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6/30 寄生バチの不思議

ある日、ノウゼンカズラの葉っぱの裏に不思議なものを見つけました

小さなマユがいっぱいくっついていました
これはコマユバチの一種のマユです
コマユバチとはハチの仲間ですが
蝶や蛾の幼虫に産卵するハチなのです
このそばには小さなハチのような虫が何匹かいました
そして、マユを見てみると、先が丸くくり抜かれ、蓋が開いているではありませんか!
もしかしてこのマユから出てきたものかもしれません
これは、放っておくわけにはいきません!!
早速、容器に入れて様子を見ることにしました
容器に入れて数時間後・・・・
その容器の中には5匹くらいの小さなハチが!
むふふ♪やっぱりです

コマユバチの仲間ややヒメバチの仲間などは寄生蜂と呼ばれます
蝶や蛾の幼虫や、蛹、さらに昆虫・・・・とにかく生きた虫に産卵するハチなのです
この発見をきっかけに、本でこの寄生蜂の生態を詳しく知りました
・・・とにかく驚きの連続です(やっぱりハチに惹かれます♪)
私が読んだ本(※1)ではある特定のコマユバチと特定の寄主の話でしたが
多くの寄生バチのケースはそれに当てはまると思いました

まず、ハチは寄主が囓った食べ痕から寄主の存在を感じ取り、やって来るそうです
そして触角を使って寄主を捜し当て、お尻の産卵管を突き刺して産卵します
その産卵時には、卵と一緒に一種のウィルス(※2)と毒液を注入します
寄主のカラダは卵という異物が入ってきたのでそれを排除しようとする防衛メカニズムが働きます
しかし、ハチのウィルスと毒液によって卵=異物という方程式は認識されなくなるのです
さらに興味深いことは、寄主の体の中で卵が寄主をコントロールしているということです
寄生蜂に産卵された寄主はエサである植物を加害しながら大きくなっていくような
気がしますが、実は食べる量が抑制されているのです
植物を食べて寄主が栄養にしていくということは、、寄主にも抵抗力がつくと言うことを意味します
卵は死ぬかもしれないというリスクを背負ってまで栄養を求めてはいません
最低必要な栄養さえ摂れれば良いのです
さらに寄主が蛹になってしまうとハチ達は羽化出来ずに死んでしまいます
それを避けるために発育を遅らせることもできるのです
寄主の行動はすべて彼らにコントロールされているのです
そうして寄主の生命維持はそのままに栄養だけを摂取して育っていきます
見た目、普通と変わらない寄主に突然その日が訪れます・・・
寄主のカラダを突き破って幼虫が外界へ出てくるのです。まるで映画のエイリアンのようです
そして次々にマユを作り始め、幼虫たちはこの中で蛹になるのです
ハチが這い出た後の寄主はもう用済みです  ハチのマユの下で昇天するのかと思いきや・・・
何かに動かされるかのようにその場を後にするそうです
マユの下で腐るとヤバイ・・・寄主の無言の移動も実はハチのコントロールによるものだったです
こうして羽化したハチは新たな寄主を求めて飛び立っていくのです



■オマケ■
寄生蜂が植物にやって来るのは寄主の食べ跡に寄主の分泌物が付くから!
しかし、もうひとつ・・驚くことに植物が寄生蜂を呼ぶそうです(本当だよ)
「カラダを囓られて痛い・・・・助けて〜」と寄生蜂を呼ぶそうです(声は聞いたことないけど)
それも食害が始まった初期に・・将来的に自分に大打撃を
与えそうな相手のとき・・・そんな時に助けを呼ぶそうです

虫たちにとって複雑な自然生態系は「当たり前」のことで
自分たちが暮らし、子孫を繁栄させていくために必要な手段を進化させてきたのです



※1 寄生バチをめぐる三角関係」
高林純示・田中利治 著書
講談社 発行
※2 進化の過程で寄生バチと共存関係を結んだウィルス



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