ひなたやまカフェ 037
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ゴトゥコラ・カンダ 簡単レシピ つぼ草で作るスリランカのお粥

右上の青い野菜がゴトゥコラ。「つぼくさ」という和名があるけど、日本で普通に見られるものと形が似ているのだけど、食用になるという点でまったく違う。下の白いのがココナツ。右上に炊飯用の鉢。ここに調味用の塩がそろえばスリランカの草がゆが作れる。

 


 石垣島でハーブを作り販売もしているもだま工房さんからカラピンチャ、ランペ、ゴトゥコラをいただいた。台風に襲われたばかりの石垣島だけど、畑の作物は被害を受けなかったようだ。
 こちら、山形は異様な暑さが続いていて、水ばかり飲まされている胃がちょっと疲れ気味。ここでゴトゥコラとは、いいものを頂いた。アーユル・ウェーダのカンダ(草粥)を作って胃の調子を整えない手はない。早速カンダ作りの材料をそろえて…  



 「内地より石垣島のほうが夏涼しいような気がします」ともだま工房さんが言う。
 そうだ。ECMWF(ヨーロッパ中期予報センター)の気象短期予報でも上空1500メートルの気温はスリランカより日本の本州中央部、関東、東北南部のほうが先週は高かったぐらいだ。「内地より石垣島のほうが夏涼しい」は本当だ。今年の7月中旬、スリランカも石垣島も東北山形の山里もモンスーン熱帯の様相一辺倒ってことなのだ。
 記憶がめぐってくる。石垣島川平湾近くの嘉とそばから眺めた海が湘南葉山の森戸の海辺から望む相模湾と重なってくる。嘉とそばのテラスから見下ろす海辺にサーフィンボードが点在すれば、辺りに屯ろう連中は湘南族に違いない。黒潮の海に富士山が浮かべば、ここは亜熱帯の夏の葉山だ。

つぼ草の粥 ゴトゥコラ・カンダ

 嘉とそばさんでそばの出来上がるのを待つ間に古い雑誌をぺらぺらやって、唐辛子のしょうゆ漬けを紹介する記事を見つけた。青唐辛子をビンに入れてしょうゆを注ぐ。それだけ。翌日から青唐辛子は無意志に醤油発酵の準備を始めてしまう。食欲を巻きたてる味と匂いになる。
 これが夏の食欲不振を追い払う。でも、完璧に胃腸がダウンしてしまうと柔らかな草がゆがただただ恋しくなる。ゴトゥコラ・カンダ(つぼくさ粥)の出番がやってくる。

 つぼ草粥の材料は上の写真のとおり。つぼ草とポル・キリ(ココナツミルク)と塩があればいい。ポル・キリはココナツ・ミルクのことだけど、街で売られているココナツ・ミルクとは違う。作り方をこのKhasyaReport「かしゃぐら通信」で紹介しているのでご参考にどうぞ→スリランカ料理トモカのレシピー ポル・キリ(ココナツ・ミルク)。

ポル・キリ2種。左が一番絞りのポル・キリ。右が2度絞り。最初は2番絞りで粥を炊いて仕上げに濃い一番絞りのポル・キリを加えます。

 つぼ草粥の作り方のさわりをチャンドラ・ディサーナーヤカさんの『すてきなランカ料理』シンハラ語版からシンハラ語の学習をかねて解説します。これ、文(文節)を覚えて、スリランカへ行ったら「チャンドラ・ディサーナーヤカ女史はかく述べておられたり」などと大業にシンハラ語でのたもうて、シンハラの皆さんを驚かせてください。「カンダはタミル語でカンジーであるから、これが英語のカンジーになったようだけど、ニホンゴの”かゆ”にも、また、通じるところあり」などと『南の島のカレーライス』を受け売りしてみれば、これもまた、よし。話題が広がります。われら、粥仲間なり。

 

『すてきなランカ料理』の「つぼ草粥」

臼にゴトゥコラを入れて、杵でよく搗きます。スリランカの杵は黒檀だからひどく重いけど、これは日本製だから軽い。よく搗いて草汁を絞り出します。
ゴトゥコラを杵で搗いて草汁を絞り出したらポル・キリを加えます。こうして作った草汁でご飯を炊きます。
ゴトゥコラの草汁にご飯を合わせて土鉢で炊きます。初めは強い火で草汁を沸騰させて、灰汁が浮いたら掬い取ります。ご飯が軟らかくなるまで気長に、気長に。

 チャンドラ・ディサーナーヤカさんの『すてきなランカ料理』、その「朝食」の項の10番目にゴトゥコラ・カンダ(ゴトゥコラ粥)の作り方が載っている。そっけないほどに簡単なレシピーで、別にこれを読まなくてもいいようなものだけど、ここはシンハラ語の勉強に役立つと思ってください。このサイトはシンハラ語とカレーライスがテーマです。
 まずは、この一文。  

ගොකොල මිටිය වංගෙඩියේ දමා කොටා ඉස්ම මිරිකා එය දියකිරිවල මිශ්‍රකර
  ゴトゥコラ一束を/     臼へ/     入れて、/ 搗いて、/ 汁を/  絞って、/それを/ 二番出汁に /  混ぜてから/

 これを文節ごとに分けて、訳を添えると、

ගොකොල මිටිය ゴトゥコラ一束 ゴトゥコラ ミティヤ
වංගෙඩියේ 臼へ ワゲディイェー
දමා 入れて、 ダマー
කොටා 搗いて、 コター
ඉස්ම 汁を イスマ
මිරිකා 絞って、 ミリカー

 入れて、搗いて、絞って、の言い回しですが、これは各動詞を語根止め― දමා කොටා මිරිකා のように―にして、それぞれの活用語尾 -නවා を省いて表します。これで「~して」という動作の継続が表せます。このとき、たとえばදම-නවා
の語根は දමා のように長音化します。
 そして、

එය それを  エヤー
දියකිරිවල 2番出汁に  ディヤキリワラ
මිශ්‍රකර 混ぜて ミスラカラ、

と続きます。細かなことですが、 එයを「それを」と訳していますが එයだけでは「それ」「それが」「それは」「それを」のどれに当たるか、文法上は判然としません。ここでは対格と捉えて「それを」としていますが、 එයは主格、主題、対格のどれかに当たるはず。でも、文法問題はスルーしていいことです。ニホンゴもシンハラ語も、口語の場合、お堅い文法を意識する言語ではないからです。

左の炊飯用の土鉢、そこに少しゴトゥコラの草がゆが残っている。『南の島のカレーライス・オリジナル』をごらんの肩には見覚えがあるかと。アウィッサウェッラのアンマーが使っていたもの。スリランカの土鉢と石垣島のゴトゥコラと山形里山の元料理人がコラボして、アーユルウェーダの粥ができるのです。
 「ゴトゥコラ一束を臼へ入れて、搗いて、汁を 絞って、それを二番出汁に混ぜてから」の後は、この出し汁を米に加えてご飯を炊く。炊き上がりに塩で調味すればそれで草粥は出来上がり。それだけの料理です。ディサーナーヤカさんの『すてきなランカー料理』 ලංකා සූප ශාස්ත්‍රය の「朝食」の項、10番レシピー「ゴトゥコラ粥」p107は上の文から始まります。朝からアーユルウェーダそのままの暮らし。結構な生活です。
 ただ、このすばらしいアーユルウェーダ生活を実践するには生の、本物のゴトゥコラが要る。スリランカでなら裏山に入って、林の中に生えてるゴトゥコラをバリバリと引っこ抜いてくればアーユルウェーダになる。誰もが健康生活を身の回りから実践できる。南の島だからなぁ。極東の島国では、なかなかそうも行かないのがなぁ~。
 

  2018-July-21


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