7.モンティ・パイソン Monty Python

イギリスという国の文化に、興味を持っている人は多いでしょう。シェイクスピア?推理小説?ブリティッシュ・ロック?…そして忘れてはならないのが、コメディ。ユーモアこそ、最高の文化!今回は、私が大好きなコメディ・グループ、モンティ・パイソンをご紹介します。

モンティ・パイソンとは

 モンティ・パイソンとは、6人の作家&アニメーターそして俳優のイギリスのグループ名。1969年から10年余り、テレビや映画でスケッチ(コント)乱射コメディアンとして、大活躍しました。
 メンバーは全員高学歴。スケッチの特色は、徹底した馬鹿馬鹿しさが全体を貫く一方、インテリっぽさが目に付きます。歴史,文学,哲学,音楽,美術,医学,法学などのネタが、次から次へと登場します。かと思えば、単にアホなだけ、グロで下品、ありとあらゆる人々をこき下ろし、意味不明の言動で煙に巻き、差別やタブーに正面から体当たりする(日本だったらまず無理な危険さ)…そうしてまで笑いを追求する、斬新なスケッチの数々を生み出しました。
 余りのブラックさと徹底振りに、冒涜的,反社会的などと攻撃されつつも、多くのコメディ・ファンから、圧倒的な支持を得ました。

 メンバー紹介

グレアム・チャップマン (1941〜1989) ケンブリッジ大学卒
 金髪碧眼長身(192cm)の英国美男子。医師免許保有。エライ人役が得意な(スケッチに駄目出しする軍人)一方、オカマ(ピンク&ヒラヒラドレスの大臣)、ヒステリーおばさん(スパム)、そしてイッちゃってる変人役(破壊型山男,スプラッタな医者)などが圧巻。ジョンと組んでスケッチを執筆。その実像はアル中でゲイ。残念ながら、1989年に癌で亡くなった。パイソンの同窓会には骨壷に収まった姿で参加。

ジョン・クリーズ (1939〜) ケンブリッジ大学卒
 いかにも頭脳明晰そうな顔つきに、 身長196cmの巨人。弁護士資格保有。かなりの演技派で、どんな役でも上手にこなす。真面目くさった役人、ぶち切れ男、スポーツ馬鹿、おすましアナウンサー、間抜けな正義の味方、弁護士、悪徳銀行員、クレームの常連などなど…印象的なキャラを挙げたら、切りがない。迫力ある容姿を逆手に取った女装も凄い。グレアムと組んでスケッチを執筆。現在でも映画やテレビで活躍中。

テリー・ギリアム (1940〜) オキシデンタル大学卒
 アメリカ嫌いの長髪アメリカ人。通称テリーG。パイソンのアニメーション担当で、一話ごとの流れを独特の感覚(ブラック&ナンセンス)で支えた。役者としても時々顔を出し、変なキャラ(異端審問の枢機卿,極め付きのオカマなど)が多い。パイソンの映画監督もつとめ、その後大監督に。「未来世紀ブラジル」「フィッシャー・キング」「パロン」「タイム・バンテッド」「12モンキーズ」「ロスト・イン・ラマンチャ」などが有名。

エリック・アイドル (1943〜) ケンブリッジ大学卒
 言葉と喋りのスペシャリスト。「ナッジ、ナッジ」は余りにも有名。サッカーソングとしても愛されているAlways look on the bright side of lifeなど、音楽的才能にも恵まれている。表向き陽気なキャラの一方、スケッチを書くに当たっては孤独を好み、我が道を行く。メンバーの中で唯一女装が似合い、普通に綺麗だったり(ボクサーの妻)、音声さんに襲われたり(詩人の幼なじみ)していた。さまになり過ぎて笑えないと判断したのか、後期はあまり女装していない。スマート且つ長髪なので、いまどきの若者役も多い。パイソン後は、音楽仲間との企画や、映画,テレビでも活躍。

テリー・ジョーンズ (1942〜) オックスフォード大学卒
 身長が低いが故に苛められたり、奇人変人の中で困り果てる役の多い、通称テリーJ。マイケルと組んでスケッチを執筆。おばさん(ペッパーポット)をやらせたら、彼の右に出る者はない。そしてよく脱ぐ。ストリップや裸のオルガン弾きが有名。声が良いので、歌も上手い。チョーサー学者としても高名で、いくつかの著作がある。更に児童文学者で、映画監督でもあり、歴史ドキュメンタリーを製作し…でも脱ぐ。

マイケル・ペイリン (1943〜) オックスフォード大学卒
 家族と地球と友達を大事にする、顔つきからして正真正銘のNice One。テリーJと組んでスケッチを執筆。演技の上手さがずば抜けており、極悪アナウンサーや、悪魔的だけど間抜けな枢機卿、超ド級のバカ、情けない公認会計士や株屋、オカマの木こりや裁判官(これは合方のエリックも凄かった)、すっとぼけつつ横柄な店員などなど、強烈なキャラばかりである。パイソン後は、その演技力を買われて俳優として大活躍している。旅行番組のホストとしても有名。鉄道マニアであったりもする。

 私のパイソン観

 レスター版三銃士も同じ事を思ったのですが、私はまず、60,70年代の息吹と言う物に魅力を感じているようです。
 彼らは、笑いをその場しのぎの瞬間芸ではなく、繰り返しの観賞に耐えられる「舞台作品」として取り組んでい,ました。アドリブは殆ど無し。スクリプト(台本)が良く出来ているおり、演技の完成度とあいまって魅力的な「作品」に仕上がっています。
 繰り出されるギャグは、一発で笑えるものもあるのですが、私は二回目,三回目になってジワジワ来る笑いが多いような気がします。この辺りが、一度はまったら抜け出せない、パイソン・ワールドの所以でしょう。単なる馬鹿馬鹿しさも好きですが、やはりインテリネタがツボに来ます。従って「ネタが分からない」という事態も多々発生します。イギリス人の親が、勉強を嫌がる子供に「勉強しないと、パイソンで笑えないぞ!」と説教したというのは、よくある話。また、かなりブラックで危ないネタが多いので、それに対して、怒るか笑うか、鑑賞者の器量と成熟度を試しているような所があります。イギリスの生活が良く分かると言う点も面白いですね。
 もう一つ付け加えるとしたら、若くて(スタート時の平均年齢は27歳。ロックスターなどに比べれば若くはないが、高学歴なのだから仕方が無い)、魅力的で個性的な6人の男が、チームを組んでひたすら前へ進む姿の格好良さも、素敵です。

 お勧めパイソン作品

基本編

空飛ぶモンティ・パイソン(Monty Python’s Flying Circus) 1969〜1974年
 まずはこれを見ないと始まらない。1話30分のテレビシリーズ。第1シリーズから第4シリーズまでの全45話。BBC(日本で言うとNHKか?)で放映された。特にお勧めなのは、第1,2シリーズ(DVDだとVol. 1〜4)。若くて勢いがある。レンタル・ショップにも並んでいるとか。吹替えが有名だが、DVDは字幕のみ。そんな訳で、私はオリジナル音声派である。

モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル (Monty Python And The Holy Grail) 1975年
 アーサー王と円卓の騎士が聖杯を探し求める中世イングランドの冒険活劇映画…のはずだが、かなりとんでもない事になっている。凄まじいラストシーンは、怒るか笑うか、意見が分かれるだろう。お馬鹿な内容とは裏腹に、10世紀の衣装などはかなり本格的で、歴史学者の間でも評価が高い。テレビの第1,2シリーズの後くらいに、見るのがお勧め。ジワジワ系のギャグが多い。DVDの特典が豪華。

応用編

 ライブ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル:1980年のハイなライブ映像。特にエリックが冴え渡っている。
 ドイツ版 空飛ぶモンティ・パイソン:ドイツでのみ放映されたテレビ作品。かなり面白い。
 ライフ・オブ・ブライアン(映画):ヤバイ内容の為、上映禁止されたりもした「間違いの救世主物語」。
 人生狂騒曲(映画):オリジナルメンバーによる最後の作品。どぎついので、初心者にはお勧めしない。
 Monty Python Sings:音楽CD。特にAlways look on the bright side of lifeは感動的。
 All the words:「空飛ぶ」のスクリプト(英語)。一度テレビを見れば、読むだけで笑える。

                                                   12nd March .2004
当HPパイソン関連ページ 
・モンティ・パイソンにリシュリューが!
               ・パイソン・ソングでピューリタン革命!



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