土を自然の状態に近づけるためには
有機物を与えることは欠かせません!

■有機物とは?
落ち葉、動物や昆虫の死骸、わらやおがくず、生ゴミなど・・・微生物によって分解されるもの。
主に土に使われる「有機質資材(堆肥)」、主に植物の栄養分として使われる「有機質肥料」これらも有機物と呼びます。
■有機物のはたらき
有機物は土の@物理性A化学性B生物性を改善する働きがあります
@物理性とは
土の団粒化による保水性、透水性、通気性の向上など
A化学性とは
養分の供給や保肥力の向上など
B生物性とは
土壌微生物の働きを活発化したり土壌伝染病などを抑えること
■どうして有機物を施すの?
「土のはなし」での森林でもない限り、年々有機物が不足してきます。
不足すると土が上記の働きをできずその結果、土を硬くし、植物がうまく育たない環境になるのです。
土壌微生物は有機物を食べ(分解する)、植物が必要な栄養分や腐蝕をつくり出します。
「有機物の不足」とはその微生物の食べ物(有機物)がなくなることです。
■どうやって有機物を与えるの?
有機物の種類は多種多様でそれぞれ施用方法を考えて与えることが必要です。
例えば刈り取った稲わらをそのまま土に鋤き込むとどうなるでしょう・・・
稲わらは炭素率が高く分解するのに多量のチッソ分が必要になります。そこに植物を植え付けると一時的にチッソ飢餓の症状に陥り、植物は上手く育ちません。
ではどのようにすれば良いのでしょう?
ひとつは鋤き込んで長い間放置しておき、すっかり土中で分解された状態にするすると逆にチッソを放出する形になるので植物にとって良好な場所になります。
もうひとつは土壌に鋤き込む前に発酵させて堆肥をつくる方法です。
これは稲わらについて述べたことなので全ての有機物に関してこうだとは言えません。
このように有機物にはそれぞれ特長があるので注意して施さなければなりません。
発酵した(分解が進んだ)有機物は植物にとって安全ですが、微生物の働きによる土の団粒化や微生物の増殖は期待薄です。
未熟な有機物は施し方によっては、植物に悪影響(根腐れや病害虫の増殖など)を引き起こしますが微生物の動きが活発なため、土の団粒化や活性化に役立ちます。
■私流有機物の施し方
「土のはなし」の団粒土で述べたように有機物は土の物理性を高めてくれます。
そこで団粒をつくる有機物は熟成の進んだ腐植よりも未熟な有機物の方がよいとお話ししました。
できれば有機物が分解していく時に出る大きなエネルギーを無駄にしないために完熟する前の有機物を施したいのです。でも・・・余りにも未熟な場合は分解に時間がかかるし病害虫が発生するリスクも大きいので注意が必要です。
そこで・・・その中間的な有機物を施すと良いのではないかと思います。
分解が終息に近づいた完熟堆肥は微生物の活性が活発ではありませんがお腹いっぱいになった微生物がひしめき合っている状態です。そして新たなエサ(有機物)を求めているところです。そんな完熟堆肥と中間的な有機物を一緒に施してやると、なお一層、微生物の勢いが増し土が活性化してくると考えます。
要するに分解しかけの有機物にお腹の空いた微生物をプラスしてやるということです。

そして有機物や有機肥料は植物の根に直接当たらないところ、それも根が将来伸びるであろう場所に施すのがポイントです。有用な微生物は単体よりも集団を好み、より活発に働いてくれるはずです。
また、根も栄養を求めてその中に入り込んで来るのです。
有機物は花壇一面に施しても思ったよりも効果がなく、有機物を無駄にするだけなのです!
私流有機物の施し方 EM生ゴミ堆肥編
◇EM生ゴミ堆肥の発酵の過程
私が主に利用しているのはEM生ゴミ堆肥です。(※詳しくはEcologyの「EMのページ」をご覧ください)
EM生ゴミ堆肥は予めバケツで一次発酵(嫌気発酵)させ、後の微生物が分解しやすくしてあります。
一次発酵はEMの中の乳酸菌によって進められます。乳酸菌は嫌気性微生物なので水分が多く嫌気状態になりやすい生ゴミの発酵には最適なのです。また、乳酸が出来るとするとphが4くらいの酸性になるので
他の微生物たちが生きていけない状態になるのです。(病原菌も寄せ付けません)
phが4くらいで喜ぶ菌には酵母菌がいます。よってそのバケツの中は乳酸菌と酵母菌で満たされるのです。乳酸菌や酵母菌はとても器用な微生物で、植物に活力を与えるビタミンや有機酸をつくり出します。
そして、嫌気発酵した生ゴミを土や腐葉土などと混ぜます。
生ゴミ堆肥の発酵が進むとやがて乳酸菌も酵母菌も死滅して代わって糸状菌が増殖し始めます。
糸状菌は乳酸菌や酵母菌などが分解できなかった硬いものを分解します。その後、さらに硬い物を分解する放線菌が活発に働くようになります。糸状菌、放線菌は熱を持ちやすく、特に放線菌が活躍しているときには生ゴミ堆肥を作る際にでも熱を感じることがあります。また、放線菌は抗生物質を分泌するものが多く、それらが増えることは植物にとって望ましいことなのです。その後、放線菌の食べ物がなくなると次は細菌が活躍します。放線菌が分解して柔らかくなった繊維組織を食べるいろいろな細菌が増殖します。ここまで来ると生ゴミ堆肥の完了です。

◇私はできるだけこうします!
生ゴミ堆肥が完熟堆肥になる前に施すことによって、活発に働いている微生物のエネルギーを土の団粒化(「土のはなし」参照)や土壌微生物を増やすために利用します。これは完熟堆肥にはない土壌の物理性の改善に大いに役立ちます。
■プラスしたい有機物

炭は顕微鏡で見るとたくさんの小さな穴が空いています。ここには有用な微生物が好んで住みつきます。
菌根菌も炭が大好きなようです・・・
また、炭は根の細根を増やす働きがあるらしく、まさに注目すべき資材なのです。
さらに木酢液との相性がよく、炭を土壌に施す前に木酢液につけ込んでおくと微生物の付着の効果もアップするようです。
これは炭が強いアルカリ性で一般的な微生物を寄せ付けません。そこで木酢液(酸性)に浸すことでアルカリ分を中和させるためです。
クンタン
私がよく使っているものにクンタンがあります。これはモミガラを燻したものです。
クンタンは炭と同じく多孔質です。よって炭と同じく微生物の住みかになります。
さらに軽いため土の中に隙間を作り物理性改善にも役立ちます。
木酢液をプラスする方法は炭の通りですが、糖分を添加することも微生物が寄ってくる方法です。微生物は糖分が大好きなので、好物をちらつかせそこへ誘き寄せようとする、おとり作戦です♪水で薄めた糖蜜や砂糖水などを活用してみてください。
草木灰
字のごとく草や木を燃やした灰のことです。これはアルカリ性のため、石灰のように土壌のアルカリ化資材として使われることもあります。草木灰には肥料分のカリを多く含んでおり、有機肥料のカリ肥料としても知られていますがその他にカルシウムやマグネシウムやナトリウムなど中量要素や微量栄養素をも含んでいるのです。
カニガラ
カニガラにはタンパク質や炭酸カルシウムの他にキチンが多量に含まれています。このキチンはキチナーゼという酵素によって分解されます。このキチナーゼは放線菌や一部の細菌によってしか分泌されません。
つまり、主に抗生物質をつくり出す放線菌が著しく増加し、土壌の病原菌を抑制するのです。



発酵肥料(EM1号で米ぬか、油かす、骨粉を発酵させた)を作ってみました。
出来上がって早速、庭のバラやお花に施しました。
微生物が効率よく働くためにあえて固めて入れてみました。

それからちょうど1ヶ月あまり・・・
様子を確かめたくなって、掘り返してみました。
塊になっている内部は嫌気状態なのでしょう、まだ分解されずに残っています。
しかし、その周りの土には糸状の菌糸がまとわりつき、菌が回っていることが分かりました。
塊を割ってみるとちょうど、濡らした紙を裂く時の様な繊維状の糸(菌糸)がビッシリ付いており、ミシミシ音を立てて契れるような感触です。
さらに驚いたことに、その塊の中にたくさんの小さな透明なミミズが・・・ヒメミミズです。
ヒメミミズは特に微生物の繁殖している腐りかけの植物質(発酵有機物)や繊維質がほとんどない植物質など柔らかいものを好むようです。
こうした小動物、微生物によって発酵肥料は急速に分解されていくのです。


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