LiVE REPORT2002
2002/02/24 @On Air Osaka
近年のレコード会社再編を受けて,設立されたUMGのショーケース・ライヴの第2弾.前回は東京公演のみだったものの今回は大阪でも開催されることになった.ショーケースというだけあって,日本での知名度がないバンドを安い料金(4000円)で見せて,バンドの認知度を上げる,という狙いだ.通常のプロモ来日として,ヴォーカルとギターだけ呼んで,TV,雑誌取材だけで済ましてしまってはありきたりすぎて,その他大勢から抜きん出ることができない.それなら,バンドとして呼んでライヴをファンに見せる方が効果がある,ということなのだろう.
今回は,今回が4度目の来日となるMxPxと初来日となるGODSMACKのカップリング.まったくタイプの違うバンドの組み合わせ,その結果は如何に?
開演20分前の15:40に会場に到着するも,人がいない.整理番号の立札があるのだが,「整理番号301〜」というのが最後.その後ろには,「招待券」という札が.ここまで入らないのか?確かにMxPxは昨年のサマーソニックで見てからそれほど経っていないわけだし,GODSMACKは日本ではさっぱりなことを考えると,動員が厳しいのは想像されたのだが,ここまで酷いとは...定刻16:00を迎え,客入れが始まる.運営スタッフのONE
to ONEのバイト君が「だいたい150人くらい」と言っている.ますますやばそうに思え,フロアへ.整理番号15番だったのだが,僕が入ると,フロアには一人だけ.この規模(1000人くらい)の会場で,2人きりになったのは初めてだ.ますます不安になるのだが,ステージには,スクリーンが下りていて,ANDREW
W.K.の"Party Hard"のヴィデオが流れている.その後もSUM41,MUSHROOM
HEADなどのヴィデオが流れる.開場後,開演までの待ち時間を使って,滅多に観ることがないヴィデオを流して,プロモを行うあたり,さすがにレコ社主宰のライヴ.ヴィデオはこの公演のために用意されたもので,ヴィデオが流れるSUM41などからのコメント入りのもの.客入りが気になるので,後ろを振り返ると,イベント名のバックドロップが会場後方に下がっている.
開演時間の17:00が近づくにつれ,人が増えてくる.最終的な客入りは700人強くらいか?どうも大量にタダ券で入っているみたいだ.ウドーのビート・クルーで来てるような人には見えないし.どこでタダ券配ってたか気になるなぁ...
MxPx
定刻17:00を少し回ってバンドが登場.僕は,昨年の「サマーソニック」で観たときに結構良い印象を持ったのだが,その後アルバムはチェックしないまま.このバンドは,そういうことにこだわらずに楽しめるので問題ないか,と.ステージ向かって左から,ギター,ドラム,ヴォーカル兼ベース(各人,僕の持っている96年のシングルの裏ジャケの写真とは全然違ってメジャー・アーティストという風格が感じられる)という非常にオーソドックスな3ピース.各個人は決して卓越したプレイヤーではないのだが,客の乗せ方など,ライヴで叩き上げてきたところを感じさせる.キッズの日常生活を歌った曲は,キャッチーで一度聴くと,次のコーラスからは口ずさんでしまうほど.こういった等身大の魅力がこのバンドの人気の秘密なのかもしれない.「よくインタビューで『日本のファンに一言』って言われるんだけど,それって困る質問なんだよね.そういうときは,こう言うんだ.『Tomorrow Is Another Day』って」と言って始まったラスト前のこの曲は,そんなキッズに向けたアンセムの様で,思わず熱くなる.フロア左端の方で,前方と後方を分ける柵にもたれながら,見ていたのだが,思わず,ここでは熱くなり,タートルを脱いでTシャツになろうとするのだが.既に後1曲とわかっていたので,ここは我慢.フロア前方では,ヘッドスイムに興じるキッズ達から盛んに声があがる.やはりこれだけの内容だと黙って観てられない.ラストで,会場のあちこちから沸き起こった「パンク・ロック・ショウへようこそ!」と歌うとおり,まさしく最高のパンク・ロック・ショウを見せてくれた.約40分のショウを終えて,17:42バンド退場.
MxPx退場後,再びスクリーンが下りてきて,GODSMACKのプロモ映像(『ウッドストック99』のライヴや,米国でのヘッドライナー・ショウでの盛り上がりぶりや,プロモ・ヴィデオ,WWFのレスラー主演の映画『スコーピオン・キング』:この映画に楽曲を提供するそう.だから,会場前に映画のポップがあったわけだ.)が約20分流れる.映像の最後,「GODSMACK COMING SOON」,「GODSMACK ON STAGE」という文字が出ているのだが,会場の雰囲気はとてもこれからライヴという風には思えない.MxPxが終わってフロア後方に人が移動し,前方はかなりスペースがあり,座り込んでいる人が半分くらいいる.バンドの登場を心待ちにしているのは前方3列分くらいの人ぐらい.あとは,口々に「どんなバンドか知らんし.とりあえず観てからや」と思案中の人だ.レコード会社が彼らを日本で売るために企画したイベント形式のライヴで,企画自体でかなりの負担があるにも関わらず,東京では,MxPxだけ観て客が引いてしまい,ノリの悪さに「Fuck!」と叫んでしまったヴォーカルのサリー.米国で人気を確立しているだけに横綱相撲をしてしまい,失敗してしまった.そんな後の大阪公演どうなることやら.
GODSMACK
18:05暗転し,バンド登場.いきなり,「トーキョー!」と叫んで出てきたヴォーカル.ドラムに指摘され「オーサカ!」と言い直す.どうもギャグではなかったらしい.様子見の客は更に引く.ヘヴイめの楽曲でMxPxとは打って変わり,それまで楽しんでいた客が冷めていく.よくお笑いなどで,客の受けが悪いときに,『寒い』という表現を使うが,今がちょうどその言葉の通りだ.エアコンが効いていてフロア全体が涼しいのだ.そう,僕はこのとき,『寒い』という言葉の語源を体感しているのだ!!1曲目が終わるが,フロアからの拍手はまばら.お情けっぽい.全米であれだけ勢いがあるのに日本ではさっぱり.その状況が今,目の前に提示されている.2曲目のストンプ・チューン"Sick
Of Life"が始まると,フロア後方から人が移動してくる.このような飛べる曲になると,ファンが楽しめるのだが,ミドル・テンポでヘヴイネスを強調した曲では,さながら『休憩タイム』だ.2枚目のアルバム『AWAKE』からの曲が若干多い目だが,ショー・ケースという意味合いからもベスト・ヒット的.個人的には,"Awake"や"Bad
Magick"といった曲が生で聞けたのは良かった.バンド自体,東京公演の失敗を受けてか,日本市場ではゼロからのスタートであることを再認識したのか,非常に精力的だ.盛んに日本語で話し掛け,客を掴もうとする.後方で腕組みしてる客に対して,「マエ エ コイ!」と日本語で煽る.それでも前方に移動してきたのは数人だったけど...僕の前では,ボンズが一人でピットをやっている.エアコンは全開で寒い状態は変わらない.それでも,ショウが進むにつれて,拍手が大きくなっていく.本編ラストあたりで,「お前らと会えてよかった.楽しんでるぜ.オーサカ.また,日本に戻ってくる!」とMCが入ると,客席から歓声が起る.何も起っていなかったこのバンドがライヴで良いパフォーマンスを見せることで,確実にファンを掴んでいく.良い光景だ.動員や,ステージに上がってきた直後の客の反応を見る限り,もう二度とこのバンドを日本で見る機会がない,と思ったのだが,これは正直言って以外だった.
本編終了後,アンコールの声が沸き起こり,登場してきたバンドはミドル・テンポめの曲をやる.これでちょっと盛り下がる.どうも,今日のファンには,ミドル・チューンはダメらしい.このバンドはMETALLICAのブラック・アルバムからの影響が色濃いミドル・チューンに魅力があると思うのだけどなぁ...ラストで,「これが最初のシングルだったんだ」とMCが入ると,誰かが,「Whatever!」と声をあげる.ちゃんと最初からチェックしていた熱心なファンがいるんだ.曲の途中で客席に,「歌詞覚えているヤツいるか??」と手を挙げさせる.7,8人のボンズと娘たちが挙げられる.GODSMACKのTシャツを着た子たちだ.こういうロイアル・ファンに対してイタズラ行為が待ち受けているとは...そう,ヴォーカルのサリーが歌いだしたのは,「"We
Are Not Gonna Take It!」そう.あのヘア・メタル・バンドTWISTED
SISTERの20年くらい前のヒット曲だ.マッチョなおっさんを駆逐していく熱いヴィデオのあの曲だ.これには面喰らってGODSMACKのTシャツを着た子がステージ・ダイヴして逃げる.続いてはQUIET
RIOTの"Cum On Feel The Noise"だ.しかもこの曲を歌いこなすわけだ.若いキッズが.なんで知ってるの??そして,トドメは,PANTERAの"Walk".この曲だとステージ上のボンズも余裕で歌える.コーラスではマイクをシェアして歌うあたり,このバンドが大物とは思わせない.この後,再び"Whatever"に戻って終了.約70分.
バンドを売るためにレコ社主導でここまでできるとは!周りの人のお膳立てに対してバンドが見事に応えたあたり,さすがだ.是非,このような企画を継続してやっていって欲しいものだ.
ちなみに,サンプラーCD,ポスター,ステッカーなどいろいろもらえるのでかなりお得なので,悩んだら行った方が良いか,と.
あと,終演後,会場前でワーナーもステッカーとかをくれた.ということはワーナーもこういうイベントをやる計画があるのかな??