乱立高層マンション火災 梯子車届かない50m以高


2004年(平成16年)12月11日(土曜日)北海道新聞夕刊4面 私の発言
タイトル変更「高層マンションの火災 防火体制に自然条件考慮を」掲載

 札幌市内で高層マンションが乱立している。不景気を打破する政策の一環として、建蔽率や容積率の規制緩和が行われた結果である。長期的ビジョンに立った街並み計画を行っていない為、2階建て住居の隣に15階建てマンションが建築されている現状は、弊害を如実に現している。日照権や風害、違法駐車の増加、眺望を侵害する事例は、増大の一途となっている。
  
 ちなみに、14階建マンションは、最も高い部屋で、窓の高さが地上高50m位である。札幌では15階を上回る、30階建や40階建の超高層マンションが建設、計画されている。新年早々、西区の超高層マンション中程から出火、幸い初期消火に成功し負傷者が無かったので、ニュースとはならなかった。オール電化でも、天ぷら油やクッキングヒータの扱い方次第で発火する。火災を知らせる自動館内放送はあっても、上に非難するか下へ避難するかで、入居者は戸惑った。

 別の新築マンションでは、入居者が増えた夕方、1階配電盤から出火、付近の自転車、オートバイ、自動車が燃え、炎は3階まで達していた。黒煙はマンションよりも高く上がり、独特な焦げ臭さが周囲に散乱、マンション内部にも相当な燃焼臭が漂う悲惨な状況だった。

 梯子車が届かない超高層マンションでは、スプリンクラーの設置義務や建物によっては、屋上にヘリポートを設けている例もある。いずれも国の基準によるもので、地域の自然事情は加味されていない。
 札幌の冬は季節風が強く、特に西区や中央区の一部では、手稲山に跳ね返った風と合流して、吹雪の日々が多い。とても、ヘリコプターが飛べる状況ではない。西区・手稲区と厚別区・清田区では積雪が大きく異なり、東京の冬のような晴天は稀である。

 高層マンション火災では、非常階段で下へ避難するのが一般的だ。超高層マンションの場合、40階から非常階段を用いて1階まで非難するのにどの程度の時間や体力が必要か考えたことがあるだろうか。例え中程の20階からでも、足腰の弱っている高齢者には残酷な状況となる。
 煙草の火の不始末や鍋を囲む際に用いる携帯ガスボンベ、暖房器具から放火に至るまで火災原因は多数ある。これから火を使う機会が増える季節、過信は禁物である。怖いのは、炎よりも煙である。札幌市消防隊が有する梯子車は、はしごが届く地上からの高さが30m、35m、40m、46m、50mの種類となっている。                           以上

2004年10月25日
縄田賴信
参照リンク:消防車の写真
 
Copyright © Yorinobu Nawata All rights reserved. 無断転載・転用厳禁

【広告】