パソコンを利用した「外国語(ドイツ語)文献の読み方」

1 はじめに

 研究に従事する者が外国の文献を読むにあたっては、おそらくは複数の辞書(一般的な辞書と専門の辞書など)を横において原書を読み解いていくことが一般的なのではないでしょうか。しかし、とりわけ語学の苦手な私は、つい先ほど引いたはずの単語をもすぐに忘れてしまう始末。同時にいくつもの単語を開いておきたいけれど、冊子体ではそうもいかず…。しおりや付箋をいくつも挟み込んでいたのですが、結局はそれが面倒でたまらなかったわけです。

 そのような思いから、私なりに色々な情報を集めて、パソコンを利用した外国語(ドイツ語)文献の読み方を編み出しました。とはいえ、あまり大したものではございませんが、以下に簡単にご紹介しようと思います。パソコンを利用される院生さんや若手の研究者の方にとって、少しでも参考になる部分があれば幸いに存じます。
なお、完全に自己流によるものでありまして、要領や効率性しか考えておりません(語学教育上の学習効果はありませんので、ご了承ください)。

※ 念のために補足しますと、文書全体を翻訳するソフトも色々とあるようですが、私はこのようなものは使っておりません。
 専門用語が不十分で精度が悪いというだけでなく、一文一文の前後関係や行間を考えながら読み進める必要があるからです。

2 準備作業

(1) ドイツ語文法等の最低限の素養が必要です
(2) パソコン、スキャナー、OCRソフト(e.Typistなど)、ワード、ロボワード(ドイツ語ならば新ロボワード・アクセス独和辞典など)

3 手順

(1) 必要な外国文献のコピーをとります。
 その際、コピー機のガラス面を拭いておいたり、枠消し機能を使ったりして、なるべく綺麗にコピーをすることを心がけています(後のOCRソフトでの作業に役立ちます)。
なお、書物から直接スキャンすることも可能ですが、国によって本のサイズが合わなかったりしますので、拡大または縮小コピーをとってサイズを日本の規格に合わせると良いかと思います(スキャナーの原稿台のサイズにもよりますが、拡大する方が読み取りやすいように思います)。

(2) スキャナーで文書を読み込みます。
 使用する製品によって様々でしょうから詳細は省きますが、文書の読み込みモードに合わせることが肝心です。

(3) OCRソフトで画像データを文書データに読み替えます。
 使用方法は各OCRソフトによって異なります。
私はTextBridge PRO(すでに販売が終了しているようです)を使用しておりますので、これについて以下に個人的に注意している点を記載します。

欧文認識のモードをドイツ語に選択をしておく必要があります(そうしないと、ウムラウト等を認識しません)。
読み込む段階で、原文と照らし合わせてチェックをしておく必要があります。チェック機能が付いているとはいえ、最後は人間の目で確認するしかなく、これがかなり面倒です。しかし、コピーを綺麗かつ丁寧にとっておけば、認識上の誤差をかなり防げるかと思います。

(4) ワード文書として取り込まれた外国文献を読む。
 TextBridge PROの場合、自動的にワード文書に置き換えてくれます。
その後、まずは文書の体裁を全体的に合わせていきます(セクションなどの区切りを取り除く、文書のサイズを統一化する)。その際、文字サイズを大きめにして(12ポイントなど)、スペースを半角から全角に変換(検索・置換システムを利用)すると、ロボワードで読みやすくなります。

※ 近時は、外国文献のデータベースが充実してきています。これを利用できれば、取り込み作業などのストレスが一切かかりませんので、ロボワードのみで作業が進むことになります。

(5) ロボワードを起動し、外国語の文書を読んでいきます(ここからが大変便利です)。
 マウスのポイントで単語を指し示すだけでその意味が出てきます(単語を打ち込んだり、コピー・ペーストする必要がありません)。これによって、専門の辞書のみでほとんど読み進めることが可能になります。
なお、英語の場合にはリーダーズ・プラスのロボワード版が出ていますが、ドイツ語の場合には(私が見た限りでは)「新アクセス独和辞典」しかありません。ぜひ、独和大辞典クラスのロボワード版が出ることを期待しています。

(6) その他
 少々面倒ではありますが、私は日本語の全訳または要約を同時に作成しています。
パソコンの画面上でワードの画面分割を行って、ドイツ語の文章を上半分で読みながら、下半分に和訳を打ち込んでいきます。

4 おわりに

 以上のように、私なりの外国文献の読み方をご紹介しました。
ただ、私が個人的に便利だと思うだけであって、誰しもが良いと思うものではないでしょう。他にもっと良い方法があるかもしれません(その際には、ご教示いただければ幸いです)。あくまでも外国語が専門ではない人が専門的な外国文献を読まなければいけないというときに、その負担が少しでも減ると言う意味で、多少なりとも寄与できる部分があればと思う次第です。