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読書記録

Latest Update at 28th October, 2009 by KITORA


このページでは KITORA のかなりバイアスのかかった文章が書かれています。御承知おき下さい。

11月そして12月


樋口有介 著 (2009/10/28 読了)
☆☆☆
中公文庫 ¥648- ¥680-(税込)
ISBN978-4-12-205213-0

本作も版元を変えての復刊にあたります。
入手不可な初期作品群も漸くコンプリートが見えてきたか……

晴川柿郎(シロウ)は22歳、所謂フリーター。
過去に自閉症を患っていたらしく、高校中退後に大検を取得して進学したものの、
大学も中退してしまい、その後はカメラ片手にふらふらとしている毎日。
夏も過ぎ去り秋が深まりつつあるある日、高田馬場の公園で虫を撮ろうとしている際に、
突如現われた犬に驚かされる……
ペットショップの犬を散歩させていたアルバイトの明夜との出会いであった。
その颯爽とした出で立ちに一瞬にして明夜に心を奪われている柿郎。
その夜、駅からの帰り道で姉に捕まり、場末のスナックに拉致される柿郎。
編集者として働く姉は柿郎とは随分と性格が異なる。
どうやら不倫相手に双子が生まれたらしくて大荒れであった……
翌朝、二日酔いを抱えて閉口気味の柿郎に母親が唐突に父親の不倫について語り始める。
告発状めいた手紙が届いたようで、母親は柿郎に父親の不倫相手に会ってこいと言い出したのだ……

その後、父親の不倫相手に会い、誤解だと言われ帰宅すると姉が自殺を図ったとの母の書き置きが……
姉は睡眠薬の大量摂取で、命は助かったが暫く入院することになった。
不倫相手について母親から問いただされるがしらを切る柿郎。
そんな柿郎だが、彼自身驚いたことに明夜と再び会うべく行動を起こすのであった……


もちろん、語り口はいつもの著者らしく、主人公が歳に似ずシニカルな台詞をはいたり、
美女との出会いがあったりするのですけども、これまでの作品群とは色合いが異なっていると感じられました。
もちろん後期の作品群への変異期と捉えるとそれなりに納得出来るのですが、
読んでいて Entertainment 色が殆ど無いことに気づきました。
主人公の柿郎に自閉症の過去があるという設定も相まってか、いつも以上に内向的な印象を受けます。
その柿郎が明夜との出会いと家族のトラブルに挟まれて、突如変貌を遂げて能動的になるあたりが、
(行動的な性格になる訳ではなく、むしろ内向的な性格のまま本能的に行動を起こしている)
本作の肝であるのだけれど、何故か自然に思えて(不思議なほど違和感を覚えない)、
これは著者の他の作品群を読んでいるからこそ自然に思えたのであって、
初読の方々なら違和感を覚えるのではないだろうかという印象を受けました。
読後少し時間をおいてみると、ラストで描かれた柿郎という青年が漸く自立していこうと決意している様のみが、
著者の提示したかったものなのかな……と感じてみたりしました。
少年から青年への成長記という訳ではなくて、脱皮しきれない内向的な青年が、
周囲からのストレスと、自らの内に芽生え始めた他人への関心(愛情なのかも知れない)から、
内なる自分と向き合える時を迎えたという解釈をした次第。
(もちろん完全に個人的見解です)
個人的な好みとしては Entertainment 色の薄さが物足りないのだけれど、
樋口作品になら、これも有りかな……という印象でした。


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