ROAD TO BLUES Clarksdale

 

Sold Out の看板 いよいよ週末だ。この町唯一のスタジオ兼レコードショップ、「Stack House」に、毎日通っているうちに、そこのナンシーおばさん(お姉さん)と仲良くなり、週末のライブ情報を教えてもらった。どうやらでっかいパーティがあるらしい。この町では大きくてきれいな、「Ground Zero Blues Club」にその夜行ったんだ。

 

 しかし、いざ入ろうとすると、なんとその日はすべて予約制で、しかもSOLD OUTであったのだ。頼み込んだがだめで、仕方がないので、誰かのキャンセルを待って、ぽつんと外でベンチに腰掛けていたんだ。窓からこぼれる音だけでも聞こうと思って。

 

Paul Jones 次第にお客さんが詰め掛けて、そんな時、一人の白人のおじさんが携帯電話をかけに外に出てきた。電話が終わると、たまたま僕と目があって、多分こんなやり取りだったと思う。「やぁ(珍しいやつがいるもんだ)、今日は楽しみだね。ところでそんなとこに座って何してるんだい?」「…チケット、持っていないんだ。」「チケット持っていないだって!?、……ちょっと待ってな。」―しばらくしてまたおじさんが外に出てきた。「ヘイボーイ、入っていいぞ。」―入れてくれたんだ!オーナーなのかなぁ。とにかく、僕みたいなキャンセル待ちの人は他に数人いたみたいなんだけど、カウンターの女の子にも、「あなたはラッキーなのよ!」と言われ、会場満員の中、その夜ブルーズに浸ったんだ。ナンシーおばさんと、友達のジョンも来ていたな。

 

 パーティが10時くらいから始まって、Paul Jones、His friend、Snufking夜中の1時頃、終わった。僕はその夜、真夜中のクロスロードに立ちにいったんだ。ちょっと怖かったな。その帰り、ジョンの車がたまたま僕を発見して、「大丈夫か?何してるんだ?」と自分だって手一杯ビールを飲んでるくせに声をかけてくれたんだな。そして、「ここを我が家だと思いな。」といってくれた、ラットおじさんのリバーサイドホテルへ、夜道を散歩しながら帰ったんだ。

 

 ちがう晩、ちょっと外で飲みたくなって、また繰り出した。だいぶ心臓がでかくなったのか、どうしても黒人クラブへ行きたかった。でもやっぱりちょっと怖いし、どこそこのスタッフを連れたミュージシャンでもない。一人きりだ。By Myselfなんだ。でも、やっぱり行こうと思って、ちょっとはいりやすそうな「Blues Station」というクラブへ入ってみた。

Nancyおばさんと 

 ドアを開くと、黒人のおじさん(お兄さん)が3、4人と、女の人が2人くらいいた。思っていた以上に広くて、奥にはドラムセットもあったな。どこへ座ろうか迷っているうちに、一人のおじさんが「ここへ座れよ。」とカウンターの間の椅子を指差してくれた。ビールをたのんで、アメリカンフットボールを見ながら、おじさんたちの会話を聞いたり、「おまえはギター弾くのか?ブルーズ演るのか?」と聞かれたな。また隣のおじさんに英語を教えてもらったりもしたな。そのうちの兄さんの一人が、アイクターナーのカセットを取り出して軽く商売をはじめた。この町にはアイクターナーの弟がいると、鮎川誠さんが言っていたが、彼じゃないだろうか。とにもかくにも、そこで、今度またパーティがあって、そこのおじさんの何人かはステージに上るんだ、ぜひ見にこいよといわれ、約束を交わしたな。勇気を出してよかった。

 

Blues Station  数日後、そのパーティに出かけたんだ。おじさんとも会って、「やぁ来たんだね。楽しんでいけよ。」と言ってくれて、マネージャーみたいな人から名刺をもらったな。そのバンドは「The Deep Cuts Blues Band」というバンドだった。このパーティについては、とても語り尽くせるもんじゃないんだ。とにかく、その日、黒人のクリスマスパーティだった。大人も子供もおばあちゃんもみんなさ。白い顔した奴なんか一人もいない。唯一イエローモンキーの僕だけさ。この夜は一生忘れることのない夜になったんだ。

 

 

 

 

サンハウス、マディウォーターズ、ジョンリーフッカー、サムクック、「Clarksdale」。
WROX、アーリーライト(The Soul Man)、Raceレコード、バーバーショップ、「Clarksdale」。
マーティンルーサーキングジュニアパーク、2ndストリート、Hopsonプランテーション、ブルースラウンジ、「Clarksdale」。
リバーサイドホテル、サンフラワーアベニュー、クロスロード、D&T、RAT、「Clarksdale」。
―バイバイ「Clarksdale」。

 

列車の汽笛が南部の夜空にこだまして、次の街へと僕を連れて行く。
ブルーズマン達の声が聞こえる―北部へ行くんだ…。

 

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