王さまシリーズを書いている際に、ミスタッチで、「いっぱい」が「おっぱい」になることが、ままありました。そこで、書いてしまったのが、これです。
番外編です。座興としてお楽しみいただければ幸いです。
その国の王さまはオッパイでした。
王さまがいれば、泣く子もおやじもぴたりとだまって、ニコニコ。しまいに、すーすーと気もちよさそうに寝てしまいます。
しなびていようが、大きかろうが、小さかろうが、「はいどうぞ」と、目の前にだされると、いやだとはいえない魅力がありました。指でツンツンとしてしまう、引力がありました。許されればチュバチュバしてしまう郷愁がありました。
オッパイは世界でいちばん偉い王さまでした。
でもオッパイは、数にかぎりがあります。おかあさんやおねーちゃん、おばーちゃんしか、もっていないからです。
生まれたばかり赤ちゃんには、専用のオッパイがあるので問題はありません。問題は、おとーさんやおにーちゃんのぶんでした。さらに困ったことに、いちど、オッパイのあじをしめると、いろんなオッパイを、ツンツンしたくなることでした。
王国では、オッパイの取りあいが起こるようになります。赤ちゃんのオッパイを横取りするやつまであらわれました。
困った王さまは、オッパイの数を増やすことにしました。王国の人びとの希望者には、無料でオッパイをつけてあげることにしたのです。
おとーさんやおにーちゃんは、我先に競って、「理想のオッパイ」を自分のおなかや、太股につけてもらいました。ひまなときは、そのオッパイをツンツンしています。通勤電車も苦になりません。歯医者さんの痛いのも我慢できます。でも、なにを勘ちがいしたか背中につけた人は、自分でツンツンできなくて、泣いてしまいました。
おかーさんやおねーちゃんも、オッパイをつんつんされたり、ちゅうちゅうされたりはしますが、その逆はあまりないので、ときどき、おとーさんやおにーちゃんのオッパイをツンツンしたりします。
こうして、オッパイが王国中にいきわたると、にやにやしながら歩いているおとーさんやおにーちゃんが増えたのが、ちょっと困ったことでした。
でも、喧嘩がおこらなくなったので、王さまは満足しました。