2年半で2400室増 京都の宿泊主体型ホテル 2016年11月20日 京都新聞
100室以上の客室規模を持つ宿泊主体型ホテルが、京都市内で今後2年半余りの間に急増する。現在判明している計画だけで客室総数はおよそ2400室。2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでの訪日外国人の増加を見越し、さらに拡大する見通しだ。家族での長期滞在や京都らしい和風のしつらえなど、顧客獲得競争も熱を帯びている。
ホテル開発に乗り出す企業は、国内有力ホテルチェーンから私鉄グループ、不動産大手、小売りまで多様だ。進出地域は、商業施設や鉄道の駅が密集する下京区の烏丸通周辺や中京区の河原町通周辺に集中している。
「地下鉄の駅や商業施設があり、祇園祭も間近で楽しめる。これ以上の立地はない」。三菱地所の田島穣執行役常務は、18年春に下京区烏丸通仏光寺角で開業させるホテルの集客に自信を見せる。
根拠は衰える気配のない訪日観光客だ。同社が5年前に中京区の三条通河原町にオープンさせた宿泊主体型ホテルは、外国人客が7割超を占め、昨年の客室稼働率が9割を突破。「インバウンド(訪日客)はまだ伸びる」(田島執行役常務)とみて、ビジネスホテルと高級ホテルの中間の価格帯を狙う。
為替の円安やビザ発給の緩和を背景に、京都を訪れる外国人は14年ごろから急増した。昨年の外国人宿泊客は316万人と2年間で1・8倍に拡大。市は20年に440万人以上に達すると見込む。既存のホテルは空前の高稼働率を記録し、「泊まりたくても泊まれない状況」(市観光MICE推進室)が、新たな開発熱を高めた。
地元企業も動く。建築設計、アーキエムズ(中京区)のグループ企業、ホテルエムズ(同)は市内で100室超のホテル2棟を建設中で、来年春までに立て続けに開業する。2年前に新規参入した宿泊主体型ホテルの運営が好調で、今後さらに開発を加速させる。
村田博司社長は「近年のホテル進出は外資系や東京資本が多い。地元企業として京都の観光ホテル事業をリードしたい」と話す。市内で展開する客室数を将来は千室程度まで増やす目標という。
ホテルや小売店などの複合ビルを下京区に新築するのは京阪電気鉄道。自然素材や有機食材を意味する「オーガニック」のコンセプトに沿った調度品や備品を客室に取り入れる予定だ。加藤好文社長は「体験型ホテルを目指し、リピーターを獲得したい」と意気込む。
市によると、宿泊主体型ホテルに100室以下の高級ホテルやゲストハウスなどの小規模施設も合わせると、今後は市内で4千室程度が増える見通し。だが、20年にはなお6千室が不足すると予想し、ホテルの本格誘致に乗り出している。
一方、短期間での客室の大量供給は、価格競争の激化や景気変動で訪日客が急減した場合に採算悪化のリスクもはらむ。京阪電鉄の加藤社長は「ホテルはいずれ選別される時がくる。特徴や存在感を持たず、ただ箱をつくるだけではだめだ」と強調する。
市も「似たようなホテルが増えると、業況が悪化した時の地域経済へのダメージも大きくなる。設備やサービス、宿泊プランなどが多様な施設が進出するのが望ましい」と先行きを注視している。

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