LiVE REPORT2001

RADIOHEAD w/ CLINIC

2001/09/29 @Osaka Castle Hall

 同一セッションからの2枚のアルバム(「KID A」,「AMNEISIAC」)に伴う来日公演の初日.当初発表されていた翌30日の公演の追加日程で,直前まで「残席あり」と告知されていたものの会演前には大阪城公園は多数のファンの姿で埋め尽くされ,動員の不安はとりあえず解消される.
 開場時,プロモーターから「本日の終演予定は22時を超えます.」との発言がある.大阪城ってそんなに遅くまでやれるの?と半信半疑ながらもプロモーターが言うのだからそうなのだろう.
 前座CLINICがステージに上がる19時には既に客入りは十分.アリーナは最後方まで椅子が並べられ,スタンド席も後方一番上の「あそこから見たら何もかもがガチャガチャのフィギュア・サイズの人が動いてるのが見えるくらいなんだろうな.」という「そこに人を入れてまで稼ぎたいのか?」というような席が空いているくらい.十分大入りだ.
 さて,オープニングのCLINICはユーロ・ツアーもオープニングを務めており,また,日本でもToy's Factoryからデビューした直後のバンドだそうだ.彼らがゲリラ兵の様に口をマスクのように布で覆ったいでたちでステージに上がった...しかし観客はほとんど立ち上がらない.ぐるり見渡して立ち上がっているのは5%くらいの人.一応礼儀として立ち上がってそれなりに楽しんでいるフリくらいはしてあげないといけないような気にもなるが,僕も様子見で,良いパフォーマンスを見せれば席を立つことにする.
 で,これがダメなバンドだった.あくまでもメインとなるのはvox.の一人だけで後は彼の友人なのだろうか,紛いなりにもデビューしてしまって,友達だから解雇も出来ないし...みたいな感じでメンバーでい続けているような人たちでプロ意識の欠片も感じ取ることは出来ない.アリーナ・クラスの観客を見るのが怖いのか,稚拙な演奏技術のため,おぼつかない自分の指先を黙々と見つめプレイする.そんな中,メイン・マンのvox.は1曲ごとにギター,ピアノ,ピアニカ!!を交互に持ち替え/移動する.しかし,このvox.も大したことがなく,完全の自分の世界で閉じてしまっていて観客には何も伝わらない.ほんの一握りの彼らのファンから声援が飛んではいるのだが,大阪城ホールってこんなにも静かにまるで映画でも見るように静まり返ることもあるんだ.と関心するくらいくだらないパフォーマンスだ.1,2曲目くらいでは曲が終わるとそれなりにお愛想の拍手くらいは起っていたのだが,約30分のセットを終えた彼らにはそのような観客のやさしさは与えられなかった.「貴重な時間を無駄にしてくれてありがとう.もう二度とこの地を踏むことはないだろう.」

 セット・チェンジを終え20時にRADIOHEADがステージに上がる.事前にツアーのセットを見ていたこともあり予想していた通りに"The National Anthem","Hunting Bears"からスタート.MCでは「コンバンワ」だとか,「ハヤク」などの日本語を交えつつ"Morning Bell"へ.このような名曲を惜しげもなく矢継ぎ早に繰り出せるあたり作曲能力のあるところ.見ていて早くも感極まるとはこのことだ.観客の反応はかなり静か目でじっくり曲を聴いて,曲が終わると拍手が起る,という形.このような深みのある曲をやるバンドなのでこの反応は僕としても満足だ.
 ステージ上には基本的には何もなく,ステージ両脇には,後方の座席の人用のスクリーンが設置されている.このスクリーンは終始,ステージ上の注目すべきポイント(指の動きだったり,苦悶するトム・ヨークの歌唱だったり...)をモノトーンの映像で映している.これが秀逸なデキで,好感が持てた.
 現在のシングル曲である"Knives Out"を始めるにあたり盛大な歓声を期待したように思えるトム・ヨークには答えられなかった観客だが,曲が終わると拍手が巻き起こる.このあたり観客とのコミュニケーションが上手く取れていないようだ.これはボソボソと近くにいる人としゃべるような声でしゃべるトム・ヨークのしゃべり方が悪いのか?それとも英語力のないチャラいファンが多いせいなのか?少なくとも僕は終始,「トーム!!」と高い声で声援を送る女性ファンには辟易させられた.ミュージシャンは聴かせたい曲があるからプレイするのだし,伝えたいことがあるからMCをするわけだ.それなのに,こういうヤカラが無意味な声援を送ることをミュージシャンの行為がスポイルされるのは甚だおかしい.何故このような明白なことに気づかないのだろう?
 わりと最近の楽曲を中心に進んできたセットも中盤あたりから「OK Computer」からの曲が増えてくるとここ2作から急増したファンと昔からのファンというのが明確に区分されだした.僕自身「KID A」から真剣に聴き出したのでそれまでの音源はブートなどでチェックした程度.そのため「どういった内容の曲なのか?」っていうことに気が行ってしまい楽曲を楽しむ,ということが十分出来なかったのが残念だ.一方,旧来のファンは存分に楽しんでいる.素直にうらやましく思う.
 メイン・セットは"Paranoid Android","Idioteque","Everything In Its Right Place"と怒涛の流れで締めくくられる.エモーションをほとばしらせる熱いパフォーマンスはまさに圧巻.
 1回目のアンコールのハイライトはまさしく"Lucky"!アンコールに入って地味目の楽曲が増えてきた中,ラストへ向けてのアオリも十分.2度目は"Fake Plastic Tree"から"How To Disappear Completely"だ."How To Disappear Completely"前に「CLINICに拍手を!」と言うのだがあくまでもパラパラと拍手が...しかし繰り返してCLINICへの声援を要求するトム・ヨークのご機嫌を損ねてはならないので仕方なく拍手が起る.この光景は...
 ゆっくりと余韻を味わうかのように終了したセット.時計を見ると22:00ちょうど.
 
 感情の奥底まで浸透してくる楽曲を存分に味わうことができた.次回の来日公演は是非とも複数公演参戦したいものだ.