工場訪問
国際競争力が落ちてきたと言われている現在、実際の生産の現場を見てみたいと思い、工場を訪問させていただいた。
そこでは理論を実践しているとともに、財務諸表などで営業利益やキャッシュフローのデータを見るだけではわからない、
活きた現実の姿があった。
小原歯車工業 (こはらはぐるまこうぎょう)
埼玉県川口市  
 
小原歯車工業川口本社

平成23223 水曜日 晴

 小原歯車工業は埼玉県川口市の住宅街の中にあった。昔から川口は鋳物の町として有名で、映画「キューポラのある町」の舞台である。今ではキューポラは数えるほどしか残っていないが、時代に対応した町工場が元気に息づいていた。今回訪問した小原歯車工業も国際競争力を持つ優秀な会社だった。
 前日に工場の見学をお願いして、予定の午前10時より少し前に訪問した。今回の見学者は私ひとりで、総務課の本間さんが案内してくれた。2階で受け付けを済ませてから、4階に上がり、工場の紹介のビデオを見た。川口の他には野田に工場があるという。川口だけで100人ほどが働いている。その後、屋上に出て、屋上緑化、太陽光発電パネルなどを見せてくれた。今は環境対策が重要で、企業の評価にもつながるらしい。3階に下りると、完成品が並んだ倉庫になっていた。4500種類の歯車を製造しているという。それらがきれいに整頓されていた。この会社はオーダーが中心だった歯車の受注を、標準品として置き換えて、成功した。実際の生産現場は1階と2階で、1階は大まかな形にまで仕上げる工程で、大きな歯車の荒削りや研磨をしていた。ラックという直線状に歯を削ったものもあった。回転を前後の運動に換えるものだ。次に2階で歯車が完成に至る工程を見た。ほとんどがコンピューターで制御されている。一つの歯を削りだすのに何分、全体では何分かかるとか、工員の方も親切に教えてきくれた。基本的に歯はすべて削っていくので、寸分の狂いもなく作るのは大変なことだ。やはり町工場の技術力はすごい。世界と闘っていく逞しさがある。
 最後にロボットを見せてくれた。歯車には平歯車とはすば歯車、かさ歯車、内歯歯車などがあり、奥が深い。現在の車などに使われている歯車はほとんどがはすば歯車だという。かみ合ったときに静かだし、歯1枚になるときがないので、強度が出せるのだという。いつも車に乗っていても気づかない隠れた技術に感謝したい。
 おみやげにプラスチックの歯車を1個と携帯画面拭きをいただいた。
この小さな歯車に工員の誇りが詰まっている。


歯車の倉庫


生産の現場、コンピューターで制御されている


5Sは、整理、整頓、清掃、清潔、躾で、高い品質を維持する大前提


はすば歯車。左の歯が回転して削る
 
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千葉港めぐり
 


千葉共同サイロ、小麦粉などの食品原料供給基地


新東日本製糖、国内最大規模の年間35万トンの生産能力を誇る


J-オイルミルズ、輸入原料の荷揚げから搾油・精製・出荷までの一貫生産を行っている


丸紅エネックス千葉ターミナル、商社系では首都圏随一の規模を誇るエネルギー総合物流基地

 
JFE東日本製鉄所千葉地区、高級薄鋼板製造が主体の国際競争力のある製鉄所
 
千葉ポートタワーから見た千葉港

平成23222 火曜日 晴

 千葉みなと駅までは、三田線、有楽町線、京葉線を乗り継いで、1時間10分程だった。南口の駅前は広々としていた。千葉ポートタワーを目じるしに、港の方に歩いた。千葉ポートタワーに昇ると、眼下に千葉港が広がっていた。千葉中央埠頭、千葉共同サイロ、新東日本製糖、日本製粉千葉工場、J-オイルミルズ、丸紅エネックス、JFE東日本製鉄所などが見渡せた。遠くには、千葉モノレール、幕張新都心などがあって、その奥に東京のビル群が霞んでいた。展望室でレモンスカッシュとクロワッサンを食べてから、午後130分発の千葉港めぐり観光船に乗った。上から見た工場群が間近に迫って来た。韓国の貨物船も海上から見ると高く、大きかった。それぞれの工場が独特の網の目のような複雑な構造をしていた。巨大な首都圏の需要を満たす企業の基地がここに集中していた。一日たりとも活動を停止することなく、社会活動の一端を担っている。約40分で戻ってきたときには、日本の工場のスケールを体感した。今回は外から工場の姿を見たにすぎない。それでも日本経済を動かす中核の工場を実感できた。それは今や中国や韓国を初めとする世界各国との競争に晒されている。リーマンショック後の経済の停滞下では、少しでも油断をしているとすぐに赤字経営に陥る危険を伴っている。日本型経営の三種の神器といわれた終身雇用制、年功賃金制度、企業別組合が崩れつつある中で、いかにしてグローバルで効率的な経営体質を築いていけるのか、工場の中では模索が続いているに違いない。


トーテムポールと千葉ポートタワー


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