小瀬田峠

無伴奏女声三部合唱 (一部分は五部合唱)

 埼玉県西部、和紙の産地だった小川町と東秩父村。その二つの町をつなぐ古い街道にあった小瀬田峠を歌った合唱曲。埼玉文芸賞を受賞した同名の詩に曲をつけた作品。 

 テンポ指定はあくまでもおおよそのイメージを示しています。語り中心の曲ですから、きっちりとしたテンポで演奏するよりも、テンポを揺らしたほうが良い表現ができると思います。強弱も、曲の流れにあわせて自由につけてみてください。
 曲の中間部に二度出てくる五声のヴォカリーズは峠を歩く女たちの足音や峠の風をイメージしています。ここではメゾソプラノが正確にテンポを刻むと、それに絡むソプラノとアルトの動きが生きてきます。
 曲の最後はあまり重くせずに、やわらかく流すといいでしょう。

 

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ここで描かれているのは、1950年代の小川町と東秩父村の風景です。
小川町とその周辺では江戸時代から和紙作りが盛んに行なわれていました。
1950年代、東秩父村で作られた和紙は、行商の女たちの背に負われて小瀬田峠を越え、小川町駅から高崎・前橋方面に運ばれていたそうです。
作曲の段階で現地の老人に取材した話では、女たちは一度に六千枚もの紙を背負って峠を越えたということです。そして、幼い子供たちは峠まで行商の母親を見送り、峠道で母親と別れて遊びながら家に帰り、夜遅くなって帰ってくる母親を待ったということでした。

この峠道は、この曲ができた1年後に、ゴルフ場の開発に伴ってその一部が削り取られ、ゴルフ場の敷地に取り込まれて姿を消しました。
作詩者の大谷さんは「この詩は峠に書かされた気がします」と言っていました。

 


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