LiVE REPORT2001
2001/08/18 & 19 @WTC Open Air Stadium (stage:1)& Intex #5 (stage:2)
Day:1 2001/08/18
9:00開場だったが,8:30に着くと,既に開場を遠巻きに入場待ちの列が延々出来ており,その列は2,3kmくらいになっている.なにせ,開場入り口から「トレードセンター前」駅へ.「トレードセンター前」駅からZepp前まで,そして,その列は「コスモ・スクウェア」駅へ続き,とぐろを巻くように開場前の方向へ続いていく.結果的には入場までたっぷり50分くらいかかった.次回以降.早めに行くことを薦める.
ステージ1は普段駐車場に使用されていることもあり,地面は砂と小石ばかり.ステージに向かって左右にはモニターが設置されているのだが,ここがBブロックにあたる.ステージはAブロックの前にしかない.これでAブロックもBブロックも同一料金というのはいささか酷いようにも思える.フロア後方には人が集まりにくいということもあり,基本的にビニールシートを敷いてくつろぎつつ見たい場合にはフロア後方で...ということになっている.
JITTERIN' JINN
ステージ1のオープニングを務めたのは日本のJITTERIN' JINN.80年代後半の邦楽のバンド・ブームの時に出てきたバンドで,女性2人(vox.とds.)を要する4人組(当時のメンバーからはベースが抜けてヘルプが入っているようだった).昔は(今思えば)ローファイっぽい,ポップ・ロックをやっていてそれが独特な個性ではあったのだが,その後ブーム自体が去ったことを受け,彼らもシーンから消え去ってしまっていた(後にABCラジオ「誠のサイキック青年団」にて,奈良のコンビニやラーメン屋での目撃情報があったのだが...).しかし,98, 99年頃からインディーズ・シーンでは相当人気があり,ライヴではダイヴしまくりらしい,という情報はキャッチしていた.しかし,何故,今になってJITTERIN' JINNなのかが理解できなかった.しかし,ステージに現われたバンドの姿には昔の面影はなく,豹変しているのであった.春川嬢は金のモヒカンになっている!そして音が出るとまたとんでもないことに.そう,JITTERIN' JINNはパンカビリー・バンドになっていた!!最近の曲を中心("やけっぱちのドンチャラミー"はTV番組で流れていたので知っていたが,後は知らない曲ばかり)で,高校生くらいと思われるボンズやお嬢から手拍子が上がる.最前列あたりではヘッドスイムをするボンズもちらほらと出てくる.朝10:30からヘッドスイムできるボンズをうらやましく思う.しかも,往年の"夏祭り"やラストの"プレゼント"では口々に一緒に歌っている...僕自身12, 3 年振りに聴いたこれらの曲は当時とは違うパンカビリー調のアレンジが施されているものの基本は原曲のまま.それを当時は小学生か幼稚園くらいであったであろうボンズたちが歌う姿には正直感動した.地道に活動を続けていくことで,こうして新しいファンを獲得しているバンドの姿に心を打たれた.当時のバンドが軒並み消滅していった中,最後に笑っているのは彼らだけだった.
SKRAPE
ステージ1の2番目に出てきたのはUS産ラウド・ロック系バンドのSKRAPE.音的にはMACHINE
HEADタイプのモダン・ヘヴィネスで,今年デビュー・アルバムをリリースしての初来日公演となった.初来日でほとんど曲を知らないファンを相手に客が乗りにくい午前中(11:30くらい)にどういうパフォーマンスを見せるか,というのは非常に重要だ.ここでバンドが血気迫るパフォーマンスを見せられれば,MACHINE
HEADタイプと一括りにされた中から抜け出すことが出来るからだ.
残念ながら知名度不足が否めず,前方のブロックには半分くらいしか人が集まらない.それにも関わらず,バンドはかなりタイトで抜群の安定感である.その上に載るvox.はミックス,音響の関係もあり,聞き取り難いのだが,全力で歌い上げていたところには好感が持てた.
バンドはやるべきことをきちんとやり,自分達のことを日本のオーディエンスに紹介できたとは思う.次作でどんな強力な楽曲を持ってこれるかで勝負がつきそうだ.
ステージ1が韓国のkoRnという評判のSEO TAIJIだったので昼食タイムに.と同時にステージ1から大量の客が移動を始めた.みんな考えることは同じなのだ.今日はここで休憩を入れないと他で休むのは難しいのだ.(会場に残ったのは韓国からツアーで来た彼のファンがほとんどだったのではないか?)あまりにも多くの人が撤収するので少し彼のことが可哀想にも思えたのだが,移動中にチラッと聴こえた曲を聴いて「こんなんじゃ無理して聴く必要もないか」などと納得してしまう.ここでステージ2へ移動.
ステージ2はステージ1から歩いて5分強のビルの中にあり,こちらはエアコンの効いた涼しい環境でライヴが見れるのだが,既にフロア後方では爆睡している人たちもちらほら...キャパは大体2,500くらい??(Zeppより気持ちでかいか?)
COSMIC ROUGH RIDERS
期待の若手なのだが,ステージ1との兼ね合いでラスト2曲しか見れず.そこそこのパフォーマンスを見せており,客もそれなりに盛り上がっていた.いづれは単独来日公演が行われるだろう.じっくりフルに見てみたかったバンドだ.(ステージ2)
REEL BIG FISH
いろいろバタバタしていたこともあり,昼食(結局WTC 2Fのマクドに...)を取り終えてステージ1に現場復帰するもラスト2曲.食事しながら漏れて来る音を聴いていても感じたのだが,夏の昼間に野外で見たいバンドだ.素直に楽しい.ご陽気!ラストのA-HAのカヴァー"Take On Me"はすっかり彼らの持ち歌と化している.(この曲も大半のオーディエンスはオリジナルを知らないんだろうなぁ...)残念ながら現時点では1枚もアルバムを持っていなかったりするので,買って来よう,そして,次回の来日公演には参戦したいな.
THE MAD CAPSULE MARKETS
本日2組目の日本のバンド.すっかり固定ファンが出来ていることもあり,かなりフロアを埋めている.数年前にもてはやされたディジ・ロックは,今聴くと時代遅れ臭をぷんぷんと放っているのだが,彼らは上手い.安心して見ていられるあたり,さすがに貫禄が違う.ファンも熱く答えており,ロックの魅力が凝縮されている.中でもラストの"MIDI Surf"での盛り上がりは相当なもの.しかし,気のせいなのか,バンドからかすかに「お仕事ライヴ」っぽい雰囲気を感じたことは付け加えておきたい.(ステージ1)
THE CULT
まさかの復活劇を遂げたゴシック・ロックの創始者のひとりTHE CULTがステージ1に光臨!しかし,客の期待は今ひとつで,フロア中央はガラガラになっている.やはり80年代中期に全盛期を極めたものの,解散.その後各メンバーも十分な活動が出来ていなかった(ds.のマット・ソーラムがGUNS 'N ROSESに参加したことを除いて)ので仕方ないのかもしれないのだけど...セットは今年リリースされた復活アルバムからの曲と往年の名曲("Fire Woman"やら,"Sanctuary"など)を上手くミックスしており,バンドが現役である姿と伝説とを上手く提示出来ていたのではないか.出演順にイマイチ納得していなかったであろうアストベリーは「SLIPKNOTがイチバンか?」,「MARILYN MANSONがイチバンか?」.「違うだろ.THE CULTガイチバンだ」と煽る.しかも終始,水などをオーディエンスに向けて投げ続ける.この熱いパフォーマンスを受けて,初めは後方で様子見だった(あるいは隣のビルで涼んでいた)客たちが前方のブロックに集まってくる.フェスに来る客は正直だ.バンドが良いか悪いかに正直に反応する.そう,THE CULTというバンドはどうすれば彼らのことを受け入れてもらえるかを知っていたし,それを存分に出来たのだ.このあたり歴戦の兵だ.ラストで閉めるアストベリーの口から「オオサカ,イチバン」という言葉が出たが,彼らはそんなオーディエンスの反応を自分達の手で勝ち取ったのだ.
OCEAN COLOUR SCENE
ヘヴイめのバンドが多いDay:1のステージ1において,一番メロウなOCSがステージに上がる.ステージ2から移動してきた人たちも多いのだが,その後のZEBRAHEAD,SLIPKNOT目当てのファンが既に前方のブロックに移動してきている.そんな中,彼らはリラックスしたいつもの雰囲気でステージに上がり,彼ら特有の英国臭のするどこかノスタルジックなトーンを聴かせる.フロア前方からメンバーに向けての声援が送られるあたり,いかにもこのバンドだ.そして,"Profit In Peace"が始まる.良い曲だ.そんな中,あちこちから手拍子が自然に沸き起こってくる.周りを見てみるとSLIPKNOTやZEBRAHEADのTシャツを着たボンズたちが手拍子を叩いているのだ.彼らにとってはOCSというバンドはまったく守備範囲外だったろうし,ここで初めて聴いたのであろう.そんな彼らから暖かい手拍子が送られる姿.ジャンル分けにこだわりすぎて,素晴らしい音楽に対して目を瞑ってしまうこともなく,目の前で提供される良質の音楽に素直に反応できる多くのファンの姿を見て胸が熱くなった.バンドはその後,"Traverers Tune","I Am The News"から"July"へと進み."Day Tripper"などのカヴァーも入れつつ,ラストは名曲"The Day We Caught The Train"で閉められる.夕方の空を彼らの美しいメロディが満たした.
ZEBRAHEAD
メジャーからの2枚目(通算3枚目)のアルバムで日本市場での人気を確保した彼らがこの位置で出てくる,というのは発表当初は正直以外にも思えたのだが,オーディエンスの彼らの迎え方を見る限り,あながち不適切でもなかった.セットはメジャーからリリースされた2枚「Waste
Of Mind」,「Playmate Of The Year」アルバムからが中心で,ファンも十二分に曲を覚えており,ステージ上とファンの間のインタラクションが盛り上がりに花を添える.途中,メンバーの汚れっぷりは日本語MC(「オマンコダイスキ!」だとか,「チンポデカイ!」など.ダレが教えたんだ??)や,犬のぬいぐるみを使った「正しい性行為の仕方」レクチャーに現われ,それらはファンにも大受けだった.しかし,既にこの段階で20分弱のスケジュール遅れが発生しているらしく,「あと5分しかないって?マッハでやれば5分で3曲できるだろ?」みたいな冗談まじりのやり取りがステージ上で繰り広げられているあたり,どれくらいのファンが把握できていたことやら?この日のハイライトのひとつとなったラストは,予想通り"Playmate
Of The Year"で締めくくられるのだが,この曲に入る前のMCがバンドの姿を表していた.
「日本語をいろいろ教えてもらったので,ここで俺らがみんなに英語を教えてやるよ.
友達の家に泊まった時,朝起きたら,おばさんが朝食を用意してくれた.
こんなとき,どう答えたらエエかわかるか??」
「Thank Youって?」
「違うよ.Fuck You!って答えるんだろ.そうすれば,わざわざ朝食まで作ってくれてありがとう.感謝してます.って意味になるからさ!」
そして,曲のコーラスのところで,"Fuck"って中指立てながら歌わせた彼ら.典型的なおバカなアメリカ人を演じきって(天然なのかも?)おり,ファンも最高潮に達していた.
SLIPKNOT
先に出たZEBRAHEADでフロアはほぼ満たされていた所にさらに観客が集まりつづけ,もはや立錐の余地もない.熱烈なファンと怖いもの見たさな人たちが集まり,彼らのパフォーマンスを予想すると,危険な香りが十分周囲を満たしている.そんな中,ステージに現われたホッケー・ユニフォームに身を包んだ9人はその最初の一音からブルータルなパワーを全開に持っていくのだった.「オマエラ,トベ!」,「サケベ!」「アバレロ!」と煽り続けるフロントマン,コリーにファンは夢中だ.中盤,一旦その場にファンを座らせてからジャンプさせたのだが,フロア内には限界を超えたファンが詰め掛けており,後方ではしゃがむスペースがないのであった.セットは基本的にメジャー・デビュー・アルバム(通算2枚目)「Slipknot」からの曲だが,途中,リリースを控えた「Iowa」からも"Disasterpiece","New Abortion"といった曲がプレイされるのだが,これらもファンの慣れ親しんだ曲と同様に熱烈歓迎を受けていた.既発曲の中でも"Spit It Out"での盛り上がりは常識を超え,フロアは死者が出てもおかしくないほどのカオス状態と化す.ヘッドスイマーたちをさばきながらモッシュに興じるキッズたちは口々に熱唱するサマはまさに圧巻.新曲をやる前のMCで言っていた「オレたちのニュー・アルバムは4日後にリリースされる.これがメタルなんだ!最高だ!」.そう,これがメタルなのである.すっかり消滅してしまったように思えたヘヴイ・メタルだが,ここにメタルは生き残っていたのだ.SLIPKNOTというバンドがそれを見事に体言していたのだ.
MARILYN MANSON
SLIPKNOTのパフォーマンスが終了し,若干客が減ったところで登場してきたMARILYN MANSON.実績を踏まえるとヘッドライナーとして彼らが出演するのはおかしくはないのだが,どうも今この瞬間のバンドとしての勢いはSLIPKNOTに譲るところがあるのはファンの目にも明らかだった.正直,「Antichrist Superstar」アルバムでの躍進劇は強烈ではあったものの,以後同系統のアルバムをリリースしてきたあたり,バンドとしても自分自身のパロディーに陥っているところは苦々しく思っているのではないだろうか?そんな中,竹馬に乗り,ステージ上にセットされた上昇する台に乗り,10mは悠に上るマンソンは巧みに疲労困憊のファンたちを盛り上げようとするのだが,ほんの気持ちだけだが,盛り上がりに欠ける.さすがにファンも限界なのか?セットは主に,「Antichrsit Superstar」からの曲が中心で"Irresponsible Hate Anthem"や"Beautiful People"などでは素晴らしいライヴ・パフォーマンスを魅せる.また,「Holly Wood」からの"Disposal Teens"やすっかり持ち歌になっている"Sweet Dreams"など,手堅いところを見せてくれる.ショウとしてはよくできたものだった.そう,「ショウとしては」である.ロックの持つプリミティヴな魅力は希薄で,完成された見世物のショウとしての要素しか見受けられない.僕自身初来日(96年3月@心斎橋クアトロ)以来のライヴだったが,彼らが人気を得ていくにつれ,なくしていったものがあるように思われる.
DAY:2 2001/08/19
2日目は昨日とは少し客層が変わり,軽めの人たちもやってきていることもあり,少し和んだ雰囲気もある(ところどころにはRANCID目当てのキッズ達も見られたのだけど...).また2日通しで来てる人たちは僕も含めて少し疲れが残っているようだ.しかし,今日は,THE LIVING ENDとRANCIDがきついくらいでなんとか乗り切れるのではないか.
TOKYO SKAPARADISE ORCHESTRA
この日の朝イチを飾るのは東京スカパラダイスオーケストラ.開場前に並んで待っている間にサウンド・チェックをしていた彼ら.午前の早い時間からテンションを高く持っていく努力をしただけはあり,良いライヴを見せてくれた.彼らのアルバムは持っていないのだが,フジロック出演時のライヴなどを見ていたので,問題なく楽しめた.インストものということもあり,リズム中心なので,楽しく踊る,という観点では敷居が全然低い.会場のファンも一番楽しんだのは,"ルパンのテーマ"だった.やはり,あのメロは日本人だったらダレでも知ってるからな.また見てみたいバンドだ.(でも,アルバムは買わないけどね.)
KING ADORA
「打ち込みテクノ + グラム + パンク」っていうありそうでなかったサウンドの新人バンド.やろうとしていることは正しいのだろうけど,それをやるには各メンバー(特にフロントマン)の力量不足は否めない.ほとんど無名ということもあり,開演前から前方のエリアには人は少なかった.しかし,モヒカン頭のドラマーがステージに出てくると,RANCID目当てで集まっているファンにとっては絶好のターゲット!少しだけ前方に人が集まってきたのだが,1曲目を始めた途端に撤収を決め込まれる.前方の一群からはメンバーへの声援が起っているのだが,「お手並み拝見」だった会場を埋めた(といってもスカスカではあったのだが...)人たちの心を掴むことは出来なかったようだ.腰を低く落として,上を見ながら声を絞り出すような歌い方をするフロントマンは確かにアヤしげで磨けばバけるかもしれないのだが,既にファンになっている人たちという,閉じた世界しか相手に出来ないくらいの力量のなさを見る限り,まだまだ成長していってもらわないとならない.こういうフェスは腕組みしてる人たちをどうやって掴むか,というのが最大のポイント.それがバンドの成長と成功という重要な要素を担うのに,彼らはそれに失敗した.今後の成長に期待したい.
MxPx
この日3バンド目に登場したパンク・バンドMxPx.Tooth And NailからメジャーのA&Mに移籍するも先日ドロップしたとのことで,バンドとしてどういう状況にあるか若干心配もされた彼らだが,相変わらずのパンク・ロック・ソングを聞かせてくれ満足だ.よく見るとvox.のマイクはUSJxxライドT,メッツ新庄Tと並んで「関西3大はずかしいTシャツ」のひとつ,マリナーズ,イチローのユニフォームを着ている.なんでそんな野暮ったいものを?と訝るもMCで一発氷解.「俺たちはシアトルから来たMxPxだ!」そう.彼らはシアトルのバンドだったのだ.なるほど.客入りもそこそこでパンク・キッズたちにはその後のバンドに備えての準備運動も兼ねての盛り上がりを見せていた.一度単独公演を見てみたい気にさせられた.
RIZE
本日2組目の日本のバンド.チャーの息子のバンドだそうだが,オヤジの音楽性とは相異なりモダン・ヘヴィネス・サウンドを聴かせる.ほぼ満員となったファンを前にして,充実したパフォーマンスを見せてくれたのだが,何かが足りない.演奏も上手く,安心して見られるのだが,それだけ.何か惹きつけるものに欠けている.MCで「ガイジン・バンドにまみれて,日本代表として頑張る.」みたいなことを言っていたのだが,そういうガイジン・コンプレックスみたいなのを持ってること自体,既に負け犬っぽいんだけど...
THE LIVING END
この日のハイライトのひとつ.単独公演を全ツアした友人と一緒に行ったのだが,彼女が言うには「なめてかかってたんだけど,予想を裏切って,激しかった」と.まさしくその通りになり,前方のエリアに集まるは血気盛んなボンズたちだ.ステージに上がったオーストラリアからの3人は詰め掛けたキッズ達の熱い声援に迎えられ,彼ららしいパンカビリーを聴かせる.それに答えるようにファンのテンションも1段,1段と上がっていく.「4,5回,日本に来たけど,今日が一番でかい会場なんだ」と素直に喜びつつも,大きなステージをものともせずに飾らなく彼ら自身を聴かせ,ファンの心を掴んだまま,一気にラストまで疾走していく.中でも2ndからのシングル曲"Pictures In The Mirror"での騒乱ぶりには熱いものがこみ上げてくる.そう「これがロックなんじゃボケー!」
INCUBUS
USからのインテレクチャル・オルタナ・バンドINCUBUSがこういう形での初来日となったショウ.正直,客はそれなりに埋まっているのだが,盛り上がるのは前方の一団のみ.大方の客は「名前は知ってるんだけど,曲を聴いたことがない」ようで,腕組みしながら,様子見のような人たちだ.そんな僕もミニ1枚しか持ってなくて,ネット・ラジオなんかでは曲を耳にするんだけど,程度ということもあり,「お手並み拝見」状態だった.途中からトライバル・ドラムをぶら下げて(マーチング・バンドのドラムみたいな格好),ステージを動きまわりながら歌うフロントマンは魅力的.彼を支えるメンバーもタイトな演奏を聴かせ,惹き付けられるショウだ.砂埃が舞う夕方の野外には少しそぐわないところもある(出来れば,ライティングなどに凝ったより視覚的なショウを希望)のだが,これだけのパフォーマンスを見せられれば十分満足だ.これだけのバンドを上手く日本市場にプロモートできなかったレコ社の失態や如何に?しかし,ショウの中盤あたりから客の口々に上がっていた「エエなぁ.このバンド」などと言う言葉からも次作でどれだけ伸びて行くかが楽しみだ.
CIBO MATTOのセットは体力的にも限界だったため,となりのWTCで涼みながら,うとうとと過ごす.
RANCID
そしていよいよRANCID登場.朝から来襲していたRANCIDのTシャツを着たキッズたちはMxPx,THE LIVING ENDで既に十分なウォーミング・アップを済ませており,いつバンドが出てきても十分だ.満員に膨れあがった客足に出遅れ,中央付近でしか見れないことになり凹むものの,そのあたりも十分血気盛んな若人で満たされ,ここもカオスになることを確信し,なんとか折り合いをつける.この2日のイベントも後は流しつつ楽しめるので,ここではじけておくしかないことを決め込み,現われたバンドを迎える.1曲目から期待通り,ディスオーダーとはこのことと言える程の状態に陥り,スラムダンスに興じる.ヘッドスイマーを裁きつつ,水や茶を被りながらの夕暮れ.相変わらず風がきつく,ステージ上ではモヒカンが90°回転し,3時の方向を指している.それでも掻き毟るようにギターを鳴らし,腹の底から声を振り絞る貫禄のパフォーマンスで,あまり曲を知らない僕でも一度聴いたら直ぐに覚えられる曲を矢継ぎ早にかます.そんな彼らにファンも十二分に答えていた.
PRIMAL SCREAM
結論から言うと,「営業ライヴ」だった.「お前ら元気ないで.」とMCで言われても「これじゃ盛り上がれんよ.」って.割と幅広くやったものの,どうも熱が込められていないようで,ファンも「楽しむ」というよりは「見てる」と言うところが心持強いようにも思える.それでも終盤,「Vanishing Point」からの"Kowalski"ともなれば,否が応でも歓声が起る.そしてラストはMC5の"Kick Out The Jams"だ.PRIMALファンにはイマイチ馴染みがないようで,どう楽しんで良いものか?というノリにくそうな人たちもチラホラ.オーソドックスなロック・クラシックスが出てくるとは正直以外だった.しかし,これはこれでアリなのかも.でもなぁ.どうもテンション低いんだよなぁ...
BECK
2日に渡るフェスのラストを飾るBECKのセットはセット・チェンジに延々40分強を要し,客も疲れにはかなわず,少しばかりダルめになっているのがわかる.そんな中,ステージ中央にはバルーンが膨らまされ,そこに映像が映し出されると「いよいよ.待ってました」,とばかりに溢れ返った観客から歓声が起る.僕自身正直なところ,疲労の限界だったが,楽しませることに長けた彼のパフォーマンスを見せられると「燃え尽きておくべし」と再度ギアを入れる.一旦終了したかと思わせておいた後の2度のアンコールを含めて約80分のパフォーマンスの中でも"Where It's At"や"Minus"などは白眉.一度単独公演を見たくさせられた.
サマソニ2日を終えて...
出演したミュージシャンはロック/ポップ・フィールドを中心に多岐にわたり,また彼らも良いパフォーマンスを見せており,概ね好感が持てた.ただし,興行運営上には問題があった.まず,会場の砂埃が酷い.客が暴れだす,或いは風が巻き起こる事態となれば,砂埃でほとんどステージが見えなくなってしまう.次に飲食.隣のWTCビルにはマクドナルド,スターバックスといったお店が入っているのだが,会場内の屋台がしょぼい.夏のイベントとしては必須の水分もWTCビル内のローソンはコンビニにこんなに人が入るのか?というほどの人でごった返す.一方,会場内の屋台ではぼったくり価格(300円くらい)でペットボトルが販売されている.また,スポンサーについたABCはステージの合間には自社製作番組のCMがスクリーンに映し出される.なにせ,会場内でのABC企画の抽選会の景品が「探偵ナイトスクープ」の出演者のサイン色紙など...音楽を聴きに来てるのに大阪くさいお笑いノリはいかがなものか.関西のダメな面がこうやって現われてしまっていた.
来年度にはもう少し,会場の雰囲気づくりなどの運営面を踏まえて,客が楽しめるフェスにして欲しいものだ.