虹〜ヒーロー〜
〜I'm a Singer 君の空を ひとときでも 僕の色で 染められたら それでいい〜
1998年大晦日、雪村いづみさんの45周年コンサートをTVで見ました。その時初めて、雪村さんが歌う「虹〜Singer〜」を
聴きました。その少しまえに雪村さんが書かれた「虹になりたい」という本を読んでいたので、聴いていて思わず感極まって
しまいました。この歌はまさしさんが、雪村さんのデビュー40周年の記念アルバム「I’m a Singer」のために書き贈ったものです。
彼は雪村さんに贈った「虹〜Singer〜」を女歌とし、自分が歌った「虹〜ヒーロー〜」を男歌として、アルバム
「おもひで泥棒」の中に収録しています。
雪村いづみさんは、16歳でデビュー。その当時から美空ひばりさん、江利チエミさん(共に故人)と「三人娘」と呼ばれ、
いわゆるスター街道を歩んできた来た人でした。彼女が歌手として手に入れた名声、お金、豪邸、そして歌が売れなくなったときの
挫折感、残された多額の借金、一人娘(朝比奈マリアさん)を手元で育てられなかったという親としての罪の意識、愛する人たちと
の別れ、そんなことがこの短いフレーズにこめられていると思います。そしてこれに、これまでのまさしさんの姿を重ね合わせるのは考えすぎでしょうか。
虹は美しく見る者を感動させるけれど、それは一過性の命。どんなに美しくても、やがて消えゆく儚いもの。自分自身への
問いかけた答えは、その後のサビの部分にある 「I'm a singer」歌は、聴き手によって生かされるもの。どんなに良い歌詞でも、
どんなに素晴らしい楽曲でも、人の心を叩かなければ時代に流されていくだけ。お客様の楽しむ顔が見たくて、一夜のコンサートの
ために全力で臨んでいる。それはほんとに可笑しくって、哀しくって、美しい、歌い手自身の姿です。
「おもひで泥棒」のライナーノートで、まさしさんはこう語って
います。「歌手などというものは、文化の範疇にどの土地は与えられていない。あくまで風俗の中に住んでいる。
そんな事はわかっている。だが、評価を別にすれば、たかが歌に命をかけられる生き物が歌い手の正体である。」
「虹」は、美しいけれどやがて消えてゆく儚いさだめ。歌い手もいつか虹のように消えてゆく。
雪村さんは、著書「虹になりたい」を「歌い続ける謳歌しながら、虹のように消えたとしても本望なのです。それが、私の使命だと
信ずるから。」と結んでいます。
まさしさんは、「ステージの途中で、死ねたらカッコイイよね。(血管がぶちぃっと切れたりしてさ)」、
「コンサートにお客さんが来てくれる限り、歌い続けますよ。」と度々口にしています。
これは、そんな決意の現れた歌のように思います。
I'm a Singer 虹になりたい
ひとときのヒーロー 演じてそして
I'm a Singer 君の空を
ひとときでも 僕の色で 染められたら それでいい
I'm a Singer 振り返ったら 幻のように 消え去るもの
誰かのしあわせと 入れ違いに