マーケティングの指南書です。この本ではランチェスターの理論(ランチェスターの法則、戦略とも言う)に基づいたマーケティング戦略について実在の企業をモデルにした事例を交えながら解説を行っています。
先ずランチェスター理論とは何かというと、元々は「戦場で如何に敵を倒すか、殲滅するか」という戦闘の場に於いて勝利を得るための軍事戦略であり、その敵を倒すための理論・法則を戦場から市場に置き換え適用させるようにしたものです。
もう少し具体的に述べると、ランチェスターの理論は「第一法則」と「第二法則」から成り立っています。先ず「第一法則」は「個対個」の一騎討ちの戦略であり弱者の戦略の基本となるものです。そして「第二法則」は「集団対集団」の戦いで「確率戦の法則」「集中効果の法則」とも呼ばれ、強者の戦略の基本となります。
ここで言われている弱者・強者の概念ですが、通常我々が認識しているものとは多少意味合いが違います。
普段の我々の認識では、企業で言えば大企業は強者であり中小企業は弱者というようなイメージを持つことが多々ありますが、このランチェスター理論ではそうではなく、特定のエリア又はジャンルの中で一番の者は強者であり、いくら規模が多きくても2番目・3番目の位置に甘んじている者は弱者であると定義していることです。
この本では、普段弱者と思われている者(企業)が実は強者であり、またその逆も考えられる事。仮に弱者であってもランチェスター理論に基づく戦略を取り入れ実践すれば強者への転換を図ることも可能であると説いています。
事例としては「陶山訥庵(すやまとつあん)の猪退治」の話、セブンイレブンとローソンの店舗拡大の戦略の違い等をランチェスター理論と照らし合わせて説明しています。
「陶山訥庵(すやまとつあん)の猪退治」は、江戸時代、対馬で猪が増えすぎて農作物等に被害が出て困っていたが、いくら退治してもなかなか減らない。そこで陶山訥庵という切れ者の人物がある方法を用いて猪退治を行ったところ、島にいた猪は全滅してしまったと言う話。
「セブンイレブンとローソン」の関係はそれぞれの店舗の拡大戦略の違いや、その戦略の違いによって生じた1店舗あたりの売上げや利益の差等について書かれています。どちらの会社がランチェスター理論を反映した経営戦略であったかは経済に関心のある方ならご存知でしょう。当然のことながら、成績が上回っているいる方がこの理論を応用しているということです。
さて、このランチェスター理論ですが、エリア戦略ということですので、どちらかというと中小規模経営・地域密着型の経営をされている企業や個人事業者向きではないかと思います。
端的に言うと、その分野、その地域で一番になれ、2番以下を引き離せ、場合によっては叩き潰してしまえという戦略で、それを実践する為には、どの様な方策をとればよいか(ここが最も難しいところですが)を戦術として考えなさいと言っているわけです。
戦略論は理解できたが、実際に敵(同業他社)を蹴散らすための戦術をどうしたらエエんや?という部分はありますが、ココは苦労して自分達で考えて下さい。(こういうところは一般のビジネス本と一緒です)
何れにせよ、弱者と強者という認識が覆されること、弱者としてはどういうスタンスで戦いに挑めばよいかと言う点については非常に明解で、ある意味目から鱗...の内容です。
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