■私の調査研究報告■
私は、甲府市議会12月議会で65歳から74歳までの老齢者医療費助成金支給事業の廃止の議案に反対しました。廃止に反対したのは私だけではなく、公明党・共産党・無所属の議員の11名が反対しました。ここでは私の反対の理由を説明します。委員会や本会議での討論は、山田厚のホームページにある市議会報告に掲載します。 甲府市の誇りでありシンボルだった
この制度は、甲府市と甲府市民にとって普通の制度ではありません。伝統のある医療福祉制度として思いが強く、頑張って医療福祉を推進している甲府市の誇りであり、シンボル的な制度として存在してきました。 国の援助も県の援助もない中で、甲府市単独の制度として、1968年の44年前にはじまり、38年前の1974年には65歳以上の患者負担をゼロとしてきました。 先人たちが築き上げたこの制度を、甲府市長自らも、選挙などの節目、節目 ・2006年の合併のとき、甲府市に合併するメリットとして、この制度があることを中道・上九一色の住民の皆さんに説明もしてきました。 ・
残念ながら2008年に非課税世帯へと対象を狭めた時も、「生活困窮家庭には手を差しのべる」「本当に困っている方々にはずーと10%でいきますよ」と言われてきたはずです。 それが、審議の期間も不十分なままに制度そのものの廃止では、納得いかないのは当然です。中道や上九一色の住民のみなさんは甲府市との合併で、水道料金、下水道料金、国保保険料など軒並み負担増となりました。そしてメリットであったはずの老齢者医療費助成も廃止では、ここでも納得いかないことになってしまいます。
・「国民健康保険料の軽減措置があるから」とか ・「高齢低所得者には 患者負担の高額療養の軽減措置があるから」とかいわれますが、忘れてはいけないのは そもそも高齢者の患者負担は負担ゼロからの出発であり、国の老人保健でも70歳以上は負担ゼロでした。それが後退し、今のように高齢者の負担は重すぎることになったから、このような負担の軽減制度が作られたにすぎないのです。 また当局は、「健康づくり」「生きがいづくり」などの「さまざまな高齢者福祉事業などで疾病の予防や早期発見に努めているから」ともいわれます。 もちろん、予防は大切です。しかし、それと共に一旦病気やケガをしたのなら医療 しかも これらの多くの事業費自体がそのこの間の年度の推移の変化を見るとかなり予算が削減されています。介護と予防接種の事業は予算が伸びていますが、高齢者福祉費自体が削減されています。 甲府市の高齢者対策福祉費用決算額の推移 1995年度 2003年度 2011年度 ・いきがい対策 3860万円 4101万円 34800万円 ・健康づくり推進 1億7875万円 1億9235万円 1億5323万円 ・緊急通報システム 2612万円 2543万円 2125万円 ・老人福祉費 51億5096万円 33億8575万円 34億1959万円 とにかく「制度廃止ありき」の結論だけが理由では困ります 当局の廃止理由への疑問は、審議すればするほど深まります。「県が1割軽減の助成をなくすから」「国が70歳からの患者負担1割を2割にするらしいから 甲府市の制度も廃止する」としています。「周りの自治体が廃止しているから甲府も廃止する」といいますが、自立した基礎自治体として、自立した基本姿勢として、これでいのか? きわめて疑問です。 「周りの自治体は全て高齢者医療費助成制度を廃止する」というのも、県内の自治体はそうであっても、全国では頑張って維持している自治体も少なくない状況です。 当局が議会に示した特例市(人口20万をこえる自治体で現在40市)の資料でも、長岡市、上越市、明石市、加古川市、宝塚市、佐世保市が何らかの内容で制度を維持しています。県段階では、今後の検討はあるにしても、新潟県、滋賀県、京都府は65歳~69歳の制度をいまのところ維持しています。 考え方として後退しています。甲府市では先人たちがこの制度を他の自治体に先駆けて、単独でも開始したのに、今では「周りもそうだし、たぶん国も助成をやらなくなるだろうから甲府もとにかく廃止します」としています。 しかもこちらの質問で「もし県や国の助成が維持されたとしたのなら甲府市としてはどうするのか?その場合には甲府市の制度も当然維持すべきではないか?」と聞くと、その場合にも当局は「それでも甲府市の制度は廃止します」といいます。 さらにまた制度の全廃こそが最悪だと思いますから、そこで制度を残すために「65歳からではなく対象年齢を引き上げて68歳からにするとか、国が患者負担2割にするなら甲府市は70歳から1割負担ですむ助成制度にするといった対応は検討してみましたか?」と質問すると、当局は「そのことも検討はしたが、でも廃止します」といいます。とにかく「廃止ありき」になっています。 参考の試算 もし県や国が助成をやめても制度廃止ではなく年齢の引上げなどの対応 で制度は維持できます 私は、国も県も1割の助成を後退させた場合、甲府市が65歳から後退して68歳からの制度としたり、または70歳〜74歳までの制度として維持した場合を前もって試算してもらいました。 ・国が70歳~74歳の1割患者負担から2割の患者負担にしたが 甲府市単独で、この1割分を助成して患者1割負担の制度を維持した場合 総額(扶助費・審査手数料・国からのペナルテイ)の年度ごとの後退の対応で 2013年度(平成25年度)70歳分の助成で 4554万円から始まり 2017年度(平成29年度)70歳~74歳分の助成 2億1342万円までとなっています。 ・県が68~69歳の1割助成をやめたが、甲府市が単独でこの1割分を助成して患者1割 負担を維持した場合 2013年度(平成26年度)4970万円の甲府市の助成額からはじまり 2017年度(平成29年度)8324万円の甲府市の助成額となります ・70歳~74歳までの患者1割負担を甲府市が単独で維持したとしても ピーク時は 総額2億1342万円です ・68歳~74歳までの患者1割負担を甲府市が単独で維持したとするなら ピーク時にも 総額2億9666万円です これは国も県も助成をやめるというもっともよくない事態での試算ですが、それでも廃止ではなく甲府市の単独の努力で維持することが可能で無理のない予算額だと考えます。本来、甲府市は、県や国に「助成をやめるのはおかしい」「国は医療福祉で頑張っている自治体にどうしてペナルテイをかけるのか、やめるべきだ」をしっかり抗議すべきです。 しかも、老齢者医療費助成の予算額もかつてと比べて対象者をしぼり予算の削減がかなり進んでいることもわかります。以下は決算額の推移です。
全体の予算規模の比較からみるとさらに、今の予算額の割合が後退していることがわかります。 1974年度の一般会計決算額は128億2016万円で、この制度は3億8900万円 当時の決算の総額に占めるこの制度の割合は3.0%です つまり現在の0.2%と比べると15倍もの決算額に占める割合です 1980年度の一般会計決算額は289億2683万円で、この制度は3億8900万円 当時の決算の総額に占めるこの制度の割合は3.5%です つまり現在の0.2%と比べると17.5倍もの決算額に占める割合です それだけ、先人たちの努力があったのに、簡単に「高齢者人口が増えている」と「右肩上がりに成長している時代ではない」などと言ってはいけないのです。 国庫支出金 31億8301万円 県支出金 9億2578万円 市負担金 9億2588万円 公費の合計が 50億3466万円 財政的な効果として、これからが問われますが、いまのところ店舗はさみしい現状が続いています。このココリの甲府市の負担金の9億2588万円と老齢者医療費助成金支給制度を比較するとほぼ6倍つまり6年分も大きな金額です。 例えば、住宅新築資金貸付事業では、貸付金の返済が滞り、そのため甲府市が肩代わりして元利の返済をしています。その金額は毎年1億3000万円の程の支出になっています。 これらの事業がムダとは言っていません。必要性もあるでしょう。しかし、老齢者医療費助成金支給制度より大切な制度とは、まったく思えないのです。 もっとしっかり、高齢者のいのちと生活をみるべきです でもこれらのことより大切ことは、高齢者のいのちと生活の実態をしっかりみることです。今の甲府市の当局に足りないのはこの視点です。 いま、受診抑制が強まっています。受診抑制とは病気になっても、患者負担が生活を圧迫するから、診療所に行けない、病院に行けないと医療受診を節約・我慢することです。そして病状を悪化させしまうのです。 このことは日本医師会などの調査でも明らかにされています。 国保の全国統計でも一人あたりの受診件数は減っています 甲府市の国保でも2011年度の医療費(保険からの療養の給付)の支出がはじめて少なくなったことなども受診抑制の傾向があると見るべきです。 ※
いま国保課にお願いして年齢別に調査してもらっていますが、私はこの受診抑制の傾向がもっとも強いのが高齢者だと思っています。 受診抑制のもたらす弊害とは、そのり病した患者さんだけの問題にとどまりません。社会全体の社会の保健衛生を成り立たなくさせることです。その典型は、感染症です。受診抑制は、感染症の患者を地域に野放しにしてしまい、防災防疫を実質的に崩壊させます。 この間、「世代間の公平性」の名のもとに、高齢者の生活が圧迫され続けています ・定率減税の廃止 ・老年者控除の廃止 ・年金課税の強化 という増税が相次ぎました。 ・介護保険料は2012年度には32.5%もの大幅な負担増となりました。 ・国保保険料も極めて高いままです。 高齢者の生活はこの10年足らずで、年金額がみるみる減ってきています。 ・
さらには 2013年10月から年金削減の2.5%もはじまります ・それに連続している物価スライド年金減額があります。 この苦しさは非課税の年金生活者にはさらに厳しくされます。以下の試算を見てください。
ここに消費税が増税となるとどうなりますか! この時さらに、患者1割負担が2割に、1割負担が3割になるということは、患者負担がいきなり2倍!になり3倍に! なるということです。ますます高齢者の方々の生活は苦しくなるばかりです。受診抑制はさらに進むことは目に見えています。さらに社会全体の安全性は損なわれていくことになります。 老齢者医療費助成制度廃止を福祉後退のシンボルにさせないように この老齢者医療費助成金制度の廃止を、そのまま認めるわけにはいきません。甲府市の伝統的な誇りであり、甲府市のシンボルを廃止するということは、 これから甲府市が自治体としての誇りも捨てて、高齢者福祉を後退させるという逆のシンボルや典型になりかねないかです。 この間、高齢者に負担を求める「世代間の公平性」とやらの国の官僚が作り出した政策誘導が次々にすすんでいます。今回のこの制度の廃止が、甲府市でも高齢者福祉を後退するお手本に、さらには子どもの医療費助成も後退させる先駆けに、全体の社会保障も切り捨てていく典型やシンボルにされては困ります。 しかも国政では、社会保障より 国防軍創設や大企業減税に舵を取る安倍政権です。これからは、国民のいのちを守るのは、医療や社会保障ではなく、国防軍だとでもいうのでしょうか? 医療や社会保障を切り捨てて、予算は強力に国防軍と戦力の堅持のために使えとなるのでしょうか? 私たちの甲府市からそんなことを許したくはありません。生活が苦しい今だからこそ輝く制度となる高齢者医療福祉を守り、さらに制度の拡充も検討すべき時です。 生活を守りいのちを守る砦は自治体です。その基礎自治体としての甲府市にしっかり市民とともに歩み続けてもらうために、今後とも老齢者医療費助成金支給事業の廃止ではなく、その復活と再生を絶えず求めつづけていきたいと思います。 |