LiVE REPORT2002

SLIPKNOT w/ AMERICAN HEAD CHARGE

2002/03/21 @Zepp Osaka

 本来昨年の11月に予定されていたが911の関係で延期になっての仕切りなおしの本公演.大阪はゼップ*3公演という相当な規模.しかも最終日のこの日は早々にソールド・アウト(キャパ2180人)になっていた.このようなバンドの公演にオープニング・アクトとしてつきたいと思うバンドは数知れず.その中から今回オープニングに起用されたのはリック・ルービンが売り込んだAMERICAN HEAD CHARGE.

 開場30分前に到着したところ既にそこには相当数のファンが集結.平均年齢は20歳そこそこ.だいたい男8女2くらいの割合.横が川になっておりなおかつ強風が吹いている中,大半のファンはTシャツ姿だ.気合の入り方が違う...と思いきや,開場前にロッカーに荷物を預けるシステムになっていたわけです.しかも,キーチェーンなどの金属製のアクセは禁止というのもよくできている.正直ファンを信用してないんだなぁ,と思うわけですが,これはこれで正しい選択でしょう.

 18:00丁度にステージに上がったAMERICAN HEAD CHARGEは既に大阪3日目ということで,ある程度雰囲気にも馴染んでいるよう.またファンも3公演ともに来ているような人もいるらしく一緒に歌詞を歌ったりしている姿がフロア前方にて見られる.音楽的には,ありがちなモダン・ヘヴイネスで取り立てた新規性は見受けられない.強いて挙げれば,この手のバンドにしては珍しくキーボードを大々的にフィーチャーしていることか.ストラップで肩からぶら下げたキーボードを弾く姿は往年の小室哲哉を思い出してしまう自分が情けなく思えたり...このキーボードが奏でるフレーズはゴスだったりするのだが,そのネタもとがMARILYN MANSONだったりする浅はかさ.ブラストビートが格好いい曲もあるのだが,約50分のセットを見ても夢中になれるほど素晴らしいものは感じられなかった.このスタイルの音楽がすっかり市場に認知された後に出てきただけあって,質は高い.でも,個性というものはあまりない.このバンドのやっている音楽スタイルは好きだけど,能動的にこのバンドの音楽を聴きたいとは思えない.
 ヘアメタルもオルタナもそうだったが,この程度のバンドが出てくるようになったらジャンルとして潮時だと思う.結局残るのはそのスタイルを始めたオリジネイターたちだけなのかな.

 ステージ最前にロゴがあしらわれた幕が降りてきて約30分のステージ・チェンジが行われる.盛んに大工作業の音が聞こえる中,BGMはカントリーやらポップやらが流れる.正直このバンドとしては以外な選曲.

 19:25.通算3枚目(無いことになっている1枚目を含む)のオープニングと同じように"515"が流れる.予想していた通り,この曲から"People = Shit"というステージのスタート.フロアは既にここでケイオス状態になっている.各地でモッシュ・ピットができ,ヘッド・スイムするキッズも大量に発生.しかも口々にコーラスを熱唱する.バンドの持つ勢い,ファンの情熱みたいなものが感じられ,ステージとフロアの双方の関係が良好でお互いにエナジーを送りあうかのような理想的な状態だ.セットは「SLIPKNOT」,「IOWA」の2作からなり,ファンも十分に馴染んでいる楽曲で固められ,盛り下がるようなところがない.相変わらずコリー(vox.)は「トベ!」,「サワゲ!」と日本語MCをかまし,ファンもそれに応える.ヘッドスイムをするボンズを捌きつつ,その場で飛びつづけ,モッシュ・ピットに飲み込まれつつのライヴだが,バンドも客に最後まで楽しませられるように,速めの曲の後にはループを使ってブレイクの期間を入れる.このあたりさすがである.ひたすら煽り続けて爆走するだけではなく,すべての客に最後まで楽しんでもらおうという精神が買いだ.ステージ両サイドにパーカッションのふたりがいるわけだが,このパーカッションのライザーがセット中上下動を繰り返す.この姿は圧巻だ.ステージのギミックでは勿論,ショウの中盤のジョーイ(Ds)のソロだろう.一旦上昇したドラム・ライザーが前方に90度倒れる.更にそこから反時計回りに90度回転.この状態でバカテクぶりが発揮される.さすがにこういうものを見せられると凡百のドラム・ソロはカスだと再認識する.普通はドラム・ソロって休憩以外の何物でもないわけだが,こういうのを見せられると文句の付け所がない.「ここで3日やったが,今日が最高な日にしてくれよ!」というMCに応えるかのようにフロア中が暴れたおす."Disasterpiece"や"Left Behind","My Plague"などが再現される.ステージ上で9人の漢たちが熱いパフォーマンスをし,楽曲にはそれぞれさまざまな要素が組み合わせられているし,歌詞も強烈だ.フロアは完全な混沌をなしている.そう圧倒的な情報過多になっている.あまりにも大量の情報に満たされ,なかばパニック気味な状態に置かれることで楽しめるのかもしれない.本編ラストの"Spit It Out"では昨年のサマーソニックでも行われた「シャガメ!」の番.フロア全体が一斉に飛び上がる姿はさぞかし壮観なのだろう.参加している本人はわかりにくいのだけど...アンコール2曲を含む約80分のセットだったが,密度の濃い充実した内容だった.これほどまでに素晴らしいライヴは早々何度も見れるものではない.本物のバンドの実力というのを十二分に見せ付けられた.大絶賛.