お米とご飯の雑学 ≪PartV≫




● 1kg のお米を炊いてできるご飯は何kg ? (ご質問のメールにお答え)
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name=天使さん からのご質問
message= お米一升を炊いた場合、炊き上がりのご飯は何キログラムになりますか?
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炊飯器で水加減の基準を示す線は、水分14.5%位のお米を基準にして、米と水の比率を 容積比率 1:1.4に設定しているとのことです。これを 重量比率 に換算すると 1:1.3〜1.28 くらいになります。
従って、水を加えたお米の重さはお米の約2.3倍ということになりますが、炊飯器での水分蒸発量が、電気炊飯器で6〜10%、ガス炊飯器で13〜15%位とのことですから、ご飯の重さは大雑把に言ってお米の約2.2倍 とみていいのではないでしょうか。
白米1升は 1.4〜1.5kg ですから、ご質問の答は3kg強ということになります。
お米の枡(マス)目と目方の関係については、PartUをご覧下さい。

このことから見方を変えて、一回に食べるご飯の量を考えてみると、お茶碗の大きさやよそい方にもよりますが、まあ一般的にはお茶碗一杯のご飯は約150g。だからそのお米の量は 約60g。 一回にニ杯食べるなら、お米の量は約120〜140gと考えていいでしょう。
とすると、10kg4000円の安売りのお米(もしかするとニセ表示かもしれない安売りのお米!)と、信用できるお米屋で買った10kg5500円のお米とでは、お茶碗一杯では9〜10円くらいしか違いがないのです。
皆さんは、一杯のご飯で10円節約するために、古米・古々米・古々々米、あるいは外国産米が混ぜられて安売りされているかもしれないお米【註】を買いますか?
【註】この辺の事情は、1999年9月2日付け朝日新聞の第3社会面で検証されております。


● 玄米って栄養あるの?
お米は外皮の部分にビタミンBなどの栄養素が豊富にある。その部分を削いだものが 精米(白米)なので、白米より玄米の方が栄養がある、というのは事実だ。
しかし、「栄養がある」ということと「栄養になる」ということは同義語ではない。 「栄養がある」食べ物が消化吸収されてはじめて「栄養になる」のだ!
ところで、ある大学の研究者が実験した面白いデーターがある。
精白割合\ 湿量 風乾量
精白米 123 25.3
半つき米 170 35.4
玄 米 243 49.9
これは、15人の被験者に28日〜56日実験してもらった平均糞便排泄量のデーターである。

要するに、一般的には、お米は精白の度合いが少ないほど消化吸収が悪く、それだけ糞便として 排泄されてしまうということだ。



● お米だって“一気飲み”はダメだっちゅーの!
お米をといですぐに炊く人がいる。いくら忙しいからといって、これではお米が可哀相。
お米が十分に水を飲み込んで美味しいご飯になる元気がうまれる飽和水分は、27%から30%位 だが、経過時間と水温の関係は次の表の通りである。
水温\時間 10分 30分 60分 120分
水温5℃ 15.55 25.40 26.97 28.57
水温20℃ 18.09 25.71 28.09 28.57
水温30℃ 25.87 28.32 29.04 31.27
だからどんなに忙しくても、夏でも30分以上、水温が低い冬は1時間以上は 炊飯前に浸水の時間をとってほしい。どうしても急ぐときには、水温を上げた ぬるま湯で浸水すれば、少しは時間の節約ができるが、それにしても、研いですぐに 炊くことだけはしないでね。


● プロには、お米は「水に浸けておく必要はない」という人も多い (ご質問のメールにお答え)
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name=I.千恵さん からのご質問
message= (前略)わたしは、炊飯する前に1時間は水に浸しておくのですが、 友達は、「おこめを洗ってからしばらくザルにあげておいて30分ぐらいしてから炊くんだよ。」と いうのでやってみました。これが結構おいしいんですが、どうしてなんでしょう?(?_?)
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現在、ほとんどの米関係者は前項のような理由で、消費者に「炊飯前には必ず30〜60分以上お米を 水に浸けておいて下さい。」と話しています。
しかし炊飯のプロとも言える板前さんの中には、千恵さんのお友達が言われたように、お米を研いだ後 ザルにあげておいてから炊飯する方も大変多いですし、「炊飯前の浸水は必要ない」と言い切っている 炊飯マニュアルを、私も見たことがあります。また考えてみると、私の家でも昔、母は夜研いだお米を ザルにあげておいて、翌朝そのお米をお釜に入れて水加減をしていました。
調べてみると、年配の多くの料理家や親方から仕込まれた板前さんたちは、昔からやっている「お米を 研いだらザルにあげ、そのまましばらく置いてから釜に入れて水加減をして炊き始める」という伝統の 手法こそ正しい炊飯法として、料理学校の生徒さんや板前さんの弟子たちに伝授していることが多い ようです。
しかし、この「ザルにあげておく」という手法には科学的根拠は少なく、また研いでから水を切っておく と、お米がひび割れして中のでん粉質が出てしまう危険が多いことから、現在の科学的根拠による定説 としては「炊飯前に必ず浸水しておく」という手法が一般的のようです。
それに、現在では炊飯時間を炊飯器のタイマーに任せる人が多く、ザルにあげておく方法ではタイマーが 役立たずになってしまうし、また「浸水しなくても良い」と言うと、勘違いして研いだ直後に炊飯して しまう人も多くなる危険もあります。
ということで、一般的には「お米は、炊飯前には“必ず”30分〜1時間は水に浸けて」おきましょう。 でも、おいしく炊けるなら手をかけてもいいと思われる方は、一度「よく研いだあと、研いだお米を ザルにあげて“必ず”30分から1時間はそのまま置いておいてから水加減して炊飯する」という方法を 試みてみるのもよいのではないでしょうか。


● お米の食味は、噛んだときの歯ごたえが重要な要素
98年11月7日の日本経済新聞によると、農水省食品総合研究所の研究グループが、 炊いたご飯粒の中には必ず数個の空洞があることを見つけた、と報じている。
そして、お米の食味は、化学的なものより、噛んだときの歯ごたえが重要な要素に なっているので、空洞の大きさなどをコントロールすると味の改良に役立つかも しれない、という。

近年、米の食味計なるものが数社から発売されるようになって、その数値をお米に 表示して販売する業者も出てきている。
この食味計なるものは、被験米の化学的成分を分析し、食味の違う米の化学成分比 の経験的統計から類推される食味を食味値として表わすようになっている。
しかし、お米の食味が化学的なものより、噛んだときの歯ごたえが重要な要素だとすれば、 食味計の食味値は全く当てにならない値だということではないにしても、それだけで お米の味の良し悪しを判断することは危険だということになる。


● 米飯給食の進捗状況は...
米飯給食は、昭和51年から学校給食に導入され、週3回程度を目標として推進されている、という。
昭和
51年度
昭和
55年度
昭和
60年度
平成
2年度
平成
7年度
平成
9年度
平成
10年度
実施率
(幼児・児童・生徒数比)
30.9% 79.2% 97.7% 98.9% 99.3% 99.0% 99.4%
週当たり実施回数 0.6回 1.4回 1.9回 2.5回 2.6回 2.7回 2.7回


● 「すしめし」の炊き方と酢合わせ
「すしめし」を炊くときのポイントはお酒を使うことです。 きちんと水加減をしたら、そこから水を取り、その分お酒を入れます。量はだいたいお米5合に対して70ccほど。
炊飯器のスイッチが切れたら5分後にもう一度10秒ほどスイッチを入れ、そのあと12分ほど蒸らします。普通のご飯では 蒸らしは15分くらいがいいが、すし飯では熱いご飯で酢合わせをして酢を飛ばすため、ここでの蒸らしは少し短めがいい。
合わせ酢は、塩だけを使ってさっぱりと仕上げる。お米5合に対し酢90ccほど、塩は大さじ2杯くらい。(酢が多いようでも 酢合わせをしているときに飛んでしまうので、この位は入れる。)
飯台にご飯をあけて、合わせ酢を一気に回しかけ、シャモジでご飯を切るようにほぐしながらウチワで勢いよくあおぐ。 まんべんなくほぐしたら、固く絞った濡れフキンで底から返すようにしてご飯をさまします。



● なぜご飯は“よそう”というの?
ご飯をお茶碗に入れる行為を「よそう」という。
「てんこ盛り」という言葉はあるけれど、一般に料理は「盛る」とか「盛り付けする」 というのに、ご飯だけは「よそう」という。
「よそう」とは「装う」である。
これは、古来からのさまざまな習慣や伝承のなかで、お米の大切さ、ありがたさを 反映した習慣だという。


● お米はなぜ “とぐ(研ぐ)”というの?
お米は炊く前にまず、計量して、研いで、浸水して、それから炊飯に入ります。
ところで、計量の次にお米を洗うことを「研ぐ」というのはどうしてだろう。
お米を研ぐのは、精米表面の遊離糠やヨゴレを取るためで、「洗米」と呼ぶ人もいる。 しかし、洗米とはお米を洗うことだからと、洗剤を入れて洗ったという過保護のお嬢さんがいた、 という笑うに笑えない話もある。
確かに、遊離糠やヨゴレを取るための作業だから洗米にはちがいないが、美味しい ご飯に仕上げるには、手早く、そしてキュッキュッと「研ぐ」が如く洗米するのが コツなのである。それはまさに、「洗う」というより「研ぐ」が如しなのだ!
ただし、最近は「無洗米」という「研ぐこと知らず」の商品も出来てきたので、 いつかは消えてしまう言葉なのかもしれない。


● 『メシ』の語源は「召し給う」
「召し給う」というのは、神が召し給うの意味で、これが メシに転用されたものだと言われている。
わが国では古くから、お米は<神人共食>と言われ、人は神の「おさがり」をいただき、 神といっしょのものを食べることによって神の祝福を受けたいと願って、お米は 日本の歴史を通じて神聖で貴重なものと、格別に尊ばれた。
このように、今日では卑俗な表現のように思われている「メシ」という言葉も、語源をたどると 最大級の敬語だったのだ。


● 「おにぎり」と「おむすび」。 どう違う?
「おにぎり」と「おむすび」。現在、「おにぎり」と呼ぶことが多い関西、 「おむすび」と呼ぶことが多い関東と、呼び方の勢力範囲は違うようだが、単に 呼び方の違いだけで、同じ意味だ。

しかし、その呼び方のルーツは?というと・・・。
まず、時代をず〜っとさかのぼり、古代の日本。 当時人々は、天地万物を産みなす 霊妙なる神霊=「産霊(ムスビと読む)の神」を信仰し、あがめた。 人々は、 お米は尊く、気高いものとして、神様へのお供物としてごはんを握り捧げていた、 という。 古式の握りごはんは、いまの「おはぎ」のような丸い球のような形 だったという。
そして時代は下がって室町時代に入ると、「むすび」は宮中の女官たちが使う 女房ことば≠ノなり、次第に一般にも定着してきたのだという。
一方、武士の携行食としても発達した握りめしが、やはり「お」がつく女性語に変化 して定着し、「おにぎり」と呼ばれるようになった。

いずれにせよ、永い歴史を通じて、女性の手の平によって今に受け継がれた「おにぎり」 「おむすび」。両者に違いがあるとすれば、それは、あなたの思い出の「おにぎり」 「おむすび」がどう呼ばれ、どんな形であったか、ということだろう。


● はじめチョロチョロ、なかパッパ、ブツブツいうころ火をひいて、 赤子泣くともフタとるな
これは、上手なご飯の炊き方の口伝である。昔の人は、ノウハウを伝えるのに 実にうまい言葉を作り出したものだ、と感心する
(初めチョロチョロ) * お米を炊くとき、まず点火してから沸騰するまでに10分くらいかかるようにする。沸騰が早すぎると 米粒の表面だけが早く糊化し、内部への水の浸透も熱の伝導も悪くなるからだ。
(註)この部分について、私が米に関する知識のアーカイブとして敬愛するE女史から次のような指摘があった。
彼女によれば「最近の学会での発表や研究者の発言では、炊飯時の初期沸騰はゆっくりより早いほうがおいしく炊ける、という点で一致している。 ならば、“はじめチョロチョロ”とは相反するではないか。そこでその点を識者に尋ねたところ、『昔のコメは硬かったし、精米もいまほど十分なものではなかった。 さらに前浸漬の必要性が十分認識されておらず研いでからすぐに炊いていたので“はじめチョロチョロ”の時間はコメに水を十分吸水させるための工程だった』 とのこと。大手炊飯器メーカーに尋ねても『十分に前浸漬したコメを炊く場合は、“はじめチョロチョロ”の部分に当たる“前処理工程”を省略し “中パッパ”からはじめることができる』」とのこと。
とすれば、キャンプでハンゴウ炊飯でもするときは、前浸漬はできにくいから「はじめチョロチョロ」から始めたほうがいいようですね。


(なかパッパ) * その後は、釜内全体の温度を早く上げ、均等に熱を分配するために、火力をどんどん強くする。沸騰して 湯気が強くふき出したら、ふきこぼれない程度に火力を弱めて沸騰を続ける。
(ブツブツ言うころ火を消して) * ふき出す湯気が弱まってきたら、さらに火力を弱くし、最後にちょっと(20〜30秒)火を強めて、底の 水分を蒸発させきってから火を消す。沸騰から消火まで20分は必要。
(赤子泣くともフタとるな) * そして、蒸らし。お腹を空かせた赤ん坊が泣いていても、蒸らしのためにもう少しガマンガマン、 というわけ。

● おにぎり・おむすび の形 (ご質問のメールにお答え)
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name= 吉山さん からのご質問
message= 私は 静岡に住んでいる 25歳の男です。ところで、私の妻は 長野県出身なのですが、 おにぎり(おむすび)が
丸型しか 握れません。
ちなみに 私は 三角しか 握れません。地域によっての おむすび おにぎりの形の違いについて 知りたくなりました。
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 以前は、おにぎりの形にも地域性があって、関西では俵型、関東では丸型や三角型が多かった ようです。でも、このことについての資料を持ち合わせていない私は、コメ関係に広い知識をもって いる知人の女性に尋ねてみました。
 彼女も確定的な資料は見つからないということでしたが、以前「自然食通信」という冊子でおにぎり 特集をやっていて、その記事で取り上げられていたおにぎりの想い出をによると、秋田出身の人は 丸型、京都出身の人は俵型、新潟出身の人は俵型を押しつぶした形の焼きおにぎり、とのこと。 このことなどから想像すると
@京都は、富の象徴であった俵型  A東北などでは労働食として、茶碗2杯分くらいのご飯を ぎゅうぎゅう丸めたので、それに適した丸型に  Bさらに、炭焼きやマタギが持ち歩くのに形が 崩れにくいようにしたのが焼きおにぎり
だったのではないか、との感想を述べてくれました。



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