LiVE REPORT2004

EXTREME THE DOJO vol.10 Special

2004/04/17 @Nanba Hatch

EXTREME THE DOJOも10回目ということでANTHRAXをヘッドラインに心斎橋Quattroからなんばhatchへと会場を大きくし,7バンドをブッキングとデラックスにしたものの動員は厳しそうな本公演.

SIKTH

 動員はフロアの1/4くらいの入り.さすがにさびしい.15時ちょうどにステージに上がったバンドはブルータルでかつカオティック,その上テクニカルという素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた.デス・ヴォイスで咆哮するフロントマンはステージ上を東宝系怪獣のようにステージ上をうろつき,1人2役の芝居も披露というサーヴィス振り.アックスを駆る男たちはネックを振り回しつつ難解なフレーズをバキバキ決めるという姿には圧巻.まだまだ客をひきつけるステージ運びという部分では学ぶべきものがありそうな彼らだが,約30分のステージで,今後に期待させるに十分な時間だった.

 

FROM AUTUMN TO ASHES

 今度は昔の言葉で言うところの「ストリート系」,つまりパンクのアティテュードを持ったバンドで,スクリーミング系のvox.とドラムのクリーン・ヴォイスというダブルvox.構成.正直なところ,楽曲に魅力は乏しい.エンジニアが悪いのか,若干篭り気味のサウンドのせいなのか,オーディエンスは最前列でスラムダンスが起こる程度.厳しいまま30分のセットを終えるのか,と思っていたもののラストで煽り倒して,力技で引っ張っていく姿にはライヴ・バンドの本領発揮と言えた.そこが唯一の救いか.

DARKEST HOUR

 メロディアス・ヘヴイ・メタル(デス・メタルの要素もあり)!久しぶりにこの手のバンドを見たのだが,結構良いですね.オーソドックスなのだけど,それをいとも簡単にやれるというのは各プレイヤーの技量があるからこそ.オーディエンスも少ないとはいえ,良い反応を返している.見ていて10年以上前の良い思い出を呼び起こしてくれるパフォーマンスだった.でもな,こういうのってアルバム買おうなんて思わないのだよな.良いパフォーマンスがセールスには結びつかない,っていう.

BURNT BY THE SUN

 ステージにメンバーが集まってから,円陣を組んで打ち合わせ.スポーツ・チームなのか?単に打ち合わせ不足なのか?と訝ったところ,スキン・ヘッドのメンバーがマイク・スタンド前に立ち,「か,め,は,め,波」.ツカミとしてはOKでしょうか.
 が,音楽的には厳しい.ブラスト・ビート系のオーソドックスなサウンドはそれなり...本公演はsmashとレコ社作成によるリーフレットに各バンドの見所が記載されているのだけど,それによると,「(ドラマーは)Paul Bostaphの後任としてSLAYERから加入のオファーが受けたとの噂もあった名うての手練者」ってあるのだけど,そこそこだよな.安定感はあるのだけど,こじんまりしてて...そういう意味ではこの前に出たDARKEST HOURのドラムの方がダイナミズムに溢れており,良かったのではないか,と.
 KILLSWITCH ENGAGEのvox.がゲストで入るところ意外は,いまいち盛り上がりに欠けつつ,終盤へ.vox.が「(最近のイラク情勢を踏まえて)いろいろある時代だけど,何かみんなを一つに出来るものだあるよな.それは音楽だよな」などと話す.良い人たちなんだろうなぁ.でも,悲しいかな,音楽でそれが伝えきれてないんだよな.残念.

KILLSWITCH ENGAGE

 ここへ来てバンドもエンジニアもクオリティが一段上がる.あまりにもむごい程違う.ここまでは30分のそこそこのステージ・パフォーマンスを見て25分のセット・チェンジを待つ,という繰り返しで,正直辟易してきていたのだけど,ここからは圧巻のステージ運びに文句なし.メタルのテクニックとハードコアのアティテュードを持ってステージ上を駆け回るステージ運びは圧巻.拳を突き上げ,一緒に叫ばせる力技.終盤客席に飛び込んで熱いステージを締めくくる.ここへ来てはじめて「良かった」と言えた.

THE DILLINGER ESCAPE PLAN

 02年のフジ以来2回目となるDILLINGER.今日のオーディエンスも少なからず彼ら目当て.そんな彼らの期待に応える,技巧派ケオティック・ハードコアを堪能できた45分だった.いかなる楽曲に対しても終始安定しているドラム.変態バキバキ・ベース.アックスメンはよれることもなく,フロントマンは1曲目から客席にダイブ.期待通り.終盤マイクが投げ込まれるが,フロア中央まで届き,危うく事故になりそうに.これこそ,ロックンロールの醍醐味.絶賛!

ANTHRAX

 どういうわけは今まで見る機会のなかったヴェテラン・ロッカー.北米でのテロの影響などで活動が危ぶまれた彼らも昨年のフジに続いての来日公演.が,ベースはフランク・ベロではなく,ジョーイ・ヴェラ.微妙ではあるのだけど,致し方ない.で,ステージに上がったメンバーはさすがにオヤジ化している.ジョン・ブッシュはその体型も「オーキニ」を連発するMCも含めてLOUDNESSの二井原実と瓜二つ.
 バンドの方は以前にも増してヘヴイに進化.時代の経過に沿って,「ヘヴイ」という言葉に対しての認識レヴェルが変化しており,かつて10年以上前にANTHRAXが提示した「ヘヴイ」はもはや「ヘヴイ」でもなんでもなくなっている.それを踏まえた上での「ヘヴイ化」であり,アルバムよりも10倍ヘヴイなサウンドづくりは賞賛に値する.
 セットはクラシックスと新曲を交互にミックスしたようなセットで,個人的には「SOUND OF THE WHITE NOISE」までしかチェックできてないのでここ10年の楽曲は知らなくて,少し厳しい.その中でも"Safe Home"って曲にはここ数年バンドを取り巻く環境を踏まえて聴くと,その歌詞に込められた思いには感慨深いものがある."I'm The Man"も"Caught In The Mosh"もないセットは残念ではあるが,"Only"や"Room For One More",そしてアンコールでの"Bring The Noise".そう15年近く前にこの曲が存在しなければ,間違いなく今の音楽シーンはありえなかった.そのことを伝えるジョン・ブッシュの言葉は自信に満ちている.「その時,君はこのバンドにいなかったでしょ」,などというツッコミを入れたくもありつつ...
 正直このバンドからは新しい何かが出てくることはないし,過去の遺産を食いつぶしていくのだろうけど,彼らにはそれに値する実績を残しているのだから,それで良いのではないだろうか.(2004/04/25)