<冬>神話原稿
その昔、巨神族のアトラスと海の精霊プレイオネとの間に7人の娘たちがいました。
母プレイオネからプレイアデスの姉妹、プレアデスの姉妹と呼ばれていました。
姉妹は、狩猟の神、月の女神であるアルテミスに仕え、毎日楽しく暮らしていました。
一番上の姉はマイア
「アルテミス様、今日の髪飾りはどちらにいたしましょう?」
二番目がエレクトラ
「アルテミス様、新しい弓矢が届きましたわ」
三番目がターユゲテー
「そろそろお食事を運ばなくっちゃ...」
四番目がアルキュオネー
「猟犬たちにご飯を用意するように言って来なきゃ」
五番目がケライノー
「さて、アルテミス様の弓を磨かなくっちゃ!」
六番目がアステローペ
「えーっと、今日のいらっしゃるお客様はーっと」
最後にメローペ
「ふぅ、ここの掃除はもう良いかしらね、次次!」
姉妹たちはいずれも優しい心の持ち主で、踊るのが大好きでした。
月夜になると、決まって森の広場で月光を浴びながら、楽しそうに舞を踊ります。
美しい姉妹たちが月光を浴びて踊る姿はいっそう美しいと有名でした。
そんな姉妹たちがいつものように、森で踊ったりして遊んでいたある夜のことです。猟犬を連れた1人の狩人が偶然通りかかりました。
オ「おや?あれは噂に聞くプレアデスの7姉妹じゃないか!噂通りの美しさだ!」
その狩人は愛らしい7人を一目で気に入り、そっと近づきました。
マ「そこにいるのは誰ですっ!」
木の陰から姿を現し、月に照らされた狩人の姿を見た姉妹たちは踊りを止めました。
そこにいたのは、ギリシア1と名高い狩人、オリオンでした。
オ「踊りを止めなくてもよかったのに、ご機嫌いかがかな?プレアデスの7姉妹。素敵な月夜に出会ったのも何かの縁だ一緒に狩りでもして遊ばないかい?」
エ「いいえ、オリオン様。私たちは月夜に狩りはしませんの」
タ「私たちのことを気になさらず狩りを続けて下さいませ」
オリオンは背も高く、稀に見る美貌を持ち、アルテミスとは良いライバル関係でしたが、
どうにも素行が悪く、乱暴なオリオンを姉妹は好きになれませんでした。
オ「そんなつれないこと言わないで。狩りでなくても構わんさ。...そうだ!もう一度君達の踊りや歌を見せてはくれないか?」
アル「申し訳ありませんがオリオン様、私たちそろそろ失礼しますわ」
ケ「私たち、もうそろそろアルテミス様のもとに戻らなくては」
オ「なぁに、恥ずかしがることはない。少し遅くなった位ではアルテミスは怒りはしないさ!」
嫌がる姉妹を、尚も強引に誘うオリオンに怖くなって、姉妹は思わず逃げ出してしまいました。それでも諦め切れないオリオンは姉妹を森中追いかけ回したのです。
アス「キャー!」
メ「誰か助けてー!」
どれだけ逃げても狩りが得意なオリオンにはかないません。すぐ後ろまでオリオンが迫ってきます。
マ「ああ、誰かお助けください!」
エ「私たちをどうか、逃がしてください」
オ「さぁもう逃げられまい、捕まえたぞ!」
オリオンの手がいよいよ姉妹に届きそうになったその時、姉妹は突然真っ白なハトに姿を変え、そのまま空へ飛び立ったのです。
タ「みんな、もっと急いで!早く早く!」
アル「もっともっと高くまで行けばオリオン様も追いつけないわ!」
ケ「ああ!お父様が見えるわ!あそこまで行けば安心だわ!」
実はこの時、女神アルテミスは、帰りの遅い姉妹たちを不思議に思って、月を通して天界から一部始終を見ていたのです。
女神「さあ姉妹たち、オリオンの手も届かない空高くまで飛んでいくのです!」
あまりに困り果てた様子の姉妹を見て、不憫に思った女神は姉妹の姿をハトへと変えたのです。
アス「ああ!アルテミス様のお声が聞こえたわ!」
メ「きっと私たちを救ってくださったのはアルテミス様だわ!」
空高く飛ぶ姉妹を、天空を支え続ける姉妹の父、アトラスのもとへと送り、そのまま星にしたのです。
しかし諦めの悪いオリオンは、自分も空へと駆けて行って、オリオン座へとなったのです。その時一緒にいた猟犬も、おおいぬ座になりました。そしてオリオンは星座になった今でも空の上で姉妹を追いかけているそうです。
====(この後はカットする場合もある)====
その後、星団となった姉妹たちは、人間と結婚したことによって不死の力を失ったメローペの、消えゆく命を表すように、7つ輝いていた星のうち1つは、輝きが鈍くなって、6つの輝きしか見えなくなりました。
他の姉妹たちはその悲しみから涙を流しつづけ、それ以来プレアデス星団はぼんやりとした青白い輝きになったと言われています。