お米とご飯の雑学 ≪PartY≫
● 貯穀害虫としての「米の虫」の話 ●

HPを開設して初めての1999年の夏は、数件だった「米についた虫」について の質問のメール。それが2000年の夏に届くメールのうちの1件は「米の虫」に関するものだった。
これは、2000年の夏が全国的に暑い夏のせいだったのか、それともインターネットの利用の急増の せいだったのか、あるいは雪印乳業事件にはじまる食品への異物混入に対する関心の高まりによるもの なのかわからないが、夏にはお米に虫がつくのが当たり前だった数十年前には考えられなかったような 質問も寄せられた。
そこで、ここでは「貯穀害虫としての米に付く虫の話」。


代表的な米の虫
(一次性害虫)



コクゾウムシ



コナナガシンクイ

コナナガシンクイ幼虫



ノシメマダラメイガ

ノシメマダラメイガ幼虫



(二次性害虫)



コクムストモドキ

昆虫の種は世界中で200万種近くいるといわれるが、そのうちで 貯穀害虫は約100種。さらにその中で、米を直接加害できる日本国内の害虫は、コクゾウムシ・ ココクゾウムシ・コナナガシンクイという3種の甲虫と、バクガ・ノシメマダラメイガという2種の蛾。 これらは一次性害虫と呼ばれるが、この一次性害虫にかじられてできた破砕物や粉を好む二次性害虫が たくさんいるという。

コクゾウムシは、体長3〜4.5mm、漢字で“穀象虫”と書くように、 象のように長く伸びた口吻が特徴的。この口の先端には、建設機材のユンボのバケットを二つ向かい 合わせにしたような鋭い歯(アゴ)がついている。これがそのまま掘削機として働き、米を削り取って 食べることが出来るだけでなく、穴をあけて米の中へ卵を産みつける。そして卵を産みつけた後は、 体からガム状の物質を分泌して丁寧に穴をふさぐから、産卵の跡を見つけることは至難の業である。
風雨からも外敵からも守られた米粒の中でヌクヌク育つ幼虫は、幼虫24日、さなぎ6日の約1ヵ月 で成虫になり、殻のように表層だけ残った米粒を突き破って這い出してくる。
成虫の寿命は180日 から長くは1年以上も生きるものもある。繁殖力も旺盛で、気温30度・湿度70%の"好"条件では、 雌雄一対のコクゾウムシは3ヵ月で1300匹余り、4ヵ月たつと6000匹以上にも殖えるという。
7世紀末から8世紀にかけて現在の奈良県にあった藤原京の厠の跡からは、人糞に混じったコクゾウ ムシがたくさん見つかっており、当時の人々が好んで食べたかどうかはともかく、少なくともあまり 気にせずに米と一緒にコクゾウを食べていた様子がうかがえる。いや、食品総合研究所の中北宏先生に よれば、米と一緒に食べるコクゾウムシは、当時としては貴重な動物性タンパク質の一つではなかった かと想像できるという。

ココクゾウムシは、コクゾウムシとよく似ているがやや小型で、 コクゾウムシと違って飛ぶことができない。また温暖地を好むので、関東以西で問題となることが多い。

コナナガシンクイムシの成虫は、光沢のある黒褐色をした筒状の2〜3_ の甲虫。背中の面から見ると頭部が見えず、胸部の下に隠れている。頭部の大顎が非常に発達していて、 成虫も穀粒を破砕する。通常、穀粒の間に数個の卵を付着させ、孵化した幼虫もまた、強烈な大顎で穀粒 内に食い入る。また、コナナガシンクイムシは穀粒だけでなく穀粉でも発生する。

ノシメマダラメイガは、玄米の胚芽部とヌカ層を好む、体長が6〜7mm の蛾だ。羽の先端半分が赤銅色で、羽を閉じて静止しているときにはこれが熨斗目模様となることから この名がある。幼虫が玄米表面のやわらかいヌカ層や胚芽部を好みなめるように食べるが、通常は穀粒内 に食い入ることはない。サナギになるときに出す糸で、米が綴り合わさるようになる。
この虫は、油脂分の含まれた食品を好むので、クッキー、チョコレートなどの各種菓子類やインスタント ラーメン、七味唐辛子など、家庭で保存されることの多い食品でも発生するので、近年は家庭害虫として も要注意種となっている。この虫の幼虫は包装資材への穿孔力が強く、ポリエチレン袋などにも穴を開け、 また、蛹化前の幼虫は餌から離れて徘徊して様々な場所で蛹になるので、食品ばかりでなく様々な品物に 異物として混入するケースの最も多い害虫である。


バクガは、成虫の体長4_、開翅長16_内外で薄茶色をした小型の蛾類 である。


貯穀害虫の発育と繁殖は、25℃〜32℃でもっとも盛んになる。反対に 15℃以下では、最も低温に強いコクゾウムシも活動を停止する。しかし、活動をやめるだけで死ぬわけ ではないので、温暖な場所に出すと再び繁殖、加害する。


キイチローのコメントこの項は、 月刊誌『現代農業』が「貯穀害虫の生態と防ぎ方」と題して、食品総合研究所・中北宏氏から 聞いてまとめた編集記事や日本精米工業会のパンフレットなどから私がアレンジしたものである。
これらの参考資料には、これらの虫を防ぐ方法として、燻蒸剤によるくん蒸、炭酸ガスを封入しての 殺虫方法や、「コクゾール」(三共製薬)という珪藻土を使った殺虫剤を使う方法などが書かれているが、 それは生産者や流通業者などが玄米で大量に保管する場合の防除ならいざしらず、主に精米で保管し、 煮炊き以上の手を加えないで食する消費者向きの防除ではないと、私は思う。
 私は、古代の人々のように動物性タンパク質として米の虫を平気で食べなさいとは言わないけれど、注意して 取り除いても取り残してしまった1、2匹の虫を食してしまう危険と、将来にどういう禍が出るかわからない 薬品を使う危険とを比べたら、前者のほうがはるかに危険はないと思う。
 そして、米の保管場所は常に清潔に保つことが、虫の繁殖を防ぐ最大の方法だ。とくに、マス付きの 計量米びつの場合は、米の滞留場所だけでなく、夏前には、マスの部分も含めて米の流れる部分すべてを 分解掃除することをお奨めしたい。
 また、冷蔵庫に余裕がある方は、夏場だけでも冷蔵庫に保管することをお奨めしたい。ただし、 米の水分が奪われないように密封容器か空気のもれない袋に入れて野菜室で保管すること。


★ 穀害虫についてもっと詳しく知りたい方は
独立行政法人・食品総合研究所のサイト内の『貯穀害虫・天敵図鑑』
をご覧ください!

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