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読書記録

Latest Update at 30th June, 2009 by KITORA


このページでは KITORA のかなりバイアスのかかった文章が書かれています。御承知おき下さい。

プラスチック・ラブ


樋口有介 著 (2009/06/30 読了)
☆☆☆★
創元推理文庫 ¥640- ¥672-(税込)
ISBN978-4-488-45912-3

樋口作品らしく高校二年の木村時郎が主人公となった連作短編集。
表題作の「プラスチック・ラブ」は柚木草平シリーズ番外編となっています。

プラスチック・ラブ:以下の 8 編を所収 ・雪のふる前の日には
・春はいつも
・川トンボ
・ヴォーカル
・夏色流し
・団子坂
・プラスチック・ラブ
・クリスマスの前の日には

・雪のふる前の日には 終業式の帰り道、駅から出るとそこに南生子がいた。
時郎にとっては中学時代の同級生であったが、顔を合わすのもためらい通り過ぎたところ、
南生子の方から声をかけてきた……
喫茶店に入って話を聞く事になったのだが、どうやら同じく中学時代の同級生・水江が家出をしたらしい。
家庭内のいざこざが原因らしいのだが、どうやらパンクロッカーの男のところに転がり込んでいるようで、
学校もやめるつもりなのだという……
南生子は家に戻り、復学を促すよう時郎に説得を試みるよう頼んできたのだった……

・春はいつも 恋人の糸織に相談を受ける時郎、糸織は両親が離婚の危機に瀕しており、
父親の不倫相手に会うべきかどうか迷っているのだった……
だが時郎はある女性の事を思い浮かべていた…… アイリッシュウルフハウンドを連れたその女は、何故か時郎の心を読むような一言を散歩の途中で投げかけてきたのだ。
結局時郎は糸織と連れだって青山に糸織の父親の不倫相手に会いに出かける……

・川トンボ 父の不貞に痺れを切らした母が家を出て、時郎の妹・怜子が不登校になってしまう……
そんな時に中学時代の同級生・釉香が犬の散歩の途中、時朗を訊ねてきた。
同じく同級生だった吉田にストーカーまがいにつきまとわれているのだという……
時朗は取りあえず共通の友人から吉田の様子を探りに行くのだった……

・ヴォーカル バンドの練習日にヴォーカルの玲香が約束の練習場所に来ない……
家は既に解約され、行く先も知れず、不安になるメンバー。
ベースを担当していた時朗は恋人でキーボード担当である夏帆に急かされる形で玲香の行く先を探るのだった……
不動産屋からなんとか戸籍謄本のコピーなどを手に入れ、前の住居に赴く二人だったが……

・夏色流し 時朗は突如倒れた祖父の見舞いに下北沢へ向かった。
祖父の家には既に叔母である音葉が来ていた。叔母と言っても時朗と同い年であるのだが、
それこそが母が祖父を許せない理由なのであった……
祖父は祖母と母を捨てて家を出、音葉の母と付き合うようになったのだが、
結局そこでも家庭を築くことなく一人で好き勝手に暮らしていたようだ。
おそらく時朗と同じ理由で音葉が見舞いに来ているのであろう……

・団子坂 時朗は中学時代の同級生であった村瀬貴代が亡くなった事を知り、線香をあげに家を訪問したのだが、
そこで、同じく同級生で貴代と共に時朗と仲の良いグループに属していた真弓と再会する。
貴代は団子坂でバイク事故にあったらしいのだが、どうやらアメ横でナンパされ、
送ってもらう最中にバイクの事故で放り出され、対向車のタクシーに轢かれたらしい。
しかしバイクを運転していたのはレーサーとして有名な広瀬であり、
違和感を感じた時朗は入院中の広瀬の元を尋ねるのであった……

・プラスチック・ラブ 中学の同級生・竹田寛子が、池袋のラブホテルで殺害された。
同じ高校に通う美波と交際中であった時郎は、かつて一日だけデートしたことがあった寛子が、
最近どうしていたのかが気にかかり、彼女と最近仲の良いグループにいた石井を訪ねる。
石井も同じ中学出身であり、テニス部だったが、今では派手に遊んでいるらしい……
案の定寛子は、売春まがいのバイトに精を出していたらしいのだが、
石井に対して交際中の相手について、“プラスチック・ラブ”という謎の言葉を残していた。
その帰り、時郎は記事を書くために事件を調査している柚木草平と出会う……

・クリスマスの前の日には 時朗は学校の帰りに里菜子の家を訪れる事になった……
新体操部をやめた里菜子とは最近疎遠になっていたのだが、その日は何故か帰り道が一緒になり、
話をするうちに、父親が家を出た為に妹の智美が少しおかしくなった事を聞いた為であった。
テレビで見たアルパカを家で飼うまでは学校に行かないと言い出した智美であった。
兎にも角にも智美にあう時朗であった……


八編の短編で、必ずしも時系列に並んでいる訳ではなく、
更に書くと全ての作品で時朗が付き合っている女性は別人だったりします。
種明かし的に書かれている解説では、もともと主人公は違っていたものを短編集としてまとめた際に、
主人公が時朗に統一されたらしいのです。
作品の発表年からも柚木シリーズの発表前年から交互に書かれており、
時朗の性格描写にはかなりの共通点が見いだせます。
それ故に「プラスチック・ラブ」で柚木と時朗が会食するシーンが一層面白く感じられました。
柚木シリーズ番外編というのも登場ページ数からは言い過ぎな気がするのですが、
時朗があたかも柚木の分身のような感じがして、あながち外れでもないと思えました。
著者らしさが充分に出ている短編集と言えます。
ミステリ的な面白さはあまり無いのですが、個人的に樋口作品を読んだ際に得られる
何とも言えないノスタルジックな感覚がツボになってしまいました。


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