学外研修レポート
内容:裁判傍聴
①刑事裁判 【殺人・現住建造物等放火事件】
平成18年×月××日 傍聴時間 pm1:30~1:50
被告人 : ○○
<流れ>
被告人は現在休職中。被告人の職業は刑務官である。
被告人は第一審で無期懲役の判決を受けている。この裁判は双方からの不服申立による控訴審である。
・被告人の控訴理由: 訴訟手続きの法令違反、事実の誤り、目撃証言の全ては信じ れるものではない、DNA鑑定の疑わしさ、犯行動機を誤って認定している、調書を取る際に警察に暴行を受けて自己に不利益な証言をした、真犯人の存在(捜査に不備があった) etc
・検察官の控訴理由: 刑が軽すぎる
被告人本人が、自らは犯人ではないと証言。
弁護士は証人等の取調べを請求 and検察官調書への不同意。
検察官は1つの証書には同意、2つの証書は認められないとした。
弁護士は、非供述証拠の請求→被告人の手帳の存在
検察官による証人請求(2名) and弁護士からの取調べ請求(被告人の母)
⇒裁判官は各請求を許可
次回期日を決めて本日は終了
<感想>
こ の事件は刑務官による母子殺害事件として世間的には有名な事件であるらしく、傍聴人が多く傍聴席はすぐに埋まった。できれば審理が見たかったが、今回は弁 論手続であり残念であった。傍聴していてもう少し見とどけたいと思った事案だった。第1に、被告人は殺人事件という重大な事件において犯行を犯していない と証言をし、真っ向から争う姿勢を見せている点、第2に、調書を取る際に警察に暴行を受けて自己に不利益な証言をした、と、取調べの不可視を問題にしよう と感じた点である。
第1の点において弁護士は目撃情報の信憑性を争うとしていた。事件からかなりの時を経過しているし、人の記憶というのも疑わしくなってきているだろう。これをどう争うのだろうか。加えて、DNA鑑 定の疑わしさなど、今の時代覆せるように思えない。控訴理由を聞いてみるに、弁護士側は被告人は犯人ではないと争うのであろう。しかし、被告人が裁判官の 問いかけに対し、「私は犯行を犯していない」と答えるときの、弁護士からの被告人への黙らせるような目線が気にかかった。
第 2の点に関して。取調べの不可視について大学の刑事訴訟法の講義において山田先生が熱く語っていた箇所の一つである。調書を取るときに暴行を受けて不利益 な証言をしてしまったと、控訴理由中にあった。審理を続けていくと警察の裏側に関しても裁判にかかってくるのであろうか。講義で何回も聞いていた事に関し て、実際に目の前で争われるのかと思うとかなりの期待感を覚えた。しかし今回は弁論手続きだけであり、非常に残念であった。
②刑事裁判 【傷害・窃盗・建造物侵入・強盗致傷・強盗・窃盗未遂・監禁事件】
平成18年×月××日 傍聴時間 pm2:50~3:30
被告人 : ○○
<流れ>
公訴事実の説明: 駐車されていた車を窃取、高級腕時計の窃取、車のナンバープレートの窃取、このナンバープレートを使いナンバーを隠し、車を使いすれ違いざまにホステスのカバンをひったくる、カバンに入っていたキャッシュカードを使用、預金の引き出し、金を保管etc(他は聞き取れず)
⇒被告人はこれらの事実を認める。
検察官による冒頭陳述、事実の より詳しい説明。それぞれの犯行に、犯行を持ちかけた者と協力者(推測;この被告人が一連の犯行全てにかかわっており、窃取した金も保管していたことから 主犯格とされているのでは?第一の犯行である車の窃取を持ちかけてきた者が主犯格であろう。)
検察官による証拠請求→弁護士は全て認める。
請求された証拠の内容; 被告人の家裁からの逆送決定・状況証拠・保険会社の書類・プレートを取られた被害者の供述証拠・共犯者の訂正etc
検察官から、ホステスのカバンひったくり事件についての詳しい状況説明、およびホステスの事後経過の説明
⇒ホステスは仕事を終えて帰る途中、背後から車が来る気配を感じた。車の邪魔にならないように道の端に十分に寄った。余裕を持って車が通れると判断した ため後ろは振り返らなかった。しかし車が迫ってきて、明らかに男の力による強さでカバンを取られた。後日、身に覚えのない預金の引き出し。ホステスはこの 事件により、夜道を歩きづらくなった、精神的被害が大きい。
裁判官からの質問「手に入れた金の使い道は?」
⇒検察官応答「金庫において保管?今はまだはっきりしていない。」
検察官からの腕時計窃取事件についての詳しい説明 犯行状況や役割分担等
⇒腕時計18本窃取、総計1.000万円の窃取。被害者には保険が適応され、被害額の約9割が戻ってくる。(腕時計を卸していた、××商店に所有権ありとのこと)
共犯者以外の者に腕時計10本を引き渡し、残りを質屋で売り、100万円を手に入れる。この金は遊び代に使った。
以上、次回期日を決めて終了。
<感想>
まさかの20分遅れで始まった裁判。検察官の書類が届いていなかったためとの事だが、届いた書類は殆ど使われていなかったと記憶している。検察官も時間通りに終わらせようにとかなりの早口、聞き取りづらかった。
検 察官の証拠請求に出てきた、逆送の決定。つまりは被告人は未成年だったのか?顔もかなり幼く、ずっとうつむいたままで観察するに反省の色が伺えた。上記で 推測したように、被告人は主犯格ではなく、犯行を手伝わされた立場にあるのでは。被告人はまだ若く、刑を軽くしできるだけ早く社会復帰してもらいたいと 思った。被告人の刑罰をできるだけ少なく済ますにはどう争うのが得策だろうか。今回のように犯行を全て認めて反省の色を見せていくのか、それとも事実の一 つずつにおいて時間をかけて明確にしていくのか。できれば、実務の裁判の争い方というものを見られる裁判を見たかった。