LiVE REPORT2002

FUJI ROCK FESTIVAL 02

2002/07/26, 27 &28 @Naeba Ski Resort, Niigata

当日撮影写真は近日アップ予定!!

序論:ツアー・会場内のつくり

 日本最大のフェスとして定着したFRFも今年で6回目.残念ながら今まではTV放送でしか見れていなかったところ.タイミング良く観れることになり,参戦決定.
 苗場までの移動,3日に渡る公演期間,資金(チケット代38,000円,オフィシャル・バス・ツアーでのバス代24,000円,宿泊5,000円台から)と敷居はかなり高い.
 バス・ツアーが用意されているが,これはかなり強行スケジュール.前日の深夜出発.ほとんど眠れないまま初日の朝に到着.最終日のメイン・ステージ終了後にバスが出発.翌日到着.とは言え,車移動もまた厳しい.臨時電車で対応してもらえるのが良いかなぁ,と.このあたりJRに期待したいところ.
 一方,宿もまた少々難あり.オフィシャル・スポンサーになっている苗場プリンス・ホテルは料金が高い上,会場まで遠い.オススメと思われるのは入場ゲート付近にあるホテルまつやでしょうか.近いし,料金も安そうなのでここを狙いたいところ.また,早めに押さえないと苗場・浅貝地区の宿が埋まってしまう.田代,みつまた,越後湯沢地区での宿へは無料のシャトル・バスが運行しているが,これは深夜2時で終わる.そのため,23時以降のテクノなフジロックを楽しむためにはなんとしても苗場・浅貝地区での宿確保が必要(テントという選択もありますが,これは相当しんどいみたい).で,僕はみつまた地区のペンションに泊まれた(料金:5000円強/日)のですが,まずまずですかね.ただ,どこの宿もですが,本来はボーダーを相手にしていることもあり,冬場から4ヶ月くらい閉まっていたところが夏季で特別に2,3日だけ営業するわけですから,至らないところも...例えば,夏向けのエアコン設備の不備(でも,実際には窓を開けて寝ると朝は寒いくらいだったりするので元々要らない地域だとも言える),室内の清掃不行き届き(ピンポイントで営業するだけに人手が足りないのはやむなしかも.本来,こういうところは冬場,住み込みのバイトを雇ってまかなうスタイルでしょうから),商品の回転具合(道端にある自動販売機から出てくる賞味期限切れのジュース!!).普段の生活では当たり前のことを横に置いておくことが懸命.しかし,そういう状況にも関わらず,現地の人たちは良い人です.ボード,スキーと冬場しか儲からない地区に夏場でも稼げるビジネス・チャンスだからなのかもしれないですが,親切この上ないです.越後湯沢から苗場までの地区をタウン・ジャック状態になっているわけですが,その地区内の人は,観客をゲストとして扱うように接してもらえるわけです.いかつい兄ちゃんみたいな人に対しても親切丁寧に案内してくれるし.とかく疎まれがちな人に対してもちゃんと接することが出来るとは,さすがか,と.

 会場の外には深夜のみ営業する新人バンド用のステージROOKIE A GO GO,サーカス(バイクのトリック・プレイが見れた)などが,会場内には,ゲートから順にRED MARQEE, GREEN STAGE, WHITE STAGE, FIELD OF HEAVENと4つのステージが並ぶ.その間は山道になっておりかなり歩き難い.しかも出演バンドの兼ね合いではかなり混雑し,ステージ間の移動に要する時間はまちまち.比較的空いている時間だとRM -- GSが5分,GS -- WSが15分,WS -- FOHが10分くらいか.またGS終演直後からRMがスタート,逆にRM終演後GSがスタートという風になっているので比較的近くにあるこの両ステージを交互に見るのは容易なのはかなりポイント高い.

 飲食ですが,通常のフェスに比べてかなり充実.大抵こういうところではヒモみたいな焼きそばとたこ焼き,お揚げ1枚のみのきつねうどんと相場が決まっているわけですが,ここはアジアを中心とした料理ですね.カレーだけでもタイ(3件),パキスタンなどいろいろ.その他,シシカバブーやカルビ,もち豚(ブタを塩コショウだけで味付けしたもの:これが一番オススメ),タイ・ラーメンなどいろいろ.ミスドやピザーラもあるものの折角ならこの手のエスニックなものを食べておきたいところ.料金はほとんどのものが500円.量は少なめ.ドリンクはオフィシャル・スポンサーにハイネケン,ポカリ・スウェットがついていることもありそれぞれ500円/500ml.200円/500ml.しかし今年は納品量が少なく最終日にはどちらも売り切れ,会場内をドリンクを求めて彷徨うことに...ということで見かけたらとりあえず買っておいた方が良いのではないか,と.冷たいものを求めて買うのではなく,常に何か飲めるものを持っておく,ということに重点を置くべき.

 会場内にはゴミ箱が各地に設置されており,分別回収を実施.かなり精力的にNGO団体が活動していることもあり,このあたりは関心する.逆に,これくらい言わないとゴミで溢れ返るからなんでしょう.しかし,ゴミ対策をしている「A SEED」というNGO団体だけでなく,他の平和とか人権関係のNGO団体も参加していて,GSのセット・チェンジ中に彼らの主張も繰り広げられる.こういう機会でないと彼らの考えなんて伝わらないだろうから,そういう場が設けられるのは良いことではあるのかもしれないけど,正直なところうざいかも.SMASHも「A SEED」を利用してゴミ対策を打つだけで済ませたかったのにいろいろな尾ひれがついて困ってるんじゃないかなぁ,と邪推する.こういうNGO団体の主張って「良いこと/きれいごと」なところがあって,面と向かって批判しにくいだけに,「イヤ,そういう場ではないから参加しないでくれ」とは言えないでしょうし.

Day:1 2002/07/26

AMERICAN HI-FI @GREEN STAGE

 初日11:00,メイン・ステージのオープニングを務めたのは元VERUCA SALTのDs.ステーシー・ジョーンズがVox. + Gをやっているこのバンド.昨年デビュー後,ショウ・ケース来日の実績があるものの東京公演のみ(この模様はライヴ盤としてリリース済み)だったこともあり,僕にとっては初めてのこのバンド.ある程度のキャリアを積んだミュージシャンだけにそこそこのものは期待できるはず.僕がいたステージ中央の前から2列目付近はすっかりスラム・ダンスの中心になっており,ヘッド・スイマーをさばく外国人セキュリティーのオヤジたちが「日本人もこんなに暴れるもんか!」とびっくりしつつにやけている姿がほほえましいところ."Surround"や"Another Perfect Day"といった名曲がこんな昼間から出てくると堪らない.中でもファンが待ち望んだのは"Flavor Of The Weak".コーラス部分は観客からの合唱で支えられる.これにはバンドも満足そう.ここでは秋にリリース予定の2枚目のアルバムから"Beautiful Disaster"と"The Breaking Song"(ワーキング・タイトルかも)が披露.前者は速めの曲で往年のスリージーなRnRタイプのバンドがやりそう.後者はタイトル通り終わってしまった恋愛関係を歌った少々ヘヴイな曲.どちらもそれほど良い出来とは思えないところ.このバンドの魅力はポップでキャッチーなメロディー・ラインだと思うのだが,それはこれら2曲からは聞き取れず.バンドとしては次作が正念場かもしれない.約45分のセットが終了

THE PERKINSONS @RED MARQEE

 RMへ移動すると,11:50からのショウがスタートした直後.オールド・スクールなパンクで70年代のUKの臭いが残っている.観客はかなり少なめ(キャパ5000人のRMの半分くらいの入り)ながらエナジェティックなパフォーマンスはかなり好感が持てた.単独公演を観たいとは思わないし,アルバムを欲しいとも思わない.でも,こういう場でなら楽しめるバンドかな.

東京スカパラダイスオーケストラ @GREEN STAGE

 THE PERKINSONS終了後,GSへ移動.12:30からスタート.きつい日差しの下,単純に楽しめるバンド.曲を知らなくても楽しめるのが彼らの魅力.芝生に座り込んで見てるだけで楽しい.半分休憩しながら見ていたもののルパンを演りだしたら踊りに行くつもりが結局やらず仕舞い.残念.

移動途中でKING BROTHERS @RED MARQEEをちらっと観るがいまいち.

THE JEEVAS @GREEN STAGE

 元KULA SHAKERのクリスピアン・ミルズのバンド.3人編成で他の2人はほとんど無名.デビュー・シングル"One Louder"を出したばかりで,しかもその曲が地味すぎてつまらない.THE JEEVASというバンドというものが十分に確立されていない時期でのライヴということもあり,少々本格的に動き出すにしては早すぎるという気がしたが,それもあたりでセット・リストはKULA SHAKERの楽曲が比較的大きな比重を占めており,客もそれを求めている.中でも彼らがカヴァーしてヒットさせた"Hush"などが一番の盛り上がり.客が求めているものはKULA SHAKER.彼らが提供するのはKULA SHAKERの曲.しかもそこには全盛期のKULA SHAKERというバンドが持っていた魅力はなく,さながらカヴァー・バンド.縮小再生産していってフェード・アウトしてしまうミュージシャンが多い中,彼もこうやって埋没していくのだろうか.雲行きはかなり怪しい.

再度移動し,PEALOUT @RED MARQEEを覗くがそれほど魅力的には思えず.

ALEC EMPIRE @GREEN STAGE

 ちょくちょく来日するアレック・エンパイアですが,正直なところ,ATARI TEENAGE RIOTが出てきたときのインパクトはもう既になくなっていて,マンネリな打ち込みをバックにエフェクトをかけたマイクでアジりまくるというスタイルは限界かな,と思っていたものの実際にステージに上がった彼はある種,神々しいところもあり,単純に格好良い.熱烈なファンの気持ちもわかるところ.ちなみにサポートはATRのニック・エンドウら.

食事をとりながらROCK'N'ROLL Gypsies @RED MARQEEをちらっと観る.日本の実力派ミュージシャンたちのプレイで安定感があり聴いていて気持ち良いのだけれど...それだけ.

VOREDOMS @GREEN STAGE

 BOREDOMSではなくてVOREDOMSなわけですが,ねちっこいインストをだらだらとプレイするだけ.芝生で横になって見ていたら眠くなりそうに.半分も我慢できずにギヴ・アップ.最後まで決まらずにいた枠でMUSEを繰り上げにしてここの位置に急遽出演決定となった,という経緯からもあまり期待出来ないところでしたが,その通り.あまり楽しめるものではなかった.

TELEVISION @RED MARQEE

 伝説のパンク・バンドと言われる彼ら.各地で彼らのアルバムは「名盤」と呼ばれて賞されていることもあり,気になっていたものの今まで手が伸びず仕舞い.そんな人たちが僕も含めて多いようでフロアの半分強くらいを埋めたオーディエンスに対して提供されたのは今,パンクという言葉から想像される音からは相当離れており,ある種ソフト・ロックのような耳障りの良い楽曲.それを察して「元祖・パンク」という肩書きにつられて着たオーディエンスは軒並み撤収.バンドの演奏もあまり艶がなく,淡々と展開していき盛り上がり難い.それでも兼ねてからのファンは1曲ごとに拍手が送られる.伝説ってその全貌がわからないままの方が良いのかも.MUSEに備えて途中退出.

MUSE @GREEN STAGE

 先頃リリースされたライヴ盤「HULLABALOO」を聴き,その魅力に開眼した直後の絶妙のタイミングで彼らのライヴを見れる,という機会.アルバムを聴いた感じではRADIOHEADにMARILYN MANSON的な要素を盛り込んだバンドという印象で,じっくり聴くライヴだと思っていた.そんな予想は裏切られ,いきなりモッシュ・ピットに.まさかまさか...選曲もほぼそのアルバムと同様で,かなりの盛り上がりで満足の行くものだった.翌日出演のPET SHOP BOYSへの敬意からかまさかのカヴァーも披露.暴れることもじっくり噛み締めるように聴くことも出来る,このバンド.単独公演も観てみたい,そんな気にさせられた.

BLACK REBEL MOTORCYCLE CLUB @RED MARQEE

 いかついバンド名から察するに熱い男のロック魂みたいなものを想起させるものの実際には普通のロックで,CLUB QUATTROくらいの規模のところで観たら楽しいかもしれない.途中入場・途中退出.

THE PRODIGY @GREEN STAGE

 なぜか大阪では公演をしないこのバンド.わざわざ観に着たわけです.初日観たかったバンドはMUSEと彼ら.どのバンドも基本的に予告された開演時間にはスタートしていたところ,彼らは散々引っ張って15分以上押し.観客もしびれを切らしていたところ,21:47分頃スタート.今まで地元ではライヴをやらないし,TV中継でも放送されないということもあり,まだ観ぬバンドだったわけだが,感想は「なるほど」くらい.観れていなかったバンドということもあり,期待が大きくなりすぎていたようで正直なところ,「普通に凄い」というくらい.体力的にかなり厳しいところだったが,"Smack My Bitch Up"や新曲"Baby's Got A Temper",そして"Firestarter"などを演られるとほとんど動けない体が再度動き出す.力づくでオーディエンスを引っ張っていくスタイルである種,横綱相撲.さすが貫禄勝ち.

JUNKIE XL @RED MARQEE

 JUNKIE XLと言えば,昔の"Saturday Teenage Kick"のメタル・ギターにヒップ・ホップを載せるイメージがあったものの,知らないうちにがらっと変わっていて普通のテクノになっていた.そう石野卓球のそれのように.サンプリングしたネタも「行っとけ行っとけ」みたいな日本語ネタなどでこのあたりも卓球的.彼が昔やっていたスタイルもバンド形態で同じことをやる人たちが増えてきてしまったので路線変更したのかもしれないですが,移動先も人が既にやっている道ということでここでも彼らしさ,というのが確立しにくそう.聴いていて楽しいのだけれど,先が読めてしまうし...彼らしい何かがあれば...器用なだけでは...プロモーターが卓球的なものを求めたのかもしれないが,彼には何か味付けをしてもらわないと...半分くらいで撤収.

DAY:2 2002/07/27

少年ナイフ @RED MARQEE

 知らないうちに2人になっていた少年ナイフ.まったくファンではなく,アルバムを買おうとも思わないわけだが,この環境では十分楽しめる.オルタナの始祖の1つとまで称されたわりにはあまり魅力が感じられなかったからだが,こういうフェスの雰囲気では,気楽なところもあり,途中から観だしたものの最後まで付き合うことに.ラストの「パワーパフガールズ」の曲っていうのがなんともまぁ.

渋さ知らズオーケストラ @GREEN STAGE

 大量の人数(50人くらいか?)がステージに上がっており,その姿自体に圧倒される.ファンクやジャズや民謡みたいなものをやっていて,ダンサーもいるという構成で誰が何をプレイしているかもわかり難いし,どういうスタイルなのかもわかりにくい.そういうことはどうでも良いのかも知れない.分析的に観るのではなく,ただただ圧倒されたまま楽しむべきバンド.こういうフェスのお祭り騒ぎ的な状況だからこそ楽しめる人もいるのではないか.ただ,午前中から観るには少々テンションが高く,すぐにお腹一杯になってしまうところ.というか,飽きる.次が控えているので早めに退散.

HUNDRED REASONS @RED MARQEE

 この日のテーマは「RED MARQEEに出演する今が旬の新人を観る」だったのだが,その一つが彼ら(他には,THE MUSIC,THE WHITE STRIPES).「AT THE DRIVE-INに対するUKからの回答」と評するのが適切ではないか.ひたすらエモーショナルでエナジェティック.モッシュの中に思わず飛び込んでしまう程.一方でじっくり聞かせる曲もあり,というところ.剛球一直線ではないところがさすが."I'll Find You"や"Dissolve"など約40分のステージはかなり充実.日本盤ボーナス・トラック曲まで披露(「日本盤だけに入ってる曲なんだ.君達だけが一番良いのを手に入れるんだ.」などとは,通常のボーナス・トラックって捨て曲なだけにあまり現実を言い当ててはいないような...).彼らは明らかに今この瞬間を捕まえたバンドではあるもののその背景にはAT THE DRIVE-INなどの2000年代のものや90年代のオルタナ色も,その前の80年代のヘアメタルも(なにせオープニングのBGMはかつてブライアン・バートンルイス氏が「もう二度と聴くこともないだろうと思っていた」というEUROPEの"The Final Countdown"!!)上手く消化していて,それらの要素が見事に混ざり合っている.今後にかなり期待できるバンド.要注目.

MIDTOWN @WHITE STAGE

 2日目の昼にして初のWHITE STAGEへ.普通のパンクなわけでこちらよりもサマソニに出演する方が自然な気も少しする.そんなこともあってか,動員は寂しいところ.半分くらいか.聴いていて楽しいし,恋愛などをテーマにした内容はキッズの共感を呼ぶのだろうが,正直なところ,子供向けっぽいところが無きにしも非ず.質は高いのでそれなりには満足できるのだけど...途中から観出して3曲くらいで撤退.

LOVE PSYCHEDELICO @GREEN STAGE

 THE MUSIC目当てでRED MARQEEへ移動する道すがら横目で5分くらい見る.さすがにこういう歌謡曲みたいのになると人が多い.でもあまり盛り上がっているようには見えず.単にはしゃぐような音ではないからなのだろうけど...何も感じ取ることが出来ない曲をダラダラとやるだけで,魅力は皆無.このようなものを良いと思う人の感性を疑ってしまいそう.CMなどで流れていたこともあり聞いたことがある程度で,正直場違いな気が...って,そのCMってスポンサーのポカリ・スウェットのCMに使われていたわけだ.そういうことなのか??

THE MUSIC @RED MARQEE

 散々ハイプされていたこともあってか,入場制限がかかった模様.10代のメンバーがやっているシングルしか出していないバンドにも関わらずこれほどの動員を記録するとは.勿論お目当てはシングル曲の"The People"なわけだが,この曲は勿論のこと,さまざまな要素を見事に自分達のものとして会得していることもありかなり評価が上がった.ハイプではなく本物かもしれない.以後注目して見ていきたい.

TRIK TURNER @GREEN STAGE

 THE MUSIC終了後移動したため少し出だしを見逃してしまったのが残念なほど良いパフォーマンスを見せていた.動員はかなり少なめで前方のエリアにも余裕で移動可能.最初は後ろで座りながら見ていたものの,あまりの良さに途中から前方へダッシュしてしまう.THE LINKIN PARKのメンバーが「今好きなバンド」などと褒めちぎったことからそこそこ話題にはなっていたわけだが,LINKIN PARKと比較してかなり黒人によるオーソドックスなヒップホップの要素が濃い.それは黒人MCと白人MCのツープラトン構成になっているからだけではないだろう.サウンドそのものがより本物のギャングスタ・ヒップホップに軸足を置いている.いかついサウンドと危険な歌詞の割には暖かいMCがやさしさを感じさせたりする.単独公演となると難しいかもしれないけれど,また何かのフェスで見てみたいバンド.

THE DILLINGER ESCAPE PLAN @WHITE STAGE

 まさかこのバンドがこのような大きなステージで観られるとは...どう考えてもRED MARQEEで十分なはずなのに...バンドがステージに上がる前にブライアン・バートンルイス氏がMCとして登場.氏は「僕のイベントで呼んだときにはソールド・アウトになって...」などと言っていたものの,クアトロ公演ではタダ券をばら撒いていた記憶が...(しかもMCまでした割に彼はショウの中盤で撤退してましたが...)バンドの方はそれまでの雰囲気をぶち壊すほどの破壊力を持ち,前方の客もそれに応えるかのように暴れ狂い,砂埃が舞い上がっている.少ないながらも献身的なファンに支えられて,バンドは短いながらも熱いステージを見せた.「凄い」以外には良い言葉が出てこない.

WHITE STAGEから戻ってくると忌野清志朗&矢野顕子 @GREEN STAGEが終わるところ.相方は少し異質ながらもいつもの清志朗先生のパフォーマンスではあるか,と.

BILLY BRAGG AND THE BLOKES @RED MARQEE

 食事をしつつRED MARQEEを覗くとやっていたこのバンド.英国出身で80年代後半には来日公演も行っていたそうだが,まったく知らなかった.事前にFRF出演者一覧でチェックしたときに気にはなる存在ではあった.やっていることはあまりにも普通で特別魅力があるわけでもない.また逆に,全然ダメか?というとそうでもなく,それなりに聴いていられる.この中途半端さが食事をしながらダラダラ観るには向いている.それでもRED MARQEEの1/3も埋まっていない客からはその数からは想像も出来ない拍手が起っている.好きな人は好きなんだろうなぁ.でも,「マーチャンでオレのライヴ盤を売ってるんだ.これはアジア地区でははじめて販売されているんだ.買ってくれ」などとステージ上から営業するのは生活感がにじみ出てしまい,マイナスではないかな.

井上陽水 @GREEN STAGE

 なぜ彼がここに出ているかは不思議ながらも,歌う井上陽水を見ることはここを逃せば一度もないかもしれない,ということで観る.RED MARQEEから出てきたのが遅かったこともあり,既にショウはスタート.いかにも彼らしい楽曲の中,3曲目(?)にはなんとPUFFYの"アジアの純真"をカヴァー.彼独特の歌いまわしで原曲の持つポップさが失われ,かなり異質なムードを作り出す.それは観客に好意的に迎えられた.大ネタも出たこともあり,RED MARQEEへ移動開始した直後,今度は彼の名曲"リバーサイド・ホテル"をプレイ.しまった.もう少しいてれば良かった.

THE WHITE STRIPES @RED MARQEE

 なんとしても見なくてはならないこのバンド.早めから移動していたことが功を奏し見事フロア前方でその姿を拝むことに成功する.フロアは開演前から人が詰め掛け,入場規制が入ることに.ステージ上向かって右に弟,左に姉という布陣で,完全な2ピース構成.JSBXにも通じるドラムとギターによるねちっこいサウンドにかなりひきつけられる.ただただ格好良い.このようなバンドがまだまだ埋もれていたなんて,各地,掘り起こしていきたいところ.残念ながらあと10分くらいのところで,PET SHOP BOYS目当てでRED MARQEEを後にすることに(.結局,PSBのステージ・スタートが押した関係上,最後まで見れていたような...).次回は単独来日公演を観たいバンドだ

PET SHOP BOYS @GREEN STAGE

 80年代をリアル・タイムで過ごした人にとっては忘れられないこのユニット.それがまさかのFRF出演.どんな構成になるかと思いきや,バンド形態.THE CHEMICAL BROTHERSのようなデュオのみでステージに上がると思っていたところ,ロック・バンド然としたステージング.20分近く押してスタートしたショウは新作「RELEASE」アルバムからの"Home And Dry"から.同作からの1stシングルのこの曲は往年のPSB節があり楽しめる.そして2曲目はまさかの"Being Boring".セールス的に不調だったこともあり,ここからは取り上げないと思っていた「BEHAVIOUR.」アルバムからのこの曲には少々度肝を抜かれる.しかし,その後再び新作からの現在のシングル"I Get Along"に移行し,少し盛り下がる.この曲にはどうも彼ららしさが感じられず聴いていてつまらない.少しトーン・ダウンしてしまったものの中盤からは往年の佳曲が繰り出されるグレイテスト・ヒッツ."West End Girls","It's A Sin","Left To My Own Devices","Domino Dancing","Always On My Mind","Go West"など矢継ぎ早に出てくる.そのどれもがオリジナルの魅力を残しつつも現代風にアップデートされている.ほんの少しのアレンジを施すだけで15年程度の年月を重ねた楽曲が蘇るということ自体に彼らがやってきたことの先見性を感じるし,またそのようにアレンジできること自体,彼らが現役のミュージシャンであることを実感する.そして何より,THE CHEMICAL BROTHERSや石野卓球がやっていることを15年も前からポップという世界でやり続けてきた彼らの凄さを痛感した.

THE CHEMICAL BROTHERS @GREEN STAGE

 PSBが終わり,RED MARQEEで行われているパティ・スミスを観たくなるも今移動すれば戻って来れないであろうくらいに人が集まっているGREEN STAGE.仕方なく彼女のライヴを見逃すことになり,じっとTHE CHEMICAL BROTHERSの登場を待つ.ステージ中央に設置されたスクリーン.その下には宇宙船を模したブース.そうお約束のTHE CHEMICAL BROTHERSのステージ・セット.期待通りにショウはスタート.しかし,早い段階で"Block Rockin' Beats"をエア.この曲のために待っていたにも関わらずあっさりとやられてしまうとやや拍子抜け.これで気持ち的には70%くらい満足してしまったものの,もうひとつの山"Boy Girl"を待つ.それがエアされるのはかなり後半.踊りつかれて疲労感から軽いトランス状態に入った気持ちよさの中,飛び出したこの曲で再度レヴド・アップ.ラストまで疾走."LOVE IS ALL"というアナクロなメッセージを残しつつ,2人はステージを去る.

忌野清志朗,玲葉奈&GAZ MAYALL @通路

 噂には聞いていたもののここまで観れていなかったストリートでのゲリラ・ライヴ.THE CINEMATIC ORCHESTRAを観ようとRED MARQEEへ移動する道すがら,なにやら人だかりが...そう20人くらいが集まって取り囲んだステージ(というか,ずーっと素人が座り込んでいたであろう通路脇)にいるは忌野清志朗先生その人.マイクもなく,地声で歌うは"Stand By Me".横でギターを弾くのは誰かわからない.謎の白人男性.曲が変わって,即興でジャムり出したところ,清志朗のアドリヴの歌詞は「パティ・スミスを観たかい?最高だっただろ?」などとかなりいいかげん.しかしそれがまた盛り上がる.一通り歌ったところで,最前列から仮設ステージに引っ張り上げられたのは玲葉奈.拍手で迎えられるも清志朗先生には勝てず,盛り下がる.アドリヴの歌詞も苦しそう.清志朗に助けを求める.再度清志朗がステージを切り盛り.その間時間かかってアンプなどのセッティングしていたのはギャズ・メイオールなる人物.清志朗による紹介では「ジョン・メイオールっていう偉大なギタリストの息子のギャズだ」とのこと.本人は「最終日の一番最後に演奏するのだけど,僕の人生で最高のステージだ」と語る.場所の雰囲気を読める良い男.しかし,ギタリストとしては新鮮味がなく,普通にプレイするだけ.ということで,撤退.

THE CINEMATIC ORCHESTRA @RED MARQEE

 ということで,本来観たかったこのバンドのステージへ.音楽的にやっているのはジャズ.それもかなり洗練されている.バンド名を音で体言するかのように西洋の下町の映像が脳裏に浮かぶかのよう.アダルトな雰囲気を作り出しておりかなり秀逸.清志朗の他にもこんな素晴らしいステージが同時にほんの150mもはなれていないところで繰り広げられているとは...

DAY:3 2002/07/28

ゆらゆら帝国 @GREEN STAGE

 まったく予備知識なし.しかし,観客はそこそこ前方に集まっている.人気あるのかな?ステージに上がったのは日本人3人組.出てくるなり,「やって良いですかぁ?」なんだこのMCは?で,始めたのは爆走気味でヘヴイなロック.なるほど.やる気ないフリして熱いロック・バンドなわけだ.しかし,音楽的には熱いだけで何も伝わってきていない.乱暴な言い方をすればメインであるGREEN STAGEに出るに値しないバンド.

 この間に今まで一度も足を踏み入れていない奥の方のステージへ.最奥のステージではPolaris @FIELD OF HEAVENが始まったところ.GREEN STAGE付近から空いている時間に移動しても20分弱を要する.そんな僻地まで足を運ぶもののありきたりすぎてがっかり.

 GREEN STAGE目指して戻ってくる過程にてDATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN @WHITE STAGEがちらっと聴こえてくるが,それほど気に止まらず移動.

QUEENS OF THE STONE AGE @GREEN STAGE

 まさかの来日.しかもこの大きなステージに!案の定,客はガラガラ.余裕で前方へ移動できる.前方に集まっている客もデイヴ・グロール(NIRVANA -->FOO FIGHTERS)がドラマーとして叩くということで集まっている.これは止む無いだろう(.実はTELEVISIONのステージ開演前に彼とすれ違っただけでも嬉しかったですからね.僕も).元KYUSSやA PERFECT CIRCLEというメンバーがねちっこいロックを聞かせるのだから堪らない.前方で暴れる客はほとんど曲を知らない.しかし,夢中になっている客の人数よりも彼らのアルバムの日本盤のセールスは少ないんじゃないか,と邪推できてしまう.しかし,口々に「格好良い」という言葉が...延々インプロヴァイズしたジャム・セッションで閉めた彼らは着実にファンを開拓した.これだからこそフェス出演の意義があるんじゃないか.

THE HIGH-LOWS @GREEN STAGE

 元BLUE HEARTSなわけですが,TVでライヴを観たことがあったので気にはなっていた.一度は観ておきたいと...そんな彼らをフロア前方でかなりの人数が待ち構えていた.僕は幸いにして前方の芝生で最後までじっくり観戦する.一度は聴いたことがあるようなないような曲を繰り出すバンドにファンは熱く応えている.健全なライヴ・ハウスのあの雰囲気が大自然の下繰り広げられている.ショウ中盤で「なんとかペースを保つことが出来ました」とか,「ロックが好きな生活を送っていると,普段,ロックが好きなのはオレだけなのかな,と思うことがある.でも,今日,ここに来てそうじゃないってわかった.」とか,「死ぬまでロックが好きでいたい.でも死んだら終わりだね.」などと意味深な言葉が出てくる.これには今年に入って頻発しているミュージシャンの訃報を受けると重い言葉だ.そんな彼は終盤,おもむろにパンツを脱ぐと黒いガムテープで前張りを仕込んでいる.これってWOODSTOCK '99で脱いでしまったフリーがこの後出演することへの前フリなのか??そんなバンドは「相談天国」で閉める.歌謡曲とロックの境界線上にいるバンドだが,アティテュードはロック.

THE ELECTRIC SOFT PARADE @RED MARQEE

 2人が中心メンバーでサポートを入れてバンド形態で行うステージ.客は半分強といったところ.しかし,明らかにライヴ慣れしていない.機材トラブルというか扱い慣れてないのかでバズってる音をさせることが度々.しかも1曲終わるとチューニングしてばかり.テンポが悪いことこの上ない.曲自体はそれほど悪くはないのだが...アルバムを聞き流す分には十分なのだろうけど,じっくり聞かせるほど練れていないし,ライヴではそれをだらだらと分断しつつやられては退屈この上ない.もう少したたき上げてこないと...

CHAR @GREEN STAGE

 こんなところにヴェテラン・ギタリストが出てくるとは.最近ではRIZEというバンドをやっているドラ息子のオヤジとして知られている彼.大自然を満喫しつつ芝生の上で居眠りを決め込みつつ横になると素晴らしいギターが.さすがヴェテランだけはあり,絶妙のトーンを聞かせている.しかも「往年の...」という文脈で語るのではなく,現役ミュージシャンであるのを実感させるプレイはさすが.そんなプレイをちらちら覗きつつ居眠りをする贅沢.まさに格別.こういうフェスの楽しみ方はフジならでは.

THE COOPER TEMPLE CLAUSE @WHITE STAGE

 Charのプレイを30分ぐらい聞き,込みそうだったTHE COOPER TEMPLE CLAUSEへ.しかし,アナウンスではWHITE STAGEは既に入場制限しているとのこと.まさか...と思い,スケジュールを観るとその前のSUPER CARなる日本のバンドで込んでるそう.強行してWHITE STAGEへ向かう.途中,GREEN -- WHITE間の橋では大渋滞.延々30分以上の時間を要してステージに到着.客が移動終了するのを待って5分押しくらいでスタート.すると!!いきなりロックなエナジーがステージを満たし,思わずサブイボが全身を襲う.そうあの素晴らしい音楽を叩きつけられたときのあの感動が全身を襲う.これだからロックが好きなんだ,ということを再度実感する.バンドは日本語で再度来れて嬉しいなどと感謝の意を伝える.かなりたどたどしいながらもこの気持ちは伝わる.荒々しいフロントマンを筆頭に各メンバーは持てるエナジーをぶつける.マイクスタンドをドラムライザーにぶつけ,ギターは木っ端微塵に砕け散り,ドラム・スティックは30mくらい後方に居た僕の真横を通り過ぎていく.熱い楽曲を熱いパフォーマンスで表現するロックの持つ魅力そのものが詰まったステージ.まだまだ観たい.そう思わせるバンド.

 GREEN STAGEに戻ってくるとBRAHMAN @GREEN STAGEが最後の曲をプレイ.ドラマーがヴォーカルを兼ねる編成だと知る.若い子たちは前方で夢中になっている.残念ながら最後ちらっと見ただけだったので魅力は伝わらず.

JANE'S ADDICTION @GREEN STAGE

 まさかまさかの出演決定.ペリー・ファレル自ら「本当に俺たちが来るとは思わなかっただろ.強く念じれば叶うんだ」という言葉を語るように奇跡の来日.スーツをまとったペリー・ファレルはワインを一気のみしつつのステージング.途中,大きな華をあしらった帽子を被り,上半身裸になりつつもワインをあおりつつ熱唱する.アンコールを挟む構成の中でも圧巻は"Summertime Rolls".伝説を体験している,そんな感覚を途中何度も感じた.圧巻.

RED HOT CHILI PEPPERS @GREEN STAGE

 途中で他のステージを覗きたくなるも一旦移動してしまえば戻って来れないのが火を見るよりも明らかなほど,大量のオーディエンスを飲み込んだGREEN STAGE.ショウのスタートは新作からのタイトル・トラック"By The Way".ショウのスタートを切るにはこれ以上適切な曲はない.観客の気持ちを痛いまでに表現したコーラスの歌詞は堪らなく,溢れ返った人々は口々に歌う.続くは前作からの"Scar Tissue".更に"Around The World",再び新作に戻っての"The Zepher Song".その後も"Throw Away Your Television"なども飛び出し,さながら「BY THE WAY」ツアー.勿論"Californication"や定番"Give It Away"もプレイ.アンコールではBRAHMANのショウあたりからチラチラと降ったり止んだりしていた霧雨が少しきつくなる.雨粒はステージ左に設置されたモニターにも捕らえられ,今や伝説と化した初回FRFの豪雨の中の彼らの熱演を彷彿させ,観客から歓声が上がる.フリーが「ジョージ・クリントンやJANE'S ADDICTIONといった友達のバンドと一緒に自然の中でプレイできて嬉しい」とMCするのを受けて,アンコールではそのジョージ・クリントンが登場し,インプロヴァイズしたセッションを繰り広げる.さすが最終日のヘッドライナー.この3日を総括するかのような素晴らしいステージだった.

 FRF '02 3日を終えて...

 大自然の中,レヴェルの高いバンド達が自分たちの持てる最善を尽くしてのプレイを聞かせてくれる.本家フェスというだけはある素晴らしい内容だった.体力的には相当厳しいがそれに見合うだけのものを与えてくれた.また来年も来たい.そう思わせるに十分な内容だった.