり、事業者は、負けることが分かっている裁判をするまでも無く、和解に持ち込むことが可能となる。
 消防法指定数量(灯油1000、重油2000リットル)以上の地下タンク敷設の場合も、消防法により1m以上と規定されている。

 問題を抱え悩まれている多くの方々の参考になればと思い、概要を公開することとした。

解説
 建築基準法は、必要・最低限の決まりごとで、守らないと刑事罰を伴う強行法規である。建築確認は、この建築基準法に基づいて審査される。民法に違反していても、通過してしまう。

 建築基準法では合法であっても、一般人の常識からかけ離れた非常識は、大概、民法違反となる事例が多い。専門家でなく一般人の素朴な疑問が、問題解決の礎となる。近隣住民への配布が義務となっている建築関連書類と、六法全書や判例などを照合すると、隣地境界の塀の高さや、風害(建築前後での測定を業者負担で実施)、電波障害、日照権など、違反箇所や問題点の発見へと繋がる。
 建築基準法を、書類上ではクリアしていても、現場では守られない実態が多数存在する。昔からあった手抜き工事に加え、偽装設計による被害が各地で表面化、社会問題化している。

  2004年6月4日
縄田賴信
 

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