私の調査研究報告

 

なぜ廃止はいけないのか?

レポート 老齢者医療費助成金支給事業の

廃止に反対し復活を求めつづける理由

 

                    20121220

                    甲府市議会 山田 厚


私は、甲府市議会12月議会で65歳から74歳までの老齢者医療費助成金支給事業の廃止の議案に反対しました。廃止に反対したのは私だけではなく、公明党・共産党・無所属の議員の11名が反対しました。ここでは私の反対の理由を説明します。委員会や本会議での討論は、山田厚のホームページにある市議会報告に掲載します。

 

甲府市の誇りでありシンボルだった

        高齢者医療福祉制度を廃止してはいけない

 この老齢者医療費助成金支給制度は、非課税世帯の患者負担を3割または2割を1割負担に軽減するための高齢者医療福祉制度です。

 

現在の老齢者医療費助成金支給制度とは

非課税世帯(2011年度は2.979人が対象)

① 65歳から67歳まで 国の制度は患者負担3割のところ

甲府市が2割を助成で      →患者1割負担に

② 68歳から69歳まで 国の制度では患者負担3割のところ

   県が1割助成+甲府市が1割助成で→患者1割負担に             

③ 70歳から74歳まで 国の制度では患者負担2割りのところ

    国が1割りの当面の予算措置で  →患者負担1割に                 

この制度は、甲府市と甲府市民にとって普通の制度ではありません。伝統のある医療福祉制度として思いが強く、頑張って医療福祉を推進している甲府市の誇りであり、シンボル的な制度として存在してきました。

国の援助も県の援助もない中で、甲府市単独の制度として、1968年の44年前にはじまり、38年前の1974年には65歳以上の患者負担をゼロとしてきました。

先人たちが築き上げたこの制度を、甲府市長自らも、選挙などの節目、節目には大切な制度として誇りを持って示してきました。

2006年の合併のとき、甲府市に合併するメリットとして、この制度があることを中道・上九一色の住民の皆さんに説明もしてきました。

    残念ながら2008年に非課税世帯へと対象を狭めた時も、「生活困窮家庭には手を差しのべる」「本当に困っている方々にはずーと10%でいきますよ」と言われてきたはずです。

 それが、審議の期間も不十分なままに制度そのものの廃止では、納得いかないのは当然です。中道や上九一色の住民のみなさんは甲府市との合併で、水道料金、下水道料金、国保保険料など軒並み負担増となりました。そしてメリットであったはずの老齢者医療費助成も廃止では、ここでも納得いかないことになってしまいます。

 
当局の廃止の理由は説得力がなく、納得いかないのが当然です

 当局の制度廃止の理由も説得力がありません

・「国民健康保険料の軽減措置があるから」とか

・「高齢低所得者には 患者負担の高額療養の軽減措置があるから」とかいわれますが、忘れてはいけないのは そもそも高齢者の患者負担は負担ゼロからの出発であり、国の老人保健でも70歳以上は負担ゼロでした。それが後退し、今のように高齢者の負担は重すぎることになったから、このような負担の軽減制度が作られたにすぎないのです。

また当局は、「健康づくり」「生きがいづくり」などの「さまざまな高齢者福祉事業などで疾病の予防や早期発見に努めているから」ともいわれます。

もちろん、予防は大切です。しかし、それと共に一旦病気やケガをしたのなら医療が必要です。医療が必要とされるのなら医療で対応しなければなりません。だから患者負担の軽減とは、患者さんになる人にとって絶えず必要なのです。

しかも これらの多くの事業費自体がそのこの間の年度の推移の変化を見るとかなり予算が削減されています。介護と予防接種の事業は予算が伸びていますが、高齢者福祉費自体が削減されています。

 

      甲府市の高齢者対策福祉費用決算額の推移

          1995年度     2003年度        2011年度

・いきがい対策     3860万円     4101万円     34800万円

・健康づくり推進  17875万円   19235万円   15323万円

・緊急通報システム   2612万円     2543万円      2125万円

・老人福祉費   515096万円  338575万円   341959万円

 

とにかく「制度廃止ありき」の結論だけが理由では困ります

 

当局の廃止理由への疑問は、審議すればするほど深まります。「県が1割軽減の助成をなくすから」「国が70歳からの患者負担1割を2割にするらしいから 甲府市の制度も廃止する」としています。「周りの自治体が廃止しているから甲府も廃止する」といいますが、自立した基礎自治体として、自立した基本姿勢として、これでいのか? きわめて疑問です。

「周りの自治体は全て高齢者医療費助成制度を廃止する」というのも、県内の自治体はそうであっても、全国では頑張って維持している自治体も少なくない状況です。

当局が議会に示した特例市(人口20万をこえる自治体で現在40市)の資料でも、長岡市、上越市、明石市、加古川市、宝塚市、佐世保市が何らかの内容で制度を維持しています。県段階では、今後の検討はあるにしても、新潟県、滋賀県、京都府は65歳~69歳の制度をいまのところ維持しています。

考え方として後退しています。甲府市では先人たちがこの制度を他の自治体に先駆けて、単独でも開始したのに、今では「周りもそうだし、たぶん国も助成をやらなくなるだろうから甲府もとにかく廃止します」としています。

しかもこちらの質問で「もし県や国の助成が維持されたとしたのなら甲府市としてはどうするのか?その場合には甲府市の制度も当然維持すべきではないか?」と聞くと、その場合にも当局は「それでも甲府市の制度は廃止します」といいます。

 さらにまた制度の全廃こそが最悪だと思いますから、そこで制度を残すために「65歳からではなく対象年齢を引き上げて68歳からにするとか、国が患者負担2割にするなら甲府市は70歳から1割負担ですむ助成制度にするといった対応は検討してみましたか?」と質問すると、当局は「そのことも検討はしたが、でも廃止します」といいます。とにかく「廃止ありき」になっています。

 

参考の試算 もし県や国が助成をやめても制度廃止ではなく年齢の引上げなどの対応 で制度は維持できます

私は、国も県も1割の助成を後退させた場合、甲府市が65歳から後退して68歳からの制度としたり、または7074歳までの制度として維持した場合を前もって試算してもらいました。

・国が70歳~74歳の1割患者負担から2割の患者負担にしたが

  甲府市単独で、この1割分を助成して患者1割負担の制度を維持した場合

総額(扶助費・審査手数料・国からのペナルテイ)の年度ごとの後退の対応で

  2013年度(平成25年度)70歳分の助成で 4554万円から始まり

  2017年度(平成29年度)70歳~74歳分の助成 21342万円までとなっています。

・県が6869歳の1割助成をやめたが、甲府市が単独でこの1割分を助成して患者1割 負担を維持した場合

2013年度(平成26年度)4970万円の甲府市の助成額からはじまり

2017年度(平成29年度)8324万円の甲府市の助成額となります

70歳~74歳までの患者1割負担を甲府市が単独で維持したとしても

ピーク時は   総額21342万円です

68歳~74歳までの患者1割負担を甲府市が単独で維持したとするなら

            ピーク時にも  総額29666万円です

 これは国も県も助成をやめるというもっともよくない事態での試算ですが、それでも廃止ではなく甲府市の単独の努力で維持することが可能で無理のない予算額だと考えます。本来、甲府市は、県や国に「助成をやめるのはおかしい」「国は医療福祉で頑張っている自治体にどうしてペナルテイをかけるのか、やめるべきだ」をしっかり抗議すべきです。

 予算も縮小されているし市の財政を極めて圧迫するとはならない

 そもそも現在16100万円のこの老齢者医療費助成制度がそんなに大きな予算額と見ていいのでしょうか? 甲府市の一般会計の予算額は今では772億円です。この制度の予算額はその内の1000分の2である0.2にすぎません。この制度があるからといって、甲府市の財政を極めて厳しくするといったことになりますか!? 

しかも、老齢者医療費助成の予算額もかつてと比べて対象者をしぼり予算の削減がかなり進んでいることもわかります。以下は決算額の推移です。

 

削減されている 老齢者医療費助成金支給事業の決算額の推移

1974年度  1980年度   2006年度   2008年度   2011年度

38900万 10700万円 4億8900万円 26200万円 16100万円

 

全体の予算規模の比較からみるとさらに、今の予算額の割合が後退していることがわかります。

1974年度の一般会計決算額は1282016万円で、この制度は38900万円

      当時の決算の総額に占めるこの制度の割合は3.0です

つまり現在の0.2%と比べると15倍もの決算額に占める割合です

1980年度の一般会計決算額は2892683万円で、この制度は38900万円

      当時の決算の総額に占めるこの制度の割合は3.5です 

つまり現在の0.2%と比べると17.5倍もの決算額に占める割合です

それだけ、先人たちの努力があったのに、簡単に「高齢者人口が増えている」と「右肩上がりに成長している時代ではない」などと言ってはいけないのです。

この制度の意味を考えても、予算額が莫大なものとは、思われません。例えば、中心街活性化のためのココリ建設にともなう公費投入金額は、

    国庫支出金 318301万円  

    県支出金  9億2578万円  

    市負担金  92588万円  

公費の合計が 503466万円 

 財政的な効果として、これからが問われますが、いまのところ店舗はさみしい現状が続いています。このココリの甲府市の負担金の92588万円と老齢者医療費助成金支給制度を比較するとほぼ6倍つまり6年分も大きな金額です。

 例えば、住宅新築資金貸付事業では、貸付金の返済が滞り、そのため甲府市が肩代わりして元利の返済をしています。その金額は毎年13000万円の程の支出になっています。

これらの事業がムダとは言っていません。必要性もあるでしょう。しかし、老齢者医療費助成金支給制度より大切な制度とは、まったく思えないのです。

 

もっとしっかり、高齢者のいのちと生活をみるべきです

 

でもこれらのことより大切ことは、高齢者のいのちと生活の実態をしっかりみることです。今の甲府市の当局に足りないのはこの視点です。

いま、受診抑制が強まっています。受診抑制とは病気になっても、患者負担が生活を圧迫するから、診療所に行けない、病院に行けないと医療受診を節約・我慢することです。そして病状を悪化させしまうのです。

 このことは日本医師会などの調査でも明らかにされています。

 国保の全国統計でも一人あたりの受診件数は減っています

 甲府市の国保でも2011年度の医療費(保険からの療養の給付)の支出がはじめて少なくなったことなども受診抑制の傾向があると見るべきです。

     いま国保課にお願いして年齢別に調査してもらっていますが、私はこの受診抑制の傾向がもっとも強いのが高齢者だと思っています。

 

 受診抑制のもたらす弊害とは、そのり病した患者さんだけの問題にとどまりません。社会全体の社会の保健衛生を成り立たなくさせることです。その典型は、感染症です。受診抑制は、感染症の患者を地域に野放しにしてしまい、防災防疫を実質的に崩壊させます

もっと、もっとしっかり富裕者ではない普通の高齢者の生活を見る必要があります。

この間、「世代間の公平性」の名のもとに、高齢者の生活が圧迫され続けています

定率減税の廃止

老年者控除の廃止

年金課税の強化 という増税が相次ぎました。

介護保険料は2012年度には32.5%もの大幅な負担増となりました。

国保保険料も極めて高いままです。

高齢者の生活はこの10年足らずで、年金額がみるみる減ってきています。

    さらには 201310月から年金削減の2.5もはじまります

・それに連続している物価スライド年金減額があります。

この苦しさは非課税の年金生活者にはさらに厳しくされます。以下の試算を見てください。

 

 

    生活困窮家庭のこの間の厳しさとは

 例えば、2人世帯で年金収入201万円9000円の場合

この家庭は非課税世帯となります

・甲府市の国保保険料では、   世帯で年間149810

・介護保険は2011年度は 世帯で62480

 それが2012年では32.%の引上げで2320円増え

世帯で年間82800       

・ここに年金2.5%削減と毎年の物価スライド削減がかかります

      20102012年度 物価スライド削減で44000円削減

2013年よりの2.5%削減で      5100円削減

   おおまかな想定で非課税世帯であっても

   介護保険料値上げと年金削減で

年間114420の収入減・負担増となります  

   

ここに消費税が増税となるとどうなりますか! この時さらに、患者1割負担が2割に、1割負担が3割になるということは、患者負担がいきなり2倍!になり3倍に! なるということです。ますます高齢者の方々の生活は苦しくなるばかりです。受診抑制はさらに進むことは目に見えています。さらに社会全体の安全性は損なわれていくことになります。

老齢者医療費助成制度廃止を福祉後退のシンボルにさせないように 

この老齢者医療費助成金制度の廃止を、そのまま認めるわけにはいきません。甲府市の伝統的な誇りであり、甲府市のシンボルを廃止するということは、 これから甲府市が自治体としての誇りも捨てて、高齢者福祉を後退させるという逆のシンボルや典型になりかねないかです。

この間、高齢者に負担を求める「世代間の公平性」とやらの国の官僚が作り出した政策誘導が次々にすすんでいます。今回のこの制度の廃止が、甲府市でも高齢者福祉を後退するお手本に、さらには子どもの医療費助成も後退させる先駆けに、全体の社会保障も切り捨てていく典型やシンボルにされては困ります。

しかも国政では、社会保障より 国防軍創設や大企業減税に舵を取る安倍政権です。これからは、国民のいのちを守るのは、医療や社会保障ではなく、国防軍だとでもいうのでしょうか? 医療や社会保障を切り捨てて、予算は強力に国防軍と戦力の堅持のために使えとなるのでしょうか? 

私たちの甲府市からそんなことを許したくはありません。生活が苦しい今だからこそ輝く制度となる高齢者医療福祉を守り、さらに制度の拡充も検討すべき時です。

生活を守りいのちを守る砦は自治体です。その基礎自治体としての甲府市にしっかり市民とともに歩み続けてもらうために、今後とも老齢者医療費助成金支給事業の廃止ではなく、その復活と再生を絶えず求めつづけていきたいと思います。