9月議会 山田厚代表質問

                                 2007年9月10日

高すぎる国保保険料の値上げではなく軽減を

●医療制度の「最後の砦」といわれる国民健康保険、国保が、今、大変な状態になっています。

「国保はまさに破綻状況にある」「国保制度は既に破綻しているといっても過言ではない」「国保の運営が危殆に瀕している」これらは、全国市長会の「緊急アピール」「決議」「意見書」の中にある、この間の叫びです。

●確かに、全国市長会の言うように、国保制度は危機に瀕しています。保険料が極めて高くなっていること、高い保険料によって滞納がますます広がっていること、そして滞納から保険証が取り上げられ、「医療難民」とされた証明である「資格証明書」が交付された人は全国で35万人をこえたことです。このことから病院にいけず手遅れで死亡される方も増えていることです。

●国保は、いまや日本最大の加入者がいる医療保険制度です。しかし、この間の社会経済的な変化によって、極めて脆弱な会計になっています。国保の加入者の職業構成をみると、発足時は農林水産業、自営業の方が中心でしたが、今では、無職者の割合が53%にもなり、主に年金の方、そして決まった職を持たない若者、 職場の健康保険に入れてもらえない臨時の方、リストラなどによって国保に入ってきた方の増加が目立っています。 

 つまり低所得者の皆さんが中心となっているだけに加入者が増えても逆に、国保会計は厳しくなるのです。しかも国の様々な医療制度改革によっていままでにない膨大な支出が国保会計に強いられ。さらに、「大改正」である後期高齢者医療制度がはじまろうとしています

●国保を運営する全国の市町村自治体は、一般会計から総額1兆円もの膨大な資金を国保会計に繰り入れ、必死になって保険料の値上げを抑制し国保を維持してきましたが、いよいよ、その先行がまったく見えない危機的な状態になってきました。

●この8月に甲府市では残念ながら、国保保険料を値上げしました。
 甲府市の国保年金課の窓口や電話には、「高すぎる」という苦情や分納などの相談が殺到しました。8月16日からの9日間で直接の保険料問題だけでも約900件にもなりました。それだけ国保の加入者は深刻なのです。
 全国の保険料も高くなっていますが、甲府市の保険料も極めて高く、今回の値上げで、山梨県でもっとも高い国保保険料になったと思われます。

●例えば 所得150万円の4人世帯では、今回、年間約2万円の負担増となり、介護分も入れると年間保険料は約30万円を超します。
 また 所得250万円の4人世帯では、年間約3万円の負担増となり、介護分も入れると年間保険料は 約44万円にもなりました。
 今では、税金や年金よりも、上下水道料金よりも、もっとも過酷なのが国保保険料となっているのです。

●全国的に極めて高いこの保険料の事態とは
 国の財政補償が不十分な中で、さまざまな支出の増加に対しては、もっぱら保険料の値上げによって、会計上の収支のバランスを取ってきたからです。そして、収支のバランスはすぐ崩れるので、保険料の値上げが連続し、極めて高い保険料となってきているのです。
 特に、甲府市の場合、いままで一般会計から国保会計に自主的に援助する経験と感覚がなかったために、このことが端的に高い保険料となってきているのです。

●特に問題は国です。国は、この国保の状態を放置し、さらにはこの状態を強めてきました。

1984年、「退職者医療制度」の発足に伴い国庫補助金の抑制と削減をはじめました。

2000年、介護保険制度を具体化させ、その国保の保険料に介護分を加えて、さらに国保保険料を重くしました

2002年、老人保健法を「改正」して、それまで老人保健の対象年齢であった70歳から75歳未満までの高齢者を段階的に国保にとどめました。これによって国保の医療費の支出を激増させたのです。

 甲府市の国保会計でも、2002年度以降、毎年段階的に10億円近い医療費の支出が強いられていますが、その主な原因は老人保健法の「改正」によるものです。

・また国は、市町村が独自で高齢者や乳幼児の医療費助成をすると、その努力を評価するのではなく、逆に、「出過ぎている」として、市町村の国保への交付金減額の制裁をかけるのです。
 甲府市でも、市民の皆さんから高い評価を頂いている、65歳からの高齢者医療費の助成、乳幼児・児童への医療費助成を行っていますが、それによって、国から甲府市の一般会計ではなく国保会計制裁を受けているのです。
 甲府市の国保の場合、毎年1億数千万円の交付金が減額され、9年間では合計10億6千万円も減額されています。

・国は、高すぎる保険料によっ国保の収納率が低下し、自治体の国保会計が苦しくなると、 支援ではなく、逆に「収納率が低いのは努力がたりないからだ」として国保への制裁として交付金の減額を行ってきました。
 甲府市の場合、10年間で6億4千万円も減額されています

・また国は、来年4月から、慌ただしく老人保健制度を廃止し、後期高齢者齢者医療制度をはじめるとしました。これに伴う事務量の増大や財政政負担も大変です。
 例えば、新たに作り替えねばならない電算システムでは 2千万円を超える支出が強いられますが、国はその5分の1ほどしか直接の補助金を出しません。あとは市町村国保がやれということです。

・国は、後期高齢者医療制度を発足させ、その運営を県内市町村の広域でやらせます。
 この、後期高齢者医療の保険料の具体的金額は、いまだに分かりません。確実なことは、全ての市民の負担が重くなることです。
 75歳以上の高齢者は、いままで子どもさんの扶養家族で保険料を1円も取られていなかった人でも、これからは個人として国保保険料並みに取られます。
 75歳未満の国保の加入者には、本来の「国保医療費分」と、そして「介護納付金分」に、これからは介護分より重い、「後期高齢者支援金分」3本立ての、極めて重い国保の保険料が徴収されることになるのです。
 また、その極めて重い保険料の徴収は市町村国保の責任とされるのです。

・国は、このことよって、さらに低下する収納率を見越して、よりきつい制裁市町村国保へかけようとしています。
 いままで国は単年度の収納率で制裁していましたが、これからは繰り越しの滞納分まで含めての収納率で制裁を検討しています
 繰り越しの滞納分まで含めると、減額は極めて過酷になります。甲府市の場合は、減額された交付金はいままで8000万円程だったものが、これからは3倍の2億数千万円ほどの減額となりかねません。

・さらに国は、保険料を滞納する市民には、極めて過酷な制裁を強めています。滞納している世帯には、保険証を取り上げる資格証明書の発行を市町村国保に義務づけ、差し押さえや、礼状なしの立ち入りの「捜索」などの指導をも強めています。

●私は、国と国の官僚の方々は、やり方がひどい、「悪辣」ではないか思います。
 国は、「金は出さないが、口は出す」「何か決めるのは国で、黙ってやるのは市町村国保、支払う義務は市民」「言うこときかなければ、制裁」としているのです。
 これでは民主主義でも社会保障でもなく、地方自治でもありません。
 これでは中央集権の乱暴な官僚体制ではありませんか。

●でも残念ながら、甲府市も、自らの国保と被保険者である市民への支援が「伝統的」に不十分です。
 例えば、市の医療福祉の関係で、国の制裁による減額分を一般会計から援助しはじめたのは、宮島市政の2年前からはじまったばかりです。
 しかし、この、国の減額制裁は、2年前からはじまったものではありません。これは1975年頃、いまから30年以上前からあったそうです。 
 もっと以前から、一般会計から国保への援助がはじまっていたら、甲府市の高い保険料はもっと低く抑制されていたことは確実です。

●私は、遅かったということを言いたいのではありません。これから、国保への必死の援助を求めているのです。それに、はじまったばかりの甲府市の一般会計から国保への自主的な繰り入れ金額自体も、他の自治体と比較してみると、決して多い金額とは言えないからです。

以下 質問します

@収納率の向上にむけては、むやみに罰則を強めても実効性がありません。国の指導にしたがって保険証の取り上げや差し押さえを行っている市町村国保ほど、むしろ収納率は悪いままです。

甲府市としては、どう市民の立場に立って、サービスとして、納付の相談体制、電話での相談を充実させるか、減免制度や分納・猶予措置をどう改善し効力のあるものにするかです。 保険料の支払い方法についてもコンビニやカードなど様々に検討していく必要もあります。
 
 Aまた、本来雇用者は、法的にも国保ではなく企業側が責任を持って健康保険などに入れるべきですが、その法的周知もはかるべきです。

B特に国に対しては、全国市長会が何回も主張しているように、強くこの間の「国のペナルティ措置」の撤廃を求める必要があります。

そして国が法「改正」をおこない義務としてさまざまな負担を市町村国保に強いるのなら、その財政的な補償を国の責任でおこなうことなど−この当然なことを国に強く、強くもとめるべきです。

C山梨県の国保会計に対する支援もよく見えません。県都甲府市は、県内の市町村を代表して、山梨県としての市町村国保への支援を呼びかけるべきです。

Dこの国保の問題は、一国保年金課の問題にとどまりません。甲府市政全体の課題として考え取り組むべきです。

甲府市民数の41%以上、世帯数の53%をこえる方々が、甲府市の国保の加入者です。また今は国保と関係ない健康保険などの市民であっても、退職すると必ず国保の加入者となります。

つまり、全ての市民にとっての「最後の砦」である国保を維持するためには、これ以上の保険料の負担増ではなく軽減にむけ、しっかりとした政策上の根拠を持って一般会計からの繰り入れを行うことが不可欠です。

Eまた、今回、県の算定ミスによって国への交付金返還問題が発生しました。甲府市の返還金は4億8300万円です。県に返済期間を長期にお願いすることは当然ですが、この返済金額を国保会計から支出するとなると、また、保険料の値上げになってしまいます。

私は、市民の健康と生活を守るためにも、国保会計まかせにしないで、一般会計からの繰り入れが必要だと考えます。

以上 はじめの質問に区切りをつけます。

<再質問と再々質問は、山田厚のメモから構成したので、内容上は間違っていませんが、実際の会議録ではありません。答弁も含めて正確な文章は後日掲載します。>

山田厚再質問

●最初の部分のご答弁はいいのですが、後半の、甲府市としての一般会計からの援助については、はっきりしませんでした。

まず、甲府市の国保の保険料が極めて高いことを認識してほしい。

 健康保険や共済組合の医療保険では「労使折半でだから国保の保険料の方が、倍ほど高いのかな」とおもわれている人が多いかもしれませんが、現在では、そんな格差ではなくなっています。

このクラブは、同じ保険料で比べてみました 4人世帯で、38万円の介護分も含めた保険料です。その支払っている所得の違いを調べたものです。 国保の場合この38万円保険料では、所得210万円、収入ではほぼ330万円です。一方、 市町村共済では、所得780万円で収入ではほぼ1000万円の人と同じ保険料です。ですから2倍の格差ではありません。この所得の格差は3.7倍です。これは、共済組合が良くないのではなく、国保保険料が高すぎるのです。

それは国保保険料がこの十数年間、値上げに次ぐ値上げがあったからです。このグラフを見てください。

 4人世帯で所得250万円と、150万円世帯の15年間の介護も含む国保保険料の推移を調べ見ました。この15年間で年間の国保保険料は150万円所得世帯の場合18万円から約30万円になり173%。 250万円所得の世帯では約25万円から約44万円となり174%にも激増していました。

 実際、国保保険料負担のその生活の重みを考えていただきたい。

 これは平均的なモデルケースとして 上下水道局 市民税課でお聞きしたデーターをグラフに私が作成したものです

4人世帯の所得250万円では年間保険料は約44万円の保険料だと、全体の所得の17.5%になるのです。いかにこの間の国保保険料が生活を圧迫しているかです。

そして、これにさらに来年に4月から後期高齢者医療の負担もはじまります。さらに、さらに、生活は大変です。

この厳しさを、行政当局の幹部の皆さんには、感覚としてしっかり持っていただきたいと思います

●収納率の向上の基本は 保険料を高くしないことです。

全国の市町村は自らの市町村国保へ、平成17年度では一般会計から

 法律で定められた法定内繰入金 7300億円の他に、市町村の自主的な判断による法定外繰入金3858億円を入れて国保会計を必死に維持しています。この法定外の自主的な繰入金は一般会計からの繰入金のうちの34.7%になります。甲府市の場合 13億円の繰入金のうち1億5000万円が自主的な一般会計からの繰入金ですから、自主的な繰入金は、11.3%にしかすぎません。

 つまり、全国の市町村の平均的な努力には甲府はまだまだ低いということです。

 また、私は、幾つか数字をいいました。

 収納率のペナルティで年8000万円、これからは2億4000万にもなりかねないこと。福祉のガンバリで、年間1億5000万円のペナルティ。老人保健改正で、医療費が10億円ほどものび国保会計を圧迫していること

 ところで今回8月の甲府市国保保険料の値上げは、3億5000万円ほどの値上げでした。この市民からの尊い金額も、先ほどのペナルティや医療費の支出に追いついていけません。またまた保険料の値上げにつながってしまいます。甲府市の行政全体で考えるために企画部長にご答弁願います。

山田厚再々質問 

まだ、ご答弁はあいまいです。部長さんも退職すれば国保の加入者となるんですよ。甲府市民全体の問題としてこの国保に関わるべきです。

甲府市の国民健康保険運営協議会(金丸三郎会長)では8月30日に、つぎのような要望書と満場一致で甲府市長に提出しました。

 これは県の算定ミスによる返還金問題ですが。「甲府市の場合は特に返還金が大きいため、償還期間は最小でも10年以上確実に実行していただけることを県に強く要望するとともに、今回の算定誤りの金額を、そのまま保険料負担増に求めることを避け、国民健康保険制度の安定にむけあらゆる努力をしていただくことを、要望いたします」としています。

 これは、異例です。これは委員さんが生活経験から、「これ以上の国保保険料を上げてくれるな」の思いが込められているからです。

 りっぱな新庁舎ができても大切な国保が崩れてしまっては意味をなしません。この国保制度をしっかり守るためにも、保険料の軽減に向けて努力しなけれなりません。最後に、甲府市長からご所見をいただきたい。